株式会社ミフネ
-年齢に関係なく意欲を持って働ける職場を創出-
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- コンテスト入賞企業
- 70歳定年
- 上限年齢なしの継続雇用(基準あり)
- 賃金・評価制度改定
- 柔軟な勤務体制

企業プロフィール
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創業1978(昭和53)年
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本社所在地愛知県豊田市
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業種金属製品製造業
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事業所数2ヵ
導入ポイント
- 継続雇用の更新面談は社長と「One on One」ミーティング形式
- 一人ひとりの事情を考慮した仕事内容や柔軟な勤務体制
- 賃金制度、評価制度を見直すとともに、高齢になっても働ける仕事を創出
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従業員の状況従業員数 195人 / 平均年齢 40歳 / 60 歳以上の割合 6.2%
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定年制度定年年齢 70歳 / 役職定年 60歳
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 定年70歳。基準該当者年齢の上限なく再雇用
同社における関連情報
企業概要
■概要
株式会社ミフネは、トヨタ系自動車プレス部品の加工企業である。トヨタ関連企業に勤務していた梅村敏会長が1978(昭和53)年に自動車部品を製造する個人会社「御船鉄工」として独立・開業した。1981(昭和56)年に法人会社となり、1990(平成2)年に株式会社ミフネを設立した。創業時に梅村会長が掲げた理念は「積少為大」(小を積みて大となす)。二宮尊徳のモットーとして知られるこの言葉に基づき、小さな改善を積み重ねることで、着実に競争力を高めてきた。現在は2013(平成25)年に2代目に就任した梅村和弘社長を、創業者である梅村会長と生産現場を取り仕切る梅村昌弘専務がサポートするかたちで事業に取り組んでいる。現在豊田市内に2つの工場を構えている。

自動車部品を中心に手掛け、金型設計・製作から配送まで自社で行う体制を整え、毎日2,000種類の製品を出荷している。大きな変革期を迎えていると言われる自動車業界にあって、「良質廉価な一気通貫のものづくり」を特徴とし、多品種量生産に対応する技術力・生産力と、製造から配送まで一貫して自社で行う体制、そして多様な人材を受け入れて活かし、年間3,000種類の製品を作り、自動車生産を通じて社会に貢献している。

■業況
経営環境としては、2021(令和3)年までは、コロナウィルス感染症による影響は部分的であったが、2022(令和4)年は大きな影響を受け売上が減少傾向である。
■年齢構成、職種
60歳未満の社員の年齢構成は50代が数人で、30代、40代が多い年齢構成となっている。60歳以降は12人で最高年齢は82歳である。また職種としては、事務職、営業職、製造職、技術職の4職種である。職制の種類としては、事務・技術職が「部長 → 次長 → 課長 → 係長 → 主任」、製造職が「部長 → 次長 → 課長 → 係長 → 組長」となっている。
■採用状況
2022(令和4)年度は5人の社員を採用している。内訳としては、新規採用(高卒)4人(製造職・技術職)と中途採用1人である。中途採用される高齢社員は60代前半層(61~65歳)が中心であり、前職が製造・生産技術職に従事した定年退職者1人を採用した。ものづくり改善室に配属して、これまで蓄積してきた経験や技術等を活かして生産ラインや設備の改善を担当している。雇用形態はパートタイマーで、勤務形態は短日・短時間勤務も選択できるようになっている。応募する高齢者の中にはプライベートなライフスタイルに比重を置き、柔軟な働き方を希望する高齢者も多い。
雇用制度改定の内容
■背景
2011(平成23)年時点ではまだ50代社員は少なかったが、年齢で区切って退職するのはおかしいとの考えのもと、年齢に関係なく体力が維持できて働く意欲がある人には長く働いてもらいたいという会社の基本的な考え方を具現化した。
■定年・継続雇用制度の内容
2011(平成23)年4月にそれまで60歳としていた定年年齢を70歳に引き上げた。さらに、2019(令和元)年4月から運用として、定年後に一定の条件のもとに事務的な面談を行ったうえ、有期契約のパート社員として再雇用をしていたが、これを2020(令和2)年9月に定年後再雇用の契約更新方法として就業規則に明記した。本人が希望し会社が必要と認める場合は上限年齢を定めず働き続けられる継続雇用制度を導入した。具体的には、70歳以降の雇用は3 ヵ月契約とし、3ヵ月毎に直接本人と社長が面談して本人の希望、健康状態、通勤や仕事上の問題点を話し合い、双方が納得して契約の延長や退職を決めている。
■個人の事情に配慮した柔軟な勤務体制
3ヵ月毎の契約更新面談では、短日勤務や短時間勤務などの希望があれば、それぞれの事情に配慮して柔軟に対応している。これにより、短時間勤務で早く帰宅することで、夕方に農業をしたり孫を迎えに行けるなど、仕事を続けながら趣味や自分に合った生活を楽しむことができるようになったと好評を得ている。また、社員は60歳を迎えた時点で働き方を選ぶことができ、短時間のパートタイマー勤務に変わることができる。
■運用に当たっての工夫
契約更新面談は事務的なものではなく、社長が本人の話しを傾聴することを主体とした双方向対話の「One on One」形式としている。70歳以降の再雇用については、「本人が希望し会社が必要と認める者」という曖昧な条件で運用しているが、本人と会社双方の納得性を高めるためのコミュニケーションを強化するなど工夫しながら運用をしている。
人事管理制度の概要
■賃金制度
従来の賃金制度は、年齢と勤続年数で決めており年功序列型の賃金制度であった。ところが、雇用を取り巻く環境が変化しこれまでの年功序列型の賃金制度に限界がきていた。そこで、2011(平成23)年4月に高齢層でも中堅層でも高い能力を持ち実績を上げる者には相応の処遇を与えるべきであるとの考えから賃金体系の見直しを行った。賃金構成は、「基本給+諸手当(管理職、役職、住宅、家族、通勤、皆勤)+割増賃金(時間外勤務、深夜勤務、休日勤務、業務(事務・技術職を対象)、生産効率(製造職を対象))」である。基本給は年齢給(年齢別定額給)と職能給(等級別号俸制)から成り立っている。基本給の支払い形態は、製造職の一般社員は日給月給制、製造職の管理職(課長以上)、事務職、技術職などが月給制である。昇給は人事考課の評価を考慮して決めているが、60歳以降は昇給はストップする。ただし、60歳以降の賃金構成は60歳前と同じ賃金構成となっている。また賞与は半年ごとの業績を基本として、人事考課を考慮して支給額を決めている。役職定年は一律60歳であるが、役職を離れたら一般社員となりライン業務を担当し後任者のサポートも行っている。
再雇用者における基本給の決め方は、過去の実績を基に本人と相談をして決めている(基本給を時給換算)。賞与については正社員と同様である。評価は社長と「One on One」形式の面談を実施している。
■評価制度
評価制度は能力評価(人事考課表)と業績評価の2種類である。KPI、品質管理、安全、生産性向上の4分野をベースに作成し、プロセス評価を能力評価で、結果評価を業績評価で見ている。評価の流れとしては、「本人評価 → 所属長評価 → 部門長による最終評価」となる。本人への評価のフィードバックは上司との面談を通じて本人に伝えている。また、改善点などについても話し合いを行っている。評価の結果は、基本給、生産効率手当、業務手当、賞与などに反映している。
■退職金制度
退職金は、中小企業退職金共済制度に民間の保険制度を利用した会社の積立金で補填をしている。30歳の中途採用で60歳時に少なくとも1,000万円を受け取るように考えている。掛金は60歳まで積み立てている。給付は60歳からで、時期(60歳以降)と方法(全額一時金、一時金と年金方式の併用など)については社員の希望にあわせている。
高齢社員戦力化のための工夫
■高齢になっても働ける仕事の創出
プレス加工がメインの仕事で金属材料を扱うため、70歳を超えると体力や仕事能力の低下が見られるようになる。そこでメインのラインを外れて加工後製品の仕分け箱への整理や運搬など安全性を重視したオフラインの仕事を切り出して、高齢になっても無理なく長く働けるようにしている。

■高齢者の積極的な採用
他社を定年退職した高齢者を積極的に採用し、当社での経験を要しない仕事を担当してもらっている。
■情報共有による自律型社員の育成
高齢社員を含めて社員全員が、経営方針や受注情報など会社状況の情報を共有することで、一人ひとりが会社経営の一端を担っているという意識を持ち、意欲を持って仕事に取組んでいる。
■活発な社内コミュニケーションにより良好な職場の雰囲気を醸成
忘年会や懇親会など仕事外で親睦を図る場を随時設けて社員同士のコミュニケーションを深め(コロナ禍の間は休止)、高齢社員も若手社員と一緒になって話し合いをする和気あいあいとした良い職場の雰囲気づくりを目指している。
健康管理・安全衛生
■安全管理・健康管理
安全が一番との考えから、月1回場所や部署を変えながら安全パトロールを実施している。安全パトロールを実施した際に危険な箇所等が見つかれば、職場改善会議に諮り修理等を行っている。また健康診断を年1回実施するほか、産業医による健康相談を実施している。熱中症対策として、全員に空調作業服を貸与している。
今後の課題
ミフネは自動車関連の部品製造会社として、リーマンショック、東日本大震災の困難に直面したが社員を増やしながら発展させてきた。現在自動車産業は大きな変革期にあり、会社の事業構造の変更が視野に入れられている必要がある。高齢者雇用は継続雇用制度によって上限年齢なく働くことができる制度がうまく回っており当面変更の予定はないが、新事業の創出にも力を入れ、より多くの高齢社員が働くことのできる職場の創出を目指す予定である。また、今後移転することとなる新工場では、照明の明るさ、運搬経路の通路整備、重量物取り扱いのサポートツール導入など、社員の健康確保と安全性を高める職場改善を一層進めていく予定である。