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株式会社グローバル・クリーン

-多様な人材を積極的に雇用し、誰もが活躍できる職場風土を醸成-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • 上限年齢なしの継続雇用
  • 処遇継続
  • 賃金・評価制度改定
  • 職場の風土づくり
株式会社グローバル・クリーンのロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    2000(平成12)年
  • 本社所在地
    宮崎県日向市
  • 業種
    ビルメンテナンス業(その他の事業サービス業)
  • 事業所数
    1ヵ所

導入ポイント

  • 定年を70歳に引き上げ、本人の希望があれば上限年齢なく継続雇用
  • パート・アルバイト社員同士で計画を立てる取得しやすい有給休暇制度
  • 地域の高齢者、女性、障害者などの多様な人材を活用
  • 従業員の状況
    従業員数 80 / 平均年齢 40歳 / 60 歳以上の割合 23. 8%(19人)
  • 定年制度
    定年年齢 70歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 定年70歳。年齢の上限なく希望者全員を継続雇用
2023年02月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社グローバル・クリーンは、2000(平成12)年に税田和久現社長が創業し、65歳以上の高齢者、女性、障害者などの計9人の社員という陣営で個人事業主としてスタートした。創業して8年経った2008(平成20)年に念願の法人化を実現した。現在は独自のサービスである「クリーンコンサル®」(プロフェッショナルの清掃ノウハウや衛生管理向上支援のコンサルの商標登録)を日本全国へ発信している。創業から22年が経過し、ビルメンテナンスから始まった同社の事業は、清掃管理や不動産部門にも拡大している。

現在の社員数は80人、うちパート・アルバイト69人である。全体の年齢構成は60歳未満が61人、60歳前半が4人、同後半が2人、70歳以上が13人であり、全体の2割強が60歳以上、平均年齢は40歳である。社名に「グローバル」という名を冠したのは、地元のお客様に世界レベルの品質を届けたいという創業者の強い思いの表れである。「人に優しく、地球に優しく。すべては『きれい』のために」を理念に掲げ、ビルメンテナンスから清掃管理、不動産部門の開拓と着実に業容を拡大している

雇用制度改定の背景

■経緯

グローバル・クリーンは、2011(平成23)年に定年年齢を65歳から70歳へ引き上げた。就業規則第39条には「従業員の定年は満70歳に達した月の末日とする」と定められている。

定年引上げの背景には、業界の慢性的な人材不足の状況に対処する必要があったこと、個人事業主時代から支えてくれたパート社員が65歳を迎えるにあたり、60歳を超え定年を間近に控えている社員が他にも3人いたという状況がある。ベテランの能力・知識が業務上必要であるため、定年年齢を70歳に引き上げることにした。

同社では、これまでにきめ細やかな研修と個々の事情に応じた働き方を可能にする環境整備を進める中で、2020(令和2)年までに多様な人材確保を進めることにより、高齢者雇用を進めつつ、65歳以上の社員の割合を10%まで上げるという目標を立て高齢者雇用を推進してきた。現在は65歳以上の社員の割合が約19%に達している。

■雇用制度の工夫

70歳定年に改定した後は、本人の希望があれば上限年齢なく継続雇用している。その際、本人の希望・適性・評価や体調等を上司と相談して雇用することとした。また、本人の希望等により労働時間を減らすなどの対応を取っている。

人事管理制度の概要

■人事評価制度

正社員の社員格付け制度は、人事評価規定により決定し、役職定年は設けていない。評価制度は、職能資格等級制度に基づき、一定期間における業務成績、勤務成績、職務遂行能力を評価している。能力評価は基本給に、業績評価は賞与にそれぞれ反映し、目指すべきレベル等を面談において、上司から本人へフィードバックしている。

継続雇用者の社員の格付けは、定年到達時の職位、等級を維持することとし、後進の指導をしながら、担当業務に従事することとしている。評価制度としては、年齢や勤務年数よりも他者と比較して何ができるのかを見極め、一定期間における業務成績、勤務成績、職務遂行能力を評価している。年齢が高くても戦力になる仕事をすれば賃金テーブルに沿って昇給する。本人へのフィードバックは正社員と同様である。

■賃金制度

パート・アルバイト社員の戦力化のため、具体的な業務に応じた公平な賃金制度づくりに注力した。年齢に関係なく新人教育やシフト管理などの業務を行うことで賃金が決まるので、高齢社員のモチベーションが大きく向上した。

正社員の月例給は、「基本給+技能手当+営業手当」であり、基本給の種類は年齢給と職務給で、決め方は職能等級表による。昇給方法は人事考課に基づき年1回昇給し、定年まで昇給する。賞与は各期の業績を勘案し、業績評価の結果に応じて決定する。退職金は確定給付企業年金制度である。

継続雇用者の賃金制度は、概ね正社員と同様であるが、支払形態が時間給であること、賞与と退職金が無いことが違いである。

高齢社員戦力化のための工夫

■経営情報の共有による社員の意識改革

グローバル・クリーンでは、経営理念や経営方針、経営計画を盛り込んだ経営指針書を毎年作成している。社員全員が経営指針発表会に出席し、その場において、定年に達していても働く意欲があって、健康であれば
引き続き社内で活躍できることを周知している。

また、他部署の社員同士が顔を合わせて情報交換を行うことで、社内全体の風通しもよくなっている。また発表会後の親睦会(コロナ禍の間は休止)はコミュニケーションを図る絶好の場となっている。

■様々な手法によるコミュニケーション

70歳を超えた社員の中には、年々体力の衰えを感じるなどの不安を抱いている者もいるので、対面や電話、ライン等のSNSなど様々なコミュニケーション手法を通じて情報を得ている。得た情報は、毎週月曜日の幹部会議で議論して対応を話し合って具体的な対策を講じている

■キャリア形成支援

創業間もないころは個人のスキルに頼る面が多く、現場の一部のパート社員に打合せやシフト管理を任せていたが、そのことについての評価基準がなく賃金にも反映されないという問題があった。そこで「職務能力要件」「教育訓練体系」を作成し、社員の職務能力を体系化し、業務内容と評価基準を明確にして能力評価を行うことにした。現場でキャリアを積んだ高齢パート社員が人材育成にあたるような相乗効果も生まれた。職務能力要件が明確になったことで、現在の自分の立ち位置と、「何をできるようになれば評価されるのか」が明確になった。それを補うための教育訓練計画を体系的に行うことで身につけてもらうことが可能になった。

また、高齢社員は年に数回のキャプテンミーティングに参加し、違う現場同士のコミュニケーションを通じて事例を学びあい、育成や緊急対応といった共通の悩みについてお互いの職場で活かせる情報交換を行っている。

■高齢社員との面談

定年年齢を過ぎても働きたいという意欲のあるパート・アルバイトの面談を随時行い、体調や業務上の課題等を確認しながら、より働きやすい環境を作るようにしている。

■継続雇用後のサポート

勤務時間の増減の希望がないか、体調に変化などないか、ヒアリング面談をしている。

■技能伝承

高齢社員が若手社員とともに現場作業を行い、若手社員は、そこで学んだことを作業マニュアルの形にとりまとめている。

健康管理・安全衛生・福利厚生

■現場作業に係る社員の負担の軽減

定年年齢を70歳に引き上げたことにより、継続雇用者が増加した。当時2011(平成23)年は7時間程度の現場作業であったが、体力がもたないかもしれないと面接時に不安を口にしていたので、午前と午後で仕事を分け人員の確保を行った。人件費は多少増えたが、社員の負担は減少したと考えている。なお、安定したサービスを実施できるよう、地域の高齢者を積極的に採用している

■ジョブローテーション制の導入

作業現場で急な欠員が発生すると安定したサービスの提供ができないことから、代理で入れる要員を一つの業務に最低でも、2人を確保するジョブローテーション制を導入した

■作業負荷の軽減

高齢社員や女性でも負担がかからないよう作業性と安全性を重視してオペレーションを見直し、できるかぎり立位の姿勢のまま作業できる道具を積極的に導入している。また、当初は男性と女性の職域を分けていたが、女性にも大型機材の作業研修を実施するなどして、男女間の職域の差をなくした。

■心身の健康管理

就業形態にかかわらず、パート社員も含めて毎年1回以上の健康診断を実施している。また、産業医によるストレスチェックを毎年1回行い、高度のストレスが見られる社員には個人面談を実施している。さらに毎月1?24事例5株式会社グローバル・クリーン3人の社員については産業医による面談を随時行うといった、高ストレス者が増えることを未然に防ぐための取組みを進めている。

■安全衛生

体調不良により仕事の継続が困難となっても、無理のないシフトや勤務日数とすることにより配慮している。また、何かあってからでは遅いので、上司との定期的な面談を行い、本人の状況等を確認し、体調、体力などの健康状態や希望を聞くようにしている。また、産業医との面談は毎月定例の安全会議を通じて対象者を決めて実施している。

■任意労災保険への加入

短時間労働者も多く、健康保険に未加入であるパート社員もいるため、労災以外の病気や入院等の休業補償がなされず、安心して働ける環境ではなかった。このため、パート・アルバイトを含め、すべての社員が就業中にケガをしたり、病気で入院することになっても補償されるよう任意労災保険に会社は加入した。また、社員が病気と向き合いながら働けるよう、治療費の補助を行っている。

これからの課題

業界では一部ロボット化が進んでいる作業もあるが、高齢社員の負担軽減のためにも、 テクノロジーや最新機材などを積極的に取り入れていくことを視野に入れている。

高齢化や障害など、人生においても誰にでも起こり得ることに協力できる会社でありたいという思いは、創業以来変わることはない。同社には「どんな人でも輝けるお掃除学校構想、ウルトラクリーンアカデミー」の設立という大きな夢がある。高齢者、女性、外国人、様々な事情をもった若者など、働きづらさを抱えた方が自分らしく働く、地域の人が気軽に立ち寄れるコミュニティ空間をめざしている。

イラスト2点
「しょうがいのなくなる日」
(株式会社ラグーナ出版)
筆者:税田和久、税田倫子
絵:タニオカみお

グローバル・クリーンの税田社長は、誰もが安心して働ける環境づくりのための活動にも積極的で、「福祉のまちづくりフォーラム」での講演や、絵本作りなどの活動も行っています。

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