社会福祉法人名張育成会
-介護現場の仕事の切り分けと、 正規・非正規職員それぞれの活用法の工夫-
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業

企業プロフィール
-
創業1958(昭和33)年
-
本社所在地三重県名張市
-
業種老人福祉・介護・障がい者福祉、保育事業
-
事業所数
導入ポイント
- 慢性的な人材確保難のなか、理事長が年齢、国籍関係なく多様な人が働けるよう、ダイバー シティ採用を明確に打ち出す
- 人事課から採用と育成の業務を切り出し、新たに採用戦略課を創設
- これまでの正規職員を中心としたシフトから、非正規中心のシフトの体制に転換し、それに 対応した求人を行った
- 高齢職員の希望を第一優先としてシフトを組み、正規職員はより柔軟に勤務をしてもらうこ とで処遇に差をつけ、納得性を高めることで、定着率が向上した
- 直接介護・間接介護の業務の違いを明確にして、介護助手の仕事内容をわかりやすくマニュ アルの形で整理した
-
従業員の状況従業員数 530人 / 平均年齢 49歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 7.9% 65歳以上 20.4%
-
定年制度定年年齢 65歳 / 役職定年 なし
-
70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 一定条件のもと70歳まで継続雇用。70歳以降は、一定条件のもと年齢上限なく継続雇用。
同社における関連情報
■企業プロフィール
1958(昭和33)年「名張育成園児童寮」として開園。1973(昭和48)年全国に成人施設が整備されたことから、三重県での役割に特化するため現法人に財産等事業が移管。1995(平成7)年に「社会福祉法人名張育成会」へと法人名を変更。社会福祉法人名張育成会はすべての人たちが自分らしく輝いて生きるための支援を目指している。

■専門家の視点・取組みのポイント
雇用制度改定の背景
Q.お仕事について教えてください。
障害を持つ方々を対象に、児童から成人まで一貫した支援を提供する施設として名張市に開園しました。現在は障害者福祉サービスのほか、高齢者福祉事業や保育事業などへも参入し、支援の対象を広げてきています。
Q.制度改定のきっかけはなんでしたか。
労働力の確保が困難な状況のなか、理事長からトップダウンで高齢者を含むダイバーシティ採用の推進が明確に打ち出されたのが、一連の制度改革のきっかけです。最初に人事課から採用と育成の業務を切り出して採用戦略課(現:人財開発課)を創設し、これが大きな転機となりました。
Q.どのように制度改善を進めていきましたか。
まず、採用に当たって求人票の見直しを行いました。これまでは正規職員を中心にシフトを組み、空いている時間帯の求人を出していましたが、それでは人が集まりませんでした。そこで非正規職員の希望を中心にシフトを組み、シフトを組みきれないところを正規職員が補う形に変更しました。正規職員の勤務時間が不規則になるのは、採用の際に確認の上で雇用契約をしていますが、そうはいっても例えば、夜勤が多くなると不満も出てくるものです。そのため介護職員等処遇改善加算を有効に活用し、夜勤をしたらプラスの加算を行い、夜勤をしたら収入があがる仕組みを導入しました。このような取組みを現場の管理者と相談しながら、2019(令和元)年から6~7年かけて変更を行ってきました。
当初は現場から疑問の声も上がりましたが、多様な人材の採用によって私たちの事業が成り立つといった方針を強く掲げ、根気強く説明と、育成の依頼を続けました。
Q.高齢職員の採用はどのように進めたのですか。
無資格未経験の方を大歓迎しているため、高齢者をはじめ、外国人の方やひとり親の方など就職が難しいとされる方々をハローワークから紹介いただいています。
当施設では利用者である知的障害者への支援が主な業務になります。特殊な業務であるため、入職前に実際の現場を見てもらい、当施設での仕事を直接自分自身で理解してもらったうえで、働いてもらうことにしています。その後も、OJTを中心とした育成体制のもと、育成担当者を選任して時間をかけて研修を行っています。
Q.介護助手の導入にあたって。
採用方法を見直した際、直接支援をする職員と間接支援をする職員に分ける考え方を導入しました。それまでは直接支援の合間に間接支援の業務も行っていたのですが、各事業所に業務分析をしてもらい、業務の棚卸を行いました。その結果、「介護助手マニュアル」作成に至り現在活用しています。
Q.資格取得のためのサポートはありますか。
介護福祉士資格を取得するための実務者研修の場を提供したり、研修を担ってくれる学校と連携したりして資格取得のサポートをしています。また、学校の単位が必要となる資格については、愛知県の専門学校と、当施設で実習の受け入れを優先的に行う代わりに通信教育のコースへの入学や国家試験対策の口座受講への便宜を図ってもらう、といった形のパートナーシップ協定を結び、資格取得を応援しています。
こうした制度を活用して年間で約10名の方が資格取得をされています。その中には70代で介護福祉士の資格を取得された方もいます。資格を取得された方には全体職員会議の場で紹介させていただき、お祝い金を支給しています。
Q.高齢職員を雇用して変わったことはありますか。
高齢職員は、前職が福祉と関係ない様々なところからいらっしゃいます。そうした方々の経験が当施設の中で生きてきています。例えば、製造業で品質のセクションを担当されていた方からは、それまではなかった「食事支援のマニュアル」整備のためのアドバイスをいただきました。そのようなことが毎日のように自然発生的に現場で行われるので、当初、採用が高齢者ばかりであることに不満を漏らしていた管理職や現場職員も、現在では年齢のことを一切口にしなくなりました。
これは高齢職員一人ひとりが勝ち取った権利だと考えています。こうした高齢職員は今や当施設にとって、なくてはならない存在となっています。
人事管理制度の概要
正規職員は2013(平成25)年に定年年齢を60歳から65歳に引き上げている。定年後は70歳まで非正規職員として再雇用している。70歳以上は1年ごとの更新となり、一定の条件のもと年齢の制限なく再雇用している。
■賃金制度
定年前の正規職員の給与は、基本給、役職手当、資格手当などから構成される。支給形態は日給、もしくは月給で、年1回の昇給がある。賞与は職員各人の職務能力および役割などに応じて総合的に査定の上決定される。
定年後も給与構成は正規職員と同様であるが、給与の支給形態は時給となる。定年後の昇給は勤務時間に応じて年1回または2年に1回。賞与は勤続年数、週労働時間に応じて支給している。
■評価制度
定年前の正規職員に対しては、年2回、自己評価、1次評価、2次評価の後、法人全体で相対評価を実施している。
定年後の非正規職員への評価制度はないが、年1回、契約更新の時期に所属長と面談を行い、就労時間や日数、健康状態等について話し合いを行っている。
■ハンドブックの作成
働き方をサポートする情報ツールとして、社内ルール、就業規則やキャリア形成、介護と仕事の両立など安心して働ける制度などを3部構成にした冊子を作成し、全職員に配布している。
職員の視点に立って集約されていることから、社内ルールが浸透しやすくなり、職員間のコミュニケーションとしても有効なものとなっている。
高齢従業員戦力化のための工夫
■介護助手制度の導入
トイレ介助や入浴介助といった利用者を直接支援する仕事と、それ以外の周辺業務を主に行う仕事とに業務内容の切り分けを実施し、周辺業務の担い手として介護助手の採用を行っている。
■ICT、DX化の推進
利用者の共有スペースに見守りカメラを設置することで、見回りの負担を低減させたり、職員が常にインカムをつけてスムーズな連携が図れるようにしている。また、グループウェアを用いた情報共有を進めているが、高齢職員で抵抗がある人には紙を用いた方法を併用している。高齢職員の苦手意識のためにICT化、DX化が止まると本末転倒なので、これらは同時並行的に行っている。
健康管理・安全衛生・福利厚生
■健康管理の推進
全職員に対して年に一度、健康診断を実施しており、産業医による受診の促しや、生活指導を直接行う取り組みも行っている。
■腰痛対策
入浴時に車いすから浴槽に移動する際や、ベッドからの移乗の際には、腰に負担がかからないような介護リフトを導入している。
■福利厚生
地域内の民間スポーツクラブと提携し、費用全額を法人が負担し、全職員が利用できる仕組みを整えており、2022(令和4)年以降、健康経営優良法人の認定を受けている。
制度改定の効果と今後の課題
高齢者だけではなく、外国籍の方やひとり親の方、障害者、長らく引きこもられていた方などを積極的に採用してきたことで、全社員の中に「多様性」の意識が醸成されてきており、どのような境遇の方が来られても現場では抵抗なくスムーズな受け入れができるようになっている。
現在は上限年齢を定めず働く意思のある高齢者には年齢にかかわらず雇用を継続している。今後はより一層加齢によって体力の低下した高齢者と家族の意向、健康状態についても配慮しながら、雇用継続について考えざるを得なくなることが、今後の課題である。
出所:70歳雇用推進事例集2026
