オムロン株式会社
ジョブ型人事制度を土台にしたシニア社員処遇制度
- 70歳以上まで働ける企業

企業プロフィール
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創業1933年
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本社所在地京都府京都市
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業種製造業
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事業所数国内主要10事業所 (2023年3月末時点)
導入ポイント
- 主体的なキャリア成長行動に軸をおき、全社的にジョブ型人事制度を導入
- シニア社員についても、定年後再雇用を役割・成果に基づく処遇に見直し
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従業員の状況従業員数 28,034人(国内:9,988人 海外:18,046人) (2023年3月末時点) / 平均年齢 46.2歳 / 60 歳以上の割合 8.5%
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定年制度定年年齢 60歳
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 65歳までは希望者全員を継続雇用、65歳以降は、一定の条件のもと70歳まで雇用
同社における関連情報
企業概要
オムロン株式会社は、オートメーションのリーディングカンパニーとして、工場の自動化を中心とした制御機器、電子部品、駅の自動改札機や太陽光発電用パワーコンディショナーなどの社会システム、ヘルスケアなど多岐にわたる事業を展開している。
国内従業員は11,400名(正社員9,920名、嘱託社員・パート1,480名)、年齢構成は60歳未満10,430名、60歳代前半870名、同後半100名、平均年齢は46.2歳である。(2024年4月現在)
ジョブ型人事制度・シニア社員処遇制度導入の背景
SF(Shaping the Future)として、長期ビジョンを定めているが、その中でシニア社員に限らず人財マネジメントの変革を打ち出している。「主体的なキャリア成長行動」という方向性であり、これまでは、会社と社員の関係が、会社から仕事も教育も与えられる、といった関係だったものを、これからは、社員が主体的に仕事や教育に取り組むことを会社で支援することとしている。その取組の一環として、ジョブ型人事制度への移行に取り組んできたが、2023年度に完了したところである。
60歳以上のシニア社員に関しては、以前から定年後の再雇用制度を導入していたが、役割や期待を明確には定めておらず、65歳までの雇用を確保する義務的要素が強かった。しかし人財マネジメント変革の一環として、2020年にシニア社員処遇制度を抜本的に見直した。また、2021年から同一労働同一賃金に関する改正パートタイム・有期雇用労働法が全面施行されたことも契機となった。
ジョブ型人事制度・シニア社員処遇制度の内容
主査(非管理職の係長級)よりも下位の一般職には職能給を適用しているが、それ以降は基本的には年齢にかかわらず全社員を対象にポストに基づくグレードに応じた職務給を採用している。それぞれのジョブの役割責任に応じてグレードが設定されており、役割責任が変わればグレードも上下する仕組みである。
シニア社員についても職務給100%だが、同じグレードの正社員と比較すると、企業年金の受給権が発生するため、報酬水準は75~70%としている。
賃金テーブルはグレードに応じた設定としている。正社員はOG(オムロングレード)、シニア社員はSG(シニアグレード)により格付けを行っており、OGとSGの同じグレードには同じ職務を担ってもらっている。
評価は目標管理と行動評価による「総合評価」を処遇に反映する仕組みである。評価は5段階で行い1ピッチ2万5千円。一般的な主査の月給は40万円程度だが、評価によって上下5万円の変動がある。賞与もすべてグレードに応じて支給している。


役職定年制は廃止したが、組織の新陳代謝は必要であり、運用として、定年後の再雇用時にはポストを後進に譲っていくことにしている。
例外的に、余人をもって代えがたい人材の場合は経営基幹職(管理職(マネージャー)及びスペシャリスト)を継続する場合もある。その場合、本人が手を上げるのではなく会社からオファーを行うこととしている。
定年後の再雇用は9割近い社員が希望する。希望しない者の理由は起業したり、NPOに関わったり、引退したり、雇用条件が合意に至らなかったりと様々である。
ジョブ型人事制度・シニア社員処遇制度の導入に当たっての工夫
定年後の再雇用に伴い、経営基幹職を外れることになるが、その後のポストについては、本人の希望を聞き、職務評価をした上で、適切なグレードに格付けし、一般職としての職務を担ってもらうこととしている。また、配置に関しては公募・応募制度(※)を導入しており、本人が手を上げることもあれば、人事部門が配置を決定することもある。
※ 公募とは、各部門の求人に対し「手上げによる異動」ができる制度。応募とは、自らを各部門に売込みチャレンジ機会を作ることができる制度。
ジョブ型人事制度・シニア社員処遇制度の導入の効果等
制度導入から日が浅いため評価しづらいが、大きな問題は生じていない。
「役割・成果による処遇」を基本コンセプトとして、人事制度全般を一貫性ある形で変革し、今後の会社と社員の成長に向けたハード面のインフラの整備はほぼ完了している。一方、新たな制度の浸透・定着により社員の行動・思考の変革につなげていくことが今後の課題であり、制度趣旨に則した運用徹底に取り組んでいく。