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株式会社竹内農産

-定年制を廃止し、生涯現役の雇用体制を確立-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • 能力開発制度の改善

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  • 定年制廃止
  • 技術・技能のマニュアル化
  • 作業施設等の改善
  • 体力負担の軽減
株式会社竹内農産のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1974(昭和49)年
  • 本社所在地
    長野県小県郡
  • 業種
    食料品製造業
  • 事業所数
    2ヵ所

導入ポイント

  • 定年制を廃止し、生涯現役の雇用体制を確立
  • LED照明やフォークリフトを導入し、社員の作業負担を軽減
  • 作業能力を高めるため検定取得を全社員に奨励し、取得にかかる費用は会社が負担
  • 従業員の状況
    従業員数 91人 / 平均年齢 55.9歳 / 60 歳以上の割合 44.0%(40人)
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し / 役職定年 58歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 該当せず
2023年02月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社竹内農産は、1974(昭和49)年に設立した野沢菜漬けなどの漬物を製造する食料品製造業の会社であり、本社のある長野県内に直売所1カ所を展開している。社員数は91人、社員の平均年齢は55.9歳である。社員構成の特徴については、年齢別には60歳以上の社員が40人(44.0%)を占めて最も多い。雇用形態別には正規社員42人、非正規社員49人である。

採用状況については、同社は中途採用を中心に実施しており、採用実績は1年間に3人程度である。高齢者の採用も積極的に行っており、過去に74歳の高齢者をパート社員として採用したこともあり、その人は現在も同社で活躍している。

〈自然豊かな環境に立地する竹内農産〉

雇用制度改定の背景

■経緯

改定前の竹内農産の定年・継続雇用制度は「63歳定年、65歳までの継続雇用(希望者全員の再雇用制度)」であり、その後は運用で上限年齢なしの継続雇用制度(再雇用制度)としていた。

少子高齢化が進展する中、同社が立地する山間部は過疎化が進み、若年者の応募が減少し、社員の確保が難しくなる一方、同社の社員の多くを占める製造部門の高齢化が進んでいる状況にあった。また、定年後も継続して勤務を希望する者や65歳を超える高齢者の応募が増えたこともあり、戦力として高齢社員が長く活躍できる環境を整備するため、2019(令和元)年7月に定年制を廃止した。「図表 雇用制度改定の概要」はその概要をまとめたものである。

〈野沢菜は鮮度が大切〉

■制度改定に向けた課題とその対応

今回の定年制廃止に取り組み始めたのは2019(令和元)年4月頃で、大きな課題はなく社労士と相談しながら制度改定の準備を進めた。制度改定前に定例の朝礼で全社員に説明をして理解を得た。なお、定年制の廃止に伴い旧制度のもとで継続雇用に切り替わった再雇用者の対応については、パートタイム勤務のままとした。

人事管理制度の概要

■正社員

正社員の人事管理制度の概要を確認すると、社員格付け制度については役職制度のみで、製造職、販売職、事務職の各職種とも「部長-次長-課長-課長代理-係長-主任」の役職を設けている。なお、竹内農産では役職定年制を設けており、役職者は原則として58歳で役職を降りて一般社員となり、若手を育成する役割を担いながら、同じ部署で引き続き業務に従事する。

賃金制度については、基本給の決め方は初任給に昇給を積み上げていく方式をとっている。初任給の金額は職種別に設け、年1回、人事考課結果に基づいて昇給を行う。なお、一定年齢に達したら昇給は停止する。退職金制度は特定退職金共済制度を利用し、掛金の積み立ては制度改定前の旧定年年齢63歳までとし、63歳以降に受け取ることが可能である。

人事評価については、能力評価(年1回)と業績評価(年2回)の2種類を行っている。評価結果については昇給などに反映させている。

代表取締役が製造職の社員を評価し、事務職と営業職の社員は専務が評価している。評価のポイントは事務職、製造職の場合、コミュニケーション能力、PDCAによる業務遂行、報連相等であり、役職者の場合は部下のマネジメントなども評価される。営業職の場合は営業成績を中心にみている。

高齢社員戦力化のための工夫

■わかりやすい作業マニュアルの作成

製造部門では多くの高齢社員が勤務しており、作業を覚えるためのわかりやすい作業マニュアルが必要となる。竹内農産は品質管理課が作成した写真入りの作業マニュアルや手27引き書を社員の育成に活用している。これらのお陰で未経験の中途採用者でも早く作業方法が習得できるようになり、短期間での戦力化が可能となっている。将来的には動画による作業マニュアルを作成したいと考えている。

■検定取得の奨励

同社は漬物技術検定を年齢に関わりなく取得するよう社員に奨励している。元々、同検定は技能実習生を受け入れるための要件であるが、社員にとって作業能力のレベルがどの程度か客観的に把握することができ、作業能力を高めるための目標にもなっている。同社ではテキスト、講習会、講習会などへ参加するための交通費などの金銭的支援のほかに、資格取得者には資格手当を支給している。

健康管理・安全衛生

■作業施設等の改善

竹内農産が実施している主な作業施設等の改善は、①床暖房装置の導入、②LED照明の導入である。

第1の床暖房装置の導入については、寒冷地に立地している同社では製造業務の中の野沢菜等の洗浄に大量の水を使っているため、特に冬場は作業している社員の負担が大きくなるという事情がある。このため、同社は床暖房装置を導入して、作業の負担軽減を図っている

〈寒い季節でも人の手により丁寧に洗浄する〉

第2のLED照明の導入については、食品製造では異物混入等の事故発生防止に細心の注意を払うことが求められる。一方、製造ラインに従事している高齢社員にとって視力への負担はかなり大きい。このため、同社は高年齢者雇用安定助成金(注:平成29年3月31日に制度廃止)を活用して、照明のLED化を進めた。

〈作業員の視力への負担に配慮しLED化を進めた〉

この他の作業施設等の改善として、同社は重量物運搬のためのフォークリフト、野沢菜漬けの全自動包装機等の導入により作業の負担軽減を図っている。

〈漬け込みタンクを持ち込み産地から工場へ直送〉

■徹底した健康管理の推進

食品製造では社員に厳しい健康管理が求められており、毎日、朝の会議で検温や手の傷の有無等の確認を行い記録している。体調の確認時に少しでも異変が見られたら、無理をせず、その日の担当業務は製造のライン業務から離れた補助業務に切り替えている。

今後の高齢者雇用の課題

今後の課題として、竹内農産は人手不足を解消するため、高齢者も含め多様な人材を積極的に採用していくことを考えている。過疎の進んだ山間部に立地していることもあり、以前より若年者の採用には苦慮しており、広告などの投資をして若年者を募集するより、地元に根付いて生活している人たちの雇用に費用を投じることの方が効率的であると考えている。地元には高齢者も多いこともあり、高齢者に優しい職場を作るために、高齢者が衰えがちな、目、腰、膝などに負担がかからない作業環境を作るなど、さまざまな工夫にも取り組んでいきたいと考えている。

図表 雇用制度改定の概要
(出所)株式会社竹内農産へのヒアリング調査をもとに執筆者作成。

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