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太陽生命保険株式会社

企業ブランドを意識し、シニア職員が意欲的に働ける制度を整備

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善

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太陽生命保険株式会社 のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1893年
  • 本社所在地
    東京都中央区
  • 業種
    保険業
  • 事業所数
    143支社・6営業所(2024年3月末現在)

導入ポイント

  • 大手生命保険会社で初(*)となる65歳定年制および70歳まで働ける継続雇用制度を導入、役職定年を廃止
  • 年齢に応じた一律の処遇引き下げを廃止
  • 「太陽の元気プロジェクト」の一環として、両立支援制度を充実
  • 従業員の状況
    従業員数 内勤職員2,380名、営業職員9,319名(2024年3月末) / 平均年齢 44.42歳 / 60 歳以上の割合 9.62%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 就業規則等により、一定の条件のもと70歳まで雇用
2024年03月31日 現在

同社における関連情報

企業概要

太陽生命保険株式会社は、女性、中高年齢層を中心とした家庭向けの商品・サービスを得意とする生命保険会社で、認知症保険「ひまわり認知症治療保険」などシニアマーケットを意識した新商品の開発等を行うとともに、顧客宅を訪問し給付金等の手続きをサポートする「かけつけ隊サービス」、シニアの顧客宅を年1回訪問する「シニア訪問サービス」など、特色ある取り組みを行っている。

営業拠点は全国に143支社・6営業所があり、従業員数は内勤職員が2,380名、営業職員が9,319名の計11,699名(2024年3月末時点)となっている。また、内勤職員の年齢構成は60歳未満2,151名(90.38%)、60歳代前半214名(8.99%)、同後半14名(0.59%)、70歳以上1名(0.04%)、平均年齢は44.42歳である。

2016年6月より、人生100歳時代を見据え、健康寿命の延伸という社会的課題に応えるために、「太陽の元気プロジェクト」を開始し、従業員、お客様、社会のすべてを元気にするための様々な取組を推進している。なかでも、従業員を元気にする取組を推進するインナー部会においては、人事制度や処遇の改定等に取り組んでいる。

(参考)太陽の元気プロジェクト

制度見直しの背景

健康寿命が延伸したこと等に伴う従業員の晩婚化や晩産化、政府が進める施策の流れ(65歳までの雇用確保措置の義務化や公的年金の支給開始年齢の引き上げ等)、社員の年齢構成の歪み(バブル期採用の社員が多く、就職氷河期世代やリーマンショック期における新規採用が少ないこと等)を背景に、シニアマーケットのトップブランドの構築を目指す生命保険会社としてシニア職員が意欲的に働ける制度の導入を検討した。

(参考)人事制度(65歳定年制度導入)の背景

制度見直しの内容

2014年の改定では、上位職登用および成果発揮へのモチベーションを高めるために、年功的な賃金体系から、成果給や職位手当の比重を上げることで、より成果を反映しやすい給与制度にした。

2017年の改定では、大手生命保険会社で初(*)となる65歳定年制および70歳まで働ける継続雇用制度を導入するとともに、57歳での役職定年制と、特別職員制度(非役職者も役職定年者と同様に処遇を引き下げる制度)を廃止した。(改定以前は、57歳役職定年のうえ特別職員になった後、60歳で定年退職し、65歳までの継続雇用になる制度。)

2017年の新制度では、新入社員から 65 歳定年まで同一の人事・給与制度を適用することにより、57 歳から 65 歳まで段階的に処遇を引き下げていた旧制度と比べて、社員の生涯賃金が平均 15%以上増加した。同時に退職金・年金制度の改定も実施した。従来は 60 歳で退職一時金を支給していたが、65 歳定年制の導入に伴い、60 歳時点の退職金原資を据え置き、65 歳定年時に支給する仕組みとしている。また、60 歳から支給していた退職年金についても、支給開始年齢を65 歳へ変更し、支給金額は旧制度と同額に設定した。

2020年改定では、メリハリのある人事運用の実現に向けて、給与体系について、固定部分である資格給を縮小した一方、成果給や職位手当といった変動部分を拡大したことで、成果の反映や管理職登用へのインセンティブがより働く給与体系に変更した。あわせて、人事評価を処遇へ反映する比率(評価乗率)の引上げも行い、より成果を反映しやすい処遇を実現し、社員のモチベーションの向上を図った。

65歳定年制度の導入および役職定年の廃止により、メリハリのある人事運用として、適正な管理職人数のコントロールと管理職登用の早期化の観点から、管理職に求められる能力認定要件を見直すとともに、降格要件を厳格運用して管理職で居続けることを保障しないようにした。そのため、従来の役職定年の対象であった58歳以降の者についても人事評価の項目・評価基準を明確化・厳格化して、管理職登用や昇格・降格を機動的に実施している。

新制度の導入によって、若手からシニアまで年齢に関わらず全ての社員が、今まで以上に高い意欲で元気に能力や成果を発揮できるよう、制度の導入趣旨・内容や会社の社員に対する期待等について、十分な周知期間を設けたうえで、全従業員に丁寧に周知した。
 
2016年に立ち上げた「太陽の元気プロジェクト」を通じて、人事諸制度の改定をはじめ、様々な施策の企画立案および推進を行っている。65 歳定年制の導入によって、より長く働ける環境が整備されたことから、仕事や介護、育児との両立を支援できるよう、「両立支援制度」の拡充と社員の健康増進に関する様々な取組みを実施した。

(参考)人事諸制度改定の概要
(参考)処遇イメージ

制度見直しの工夫

65歳定年制を確実に運用していくためには、メリハリのある人事運用の実現が不可欠であり、2020 年 4 月には給与テーブルと評価制度を改定した。

人事部と労働組合でWLB協議会を月1回開催しており、職員訪問で聞きとった声や他の会社の訪問を通じて得たよい取り組みを報告してもらっている。

これからシニアになる職員のキャリア支援のサポートとして、シニア職員のロールモデルやどのようなモチベーションで働いているかを社内報で紹介している。また、現場(支社・営業所)を離れて時間が経っている50歳以降の者を対象に、現場に戻るための研修を行っている。

制度見直しの影響・効果

新制度の導入により、57 歳から 65 歳まで段階的に処遇を引き下げていた旧制度と比べて、社員の生涯賃金が平均 15%以上増加した。シニア社員からは「退職後の生活資金の確保につながっている」との声があり、若手・中堅の社員からも「業務のやりがいや将来の生活の安心感がもてる」と評価されており、多くの社員のモチベーションと生産性が向上していると考えている。

58歳以上となっても役職者として働き、60歳で退職する者が減少、意欲的に働く中高年層の職員が増えるとともに、若手職員の早期の管理職登用などメリハリのある人事制度を実現することで、職員間の競争意識は高まり、組織の活性化や組織全体の底上げにも繋がったと感じている。

シニア社員はこれまでの業務経験を活かした折衝力に秀でており、全体を俯瞰できるとの考えから、お客様相談窓口や内部監査、リスク管理、コンプライアンス関連、営業職員の募集・管理業務等での活躍を期待しながら、できるだけ業務を固定化しないよう人事ローテーションを実施して、シニア社員の活性化を図っている。

人事制度改定にあたっては、労働組合との十分な協議・交渉を重ね、説明会等を通じて社内における十分な理解・納得を得ながら、制度導入に至った。

今後について

事諸制度の改定により、60 歳前に退職する社員が大幅に減少し、前向きに長く働く社員が増えたと実感している。そのような中、今後、制度を安定的に運用していく上での課題として、「シニア社員の活躍推進」と「メリハリのある人事運用」の2点を挙げている。

1点目の「シニア社員の活躍推進」については、シニア社員への適切な役割付与が重要と考えている。シニア社員に共通する特徴として、これまでの業務経験を活かした折衝力や会社全体を俯瞰できることがあると考えている。本社勤務の場合はお客様相談窓口や内部監査、リスク管理、コンプライアンス関連、支社勤務の場合はお客様サービス業務や営業職員の募集・管理業務での活躍を期待しながら、シニア社員の活性化を図っている。また、最新の知識や技術を身に付けるために必要なリスキリングの機会についても、今後さらなる充実を検討している。

2点目の「メリハリある人事運用」については、適切な処遇・評価が重要である。今後数年間で、バブル世代の社員がシニア社員となり、シニア層が大幅に増加する。様々な経験を積んできたシニア社員と若手社員の間に様々なギャップがあることを踏まえ、資格に応じた適切なコンピテンシーを設定し、会社と社員あるいは社員同士が納得できる、きめ細かい評価制度を導入していく必要があると考えている。社員の多様な価値観を理解するとともに、社員一人ひとりの状況に応じたきめ細やかな運用を行うことに重点を置き、人事諸制度の安定的な運用と必要な制度改定を適宜図っていく。

(*) 最長70歳まで働くことを可能とした継続雇用制度を導入するのは、大手生命保険会社において初となる。(国内大手生命保険会社 9 社について、太陽生命保険株式会社調べ(2016年 12 月末時点))

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