株式会社ケイ・エフ・ケイ小川
-経験豊かなシニアがメンターとして「跡取り」を育成-
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業

企業プロフィール
-
創業1991(平成3)年
-
本社所在地熊本県宇城市
-
業種自動二輪・四輪ミッションギヤ製造、減速機部品 製造、他
-
事業所数
導入ポイント
- 人手不足感がいっそう強まり、あらゆる年齢層を対象にした労働力獲得が不可欠な状況
- 採用で多くを占める未経験者に早期に技能を身につけさせ、職場の後継者を育成する必要
- 新卒採用と中途採用に加えて他社定年退職者も積極的に採用、自社退職者の復職も可能
- 「跡取り」育成のためシニア従業員がメンターとして2か月間、同一ペアで常に行動
- シニア従業員の体力や視力低下に対応して新規設備導入や職場環境を整備
- 他社で豊富な経験を持つシニア、他社経験のある復職者等、多様な人材が在籍して戦力化
- 技能に加えて企業風土も伝承するシニア従業員メンターの熱意で採用者の離職率が低下
- 機械化により作業者の疲労軽減と生産性向上を実現、労働災害防止に効果
-
従業員の状況従業員数 72人 / 平均年齢 46.2歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 6.9% 65歳以上~ 11.1%
-
定年制度定年年齢 60歳 / 役職定年 なし
-
70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 希望者全員70歳まで継続雇用。70歳以降は一定条件のもと年齢上限なく継続雇用。
同社における関連情報
■企業プロフィール
1991(平成3)年に、株式会社ケイ・エフ・ケイの小川工場として操業を開始し、1997(平成9)年に小川工場の分社化により、株式会社ケイ・エフ・ケイ小川を設立した。経営理念は「謙虚・機会平等・感謝」を掲げている。

■専門家の視点・取組みのポイント
雇用制度改定の背景
Q.制度改定のきっかけは何でしたか。
2023(令和5)年に継続雇用の上限年齢を65歳から70歳に引き上げました。当社は金属部品やセラミック部品を切削加工する量産工場です。オートバイ部品から始まり、今は減速機やセラミック部品も作っており、今後はモーター系部品にも力を入れます。機械が作り、検査も自動化が進んでいますが、人手は欠かせません。熊本県内はこれまでも人手不足でしたが、半導体工場の進出もあっていっそう採用が難しくなっています。
現在当社で働いているシニア従業員は労働力として貴重です。また、新卒や中途で採用できても採用者の8割は業務経験がありません。採用者に対する技能伝承教育が必要ですが、この役割を果たせるのは、やはりシニア従業員ですから長く働いてもらいたいと思います。今まで培ったスキルを活かしてほしい、跡取り育成のメンターになっていただきたい、そのためシニアが働ける職場を提供したいと考えています。
Q.シニア従業員の強みを教えて下さい。
当社の最高齢者は76歳です。シニア従業員はありがたい存在です。仕事での間違いが少なく、また、もったいない精神が強く、設備を大事に扱います。長い経験から生まれる安定感があり、新規採用者のメンター、若手や中堅のお手本になります。
Q.シニア従業員に生じる問題はありますか。
シニア従業員は老眼で視力が低下して外観検査業務に支障をきたすことも考えられます。そこで拡大機や照明器具、自動外観検査機を設置しています。記憶能力低下に対しては認知症テストを行って現状を把握しています。そのうえで継続雇用のために必要な改善策を検討します。
Q.制度改定に対する受け止め方は。
「70歳までの人生計画を立てられる」と歓迎されました。また、「70歳の先輩を見て、そんな歳まで働けるのかと思ったが、実際はやれている」、「ここまで仕事をやってこられたのは幸せ」と実感するシニアもいます。一方で「若手と違うように気を遣われては逆に困る」との意見もありました。特別扱いされないで働きたいようです。
Q.これからの方針を聞かせて下さい。
シニア従業員は当社にとって欠かせない人材です。短時間勤務制度などを充実させて70歳でも80歳でも働ける仕組みを整えたいと思います。その先には定年撤廃も検討課題になるかも知れません。
人事管理制度の概要
■職種構成と採用
職種は機械加工検査、補助作業、生産管理、生産技術、品質管理、総務である。地元出身者の採用が多い。また、親子で従業員、夫婦で従業員というケースや、従業員の紹介による入社もある。一度退職した従業員や60歳以上の求職者も積極採用して「働ける場」を提供している。最近では60歳超の2名が採用され、定着している。応募書類に「40年間定年まで働いた」との記載があり、技術や技能が活用できると判断、面接の結果、採用されている。60歳からの入社では覚えられる仕事に限りがあるものの、できる仕事から幅を広げられるようにしている。
■賃金制度
賃金は年功給を基本に勤続年数を考慮し、スキルや資格も分析して評価、処遇を決定している。定年後の賃金も減少しない。同じように働きながら賃金が減少することは本人の納得性を得られないばかりか意欲低下を招くと会社は考えている。同様の考えから資格手当は定年後も支給している。本人の技能レベルは変わらないためである。役職定年はなく、定年後も引き続き役職にとどまって管理職手当を受けることもあるが、役職を下りた場合でも基本給を増額することで配慮している。なお、確定拠出年金対応としてライフプラン手当を支給している。
■評価制度
人事考課は業績評価と部門目標に対しての評価で行なわれ、前者は規律性、協調性、責任性、正確性、迅速性について、後者は生産性、不良率、流出不良、安全衛生、費用対効果について評価される。定年後も人事評価は行われ、年齢に関係なく貢献度を把握、評価結果に応じて給与と賞与を決定している。
■継続雇用制度
2023(令和5)年に希望者全員を対象とした継続雇用上限年齢を65歳から70歳へ引き上げ、加えて70歳以降も本人の希望と健康状態等を会社が判断して雇用を更新することを就業規則で定めている。更新にあたっては1か月前に役員が面談、健康状態と働き方の希望を確認している。
.高齢従業員戦力化のための工夫
■シニア従業員をメンターに起用
業務未経験で入社してくる若手を「跡取り」として育成するためにシニア従業員がメンターとして活躍している。メンターは業務に直結する知識や技能だけではなく会社や職場の風土も伝授することで若手の職場定着に寄与している。メンターは年配の従業員が任命され76歳の高齢者も任命されている。メンターは入社時に決定、若手と2か月間行動を共にする。新人の勤務は昼に限定されているためメンターも合わせて昼勤務のみとなる。そのため夜の勤務ができないメンターは夜勤手当が支給されず減収となるが、会社が減収分を補填して若手と行動を共にさせる。メンターは若手に教える資料を作成するため、教える側も勉強の必要があるが、自身の仕事についての振り返り効果もある。現在はメンター制度充実のために技術戦略室が設けられ、技術や経験ある者が指導する仕組みを整備している。
■若手中堅との役割分担
シニア従業員が不得手とする仕事は若手や中堅に任せている。目視検査や精密な作業、自動化機器のプログラム作成は若手が行なう。全員が利用するタブレットは扱える若手が教え手となるほか、操作方法は動画で誰でもいつでも見られるようにしている。
■体力負担の軽減
機械化により、シニアを含めたすべての従業員の体力負担軽減に努めている。ロボットが部品を機械にセット、重量物はチェーンブロックが磁石で吊り上げてセットする。全作業場で作業台や棚の高さを揃え、統一された高さの荷台を使用することで作業者の上下動をなくしている。鉄などの重い素材を運ぶ際は台車を使用、一人でも効率的に作業が可能となっている。視力が低下したシニア従業員でも問題なく部品の外観検査が行えるようにライトで明るさを増し、拡大ルーペを設置している。
■要望を取り入れた働き方
65歳超のシニア従業員からは柔軟な勤務を要望されることもある。フルタイム勤務を基本としつつも個人の状況に合わせて勤務時間の弾力化、所定労働時間の短縮、所定労働日数の削減を行っている。シニア従業員は「会社でやることがある」、「居場所がある」ことを働き続ける理由としているが、一方で高齢者だからと特別扱いされることは希望していない。職務の変更も含め、いつまでも働き続けられるように環境を整えることを会社の方針としている。
■頻繁なコミュニケーション
「~報連相~ “質の高い仕事”のふりかえり」はシニアも含めた全従業員が、職務に関連する15項目をチェックし、部門目標達成と自己能力向上のために自分がこの1か月間に残した実績を振り返り、自由記述するものである。管理職以上が全員の回答を読み、適宜コメントして返却している。毎月読むことで各人の思いやその間の変化、成長が分かる。これをもとに年1回の面談で目標を持たせ、足りない点も指摘する。「知っトクテスト」は社内の各種ルールや規程等、業務上必要なことを尋ねる計10問のテストである。従業員からは「報連相と知っトクテストは刺激になって良い」と評価されている。
.健康管理・安全衛生・福利厚生
現場ではスポットクーラーを設置して熱中症防止と作業環境改善、また、全従業員を対象にストレスチェックを行って従業員のこころの健康促進に努めている。部品加工時に排出される切りくずによるケガを防ぐために作業者はゴーグルを着用している。社内のサークル活動、夏祭りや家族感謝の集い、周年記念パーティーなどのイベントを開催して世代を超えた従業員間の親睦を図っている。
今後の課題
同社は働く人がいきいきと輝き、安心して働き続けられる企業に対して熊本県が認定する「ブライト企業」である。取り組みが評価された結果であるが、現在、より上位の「プラチナブライト企業」認定取得を目指し、さらに働きやすい環境の実現に向けてさまざまな施策に取り組んでいる。
出所:70歳雇用推進事例集2026
