本文へ
背景色
文字サイズ

事例検索 CASE SEARCH

TIS株式会社

-ライフプランに配慮した選択定年制を導入-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • 能力開発制度の改善

下階層のタブがない場合、項目は表示されません

  • 選択定年制
  • 処遇継続
  • 人材育成プログラム
  • 様々なキャリア支援
TIS株式会社のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1971(昭和46)年
  • 本社所在地
    東京都新宿区
  • 業種
    情報サービス業
  • 事業所数
    9ヵ所

導入ポイント

  • 定年を65歳に引き上げ、併せてライフプランに配慮した選択定年制を導入
  • 定年後も正社員と同じ処遇の「エルダー社員制度」を導入
  • キャリアステージに応じたキャリア支援を実施
  • 従業員の状況
    従業員数 5,834人 / 平均年齢 40.5歳 / 60 歳以上の割合 3.7%(213人)
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 役職者は3種類:MG職(マネジメント職)、SP職(スペシャリスト職)、PR職(プロフェッショナル職)のPR4。うちMG職(マネジメント職)のみ役職定年の対象。
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 70歳 基準該当者
2024年03月31日 現在

同社における関連情報

企業概要

TIS株式会社は、1971(昭和46)年に設立したソフトウエア開発、ソリューションの提供、ならびにこれらの業務に関連するコンサルティング業などの事業を行っており、東京の本社をはじめ、国内6カ所と海外3カ所の事業拠点を展開している。社員数は5,834人、社員の平均 齢は40.5歳である。社員構成の特徴について、年齢別には30歳代前半と50歳前後が少なく、60歳以上も213人(3.7%)と少ない。雇用形態別には正規社員5,807人、非正規社員23人である。

採用状況については、同社は新卒採用と中途採用の両方を実施しており、新卒採用は新技術を習得する人材として、中途採用はプロジェクトマネージャ(PM)など経験が必要な業務を担う人材として採用している。年平均の採用実績は約400人弱で、その内訳は新卒採用者数が300人弱となることが多く、中途採用者数に比べてやや多い。

雇用制度改定の背景

■経緯

改定前の2018(平成30)年のTISの定年・継続雇用制度は「60歳定年制、65歳までの継続雇用制度(希望者全員の再雇用制度)」であった。

慢性的な人材不足の状況にあるIT業界において、60歳以降、限定的な職域で再雇用すると能力を発揮する機会の損失となり、また同社に勤務するハイパフォーマーのベテラン社員が引退時期に差しかかる中、同社の戦力として長く活躍できる環境を整備するため、2019(平成31)年4月に65歳への定年延長 を、2020( 令 和2)年4月に70歳までの継続雇用制度「エルダー社員制度」(基準該当者)の導入をそれぞれ実施した。

図表は65歳定年延長とエルダー社員制度の実施前と実施後を比較したものである。なお、同社は従業員のライフスタイルを尊重した選択定年制を併せて実施した。選択定年は60歳、63歳、65歳 で、59歳時に定年年齢を決める。また、63歳、65歳を選択した場合でも、63歳の誕生日月の半年前までに上司の承認が得られた場合、定年年齢を変更可能としている。

■制度改定に向けた課題とその対応

今回の一連の制度改定は、同社の年齢にとらわれない実力主義による人材活用や報酬決定を目指した人事方針のもとで進められた。経営層の承諾を得てから準備が開始され、定年延長実施の半年前の2018(平成30)年下期から社員への説明会が行われた。一連の制度改定は実力主義を推進するコンセプトへの理解もあり、大きな問題はなくスムーズに進んだ。なお、定年延長に伴い旧制度のもとで継続雇用に切り替わった60歳代前半層の再雇用者の対応について、希望者を正社員に転換した。

人事管理制度の概要

■定年延長に伴う人事管理制度の対応

定年延長に伴い正社員となった60歳代前半層の人事管理制度の対応については、原則として59歳以前の制度を引き続き適用しているものの、組織長ポストの世代交代を促す観点から、役職3種類のうちMG職(マネジメント職)は60歳で降職する役職定年制(ポストオフ)を実施した。役職定年に達したMG職は専門職(スペシャリスト職:「SP職」)に移り、専門職社員として業務に従事する。なお、基本給は役職者の役割を含めて設定されており、SP職も役職者のため、役職定年(ポストオフ)しても基本給は変わらない。

■正社員

正社員の人事管理制度の概要を確認すると、社員格付け制度は職群別職種・等級制度を設けている。職群はMG職(マネジメント職)、SP職(スペシャリスト職)、PR職(プロフェッショナル職)の3つの職群からなり、新卒採用者はPR職からキャリアを始める。PR職の4等級(PR1からPR4)のキャリアパスを経た後、高度専門職として社内の委員会で認定された者が、SP職(スペシャリスト職)となる。また、PR職最上位のPR4やSP職から組織長のポストに任命された者がMG職(マネジメント職)となる。

賃金制度については、社員格付け制度(職種・等級制度)と連動した基本給(範囲給)である。昇降給は、半期に1回人事考課結果に基づいて行っている。なお、定年延長後も新定年年齢まで昇降給を行う。賞与は固定賞与、個人賞与、組織加算により支給している。個人賞与には半期評価が反映される。固定賞与は職種・等級ごとに支給月数が設定される。組織加算は半期の営業利益等を考慮し、毎回経営判断にて賞与支給月数が決定される。退職金制度については、確定拠出年金または前払退職金の選択制で、掛金の拠出は60歳までに終了する。社員自身が給付方法、給付の受取り時期について選択する。

人事評価は個人業績評価(絶対評価)とOPコンピテンシー評価(絶対評価)の2種類が行われ、評価結果は、昇降給、昇降格、賞与にそれぞれ反映される。評価の流れについては、一般社員を例にすると、直属の上司による1次評価、部門責任者である部長による最終評価が行われる。

■継続雇用制度

同社が実施する継続雇用制度は「エルダー社員制度」というもので、65歳の定年到達者を対象に一定の基準を設けて継続雇用に切り替えている。雇用形態は1年契約の有期契約社員である。業務内容は定年時に担当する業務や役割を継続することを原則としている。人事制度、賃金制度、評価制度の処遇について確認すると、人事制度に係わる社員格付け制度は定年時の職種・等級を継続する。昇格は契約更新時に昇格前の等級と評価をもとに判断が行われる。賃金制度について、基本給は正社員の賃金表が用いられており、水準の見直しは行われない。昇降給は、正社員と同じ手続きが行われる。賞与と評価制度については、決め方(仕組み)と運用は正社員と同じである。継続雇用者を対象とした退職金制度はない。

制度のコンセプト

社員の自律的な行動を促し、会社と個人の価値交換性の高度化を促進するマネジメント基盤としてMust/Will/Canフレームを導入した。社員一人一人が会社の企業理念・目指す方向性に共感し、会社の目標と自分のやりたいこととの重なりを大きくしながら、『働きがいと成長を実感しながら活躍できる会社』を目指す。

高齢社員戦力化のための工夫

■高齢社員に期待する役割

定年延長した60歳前半層に期待する役割は、年齢にかかわらず引き続き戦力として活躍してもらうことであり、高齢社員を含めた全社員対象に実施している評価面談の中で組織目標や期待役割が共有されている。

■キャリア形成支援

TISでは、全社員、キャリアプランシートの作成、キャリア面談を実施しており、希望者は社内外のキャリアコンサルタントによる個別面談などを実施することができる。高齢社員についても、キャリア面談とキャリアプランシートの作成などを通じてキャリアデザインの形成を行っている。

■セカンドキャリア支援制度

セカンドキャリア支援制度は、40歳代後半から60歳代前半を対象に社外転身を応援することを目的としたキャリア支援制度で、転身支援金やキャリア支援サービスの提供、転身のための休暇付与などが行われている。

■キャリアデザイン教育

キャリアデザイン教育は社員ひとりひとりが自らのキャリアを意識し、自己実現を目指して活き活きと働き続けることを目的とした教育である。キャリアステージごとにキャリアデザインの機会の提供、教育の実施とその支援が行われている。同社が設定しているキャリアステージは、20歳代前半の新入社員総括研修、20歳代後半の昇格者研修、30歳代のトランジション編、40歳代を対象としたミドルエイジ初期、50歳代前半を対象としたミドルエイジ中期、50代後半を対象としたミドルエイジ後期のように細分化している。また、研修やOne on Oneミーティングなどで解消しきれない個別のキャリア相談に対しては、人事本部のキャリアコンサルタント資格保有者に対応させるなど、個別のフォローも充実させている。

健康管理

■ヘルスリテラシーの向上

TISが実施している健康管理の主な取り組みは、ヘルスリテラシーの向上と健康保持・増進の体制の確立である。ヘルスリテラシーの向上について同社は、①全社員を対象に正しい健康情報の見分け方と知識を身につけるための「セルフケア」、②役職者を対象に、部下への効果的なアプローチ、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止を図る「ラインケア」、③主にメンターが組織やチームを超えて相談役となり、若手社員・キャリア採用者の課題解決をサポートする「メンター制度」を実施している。

■健康保持・増進体制の確立

健康保持・増進体制の確立について、同社は主な拠点である東京、名古屋、大阪に健康相談室を設置し、現場部門・人事・産業保健スタッフが一体となって日常発生する心身の不調や疾病に関する相談、生活習慣改善に関するアドバイスを行うなどのサポートを行っている。さらに、各拠点にヘルスキーパールームを常設し、専任の鍼灸マッサージ師による施術と指導・助言を提供している。

今後の高齢者雇用の課題

今後の高齢者雇用の課題として、TISは定年退職者のサポートの拡充を挙げている。社員の貢献度に合わせて報いていくという実力主義であるだけに、高齢期を迎えた社員にとっては厳しく感じられる部分もあると考えられるが、長年戦力として活躍してきた社員であるため、働く意欲に応じてできるだけ多くの社員が長く働けるようサポートしていける仕組みを今後も検討していきたいと考えている。

図表 雇用制度改定の概要
(出所) TIS株式会社へのヒアリング調査をもとに執筆者作成。

事例内容についてお役に立てましたか?

役に立った

関連情報
RECOMMENDED CASE