本文へ
背景色
文字サイズ

事例検索 CASE SEARCH

株式会社 ヴィオーラ

-70歳雇用の前提は安心・安全・仲間が笑顔で待っている会社-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • 能力開発制度の改善
  • コンテスト入賞企業

下階層のタブがない場合、項目は表示されません

  • 上限年齢なしの継続雇用(基準あり)
  • 職域拡大
  • 作業環境改善
  • 健康管理
株式会社 ヴィオーラのロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1962(昭和37)年
  • 本社所在地
    水戸市
  • 業種
    洗濯・理容・美容・浴場業
  • 事業所数
    4か所

導入ポイント

  • 改定の契機:従業員の顕著な高齢化に対応するため
  • 65歳定年、希望者全員70歳まで継続雇用(70歳以降は基準により上限年齢なく再雇用)
  • 多能工化による職域の拡大
  • 従業員が主体となった3S活動により働きやすい職場環境への改善を推進
  • 改定の効果:採用後の定着率の向上と従業員重視の職場風土の改善
  • 従業員の状況
    従業員数 72人(2023(令和5)年6月現在) / 平均年齢 60~64歳9人 、65~69歳6人、 70歳以上4人 / 60 歳以上の割合 26.4%(19人)
  • 定年制度
    定年年齢 65歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 ・希望者全員 ・ 70歳以降は基準該当者を上限年 齢なく雇用
2024年04月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

 株式会社ヴィオーラは1962(昭和37)年に設立。以来、60年間にわたっておしぼり・マット・タオルのレンタルを提供している会社である。

 同社が取り扱う商品は、飲食店・ホテル向けのレンタルおしぼり、今治タオルを使用した最高級レンタルおしぼり、商談・法人用のビジネスおしぼり、美容室・エステサロン向けのレンタルタオルのほか、病院・介護施設向けのレンタルタオルも扱っている。用途別に生産拠点(おしぼり専用の第一工場、リネン専用の第二工場、メディカル専用の第三工場)を設け、部門ごとに専用車両で全国へ配送している。

<株式会社ヴィオーラ第一工場 外観>

 社員数72人(非正規社員58人を含む)、そのうち60歳以上の社員は19人で(26.4%)、70歳以上は4人(5.6%)で、全体の平均年齢は48.2歳である。職種は、製造職・営業職・事務職で構成され、正社員18人の年齢構成は20歳台が6人、30歳台が2人、40歳台が8人、50歳台が2人となっている。

 2010(平成22)年に就任した3代目の現社長は、「日本一社員の喜ぶおしぼり会社になること」を経営方針に掲げ、高齢者や障害のある人たちを積極的に雇用。それを機に「働く仲間に寄り添う」ことにフォーカスした気付きが社内で浸透し、様々な相乗効果を生んでいる。

<今治タオルを使用したおしぼり>

雇用制度改定の背景

■高齢者雇用制度の早期導入

 雇用制度の見直しは、17年前に当機構の高年齢者雇用アドバイザー(現在の70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザー)から助言を受けたことに始まる。当時は最高齢者が51歳で平均年齢35歳前後であったこともあり、当面の対応は不要と考えていたが、当該アドバイザーから「多くの障害者を雇用している貴社においては、障害者を含めた従業員の高齢化対策を早期に進めた方が良い」とのアドバイスを受け、2007(平成19)年に定年60歳、希望者全員65歳までの継続雇用制度を導入した。なお、現在、同社のグループ会社全体では40名を超えるチャレンジャー(同社では雇用する障がい者をチャレンジャーと呼んでいる。以下同じ。)が活躍している。

■顕著な高齢化に対応

 その後、若年者の採用難により中高齢者の採用が進み、2020(令和2)年には70歳以上の者も在籍するようになり、数年後には全従業員の3人に1人が60歳以上になることが見込まれ、従業員の高齢化が顕著となった。これにより、高齢者雇用対策の必要性が現実的な課題となってきた。そこで、2021(令和3)年より定年年齢や継続雇用年齢の引上げの検討を開始し、2022(令和4)年3月に定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、希望者全員70歳まで継続雇用する制度、その後は一定条件のもと年齢上限なく再雇用することを就業規則に明記し、生涯現役の道を開いた。

 70歳まで働ける制度への改定には社会的な要請もあるが、今後、若年労働者の確保には不確定な要素がある中、正社員(チャレンジャーも含む)の年齢層も50歳台、60歳台に推移してくることも鑑み、高齢者でも働ける会社づくりとそれに見合った従業員の意識転換を見据えたものである。

人事管理制度の概要

■正社員

 社員格付け制度は職能資格制度と役職制度からなり、役職制度の職制は、販売職と事務職は「部長-課長-係長-主任」、製造職は「工場長-主任」となっている。

 賃金制度については、基本給は年齢給と職能給から構成。職能給は職能資格制度に対応した等級表が設けられ、人事考課結果により年1回の昇給があり60歳で停止する。賞与は基本給×月数×係数で決定している。

 評価制度は、能力評価と業績評価の2種類があり、能力評価は基本給に業績評価は賞与に反映させている。なお、評価の流れは、所属長による一次評価と部課長共同による最終評価の2段階方式で行っている。

■継続雇用者に係る諸制度の準備

 同社の場合、現在、正社員の最高齢者が56歳であり65歳の定年を迎えて継続雇用となっている者の実績はない状況であるが、従業員の高齢化に対応した将来的な会社の継続(高齢者を主戦力とする経営形態への移行準備)を踏まえ、定年後の継続雇用者に対する諸制度として、「正社員の役職定年を60歳とし役職を外れた後は若手をサポートしながら担当業務に従事すること、継続雇用者用の賃金表を新設すること、正社員に準拠した評価制度の運用、会社への貢献度や評価結果に応じて賃金支給額をアップダウンさせる仕組みの導入」などを検討している。

高齢従業員戦力化のための工夫

■柔軟な雇用形態の設定

 高齢者の活躍に基軸を置いた雇用管理を進めるにあたり、同社では50歳・60歳・65歳に到達するパート社員に対してはその3か月前に個人面談を行い、柔軟な雇用形態(短日・短時間勤務など)について話し合う機会を設け、本人の希望に沿った働き方の選択を認めている。また、この場は会社が期待する役割と本人が認識している役割を双方で共有する機会となっている。

 また、全パート社員に対しては、これとは別に現場のリーダーが年2回のヒアリングを行い人間関係や業務上のトラブルなどを聴取した際には、他に責任を転嫁するのではなく会社全体で補うことをスタンスとしたアドバイスを行っている。

■多能工化による効果

 おしぼり専用の本社工場と美容室・エステサロン向けのタオルを扱う工場とでは作業内容は異なるが、一定期間その担当者を交換することで他工場の作業を習得する取組を行っている。 従前は、おしぼりを巻く担当者はその仕事のみに専念していたが、これにより他の作業も遂行できるようにした。

 これは、会社全体の業務を従業員一人ひとりに理解してもらう観点もあるが、片方の工場における生産で遅延が発生し、納期までに間に合わない場合には臨時の応援体制を組むことが可能となり、ベテランのパート社員の職域拡大にも寄与している。

■ペア就労による負担軽減

 配送スタッフの高齢ドライバーは、商品の配送・回収作業も兼ねているため、その作業が身体的な負担となっていた。そこで若いチャレンジャーがトラックに同乗し、重量物の運搬や荷台の整理を担当することで当該ドライバーの身体的・体力的負担が軽減され、運手業務に専念することが可能となり業務の効率化につながっている。

健康管理・安全衛生・福利厚生

 現社長が就任した際に経営状態の改善に向けて最初に着手したのが「3S活動による働きやすい職場づくり」であった。後に「3Sリンゴの木(りんごは良い土壌で実ることに由来して命名)」となるチームが土台となって、職場の風土改善に向けて従業員が主体となる活動に横展開している。

■リーチリフトの導入

 高齢のパート社員がおしぼりケース(1かご40本入り)を平台車に5段積みにして移動する作業は、バランスの維持が難しく危険を伴うものであった。また、当該ケースを所定の場所に運搬するために使用するカウンター式のフォークリフトは前方を5段積みのケースで遮られるためバック走行となり、高齢のパート社員は利用できなかった。そこで、リーチリフトに転倒防止のかごを取り付けることで5段積みケースの2列積載を可能とし、操縦の安全確保と業務効率の向上につなげた。

【安全衛生委員会チームの提案】

■視力低下の対策

 出荷前に異物混入等のチェックをする検収作業は目を酷使するため視力が低下している高齢従業員にとっては大きな負担となっていた。そこで、局所照明用の蛍光灯を設置して手元を見やすくして負担を軽減した。

【3Sりんごの木チームの提案】
<局所照明の導入>

■ストレッチヨガで腰痛防止

 おしぼりやタオルは重量物であるため、その運搬作業に携わる高齢従業員には腰痛者が多くなっていたことから、月1回インストラクターを招いてストレッチヨガを行い腰痛防止に努めている。2018(平成30)年からの取組で、最近は腰痛による長期休暇をとる従業員が減っている。

【健康一番チームが推進】
<腰痛防止のストレッチヨガの様子>

■福利厚生

 従業員の労をねぎらうため、2か月ごとに誕生月の人にお誕生会を開催し、最高の料理とおもてなしを提供している。 誕生日を迎える人の名前は掲示されるので「おめでとう」の声をかけられ話がはずみ、高齢者と若年者の距離がぐっと近くなっている。
【3happyチーム 50代社員の提案】

制度改定の効果と今後の課題

■効果

 活き活きと働いている高齢者の姿を60歳未満の従業員が見ているので、将来的にもそのように働けるという安心感が生まれている。経営的には人手不足の中でもベテランの高齢従業員がしっかりと能力を発揮して就労している部分が大きなメリットとなっている。

 以前は、配送業務の担当者を採用しても業務負担の要因もあり、その出入りが多かったが、高齢者を含めた働きやすい職場づくりを進めることによって目に見えないところではあるがその定着率は向上している。

 従業員の負担を減らして楽をさせてあげたいというのが働きやすい職場づくりの原点である。その取組みの恩恵が高齢者のみならず職場全体に広がり、従業員の笑顔も増え、安心安全、仕事が楽しい、自分が存在していい場所がある、明日も仕事に行きたいということを実感していただいている。

■課題

 高齢従業員にとって最も重要なことは、「健康の維持増進」と同社は考えている。 職場の環境整備は諸チームの努力によりその改善が進んでいるが、健康の維持管理は高齢者自身の努力が必要である。 理想は「70歳を超えてもこれまでと同じように仕事ができること」である。40代、50代で健康づくりの基礎がつくられれば、その維持は延長線上にあるので無理がない。 その対策の一つとして、社会保険組合の健康アプリを活用して日々のウォーキングを推奨し、健康の維持・筋力の低下軽減をサポートしていきたいと同社は考えている。

 併せて、今後、65歳定年後の継続雇用者が出てくることを踏まえ、その人事管理諸制度を整備していく必要性を同社は考えている。

事例内容についてお役に立てましたか?

役に立った

関連情報
RECOMMENDED CASE