株式会社アールビーサポート
-「生涯現役」を叶えるための労働環境づくりと手厚い福利厚生-
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業
- 上限年齢なしの継続雇用(基準あり)
- 多様な勤務形態
- 賃金・評価制度改定
- 健康管理

企業プロフィール
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創業1999(平成11)年
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本社所在地三重県津市
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業種社会保険・社会福祉・介護事業
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事業所数
導入ポイント
- 「自分の年齢は自分で決めるべき」という方針の下、定年66歳、継続雇用70歳
- 待遇や福利厚生を充実させ、年齢で仕事内容や賃金に差をつけない制度を整備
- 最新の介護機器等を導入して職員の負担を軽減し生産性を向上
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従業員の状況従業員数 144人 / 平均年齢 45.5歳 / 60 歳以上の割合 16.7%(24人)
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定年制度定年年齢 66歳 / 役職定年 60歳
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 定年66歳。希望者全員70歳まで継続雇用。その後は一定の条件のもと年齢の上限なく継続雇用。
同社における関連情報
企業概要
株式会社アールビーサポートは、1997(平成9)年に開設した医療法人府洲会に属している。同社は、1999(平成11)年に設立され、老人介護サービスの提供を通じて地域に貢献してきたが、2000(平成12)年の介護保険制度施行にともなって在宅における通所・訪問・配食事業や入所事業、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の運営などに事業展開してきた。同社の職員は、女性が約7割を占めている。職種は、事務職、介護士、看護師、機能訓練指導員、ケアマネージャー、清掃員、ドライバー、託児スタッフなどとなっている。

この業界は、慢性的な人手不足の状態であるため、同社はホームページの求人ページで募集職種、仕事内容、給与体系などをわかりやすくするなど工夫を凝らしている。これが奏功し、2020(令和2)年の場合、199人から応募があり、そのうち39人は60歳以上だった。
雇用制度改定の背景
■長く働ける制度づくりの経緯
アールビーサポートでは慢性的な人手不足を解消する必要性を感じていた。健康寿命が延びていく中、健康で高いスキルをもった高齢職員は十分に戦力になることから、「自分の年齢は自分で決める」という同社の方針のもと、優秀な人材が年齢に関わらず長く働ける制度を構築することした。
人事管理制度の概要
■好待遇を目指した賃金制度
アールビーサポートでは、以前は60歳に到達した時点で賃金を一定割合減額し昇給も停止していた。しかし、そのことにより60歳に到達した職員のモチベーションの低下が見られ退職者も出たことから、2017(平成29)年の制度改定を機に、60歳時点での賃金減額と昇給の停止をやめ、定年まで昇給することにし、さらに、定年後も評価によっては昇給させるようにした。基本給は、定年までについては等級表により定めており、人事考課に基づき年1回昇給させている。継続雇用の嘱託については、定年到達時の職位・等級を維持している。パート職員に雇用転換した場合、賃金については、健康状態・能力・人事考課等を勘案して個別に決定している。また、資格手当、処遇改善手当、精勤手当、消費税補助手当、子供手当、職務手当、住宅手当、夜勤手当など各種手当を充実させ、所得の向上を実現することで、年齢に関わりなく優秀な人材には長く働いてもらえる魅力的な職場としている。また、夏冬春の賞与の他、特別手当として、「お年玉」「クリスマスケーキ」「うなぎ手当」などのサプライズ手当を支給している。
■納得度の高い評価制度
評価制度は、これまで人事評価の汎用型のひな形を使っており適切な評価ができていなかったため、職種別にオリジナルの評価表を作成した。また、評価者が所属部署の上司だけだったため、複数のスタッフが評価に参加する「全方位型評価方式」に改めた。これにより、自己評価に加え、複数の職員による評価を第1段階、管理職による評価が第2段階、理事長による評価が第3段階という評価制度のため、偏った評価がされないようになり公平性が高まった。
評価の基準は、一般職の場合、【成績評価】として、「仕事の準備・整理整頓」「仕事の向上・改善」など4項目を、【意欲評価】として、「規律性・執務態度」「責任感」「積極性」など5項目を、【能力評価】として「理解力」「表現力」の2項目を1次評定者と2次評定者がそれぞれ5段階にて評価している。看護職員の場合、「働く意欲と取り組み」「責任感」「チャレンジ意欲」「改善・効率化」「認知症ケア」「服薬管理」「緊急時の対応」など30項目について、複数の職員が採点し6段階で評価している。具体的で詳細な評価項目を設定したことで、職員は会社から何を期待されているかが明確になり、各自レベルアップのための改善行動につなげやすくなった。
評価は半期に1度行われ、各部署の主任が本人と面談を行って評価結果のフィードバックを行っている。評価結果は、定期昇給、賞与、月手当などに反映させている。この評価は、正規職員だけでなく、嘱託職員、パート職員に対しても行われ、高齢職員であっても評価が高ければ給与がアップする。評価は、良い点を伸ばして昇給させることに主眼を置いており、降格や減給の材料にはしない。
高齢職員戦力化のための工夫
■各人の事情に応える多様な勤務形
アールビーサポートは、24時間365日体制の仕事をしており土日勤務や夜勤もあるため、正規職員が規定の労働時間・日数での勤務が難しくなった場合に備え、正規職員の身分のまま短日・短時間勤務ができる制度や、週休3日正職員制度、パートへの転換など多様な勤務形態を設けている。職員の事情が解消された場合、申請すればフルタイム勤務の正規職員に復帰することもできる。
■教育訓練制度の工夫
入社した職員に対しては、1ヵ月以上のОJTにより十分な指導を行っている。また、職員に介護資格の取得を促すために、ミニテストを毎月実施して成績優秀者に景品を贈呈している。さらに、居室清掃やシーツ交換・洗濯などを行う高齢のクリーンスタッフが、ヘルパーと同等のスキルで仕事に従事できるようにするため「介護職員初任者研修」を受講させるなど、職員の意識の向上にも取り組んでいる。
■IT機器導入による負担軽減
電子カルテ、タブレットを導入し、記録を残す業務の負荷を大幅に削減した。計算式やドロップダウンリストなどをフォーマットに盛り込むことで、高齢職員にも簡単に入力ができるようにしたことで作業効率がアップした。
■作業環境の改善による負担軽減
車いすの利用者が座った姿勢のまま入浴できる「リフトライナー」や、寝たきりの利用者が横になったまま入浴できる「ストレッチャー浴」などの設備を導入した。


これらにより、職員の腰痛防止をはじめ身体的な負担が大幅に軽減された。さらに、浴室清掃をデッキブラシで行っていたところを、高圧洗浄機を導入した。

また、面積の広い1階ロビーを複数の職員がモップ掛けしていたのを、自動掃除ロボットにより夜間に清掃することにした。これらにより作業を大幅に軽減化・効率化した。
■アンケートを用いた職場環境改善
60歳以上の職員を対象にアンケートを実施し、①段差や滑りやすい場所 ②年齢的に厳しい業務 ③安全・便利な備品について意見を求めた。寄せられた意見をもとに、①については、浴室と脱衣所の出入り口の数ミリの段差を解消するとともに、玄関前にある1センチ程度の段差を解消した。②については、高齢職員は大柄な利用者の介護業務から外し、原則として夜勤にもつけないことにした。③については、アシストスーツを導入して腰痛予防に役立てたり、スティックタイプの掃除機を導入し身体的な負担を軽減するなどした。このように職員の声は定期的に聞き取り、働きやすい職場づくりに活かしている。

健康管理・安全衛生・福利厚生
■休憩時間におけるリフレッシュ
職員休憩室および事務所に給茶機を設置し、設置費用や茶葉代などはアールビーサポートが負担している。職員は、適時に休憩をはさみリフレッシュして業務を再開できるようになった。
■交通安全のための取り組み
ドライバーや送迎バスの運転手に安全運転講習を定期的に実施するほか、ドライブレコーダーによる安全運転チェックを行い、合格点に満たない者には啓発動画を視聴させレポートを提出させることで事故防止に努めている。
■健康的な昼食の補助
栄養士がバランスを考え利用者に提供している給食と同様の食事を「職員給食」として費用を一部同社が負担して提供している。職員は、高血圧や心疾患のある者向けの減塩食や、低カロリー食などの療養食も利用することができる。
■充実した医療補助
職員が健康を維持しながら長く勤務できるようにするため、病院の受診費用と薬代の自己負担3割のうち、2割を同社が負担する「医療費補助制度」を導入している。これは、職員本人だけでなく、健康保険上の扶養家族も対象としている(月上限額あり)。
■コミュニケーションの向上
春に施設別親睦食事会、年末に忘年会を実施している(コロナ禍の間は休止)。部署別に競うゲームをしたり、出し物を企画するなど、仕事以外の場面でも職員同士や、上司とのコミュニケーションを図って親睦を深めている。
今後の課題
■積極的な高齢職員の活用
各種手当の見直しによる待遇の改善、様々な機材の導入、医療費の補助、入社祝い金などの投資は高額に上るが、年齢に関係なく優秀な職員を確保できれば、優良なサービスを長期にわたって提供でき中長期的なランニングコストの削減につながるため、高齢職員を積極的に活用することのメリットは大きいとアールビーサポートでは考えている。