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三谷産業株式会社

-高齢社員の活躍促進のため無期限の継続雇用制度を導入-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 上限年齢なしの継続雇用(基準あり)
  • 賃金・評価制度改定
  • 多様な勤務形態
  • キャリア形成支援
三谷産業株式会社のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1928(昭和3)年
  • 本社所在地
    金沢本社:石川県金沢市 _東京本社:東京都千代田区
  • 業種
    各種商品卸売業
  • 事業所数
    9ヵ所

導入ポイント

  • 定年後、65歳までの雇用形態を正社員化し、66歳以降は雇用の上限年齢のない嘱託社 員としての継続雇用制度を導入
  • 本業で培ったスキルと経験を社外副業として活かす「出来高払いオプション制度」で高 齢社員のモチベーションアップ
  • 「第二退職金制度」で高齢社員の長期間にわたる会社への貢献に応える
  • 従業員の状況
    従業員数 616人(単体) / 平均年齢 39. 7歳(非正規を除く) / 60 歳以上の割合 6.2%(非正規を除く)
  • 定年制度
    定年年齢 60歳 / 役職定年 60歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 マスター正社員のうち基準該 当者は、66歳以降、マスター嘱託社 員として継続雇用。上限年齢なし。
2023年02月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

 ~創業90年を越えるベンチャー企業として積極的な新事業を展開~

三谷産業株式会社は1928(昭和3)年に、石炭の卸売として石川県金沢市で創業した複合商社で、北陸、首都圏、ベトナムを地盤に、化学品、情報システム、樹脂・エレクトロニクス、空調設備工事、住宅設備機器、エネルギーの6つの分野で事業を展開する複合企業である。商社でありながら、時にメーカー、コンサルタントとして、年々高度に、複雑になっていく顧客の課題解決に取り組んでいる。

社員数(2022(令和4)年4月現在)は616人(単体。非正規を除く)、うち、60歳代前半は26人(単体。以下、同じ)、同後半は9人、70歳以上は3人で、60歳以上の割合は6.2%である。社員の平均年齢は39.7歳である。

採用状況については、新卒者採用をメインとしつつ、中途採用についても積極的に行っており、他社を定年退職した方など専門性の高い高齢者も中途採用している。最高齢の78歳の社員は他社を定年退職後、同社で採用された技術者であり、現在は週3日ほどの勤務で、若手営業担当者との同行企業訪問を行うなど活躍している。

同社は複合商社として6つの分野での幅広い事業を展開しており、社員は長期にわたって技術・専門性を高めていくことが多い。他方、同社は複雑化する顧客ニーズの変化を捉えて、「創業90年を越えるベンチャー企業」として積極的な新事業展開に取り組んでおり、それを支えるための人材ニーズは高く、知識・経験が豊かな高齢社員への期待は高い。

〈三谷産業(金沢本社) 外観〉

雇用制度改定の背景

■経緯

 ~ベテラン社員のさらなる活躍を求めて~

三谷産業では、従来、継続雇用制度として、国内グループ会社全てを含め、60歳定年となった社員のうち希望者全員を人材事業などを担うグループ会社(アドニス株式会社)に転籍させ、65歳までは1年ごとの契約により嘱託社員として同社を中心とする元の職場に在籍出向させる形で取り組んできた。今回の雇用制度改定の背景として、各分野での豊かなノウハウとスキルを持つベテラン社員のモチベーションを高めつつ、さらなる活躍推進を図るということがあった。

■雇用制度改定の課題と工夫

 ~アンケートにより社員の理解を深める~

今回の雇用制度改定に際しては、同社に労働組合はないため、社員全員を対象とする説明会を行った。併せてアンケートを実施し、収集した質問に対する回答を後日行うことにより、制度についての社員の理解を深めるようにした。同社の「終身雇用」について、社員に対しては、「終身、一人ひとりにとって丁度いい働き方での雇用」とメッセージを出している。

人事管理制度の概要

■無期限の継続雇用制度の導入

2021(令和3)年の見直しでは、60歳定年制及びグループ会社への転籍・三谷産業等元の職場への出向の形は従来と変わらないが、65歳までマスター正社員として希望者全員継続雇用とし、66歳以降については基準該当者を1年ごとの契約によりマスター嘱託社員とする、雇用の上限年齢を設けない継続雇用制度を導入した(P68の図表参照)。なお、マスター正社員からマスター嘱託社員への移行は、直近の勤務評定、産業医による就業上支障がない旨の判断などの評価基準をクリアする必要があるが、希望者のほとんどが移行できている。

■賃金制度・評価制度

同社の賃金制度及び評価制度を概観する。同社の賃金制度は、1999(平成11)年にこれまでの年功的要素の強い賃金制度から成果給に変更された。また同社では、目標管理・人事考課制度を採用しており、目標の達成度や期待役割について本人にフィードバックするとともに、個人の評価ランクに応じた賞与、昇給への反映がなされている。

定年後社員については、従前は目標管理・人事考課制度について60 ? 65歳までの嘱託社員のみに適用され、66歳以上の嘱託社員には適用されていなかったが、2021(令和3)年からマスター正社員及びマスター嘱託社員に目標管理・人事考課制度が適用されることとなった。

マスター正社員には、個人の評価ランクに応じた賞与、昇給への反映がなされ、マスター嘱託社員については一律の職務給となり、昇給がないものの、個人の評価ランクに応じた賞与への反映がなされている。これらの見直しにより、マスター正社員及びマスター嘱託社員のモチベーションアップが図られている。

■役職定年制

従来は、後任者がまだ育っていない等の理由により、定年後も役職を継続することがあった。2021(令和3)年4月の無期限の継続雇用制度の見直しに合わせて、60歳での役職定年制度を導入し、後進にノウハウを伝えるなど組織の新陳代謝を図っている。

■退職金制度

 ~長い継続雇用をねぎらう第二退職金~

同社では確定拠出年金を採用しており、60歳定年時に支給している。また同社では、2021(令和3)年4月の無期限の継続雇用制度の導入と同時に、退職金制度の見直しを行い、60歳定年時に支給する退職金とは別に、「第二退職金制度」を新設した。マスター正社員及びマスター嘱託社員については、熟達者Ⅰ(定型労働型:事務業務、庶務業務)、熟達者Ⅱ(現業継続型:定年前に行っていた業務の一部を継続等)、熟達者Ⅲ(専門性発揮型:技術伝承者、営業スペシャリスト、マネジメント補佐)の人材区分に位置付けられるが、60歳以降、当該人材区分別にポイントを積み立て、積み立てられたポイントに応じて、退職時に支給する仕組みである。60歳の定年以降もマスター正社員やマスター嘱託社員として長く継続雇用されることとなるため、退職時に「お疲れ様」という気持ちを込めて、第二退職金を支払うこととしている。

高齢社員戦力化のための工夫

■キャリア形成支援

 ~キャリア・リ・デザイン研修で60歳以降の働き方の選択を支援~

三谷産業では、キャリア研修として年3回、キャリアを考える勉強会を開催しているほか、毎月キャリア相談を実施している。高齢社員に対するキャリア研修として、50歳到達時にライフプランセミナー(確定拠出年金をテーマ)を実施しており、57~59歳時に、60歳以降の働き方を主体的に選択する準備を促す「キャリア・リ・デザイン研修」を実施している。59歳時には、人事面談及びキャリア面談で60歳以降の働き方の希望の確認等の相談を行っている。

■出来高払いオプション

 ~経験豊かな高齢社員の社外副業を支援~

役職定年制の対象になる元上級管理職であるマスター正社員やマスター嘱託社員を念頭に置いた制度として、「出来高払いオプション」制度を2021(令和3)年度に創設した。検討のきっかけはトップの「社員にいろいろな経験をさせる風土づくりをしたい」という意見であった。

この制度は、これまで培ったスキルと経験を社外副業に活かしてもらう仕組みであり、社内外講師、営業紹介、技術指導、システムコンサル、企画・業務系コンサル、キャリアアドバイザーの職務が用意されている。社外副業先は、グループ会社等からの人材ニーズを受けて、人事部がマッチングするケースに加えて、社員自らが社外へ開拓することも可能としている。時給は通常の給与の2~ 3倍の設定となる。新しい制度であり、まだ利用者はいないが、高いスキルを持つ高齢社員の活躍の場の広がりが期待される。

■社員が安心して働ける勤務制度や休暇制度

同社では、会社にとって貴重な「人財」が、自身の健康や家庭の事情に応じて無理なく仕事を続けられるように、短時間勤務制度(育児、介護、病気治療)、フレックスタイム制度、介護手当制度、通院休暇制度、積み立て有給制度(病気治療)、テレワーク制度などの制度を整備している。これらの制度は、高齢社員にとっての働きやすさにもつながっている。

健康管理・安全衛生・福利厚生

■人間ドック受診への補助

三谷産業では、社員の人間ドック受診については、5年おきの節目の年については同社が全額負担し、その他の年については本人負担1万円となるよう同社が一定額の負担をしている。

今後の課題

三谷産業には幅広い事業分野・職種があり、新会社立ち上げも多いことから、高齢社員をはじめとする人材のマッチング可能性は他社より高いが、特にITスキルや会計処理のスキルのある人材ニーズが高い。このため、同社では、社員に対して早期のキャリア研修や能力開発を一層進める必要があると考えている。

また、同社では、60歳定年となった社員のうち希望者全員を人材事業などを担うグループ会社に転籍させ、定年前に働いていた元の職場に在籍出向させているが、将来的には、同社グループ全体の成長のため、グループ会社間を含めた人材マッチングを図っていくことを検討している。

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