本文へ
背景色
文字サイズ

事例検索 CASE SEARCH

株式会社加悦ファーマーズライス

-戦力として高齢社員が活躍できるよう65歳定年制を実施-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

下階層のタブがない場合、項目は表示されません

  • 上限年齢なしの継続雇用
  • 賃金・評価制度改定
  • 多様な勤務形態
  • 作業環境改善
株式会社加悦ファーマーズライスのロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1999(平成11)年
  • 本社所在地
    京都府与謝郡
  • 業種
    食料品製造業
  • 事業所数
    2ヵ所

導入ポイント

  • 高齢になってから入社した社員も長く活躍できる環境の整備
  • 製造工程表の早めの周知、フォークリフト導入、LED化で作業しやすい環境に
  • 安心して作業に専念できるよう健康管理体制を拡充
  • 従業員の状況
    従業員数 124人 / 平均年齢 55.3歳 / 60 歳以上の割合 46.0%(57人)
  • 定年制度
    定年年齢 65歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 上限なし 希望者全員
2023年02月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社加悦ファーマーズライスは、地域の雇用確保と地元産米の有利販売を目的に1999(平成11)年に設立した食料品製造業の会社で、地元名産の米を活用した日配の寿司などのチルド米飯、冷凍米飯の製造・販売事業を展開している。京都市内に営業所1カ所を設けている。

社員数は124人、社員の平均年齢は55.3歳である。社員構成の特徴について、年齢別には60歳以上の社員が57人(46.0%)を占めて最も多く、20歳代、30歳代は非常に少ない。雇用形態別には正規社員26人、非正規社員98人である。

採用状況については、同社は中途採用を中心に実施しており、採用実績は毎年度1人程度である。また、高齢者の採用も行っており、過去に65歳を超えた高齢者を採用したこともあり、その人は現在も活躍している。

〈加悦ファーマーズライス 外観〉

雇用制度改定の背景

■経緯

改定前の加悦ファーマーズライスの定年・継続雇用制度は「60歳定年、規程により希望者全員65歳まで再雇用」で、その後は、運用により希望者全員を上限年齢なく再雇用していた。

少子高齢化が進む中、同社が立地する地域雇用の人材不足が深刻化し、社員の確保が難しく、同社の社員の多くを占める製造部門の高齢化が進んでいる状況にあった。戦力として高齢社員が長く活躍できる環境を整備するため、同社は2019(平成31)年3月に65歳定年制を実施した

図表 雇用制度改定の概要 はその概要をまとめたものである

■制度改定に向けた課題とその対応

今回の65歳定年制実施の準備の取組みを同社は2019(平成31)年3月の改定の1年以上前から開始した。社員代表との協議を進める一方、全社員が参加する全体会議で制度改定の説明をして理解を得た。なお、65歳定年制実施に伴い、旧制度のもとで継続雇用に切り替わった再雇用者の対応については、処遇は変更されないものの雇用区分を正社員にした。

〈丹後のばら寿司〉

人事管理制度の概要

■65歳定年制実施に伴う人事管理制度の対応

加悦ファーマーズライスでは、65歳定年制実施に伴う60歳代前半層の人事管理制度の対応については、原則として60歳以前の制度を引き続き適用するが、退職金制度については、掛金の積み立てと給付開始時期を65歳に変更した。

■正社員

正社員の人事管理制度の概要を確認すると、社員格付け制度については役職制度のみで、正社員には「部長-次長-課長-係長-主任」の役職を、製造部門のパート社員には「パートリーダー - パート副リーダー」の役職をそれぞれ設けている。なお、同社は役職定年制を設けていないが、役職者が定年後、継続雇用に切り替わる場合は役職を離れる。

賃金制度については、基本給は職能給(等級号俸制)で、人事考課結果に基づいて昇給(賃金表内の昇号)を年1回行う。なお、65歳定年制に伴う昇給の停止などの対応は行わず、新定年年齢まで昇給は行う。賞与は「基準額×会社業績係数×賞与係数」によって年2回支給する仕組みとなっている。基準額は基本給、役職手当と業務手当からなり、会社業績係数は半期の経営業績をもとに月数を設定し、賞与係数は人事評価結果を用いて決めている。ただし、人事評価は年1回行うので、賞与係数は5月支給分のみに用いている。退職金制度は中小企業退職金共済制度を利用している。人事評価は目標管理制度を用いている。期初に、経営トップが全社目標と全社方針を発表し、それを受けて各部門長が部門目標、部門方針を決定する。各社員は、部門目標、部門方針を踏まえて目標管理シートを作成することになっている。人事評価は、役割、目標、能力、行動、勤務態度の5項目について行い、基準は「抜群」「上回る」「期待通り」「下回る」「支障あり」の5段階で評価する。各社員と中間面談を行い、状況確認や対策立案などを行っている。

評価結果は、昇給、賞与などの処遇に反映する。評価の流れについては、所属長による1次評価、部門長による2次評価の手順を踏まえて、社長はじめ幹部による会議で部門間の調整を踏まえ最終決定を行う。

■継続雇用制度

同社の継続雇用制度は、希望者全員上限年齢なしの再雇用制度である。雇用区分は嘱託社員、原則として正社員時代の業務を引き続き担当し、元役職者はさらに後進の指導も担当する。フルタイムの勤務形態を原則としているが、本人の希望により短日・短時間勤務に変更する、業務負担の軽減を希望する場合はパートタイムの雇用身分に切り替えるなどの対応を行い、それに併せて賃金等の待遇も見直している。

賃金制度については、現職継続のフルタイム勤務の場合、基本給は定年時の水準を適用する。賞与は「基本給×会社業績係数」によって、正社員と同じ年2回支給する仕組みである。また、継続雇用者を対象とした新たな退職金は支給しない。

高齢社員戦力化のための工夫

■製造工程表の周知

加悦ファーマーズライスが製造するチルド・冷凍米飯等の商品は、日や時間帯によって種類、数が異なるため、作業を行うチームはそれに合わせて編成する。製造部門の社員は作業内容(種類、数など)とチームのメンバーを把握しておくことが求められる。同社は製造作業工程表を前日に掲示して、事前に社員が担当する作業内容と、チームのメンバーを把握させ準備させるようにしている。

〈日々変わる作業チームの編成〉

健康管理・安全衛生・福利厚生

■働きやすい職場づくりの取組み

加悦ファーマーズライスでは安全衛生面については、加齢に伴う身体能力の変化を補いつつ、働きやすい職場づくりを図るため、フォークリフトの導入や照明のLED化等を進めている。フォークリフトの導入によって、これまでの米の運搬作業に係る負担が軽減され、高齢社員の身体的負担も軽減されている。

〈機械化により負担軽減を進める〉

■健康管理の推進

食品製造では厳しい衛生管理が求められる上、立ち仕事も多いために、徹底した社員の健康管理が不可欠である。同社は、①社員の健康診断の受診奨励、②人間ドック受診補助、③インフルエンザ予防接種の自己負担額補助を実施して、社員の健康管理体制を拡充している。①については、社員の健康診断の受診を奨励するため、健康診断の受診時間を勤務時間として組み入れ、診断結果で要指導、要精密検査となった社員に対して医療機関の受診を促している。②については、とくに60歳以上の社員には補助額の増額を行っている。③については、インフルエンザ予防接種を促すために全社員に自己負担額の補助を行っている。

〈衛生管理に加え、製造スタッフの安全・健康も重要〉

■休憩室の設置によるコミュニケーションの推進

製造部門は仕事の特性により、製造服、帽子、マスクを着用してチームで作業をしており会話は最小限にしている。そのため、社員同士の見分けが難しく、コミュニケーションがとりづらい。同社は作業施設内に休憩室を設けて、チームの休憩時にリフレッシュしたり社員同士のコミュニケーションがとれるようにしている。

〈徹底した衛生管理〉

今後の高齢者雇用の課題

加悦ファーマーズライスは今後の高齢者雇用の課題として、若手社員の確保と高齢になってから入社した高齢社員の定着の2つを挙げている。第1には、同社の主力部門である製造部門の高齢化が進んでおり、今回の雇用制度改定の背景の1つとなっている。蓄積してきた高齢社員のスキルや経験を継承させる若手社員の確保が課題となっている。

第2には、地域の雇用確保を主な目的として設立した同社は、高齢者の採用を積極的に進めてきたが、その一方で採用したにもかかわらず体調面を理由に退職してしまう高齢社員がみられている。人手不足状況にある同社にとって、戦力として活躍している高齢になってから中途入社した社員の定着が今後の課題と考えている。

〈焼鯖寿司〉
図表 雇用制度改定の概要
(出所) 株式会社加悦ファーマーズライスへのヒアリング調査をもとに執筆者作成。

事例内容についてお役に立てましたか?

役に立った

関連情報
RECOMMENDED CASE