イオンリテール株式会社
雇用区分や年齢を問わず能力や意欲に応じた挑戦ができる就業環境を整備
- 70歳以上まで働ける企業

企業プロフィール
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創業2008年
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本社所在地千葉県千葉市
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業種卸売業・小売業
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事業所数367店舗(2024年2月現在)
導入ポイント
- 定年到達後、正社員としての再雇用区分「エルダー社員」を創設
- 定年再雇用後であっても担う役割が変わらなければ処遇も均等均衡を確保
- 店舗スタッフは定年以降も役職登用
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従業員の状況従業員数 73,317人(2024年2月末現在)
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定年制度定年年齢 65歳
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有
同社における関連情報
企業概要
イオンリテール株式会社は、衣料、食料、住居余暇、ヘルス&ビューティケアを扱う、総合小売業を展開し、本州、四国で約370店舗を運営している。
従業員数は約11万人、うち、正社員が約2万3千人(20%)、パートなどの時間給社員が約9万3千人(80%)の構成となっている。従業員の平均年齢は44歳、従業員のうち、65歳以上の者の割合は11%である。
65歳以上の人事制度の見直しの背景
今後は定年退職者の人数が増えていくことから、定年退職に伴うポスト確保について、考えていかないといけない段階に至り、2023年に65歳以上の人事制度について見直しを行った。
制度見直しの内容
■定年再雇用等の具体的な内容
定年後の再雇用制度について、これまでの制度は、定年(65歳)時の雇用区分(正社員・時間給社員)に関わらず、GGパートナー(これまで培った知識や経験をもとに商品・サービスを提供し、販売・オペレーション業務に従事する時間給社員)または、GGエキスパート(会社指定の社外資格・社内認定スキルを持ち「免許」による専門知識・技術を発揮する時間給社員)として全員時間給での再雇用となっていた。
新制度では65歳の定年到達後もフルタイムの正社員として働くことができる再雇用(エルダー社員)制度を導入。エルダー社員は、仕事そのものの難易度や責任の重さが等級ごとに設定され、担う役割・職位に応じて資格が定まる役割等級制度としており、同一等級であれば、65歳到達時と再雇用後の月例給与は同水準、賞与も支給される。また、定年後も店舗リーダー・店舗マネージャー・課長・店長クラスとして勤務できるよう店舗における職位登用を行うこととしている。

エルダー社員の等級・配置については、店舗と本部スタッフで分けており、店舗については、店舗リーダー以上の再雇用を積極的に行い、シニア社員のポストを確保していく考え。一方、スタッフについては、次世代の育成やポストが滞留することから、高いスキルを保有したスペシャリスト(バイヤー等)に限定し65歳以上の再雇用をすることとしている。
エルダー社員については、1年契約ごとに見直し、職位・役割が変われば資格・処遇も変わる制度としている(基本は本人の職務経験、能力、意向等を考慮して、定年前と同じ職務に従事し、現役社員のサポートに回ることが多い)。転居・転勤については、店舗勤務の場合は、全国転勤・エリア限定(NRL区分:National, Regional, Local)を選択でき、スタッフ勤務の場合は勤務場所が限定されるため、原則エリア限定(L区分)として勤務している。
さらに、これまで、70歳以降の雇用は特定スキルの保有者のみ(鮮魚士・薬剤師)再雇用をしていたが、広く店舗全体で知識や経験のあるシニアに活躍していただけるよう制度を見直した。70歳までであった時間給社員(GGパートナー、GGエキスパート)の上に、70歳以上75歳までの再雇用(シニアGGパートナー・シニアGGエキスパート)制度を導入している。
■エルダー社員の役職登用の取組
旧制度では定年65歳以降、正社員の再雇用は一律、時間給社員に移行していたが、エルダー社員制度(役割等級制度)の導入により、定年後も店舗リーダー・店舗マネージャー・課長・店長クラスとして勤務できるよう職位登用を行うこととしたため、次世代の育成上、本部の部長職等の一部ポストを除いては、定年到達後も役職登用がなされている。
■賃金形態・人事評価
定年後の再雇用においては、定年退職予定日の3か月から半年前(その前の段階でもアンケートはとるが、直前でないと本人の意向は把握しにくい)の段階で定年退職予定者全員に再雇用に関する希望を確認するためアンケートをとっている。エルダー社員制度導入前の雇用継続率は69%、導入後は85%に上がり、そのうち約6割がフルタイムの社員としての雇用継続を希望。経済的な側面(年金、退職金では老後の生活に不安)や仕事のやりがいや生きがい等から継続雇用を希望する者が多い。
社員として継続雇用を希望する者は、現在の職務・職位を希望している方が大半を占めるが、スタッフの場合は、ポストが限定されるとともに、次世代の育成もあるため、必要な部署や必要なスキルをあらかじめ整理しておき、代替部署の提案や再雇用後のポストに納得してもらえるよう面談等で調整も行っている。
人事制度見直しの効果
65歳以降正社員としての再雇用(エルダー社員)制度の導入については、定年退職者が年間400人の中、約6割がフルタイムのエルダー社員として雇用を継続できるため、人手不足による採用難の中、即戦力の確保に大きく貢献している。また、65歳以降も正社員として勤務できる道ができたため、時間給社員にはなりたくない、正社員の立場で働きたいとのシニア社員の雇用形態のプライオリティを満たし、モチベーションの向上(職位をそのまま能力発揮)と熟練スキルの発揮にも寄与している。さらに、エルダー社員が現役社員の職務をサポートすることで、その間、計画的な若手育成に時間を割けることから、組織の活性化を図ることにも繋がっている。
70歳以降の時間給社員の再雇用(シニアGGパートナー、シニアGGエキスパート)制度の導入により、会社の戦略上重点を置く店舗の運営にあたっては、豊富な現場経験とスキルをもつ人材の確保に貢献している(店舗の顧客は、エルダー社員、シニアGGと同年代のシニア層が多いため、シニア社員の活躍は店舗運営にもプラスの影響をもたらしている)。また、年齢を問わない多様な働き方・ダイバーシティ経営の実践や、将来の定年制廃止に向けたステップとして、シニア社員の働き方の検証も可能としている。
今後の課題
今後の方向性としては、70歳定年への引き上げ、さらには定年制の廃止など、定年制度のあり方を見直したい意向。その場合、一律、70歳定年制ではなく65歳を一つの節目とし、以降は毎年社員自らが定年を決めることが出来る制度(選択定年制)の導入や、65歳以降は完全に役割等級制度へスイッチする、等を考えている。
また、課題としては、安全・安心な職場環境づくりによる労働災害の防止、削減、健康経営の取組みによる組織の活性化・労働生産性の向上等をあげている。