釧路スバル自動車株式会社
65歳定年後も正社員として勤務延長が可能 世代を超えて互いに尊重しあう職場を目ざす
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業

企業プロフィール
-
創業1963(昭和38)年
-
本社所在地北海道釧路市
-
業種SUBARUブランドの新車・中古車の販売及び整備
-
事業所数
導入ポイント
- 人財確保が難しい状況下で、元気で勤続意欲の高い高齢従業員に活躍してほしいため、制度 改定に至った
- 制度改定により、長く働かなければならないといったプレッシャーにならないように慎重に 周知説明を行った
- 一方、定年後は1年ごとに契約を更新する勤務延長とし、定年延長でないことを更新時に伝 えていくことで、命を乗せて動く自動車を扱う業務をしていることの緊張感も持ち続けても らえるようにした
- 部門を越えた従業員間の意思疎通を促進することや、キャリア面談シートを活用した従業員と の面談によって、職場風土が改善し、従業員の希望に沿った組織運営ができるようになった
- 離職率が減少し、継続雇用を希望する割合も増加した
-
従業員の状況従業員数 36人(2024年9月1日現在) / 平均年齢 51歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 13.9% 65歳以上 3人 13.9%
-
定年制度定年年齢 65歳 / 役職定年 65歳
-
70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 希望者全員70歳まで継続雇用
同社における関連情報
■企業プロフィール
1963(昭和38)年釧路スバル自動車株式会社設立。地域唯一のSUBARU販売店として、経営理念に「常に感謝の念を忘れず、お客様満足の創造と熱意ある実践を通して共に喜び合える企業を目指す」を掲げている。

■専門家の視点・取組みのポイント
雇用制度改定の背景
Q.お仕事について教えてください。
当社はSUBARUブランドの新車・中古車販売および整備を行っている会社です。従業員の職種としては、販売やアフターフォローを行う営業部門、整備点検、修理、車検業務を担うサービス部門、経理や総務といった事務系業務を担う間接部門の3部門があり、職種間の異動は少なく同じ職種でキャリアを積み上げられる方が多いです。
Q.高齢従業員を活用するに至った経緯を教えてください。
当社は勤続年数が長い従業員が多く、転職してこられてから長く働かれている方も多くいます。入れ替わりも少なく人手確保が難しい状況ですが、勤続意欲は高いため、元気なうちはご活躍いただきたいという思いと、ハローワーク、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の70歳雇用推進プランナーからアドバイスをうけたこともあり、先代が就業規則の改定を行いました。
雇用上限年齢を引き上げても高齢従業員は数年経つとリタイアされます。人員の補充を考えると、前任者と後任者で1年ぐらいかぶるような形で継承できるように高齢従業員の採用も随時行っています。
高齢者を含めた全従業員にとっての職場環境を整えていかないと、組織がガタガタと崩れてしまいます。
Q.制度改定の進め方について教えてください。
長く働けるための制度改定については、従業員からは前向きな意見が多かったのですが、一方で親の介護や老後設計のため早期リタイアを検討している従業員もいました。そのため無理に70歳まで働かなくてはならないというプレッシャーとならないように、制度の周知説明は慎重に行いました。
また、人の命を乗せて走る自動車を扱う以上、業務遂行の正確性は重要です。70歳までの雇用制度を導入するにあたって、65歳から70歳までは1年ごとの勤務延長であって定年延長ではないことを毎年伝えていくことで、業務に対して緊張感を持ち続けてもらえるよう働きかけを行っています。
Q.経営にもたらした効果について教えてください。
働きやすい職場環境に向けた取り組みを進めた成果として、従業員の職場定着率が高くなり、継続雇用を望む者も増えてきました。従業員満足が高まれば、職場にいい人財が入り、継続して働いてもらえます。また、いきいきと働いていると、お客様にも伝わり、顧客満足度にも影響します。その結果業績が向上し、設備投資やさらなる処遇改善につながります。しかしこれは従業員の協力がないとなしえないことです。今後も「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」を理念として、働きやすい職場環境を作っていきたいと考えています。
Q.地域との関わりについて教えてください。
以前の60歳と今の60歳の方とでは、全然違いますし、働く意欲がある方が多いです。元気だけど家でのんびりして、年金をもらうだけではなく、社会に参加するっていう形は非常にいいことだと思います。釧路はもともと製紙業が盛んで炭鉱の街でしたが、それら主要産業が縮小し地域の活力がどんどん下がっています。年金生活で消費活動が活発にならない状況ですと、今後ますます衰退していきます。仕事がフィットする限り、年齢にかかわらず働きたいという方は、ぜひ一緒にやれたらと思います。年金をもらいつつ、自分でも給料を稼ぎ少しでも生活が豊かになって消費活動がよくなれば、地域にとっても良いことだと思っています。
~従業員にお話しを伺いました~
Q.定年が60歳から65歳になって、変化を感じられますか。
60歳で定年になったら、パートの職を探すことを考えていましたが、65歳まで働けることになり、65歳の定年を過ぎても、そのまま働き続けられる制度があるので、身体の健康に気をつけつつ、頭の回転も下がらないように頑張ろうと思っています。
人事管理制度の概要
■賃金制度
賃金は基本給と各種手当で構成している。決定方法は年間の業務遂行状況に応じて個別に決定する。65歳で役職定年となるので役職手当分の賃金は下がるが、それ以外の賃金構成や決定方法は、定年後、勤務延長となった場合でも同じである。昇給、賞与支給は勤務延長後も継続される。また、利益が上がった際には、決算後に決算手当などで従業員に還元している。
■評価制度
面談は現社長の前職である生命保険会社での経験を生かしたキャリア面談シートを用いて年2回社長と1対1で実施している。結果は基本給の昇給や職位の昇格に反映される。そのほか、業務上で困っていることや本人の健康、介護や育児などの家族に対する留意点などについても聞いている。こうした個々人の働き方に対する希望を生かし、可能な範囲で適材適所での人財活用を行っている。
■従業員満足度調査の実施
同社は「社員満足度(ES)の向上なくして顧客満足度(CS)の向上なし」を掲げ、2021(令和3)年から、年2回の従業員満足度調査を実施、無記名のアンケートのため、従業員の本音を引き出しやすく、課題のあぶり出しや解決した課題に対する測定・検証ができる。
年代別・項目別に詳細な項目も把握できる仕組みとなっており、シニア世代固有の課題把握・解決に役立てている。この結果を経営に活かしていくことで従業員の定着を図るとともに、新しい優秀な人財の採用、更なるサービスレベルの向上を目指している。
一例としては本データを活用し、シニア従業員・若手従業員の意見を取り入れながら、年間の休日数などに反映をさせている。
高齢従業員戦力化のための工夫
■「ありがとうカード」の掲示
ありがとうカードは、社内の掲示板に専用のカードとボールペンを備え付け、従業員が同僚に助けられたり、感謝したいときにカードにメッセージを書いて張り出せるようにした取り組みのこと。もともと職種ごとに執務場所が異なるため、何気ない気遣いなどは共有されづらい。そこでメッセージ形式で社内掲示することで従業員同士の良い取り組みの「見える化」を行った。
■ペア就労と資格取得
高齢者と若手のペア作業によって体力面の補完と技能継承を実施している。整備業務では、経験に基づくアドバイスが重視され、その都度における対応で技能継承が行われている。資格取得支援では、会社が費用を負担し、勤務時間中の学習も認め、試験対策として資格保有者が教えることもある。
健康管理・安全衛生・福利厚生
■健康診断の2次検診の受診推奨
全従業員を対象に健康診断を実施しており、その結果、要再受診となった場合には2次検診の受診を推奨している。会社方針として従業員の健康維持に対する考えを示し、同時に業務上の配慮を行うことで、受診への抵抗を減らし、重症化の未然防止に努めている。
■職場改善
視力が低下した従業員から、ノートPCの画面が小さくキーボードも打ちづらいとの声を受け、外付けのモニターやキーボード、マウスを設置し、作業環境の改善を行った。
また整備工場の照明が弱いことに対して改善の要望があり、可動式の照明機器の導入を行っている。そのほか、冬場は外気温がマイナス10度以下にまでなるため、熱効率の高い暖房機器を導入するとともに、ビニールカーテンを設置するなどの対策を取り、室内温度の維持や無駄の少ない暖房といった効果につながっている。
一方、夏場の暑さ対策に関しては、大型扇風機を導入しており、これまではそれでしのげていた。夏場に冷房が必要になるのは年に2週間程度。今後、さらに異常な暑さが続くような状況になればスポットクーラーの導入も検討している。
地域との関わり
■地域清掃と雪かき
お世話になっている地域への貢献として、春から秋までは週に一度、近隣500メートル四方の範囲の掃除を行っており、10年以上継続している。掃除は2人ペアで担当エリアが割り当てられており、世代間のコミュニケーションの促進につながるほか、デスクワークが多い従業員にとっては運動の機会にもなっている。冬場は全従業員総出で雪かきを行っている。
今後の課題
自動車ディーラーの仕事は土日が稼ぎ時であり、若い従業員からは「週末に休みたい」、高齢従業員からは、「親の介護で平日利用している公的サービスが日曜日は休みなので何とかしたい」という声が上がっている。そうした要望に対して、日曜を休みとする準社員のような制度導入を検討している。勤務日数が減るため、給与は減少するものの、家族との生活を重視する志向や、年金をもらいながらの働き方など、多様な働き方をサポートすることにつながるような仕組みにしたい。
出所:70歳雇用推進事例集2026
