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セントラル建設株式会社

-定年年齢、継続雇用の上限年齢をそれぞれ5歳引上げ-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 処遇継続
  • 技能伝承
  • 新職場・職務の創出
  • IT 機器導入による負担軽減
セントラル建設株式会社のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1961年
  • 本社所在地
    岐阜県恵那市
  • 業種
    総合工事業
  • 事業所数
    6カ所

導入ポイント

  • 定年年齢、継続雇用の上限年齢をそれぞれ5歳引上げ65歳定年と70歳継続雇用に
  • 継続雇用上限年齢の70歳到達後も、一定の条件を満たした者を対象に上限年齢なしの再雇用に
  • 継続雇用では高齢従業員の事情に合わせて短時間・短日勤務を可能に
  • 従業員の状況
    従業員数 119人 / 平均年齢 48.3歳 / 60 歳以上の割合 32.0%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 60歳 後任がいない場合は役職を継続
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 一定条件の下70歳まで再雇用、70歳以降 一定条件の下、年齢 の上限なく再雇用
2024年01月29日 現在

同社における関連情報

企業概要

セントラル建設株式会社は、1961(昭和36)年に設立された建設業の会社である。同社が立地する岐阜県を中心に6カ所の事業拠点を展開している。
従業員数(2021年4月現在)は120名で、雇用形態別には正社員105名、年齢別には60歳以上の社員42名の構成となっており、従業員の平均年齢は49歳である。
採用状況について、同社は新卒採用を毎年1~2名程度、業務の状況などを見ながら中途採用(パート、短時間勤務者など)を年に10人前後行っている。

雇用制度改定の背景

■経緯

2018(平成30)年10月までの同社の定年・継続雇用制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用制度(再雇用制度)、65歳以降の雇用上限年齢なしの継続雇用(再雇用制度)」であった。65歳までの継続雇用は、60歳の定年年齢の到達者を対象に希望者全員を嘱託社員(1年契約)またはパートタイム(1年契約)として継続雇用する制度である。嘱託社員はフルタイム勤務で、短日・短時間勤務を希望する者はパートタイムとして雇用する。65歳以降の雇用上限なしの継続雇用制度は、65歳の雇用上限年齢に達した再雇用者の中から業務に取り組む姿勢や健康状態などに問題がない者を再雇用する制度で、個別対応により雇用区分や勤務時間などの待遇が決められている(図表1)。

建設業界全体の人手不足の状況のなか、社員構成の高齢化が進む同社は、長年の仕事経験を持つ高齢従業員が年齢に関わりなく働ける環境整備に迫られていたことに加え、各部署からベテラン従業員が蓄積している技術や知識・ノウハウの若手従業員への継承の要望が寄せられていた。そこで、同社は、2018(平成30)年11月に65歳定年制の導入、ならびに継続雇用制度(再雇用制度)の雇用上限年齢の引上げを実施した。図表1は、雇用制度改定の概要を整理したものである。

図表1 雇用制度改定の概要
セントラル建設株式会社のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

■雇用制度改定の課題と工夫

同社に労働組合はないため、今回の雇用制度改定に際しては、従業員と意見交換を通じて制度改定を進めた。ベテラン従業員からは健康維持、収入面の安定のためにも長く働くことができる環境を整備してもらいたいとの意見が寄せられていた。

人事管理制度の概要

■雇用制度改定前

まず正社員の人事管理について概観すると、社員格付け制度は職能資格制度と役職制度からなり、職能資格制度は8等級から構成される。役職制度は「部長-次長-課長-課長代理-職長-係長-班長-主任」の8ランクであり、部長から課長代理までが管理職、職長から主任までが監督職である。

賃金制度については、月例給は、年齢給と職能給からなる「基本給」に、普通社員に支給する「業績手当」、現場社員に支給する「技能手当」、そして役職手当、資格手当、通勤手当等の「諸手当」が加わる。基本給の決め方をみると、年齢給は年齢に応じて決まる賃金であり、58歳まで年齢に応じて昇給するが、それ以降は60歳の定年まで同一金額となる。この年齢給は、普通社員と月給制と日給月給制の現場社員に支払われ、日給制の現場社員には支払われない。職能給は、等級別号俸給で、職能資格制度の等級に対応した賃金表の金額が支給される。昇給は、人事評価結果に基づいて賃金表の号俸が昇号する。なお、定年前の昇給停止は行われず、定年まで昇給が行われる。賞与の決め方については、現場社員を例にすると「基本給×係数」で、係数は人事評価結果(5段階評価)に基づいた一定率が用いられている。

人事評価については、年1回の能力考課と年2回の業績考課が行われ、評価結果は能力評価が昇格と昇給に、業績評価は賞与にそれぞれ反映される。評価手続きについては、所属長(課長)による1次評価が行われ、その後、役員会による最終評価が行われる。
定年前の役職定年については、部長・次長クラスは設けておらず、課長以下の役職者は55歳時点で役職から離れる。継続雇用では、後任の役職者のサポートと現場業務に従事する。
退職金については、建設業退職金共済制度と中小企業退職金共済制度を利用し、定年退職時に従業員と話し合いの上、その時点で支給するか、継続雇用終了時まで掛け金を継続して支給するかを決めている。

つぎに60歳の定年に到達し継続雇用に切り替わった後の人事管理を概観すると、雇用制度は、希望者全員の65歳までの継続雇用制度(再雇用制度)と65歳以降の雇用上限なしの継続雇用制度がある。なお、65歳以降の雇用上限なしの継続雇用は個別対応で処遇を決めているため、以下は65歳までの継続雇用制度を紹介する。

人事制度については、社員格付け制度は定年時の等級を継続する。役職は、定年退職時に外れ、現場業務に従事する。
賃金制度ならびに人事評価制度は、正社員の制度が適用される。なお、定年時の業務を引き続き担当する場合、水準の見直しは行われないことを原則とし、継続雇用時に担当業務を含めた待遇は個別交渉で決められている。
勤務時間は、フルタイムの他に短時間・短日勤務を選択することができ、その場合の賃金の支給額は時間比例で算出される。

■雇用制度改定後

65歳定年制導入に伴う人事管理制度の見直しは大きく行われず、正社員化した60歳代前半の人事管理制度(社員格付け制度、賃金制度、人事評価制度)は、60歳未満の正社員の人事管理がそのまま継続される。なお、役職定年については旧定年年齢の60歳到達時に管理職は役職を外れ、後進の指導を中心に現場業務に従事するが、後任の役職者がいない場合は、後任者が育つまで引き続き役職を継続している。退職金については、建設業退職金共済制度と中小企業退職金共済制度を利用した積み立てが新定年年齢の65歳まで行われ、定年退職時に支給している。

雇用上限年齢が5歳引き上げられた継続雇用制度について概観すると、70歳までの継続雇用制度の対象者は、65歳の定年到達者を対象に継続雇用を希望した者の中から一定の条件を満たした者としている。70歳以降については、70歳に達した者を対象に一定の条件を満たした者が継続雇用者となり、雇用期間と雇用形態は改定前と同じもの(70歳までの継続雇用制度:嘱託社員〔1年契約〕、パートタイム〔1年契約〕、70歳以降の雇用上限なしの継続雇用制度〔1年契約〕)が継続されている。
なお、一定の条件を満たしているかどうかの判断は、業務に取り組む姿勢や健康状態が良いかどうかで判断している。

人事管理制度についても改定前の人事管理の個別施策(社員格付け制度、賃金制度、人事評価制度、退職金等)などが継続されている。

高齢従業員戦力化のための工夫

■新職場の創設・職務の開発

同社は、事業の多角化として農業分野に進出し、高齢従業員が中心となって働くための新たな職場を開発した。昨今の農家減少などから耕作放棄地や空き地が増えており、同社では建設業に使用する重機などを所有していることから、こうした土地の再生・再利用しての農作物づくりを事業化した。農業分野のノウハウがなかったため、専門家の指導などにより建設現場で培った車両系建設機械運転技術等を活かした農園を整備した。農業事業は、工事現場の仕事が少ない時、また農業の繁忙期などに若手従業員も手伝うようにしている。この取り組みを通じて高齢従業員が若手従業員に指導をしたり、相互にコミュニケーションをとったりすることが多くなり、若手従業員への教育にもなっている。

■高齢従業員に対するフォロー体制

業務に必須なIT機器の取扱いに関しては、若年従業員が高齢従業員をフォローする体制をとっている。また、これに限らず、不明なことはお互いに教えあうなど相互補完して工夫しており、若手従業員と高齢従業員が協力しあう体制ができている。

■作業環境の改善の取組み

同社では業務を簡素化するために、使用設備などのチェックを担当する者と、現場で作業する者を分け、現場で作業する者は作業のみに集中できるようにしている。また、車両系建設機械を導入し、これまで数日間かかる作業の身体的な負荷を大幅に軽減するなど、身体的な負荷の軽減などにも取り組んでいる。

■社内行事を通じた地域貢献

同社は地域住民が気軽に参加できる「住まいるバザール」を毎年4月に実施している。農場で採れた農作物を使った加工食品の試食会や体験コーナーなどもあるので、会社の取り組みが地域住民に理解され、高齢従業員のモチベーションになっている(コロナ禍の間は休止)

健康管理・安全衛生・福利厚生

■健康管理

健康診断のほかに、年間を通して産業医による健康相談を毎月実施しており、申し出があれば、メンタルヘルス相談も実施している。また、インフルエンザ予防接種も、費用を会社負担で全従業員が受けられるようにしている。
治療中の持病やケガの履歴がある高齢従業員については、周囲の者が声掛けをするようにして、危機管理に結び付けている。
身体の衰えなどがあるのに責任感から作業を進めてしまい負傷しないよう、高齢従業員からの相談を受け付けるようにしている。

■福利厚生の取組み

各職場に休憩スペースを設け、時間に関係なく休憩をとって、疲労を回復させるようにしている。また、野球や釣りなどのサークル活動の費用を一部負担して、リフレッシュや従業員間のコミュニケーションの向上につながっている。

今後の課題

高齢者雇用に関する今後の課題として、同社は全従業員が互いに助け合う職場環境の整備をあげている。先に紹介したように業界として慢性的な人手不足の状況にあり、高齢従業員は貴重な戦力として活躍してもらうために、同社は働く環境の整備に取り組んでいる一方、同社の将来の中核を担う若手従業員の育成も重要な経営課題の1つである。そのためには、高齢従業員だけではなく若手従業員の育成にも努め、世代を超えた助け合いができる職場環境を整備することを今後の課題としてあげている。

図表2 高齢従業員 (60歳以降) の人事管理制度の変化
(注1)雇用制度改定後の人事管理の変化について 「正社員」 は60歳未満の人事管理制度と比較した内容、 継続雇用制度は改定前の継続雇用制度と比較した内容である。
(注2)雇用制度改定前の65歳以降の雇用上限年齢なしの継続雇用制度 (再雇用制度)、 雇用制度改定後の70歳以上の雇用上限なしの継続雇用制度 (再雇用制度) はそれぞれ個別対応により処遇を決めているため掲載していない。
(出所) セントラル建設株式会社のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

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