株式会社新日東電化
-立地する工業団地の診療所と連携した社員の健康管理を推進-
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業

企業プロフィール
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創業1976(昭和51)年
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本社所在地東京都大田区
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業種無電解ニッケルめっき、光沢錫めっき、ニッケル・ クロムめっき
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事業所数
導入ポイント
- 人材確保が困難のなか、元気で働いているベテラン社員が長く活躍できる環境を整備するため
- 課題は特にない。制度改定に際して社員の聞き取りを行いつつ、問題点を整理しながら準備
- 安心して長く働くことができる環境づくりをしたことで、高齢社員から好意的な意見がみら れた
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従業員の状況従業員数 93人 / 平均年齢 50.6歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 12.9% 65歳以上 15人 16.1%
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定年制度定年年齢 65歳 / 役職定年 なし
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 希望者全員70歳まで、70歳以降は運用により年齢上限なく継続雇用。
同社における関連情報
■企業プロフィール
同社の前身は1976(昭和51)年東京都城南地区で操業していた11社のめっき業者の出資により設立。プリンターの部品、電力量計のスマートメーター、半導体関係や自動車部品など製品の様々な部品のめっき加工で、顧客の多岐にわたるニーズに対応。

■専門家の視点・取組みのポイント
雇用制度改定の背景
Q.制度改定のきっかけは何でしたか。
大きく2つあります。1つは人材確保が困難な状況にあることです。めっき加工業は危険物を取り扱う典型的な3K業種で人材不足が恒常的な課題でした。当社で働いている60代のベテラン社員は元気で、そういう人たちが健康なうちは長く働いてもらいたいと考えました。もう1つは雇用の安定です。旧制度の定年年齢は60歳で継続雇用制度に切り替わると1年契約の嘱託社員となり、賃金水準も見直していました。定年延長することで65歳まで正社員として安心して仕事に専念できますし、65歳以降でも健康で元気であれば長く働くことができるので、社員にとっても会社にとってもwin-winの形になると考えました。そこで、2023(令和5)年4月に就業規則を改正し、正社員の定年年齢を65歳に、希望者全員の継続雇用年齢(再雇用制度)を70歳にそれぞれ5歳引き上げ、70歳以降についても一定の基準を設けていますが、上限年齢がない継続雇用制度を導入しました(図表参照)。
Q.改定で苦労した点は何でしたか。
特に苦労はありませんでした。問題点の1つに定年年齢を何歳に引き上げるかがありました。議論では65歳以外に、63歳、70歳などもありましたが、まずは多くの企業で導入されている65歳にしました。
Q.どのように改正を進めていきましたか。
制度改定の準備は2023(令和5)年に入ってから始めました。管理部長と個別に協議して問題点を整理しながら準備をしました。その際には数名ですが、社員に聞き取りをしました。
Q.改定にあたって社員からの反応は。
社員には定期的に行っている懇談会を用いて定年延長について説明して、社員から意見を聴きました。定年引上げによる賃金等の不利益変更は一切ないので、社員からは反対の意見は特にありませんでした。
Q.制度改定後、どのような効果がありましたか。
ありました。高齢社員からは「働くことで生活のメリハリができた」、「人とのつながりを持つことができた」、「自分の存在価値を持てるようになった」、「身体が動けるうちはぼけない」、「体力を落とさないためにも長く働きたい」など好意的な意見が寄せられ、こうした声により高齢社員のモチベーションが向上したと感じています。
人事管理制度の概要
■定年延長に伴う人事管理制度の対応
今回の雇用制度改定は定年年齢の引き上げを行っただけで、賃金制度や人事評価制度の見直しを原則として行っていない。正社員となる60代前半層の人事管理制度は60歳以前の制度が適用され、役職定年は設けられていない。退職金についても、新定年年齢の65歳まで掛金の積み立てが引き続き行われ、65歳の定年時に支給する対応が行われた。
なお、旧制度のもとで継続雇用に切り替わった60代前半層の高齢社員の正社員への変更は実施していない。
■継続雇用制度
新たな継続雇用制度は65歳の定年到達した社員を対象にした希望者全員の70歳までの規程による再雇用制度と70歳に到達した再雇用者を一定条件の下で継続雇用する再雇用制度である。
希望者全員の70歳までの規程による再雇用制度を例にすると、嘱託社員の雇用形態により、原則として定年前の職域をフルタイム勤務により引き続き担当している。なお、本人の希望により、担当する職域の見直しや負担の軽減、短日・短時間勤務等への変更も行っている。賃金制度について基本給は日給月給制がとられ、その水準は見直されるが、一律ではなく継続雇用後の担当してもらう仕事や役割、能力に応じて個別に決められている。賞与は一律定額が支給されるが、昇給は人事評価に応じて行われ、人事評価は正社員と同じ評価表により行われている。
■時間単位有給制度の導入
これまで1日単位で付与していた年次有給休暇を1年間当たり40時間まで1時間単位で取得できる制度(時間単位有給制度)を2022年9月より導入した。通院や子供の送り迎えなど家庭の事情や個人の都合を抱える社員にとってライフスタイルに合わせて有給休暇を有効に利用できるようになったことで、社員の満足度は高くなっている。
高齢従業員戦力化のための工夫
■「力量評価表」を活用した人材育成
同社は独自に作成した技能の習得状況を把握する「力量評価表」を活用した人材育成を行っている。力量評価表は各製造ラインや各部門に必要な技能を項目立てたもので、年1回5段階による評価が行われる。同社のめっき加工は、加工工程自体はすべて自動化されており、社員はめっき用治具に部品の穴を引っかける作業や、めっき完了後の部品を治具から取り外して専用箱に収納するといった単純化された作業が中心である。そのため、一定の基礎体力や集中力があれば誰もが作業に必要な技能を習得できる。社員が自身の習得している技能が可視化できるとともに、今後の技能を習得することへの動機づけにつながっている。
こうした力量評価表と合わせて、同社は各部門で「グループ教育・訓練計画書」を作成して計画的な研修を行っているほか、製造の各ラインのリーダーや、部門のマネージャーなど、技術の習得が必要な社員に対する中央鍍金工業協同組合主催の「めっき技術基礎講座」の受講や東京都鍍金工業組合の高等職業訓練校への入校の奨励などの知識・技術の習得を奨励している。
■高齢社員の負担に配慮した配置転換等の実施
高齢社員が無理なく長く働き続けることができるように、同社は心身の負荷を軽減した配置転換等を実施する体制をとっている。例えば、製造部門では、体力的な負荷が大きいラインから小さいラインの配置転換をはじめ、清掃業務や検査部門などに異動できるようにしている。また、営業部所属の大型車両を運転しているトラックドライバーは、申し出により本人との面談をしたうえで、フォークリフトでの入出庫業務などの構内作業、製造部への転属ができる運用としている。こうした高齢社員の負担軽減に配慮した、配置転換等を実施することで、高齢社員の仕事意欲の向上が図られ離職防止にもつながっている。
健康管理・安全衛生・福利厚生
■健康管理の推進
同社の工場がある工業団地にある、各企業が分担金を拠出し運営する診療所と連携した社員の健康管理を推進している。例えば、診療所を社員が受診する場合には1回あたり薬代などを含み1,000円としていること、定期
健康診断の結果をもとに生活習慣などのアドバイスや薬の処方などを少額の負担で受けられること、同診療所の医師と産業医の契約を締結しているため社員がメンタルヘルスなどの健康相談を気軽に行える体制としていること等である。持病のある社員にとっては経済的負担が軽減できるとともに、会社にとっても社員が健康で長く戦力として活躍してもらえるので双方にとって好影響となっている。
■安全衛生の取組
めっき加工は毒物・劇物を取り扱うため同社は常に換気を行っているが、夏は冷風機などの熱中症対策、冬はジャンパーなど厚手の服装の寒冷対策が不可欠である。製造部門の作業は肉体的な負荷や危険等を伴うため、安全衛生委員会でのヒヤリハットの情報共有を進め、労働災害の防止に取り組んでいる。一部の工場内の階段の手すりの設置は、安全衛生委員会からの報告がきっかけで行った職場改善である。社員からは安心して階段移動ができるようになったとの意見が寄せられた。
■全社員を対象とした職場懇談会の開催
同社は年3回全社員を対象とした職場懇談会を開催して、会社の経営状態および今後の展望、作業現場における基本動作の徹底、セクハラやパワハラに関する法律の解説や社内相談体制、障害者雇用などについての研修・啓蒙活動、安全やコンプライアンスの遵守など注意喚起を行っている。さらに、職場懇談会で社員から経営に関する質問や職場環境の改善要望などを聴いて、経営に役立てたり、職場環境の改善を実行したりして、社員が働きやすいと感じる職場づくりに力を入れている。職場懇談会を通して社員の意識向上にもつながっている。
今後の課題
少子高齢化が進展するなか、同社はこれまで以上に人材不足が強まると予想しており、働く意欲のある社員がより長く働き続けられるよう、定年年齢や希望者全員継続雇用の上限年齢の引上げを見据えた検討を重ねていく方針をとっている。
出所:70歳雇用推進事例集2026
