三菱UFJ信託銀行株式会社
シニア活躍層を対象として、職務定義書を作成し、対象者の保有スキル、および具体的職務アサインメントと処遇との連動性を高めたシニアジョブコースを設置
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫

企業プロフィール
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創業1927年
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本社所在地東京都千代田区
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業種金融業
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事業所数国内51、海外5
導入ポイント
- 60歳定年後再雇用制度の中にシニアジョブコースを設置。
- 職務定義書の作成を通じた上司とのすり合わせにより、職務領域の特定化・明文化と上司の支援内容の共有を実施。
- ミッションと処遇の連動性を高める仕組みを通じて、長年培ってきたスキル・ノウハウの活用とブラッシュアップにより、更なる活躍領域の拡大を図る。
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従業員の状況従業員数 6,283人(2024年3月末) / 平均年齢 43.8歳 / 60 歳以上の割合 ー
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定年制度定年年齢 60歳
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70歳以上継続雇用制制度の有無 無
同社における関連情報
企業概要
三菱UFJ信託銀行株式会社は、三菱UFJフィナンシャル・グループの信託銀行。「安心・豊かな社会」を創り出す信託銀行というコーポレートメッセージを掲げ、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」の一翼を担う企業として、新しい信託銀行ビジネスの創造にチャレンジしている。
従業員は連結14,478人、単体6,283人(2024年3月末現在)。平均年齢43.8歳。
年齢構成は50歳代中頃が多く、40歳代は少なくなっている。2024年4月時点で60歳以上の継続再雇用社員は約500人程度であるが、今後バブル期の大量採用世代が年齢を重ねる2030年頃には60歳以上の社員が800人程度になる見込み。
シニアジョブコース導入の背景
定年は60歳としており、定年後は65歳までの再雇用制度を設けている。
後任等の状況により、55歳以降の任意のタイミングで管理職ポストはオフされ、プレーヤーとして、またはグループ会社のマネジメントとして業務に貢献していく。今までの知見や経験を活かしプレーヤーとして活躍する例が増えてきている。
給与体系は職務給と職能給の組み合わせになっており、ポストオフ後は部長職や課長職などからエキスパートという職位に代わり、これに対応した職務給に切り替わるが、評定により職務給は増減する。
60歳定年後は継続雇用嘱託(パートナー嘱託)として再雇用となる。パートナー嘱託は1年ごとの契約更新で、約9割の社員が再雇用を選択している。信託業務は経験と知見が必要とされる専門性の高い業務が多く、シニア社員が長年培ってきた経験やスキル・ノウハウを発揮する上では、親和性が高い業務である。
定年後60歳以降の給与については、定年前の社員とは異なる給与テーブルが適用されるが、活躍に応じて、昇給もある仕組みとなっている。
シニア社員の割合が増加する中、活躍領域を拡大しているパートナー嘱託も増えてきていることから、対象者の保有スキルや具体的な職務アサインメントと、処遇との連動性を高めた「シニアジョブコース」を導入し、シニア社員の処遇への満足度を高めている。
シニアジョブコースの内容
2023年4月に60歳定年後のパートナー嘱託に対し、「シニアジョブコース」を新たに導入した。2023年4月時点で70人程度のパートナー嘱託に先行して導入しており、半年毎の認定タイミングで順次拡大していき、2024年4月時点では、パートナー嘱託のうち約55%をシニアジョブに認定している。

シニアジョブの対象者は、高い専門性により業務貢献する人、総合的な知見により組織影響力を発揮する人、組織運営上欠かせない実務の中核を担っている人等である。定年前の役職に関わらず、幅広い業務領域で、組織運営や課題遂行の実務を支える人を認定しており、その業務範囲は、相続、年金、不動産、証券代行、資産運用、システム開発及び運用等や事務の要になる人物等、多岐に渡っている。
「シニアジョブコース」では、対象者ごとに作成する職務定義書により、当該シニアのジョブミッションの明確化・具体化を行うこととなる。その作成過程における上司と当該シニアとのすり合わせを通じて、求められるノウハウとその活かし方、そのために必要なブラッシュアップと上司の支援内容も明確化し共有する。
シニアジョブ対象者の給与は、職能給ではなく、職務の内容により定例給与を決定する職務給となる。シニアジョブ対象者に認定されると処遇は、年50万円~100万円程度アップする。
シニアジョブコース導入の工夫
処遇面のみならず、研修や面接も重視している。50歳代の社員に対し、自身のキャリアやライフプランを考える研修を実施し、定年後の充実したライフプランやキャリア形成への気づきを醸成し、研修後のキャリア面接においては行動促進へのアドバイス等を提供している。また年上のシニア社員を部下に持つ管理職がマネジメントでの上司と部下の双方の心の壁を知り、マネジメントの勘所のヒントを学ぶ、シニアマネジメント研修などを管理職向けに実施するとともに、シニアとの面談ポイント集を管理職向けに提供する等、いわゆる年下上司と年上部下の円滑かつ積極的なコミュニケーションを支援している。
シニアジョブコース導入の効果
シニアジョブコース導入に伴い、職務を明確化し、その業務の拡大や変化に前向きに取り組み、組織、業務貢献を高めている事例が増加しており、当該事例はシニアジョブに認定されていないパートナー嘱託においても波及している。またシニアジョブコース導入に伴い、各部店でのシニア社員に対するコミュニケーションは増えており、実務の担い手としてのパートナー嘱託への期待は増加している。上司の意識も変わってきており、シニアジョブの仕組みを活用し、組織の課題や環境変化に対応した職務を具体的に定め、シニア社員による組織貢献を実現している事例も増えている。
制度導入から1年程度であり、引き続き、シニア社員がいきいきと活躍できるよう制度、運営両面から充実を図っていく。