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株式会社久郷一樹園

-定年なし、熟練職人が日本の庭園を守り、次世代を育てる-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • 能力開発制度の改善
  • コンテスト入賞企業

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株式会社久郷一樹園のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1875(明治8)年 1960(昭和35)年 (設立)
  • 本社所在地
    富山県富山市
  • 業種
    造園緑化工事・土木工事
  • 事業所数

導入ポイント

  • 長年の経験を必要とする造園業ではシニア従業員の存在は不可欠
  • シニア従業員が若手への技能伝承を十分に行うには現役期間の延長が必要
  • 定年廃止でシニア従業員が働ける期間を延ばし、人手不足に対応
  • シニアに発想転換や若手とのコミュニケーションを促し技能伝承を活発化
  • シニア従業員の体力負担を機械導入で解消
  • シニア従業員の技術とノウハウで顧客の要望に的確に応える造園工事が可能
  • シニア従業員の技能伝承により独り立ちできる若手を育成
  • 機械化による負荷軽減により現場で働く従業員に余裕のある働き方を提供
  • 従業員の状況
    従業員数 25人(2024年4月1日現在) / 平均年齢 54.7歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 (10%) 65歳以上 (25%)
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 該当せず
2026年03月01日 現在

同社における関連情報

■企業プロフィール

1875(明治8)年富山県富山市に創業。現在は、県内の公共事業をはじめ、県内外の造園工事、環境緑化工事にも力を注ぎ、地域の環境整備に貢献している。

■専門家の視点・取組みのポイント

わが国の伝統文化である日本庭園の維持は多くの経験を積んできた職人なしには成り立ちません。また、将来を担う若手職人はベテランが時間をかけて育てます。定年廃止により同社はシニア職人がいっそう長く現役で働き、後継も育てる体制を強化できました。

雇用制度改定の背景

Q.制度改定のきっかけは何でしたか。

当社は1875(明治8)年創業で4代にわたって家業として続いてきました。江戸時代から富山城の庭園造成や剪定に関わっています。のれん分けされたOBが独立して起こした会社が10社、個人営業の植木屋も20近くあります。地域の財産を守る会社、信用信頼に応える会社として「久郷一樹園だからこそやれる」の評判に違わぬ難度の高い仕事ぶりで地域の伝統と信頼を守る使命感があります。現在は伝統的な仕事に加えて環境緑化やビオトープも手掛けています。

庭園修景工事や石工事は長年経験を積んだ職人だからこそ行えます。将来を担う人材も必要ですが、育てるには時間がかかります。シニアにはこれからも技を発揮してもらいながら若手を育ててもらわねばなりません。そこで2010(平成22)年に定年年齢を70歳へ延長しました。その後、2019(平成31)年に(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の65歳超雇用推進助成金を受け、定年を廃止しました。

Q.シニアの強みとは何でしょうか。

和風庭園を造るために庭木を植え、石を置きます。庭木の手入れは芸術的な感性が必要です。木は単に植えればよいのではなく、角度や見せ方で景観が大きく変化するからです。長年の経験がなければ技を身につけることができません。また、造園業は土木やコンクリート工事も行うため必要な資格も造園技能士、造園施工管理技士、庭園管理士など多岐にわたります。

当社の勤続年数最長者は52年、40年以上3名、20年以上10名で従業員の半分以上は20年以上です。最高齢は73歳の企画室長でフルタイム勤務、見積もり・設計提案・図面設計をしています。高齢者を優先して採用していたのではなく、結果として高齢者が多くなりました。皆が多くの資格を持つベテランです。しかも優秀施工者国土交通大臣顕彰者3名が在籍しています。個人のお客様からもご指名がかかります。

Q.雪国ならではの仕事もありますか。

雪国では樹木の雪囲いは大切な作業です。当社は県内のすべての県立高校の雪囲いを担っています。雪囲いではそれぞれの植木に合った支柱を用意して縄を張ります。雪から木を守り、見せ方もきれいにするにはさまざまな技法を駆使できるシニア従業員が欠かせません。

除雪の仕事もあります。公共施設やスーパーの駐車場に積もった雪をホイールローダーという大型重機で片付け、大型ダンプで雪捨て場に運びます。重機の操作は熟練が必要ですが、オペレーターが高齢化しており、若手オペレーターの育成が課題です。12月は雪囲いや雪つり、3月はそれらを外す仕事が忙しく、土日祝日も勤務することがあり、労働時間の調整が大変です。

〈冬の雪囲い〉

Q.若手とのチームワークはいかがですか。

現場は常に5、6か所あり、1つの現場で3人程度のチームで仕事をしています。若手に幅広く経験させる観点からベテランとペアを組ませますが固定ではなく、身につけさせたいことを念頭に現場を監督するシニア従業員が適宜決めています。

初めの頃はシニア従業員にも戸惑いがありました。コミュニケーションが苦手でやさしく教えられないシニアや、実際の作業を自分ではなく若手に任せることへの抵抗感を持つシニアもいました。そこで彼らに頭の切り替えをしてもらうようにお願いしました。職場全体にこの方針が浸透するまで10年から15年ほどかかりました。

〈若手とベテランがペアで働いている様子〉

Q.シニアになる人たちに一言お願いします。

働ける間は働いて社会を支える気持ちが必要ではないでしょうか。会社も一人ひとりの事情に合わせた働き方を提供すべきでしょう。

人事管理制度の概要

■賃金・評価制度

賃金体系は昇給の仕組みが分かりやすい明確な制度としている。計算式は日額×24日×1.15(精勤加算)であり、定年延長前からこの方式であった。日額は年功ではなく業務貢献度で決定しており、60歳以降も昇給可能である。貢献度の高さで給与にも賞与にも差が生じる。

■教育訓練制度

造園工事ではさまざまな技能が必要なため、全ての従業員に資格取得を奨励しており、費用は全額会社が負担している。また、会社が開催する技能研修会や安全研修会はシニア従業員も含めて全従業員が参加する。冬期には実技講習会を開催している。

高齢従業員戦力化のための工夫

■作業の機械化

庭園整備のために刈り取った芝は人力でトラックに積んでいたが、省力化を目的にロボット芝刈り機を購入、刈り取った芝は集草機へ送られ土壌改良剤や肥料としてリサイクルされる。これまで手作業だったトラック積み上げが機械化されたことで労働時間が短縮されて勤務シフトに余裕が生まれ、身体的精神的負担が軽減された。機械の購入にあたっては勤務間インターバル制度(勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保し、健康維持や過重労働の防止を図るもの)の導入に取り組む中小企業を対象とした厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」を活用している。

〈ロボット芝刈り機〉

健康管理・安全衛生・福利厚生

■健康診断の充実

一般検診に加え50歳以上男性は前立腺がん、女性は全員女性検診が会社負担で受診できる。

■熱中症防止対策

暑い日の屋外作業では体調の悪い者は作業を休ませ、休憩時間の取り方や長さも監督者判断で適宜行っている。

■安全意識の啓発

シニア従業員は庭園造成や緑化、冬期の除雪作業で簡単な道具を用いるだけではなく大型重機や大型ダンプの操作も担当する。安全対策は最優先であり、社屋に10項目からなる「安全訓」を掲示、「身なりをきちんと保護具つけ」、「安全運転第一に」、「連絡合図ははっきりと」など分かりやすい言葉で意識づけを図っている。安全対策のポイントは定期ミーティングで確認、毎年社外研修も実施している。

〈安全訓〉

■人感センサーライトやスロープで転倒防止

社屋入口は屋外階段を使用するが、隣の建物に挟まれ日中も暗く、段差での転倒の恐れがある。そこで転倒防止を目的に人感センサーライトを設置、休憩所に通じる通路ではスロープを設置して段差を解消した。転倒防止を呼びかける注意喚起ポスターも掲示している。

■研修会の実施

年1回、泊まりがけの研修会を実施している。従業員間のコミュニケーションの促進を目的とするが、緑化フェア視察など実務に直結した内容を盛り込んでいる。

今後の課題

「環境緑化の情報発信基地として、来たるべき造園新時代に挑戦し続ける」をスローガンとする久郷一樹園にとって、現在働いているシニア従業員に期待している役割は多く、元気な間は働いてほしいと考えている。機械化や柔軟な勤務形態など各人の事情に合わせた働きやすい職場環境づくりが安全対策の徹底とともにこれからも課題である。

(出所)株式会社久郷一樹園へのヒアリングをもとに筆者作成

出所:70歳雇用推進事例集2026

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