株式会社仲本工業
-継続雇用の上限年齢を引き上げ、高齢社員の技術や経験を伝承-
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業
- 上限年齢なしの継続雇用(基準あり)〈運用〉
- 処遇継続
- 技能継承
- 世代間連携強化

企業プロフィール
-
創業1966(昭和41)年
-
本社所在地沖縄県沖縄市
-
業種総合工事業
-
事業所数2ヵ所
導入ポイント
- 技能継承と人材確保を目指し、希望者全員の継続雇用制度における上限年齢の引上げ
- 生産性向上支援訓練を活用して社内活性化と生産性向上を図る
- 「7000歩運動」の推進による社員の健康増進
-
従業員の状況従業員数 178人 / 平均年齢 40.4歳 / 60 歳以上の割合 15.1%(27人)
-
定年制度定年年齢 60歳 / 役職定年 なし
-
70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 定年60歳。希望者全員70歳まで継続雇用。その後は、運用により一定条件のもと、年齢の上限なく継続雇用。最高年齢者は70歳
同社における関連情報
企業概要
1966(昭和41)年に設立した株式会社仲本工業は、建築・土木・鋼構造物の3事業を中核事業とする総合工事業で、県内に事業所2カ所を設けている。社員数は178人、社員の平均年齢は40.4歳である。社員構成の特徴について、年齢別には20歳代を中心に各世代がおおむね2割~3割弱の構成で、60歳以上の社員は27人(15.1%)である。雇用形態別には正規社員141人、非正規社員10人である。継続雇用者の雇用形態は嘱託社員で、現在27人である。

採用状況について、同社は毎年継続した新卒採用と中途採用の両方を実施している。非正規社員は中途採用された者で、一定期間を経て正社員に転換している。
雇用制度改定の背景
■経緯
改定前の仲本工業の定年・継続雇用制度は、60歳定年、65歳までの継続雇用であり、65歳以降は、運用により上限年齢なく基準該当者を継続雇用していた。知識・経験・技術を持つベテラン社員は同社にとって不可欠な存在であり、65歳の継続雇用上限年齢に達しても、慣行として本人が希望すれば引き続き雇用している状態であった。しかし、旧制度では65歳以降は運用による継続雇用であった。現在、60歳以上の割合は15.1%と高くない水準であるものの、今後、60歳以上の割合が20%を超過する見込みであることから、年齢構成の高齢化が進む状況にある。人手不足が深刻化する中で、若手社員への技術継承と人材確保を目的として、2019(令和元)年8月に65歳から希望者全員の70歳継続雇用制度へと雇用の上限年齢の引上げを実施した。図表はその概要をまとめたものである。

創業者の「社員は家族」という言葉のとおり人材を大切にしているため、長年勤務する社員も多くいる。しかし、建設業界の従来のイメージである「3K(きつい・汚い・危険)」と、少子高齢化が進む中で、人材の確保が厳しい状況にあった。そこで「新3K(給料がいい・休暇がとれる・希望がもてる)」に向けた取り組みの一環として、今回の希望者全員の継続雇用制度の上限年齢の引上げを実施し、経験豊かな高齢者の活躍を推進している。
人事管理制度の概要
■正社員
正社員の人事管理制度の概要については、社員格付け制度は役職制度のみで、「部長-部長代理-課長-課長代理-係長-主任」の役職を設けている。なお、役職定年制はなく、継続雇用に切り替わっても役職は継続する社員も多くいる。
賃金制度について、基本給は本給と年齢給からなり、年齢給は年齢別定額給で一定年齢に達するまで昇給される。本給は能力、技術、経験などを総合的に考慮して決まる総合決定給で、その決め方は学歴別初任給に昇給を積み上げる方式をとっている。なお、中途採用者の場合、前職の職歴などをもとに個別に決めている。昇給は人事考課(能力評価)結果に基づいて年1回行っている。また、資格が必要な仕事も多いことから「資格手当」については細かに規定している。技術士や1級建築士、土木・建築施工管理技士(1級、2級)などの各種資格を対象としており、社員にとっては資格取得を目指すモチベーションとなっている。賞与は「基本給×賞与係数」によって支給する仕組みとなっている。賞与係数は経営業績により設定した基準係数をもとに人事考課(業績評価)を用いて決めている。
■継続雇用制度
継続雇用制度は、70歳までの希望者全員の再雇用制度、運用により一定条件のもと、上限年齢なしの継続雇用としている。いずれも雇用区分は嘱託社員である。70歳超の再雇用制度への移行は本人の健康状態や適性と評価等をもとに総合的に判断している。
今回の希望者全員の継続雇用制度改定(雇用上限年齢の引上げ)に伴う人事管理制度の対応は、原則として65歳以前の制度を引き続き適用している。そこで、70歳までの継続雇用制度の人事管理制度を概観すると、嘱託社員の雇用形態、フルタイム勤務の勤務形態により、原則として正社員時代の業務を引き続き担当することにしている。
賃金制度については、現職継続のフルタイム勤務の場合、基本給は定年時の水準を適用し、昇給と賞与支給は原則行っていない。
高齢社員戦力化のための工夫
■若手社員とのペア就労による技術・技能伝承
仲本工業は若手社員のレベルアップと技術・技能継承を図るためベテラン社員と若手社員のペア就労による OJT を鋼構造物製作工場で実施している。ペア就労では、ペアを組んだベテラン社員と若手社員が師弟関係のように同じ業務に従事し、教える側と教わる側の意識をもって技術の伝承がなされている。
最近はこのペア就労を進化させて、中堅社員を加えた 3 人組のグループ編成とし、育て合いと相互コミュニケーションの効果を高めている。

■配置転換希望者の相談窓口の設置
配置転換を希望する高齢社員のために、同社は総務経理部に相談窓口を設置した。体力を要する仕事が多く、負担の少ない作業内容への転換を希望する高齢社員からの要望があったのがきっかけである。同社は要望が寄せられた場合、機械化されているラインへの配置転換や高所作業から危険度の低い業務への変更などを行っている。
■生産性向上支援訓練
同社は生産性の向上を図ることを目的として「生産性向上支援訓練」を実施している。初回の2020(令和2)年は管理職のみを対象としておりましたが、2022(令和4)年と2024(令和6)年は対象を拡げ全社員に実施している。

健康管理・安全衛生・福利厚生
■週単位での作業計画表作成、作業負担軽減
高齢社員の体力保持を図るため、週単位で作業計画表を作成し、管理者が個々の業務を把握するとともに、必要に応じて調整して、高齢社員に残業をさせないようにしている。さらに、毎朝の朝礼時に、管理者が表情や顔色、検温によって高齢社員を含む部下の健康状態を確認して、当日の担当業務の調整を行っている。
■独自の特別休暇「傷病休暇」を導入
仲本工業は通常の年次有給休暇に加えて、体調不良や病院への通院の際などに30分単位で取得できる「傷病休暇」を導入して、働きやすい環境整備を進めている。
■「7000歩運動」の実施
社員の健康増進を促す取組みとして、同社は役員を含め社員全員に万歩計を配付し、1日平均7000歩を目標に掲げてウォーキングを奨励している。また、毎日の歩数を記録してもらい、その結果は社内掲示とメール送信によって公表するとともに、全体会議での表彰も実施している。前回より大幅に歩数が伸びた社員やランダムに選んだ順位の社員にも副賞を進呈するなど、社員に楽しんで取り組んでもらうための工夫を行っている。この取組みは社員の健康意識を高めるだけでなく、コミュニケーションの機会にもなっている。
今後の高齢者雇用の展望
仲本工業は人材確保・育成が課題となっている中、高齢社員の優れた技術や豊かな経験を活かし、それらを若手・中堅社員に伝承することにより、次世代の人材育成と企業の発展を目指している。また、すべての社員が笑顔で働くことができる、働きやすい、働きがいのある環境づくりを目指し、今後も社員を大切にし、人材育成にも、ワーク・ライフ・バランスにも、そして高齢者雇用にも積極的に取り組んでいこうと考えている。
