本文へ
背景色
文字サイズ

事例検索 CASE SEARCH

株式会社フロイデ

-高齢従業員の役割は「指導」して「相談」に乗れる「教育者」-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

下階層のタブがない場合、項目は表示されません

  • 定年廃止
  • 外国人スタッフへの指導
  • IT 機器の導入による負担軽減
  • 多様な勤務形態
株式会社フロイデのロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    2002年
  • 本社所在地
    愛知県名古屋市
  • 業種
    社会保険・社会福祉・介護事業
  • 事業所数
    2ヵ所

導入ポイント

  • 外国人スタッフの生活上の相談に乗り、日本語の意味や表現を教える高齢従業員
  • IT機器やQRコード、機械化で高齢従業員の作業時の負担を軽減
  • 高齢従業員の体調や都合に応じて勤務時間を柔軟化
  • 従業員の状況
    従業員数 60人 / 平均年齢 50.0歳 / 60 歳以上の割合 26.7%
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 該当せず
2021年08月31日 現在

同社における関連情報

法人概要

株式会社フロイデは、2002(平成14)年、「全ての人の笑顔を目指して」を経営理念に有限会社として創業、その後、株式会社に改組して業容を拡大、現在は住居型有料老人ホーム、グループホーム、居宅型介護支援事業、訪問介護事業を行っている。

従業員は60名(うち非正規雇用労働者19名)、年齢構成で見ると60歳未満44名、60歳代前半層5名、同後半層7名、70歳以上4名、平均年齢は50.0歳である。60歳未満の従業員のうち10歳代から30歳代まではそれぞれ数名であり、ほとんどは40歳代である。業務別では看護職4名、事務職3名、用務1名以外はすべて介護担当者であり、60歳以上の介護担当者は8名となっている。

雇用制度改定の背景

■経緯

フロイデは、かつて定年を延長している。60歳から70歳への定年延長を2017(平成29)年に行った。当時、60歳定年後も継続雇用される高齢従業員は多く、仕事ぶりは定年前と変わることはなかったことから、70歳への延長が決まった。

定年延長後もフロイデでは、高齢従業員の働きやすい職場環境づくりに努めていたが、定年到達者は再雇用者として働くことが一般的であり、就業意欲も高く、仕事ぶりに問題はなかった。また高齢従業員からも「70歳を超えても元気なうちは働きたい」「職場で利用者や同僚から喜んでもらえることが嬉しい」など、70歳代でも働き続けたいとの声が多かったことから定年廃止が検討されるようになり、2019(令和元)年に定年廃止に踏み切った。それまでの就業規則第48条
には「従業員の定年は満70歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする」と規定されていたが、現在の第48条は「定年条項を廃止する」と改められている。

なお、70歳定年時は、定年後再雇用が就業規則に明記されており、「業務上必要とし、且つ健康で勤務に耐えられると会社が認めた場合は、70歳を超えて定年を延長し、または再雇用することがある」とされていた。定年が廃止されたため再雇用制度も廃止された。

人事管理制度の概要

■賃金制度

フロイデの賃金は、基本給と職能給と諸手当からなる。賃金の約4分の3を占める基本給は年功を反映しており、60歳まで昇給する。その後も若干の昇給が続く。約4分の1を占める職能給部分は、職業能力評価制度による評価シートに基づいて決定する。評価は「入浴介護時のシャワーの温度が適切か」など業務に密着した170以上の項目からなる。本人と管理職双方で評価し、結果は昇給と賞与に反映される。昇給は年1回である。

社会福祉専門職の介護に関する国家資格である介護福祉士資格を持つ従業員は、給与と賞与で優遇されている。なお、年3回(春、夏、冬)支給される賞与は、年間の評価に加え、出勤率、その他の要素で決定している。また、希望者には70歳まで加入可能な確定給付型企業年金制度を導入、会社が一定額を補助している。退職金も制度を変更して70歳まで加入できるものとなっている。

■教育訓練制度

フロイデでは、評価シートで把握できた各従業員の課題を人材育成につなげている。本人評価と会社評価が大きく異なる場合、そこに教育ニーズが見いだされる。この対象には高齢従業員も含まれ、会社は外部研修も含めた機会を用意し参加を促している。

高齢従業員戦力化のための工夫

フロイデの求人には高齢者の応募も多い。ある時は応募者5名のうち4名が60歳以上であった。また、70歳代後半の高齢者からの応募もあったという。

応募してくる高齢者は、福祉現場未経験の者が多い。会社では体力・基礎的な能力があれば年齢にかかわらず原則として採用しているが、仕事に慣れず1日で退職する者もいる。しかし、ほとんどの高齢従業員は真面目であり、長く仕事に従事してくれており、離職率は非常に低い。

フロイデで働く最高齢者は、現在77歳の女性で生命保険会社勤務の経験があり、フロイデには70歳から勤務している。現在はパートの介護職員として午前中のみ勤務して、利用者向け調理を中心に、利用者のトイレ介助も担当している。また、60歳代で介護業務担当の高齢従業員は、大企業出身で管理業務にも優れ、フロイデが業務マニュアルを整備するにあたって多くの助言を行なっている。

高齢従業員を適材適所で活かすため、フロイデではさまざまな工夫を行なっている。 

■外国人スタッフの相談相手・日本語の教え手

福祉に携わる人材不足解消のため、フロイデでは数年前から外国人スタッフの採用が始まった。現在は20歳代を中心としたフィリピン人スタッフ6名が在籍しており、技能実習生と留学生である。留学生は勉学を最優先させ、技能実習生は法令を遵守した範囲の中で、無理なく勤務させている。異国での慣れない生活をしながらの仕事は苦労をともなうが、人生経験豊富な高齢従業員が、彼ら外国人スタッフの良き相談相手として適任ではないかと会社は考えていた。

現在、フロイデでは外国人スタッフに対する仕事の指導は40歳代前後の管理職が行ない、高齢従業員は、日常生活で彼らが困ったことへアドバイスし、日本語の勉強会を開いて教えている。外国人スタッフは、日本語能力検定試験(N2)合格が目標となっている。

高齢従業員が特に真価を発揮するのは、日本語の解説である。外国人スタッフには言葉が理解できても、その言葉が使われる背後にある日本人の感情までは分からない。また、日本人の表現を理解するのも難しい。「入居者がこう言っている時は、これをして欲しいと思っている」と教えるのが高齢従業員の役割である。その結果、彼らの日本語理解力は向上し、生活上の不安が解消されている。利用者からも頼りにされる存在となっている。

■短時間勤務の導入

フロイデでは、60歳以上のパート従業員は、体調や個人の事情に応じて短時間勤務が選択できる。就業規則などに明記された制度ではないが、適切に従業員に周知した仕組みであり、個々人の体調や要望に応じて柔軟に設定している。高齢パート従業員の一人は、勤務時間を7時から12時までの5時間から7時から9時までの2時間に短縮している。

短時間勤務導入の背景には世代によって希望する働き方が異なることが背景にあった。子育て世代からは「土日や祝日は家族で楽しみたい」「学校行事に参加したい」「子どもが急に病気になった時の勤務変更を柔軟にしてほしい」という要望が、一方、高齢従業員からは「長時間の勤務は難しいので、できれば自分のペースで働けると嬉しい」との希望が上がっていた。

各世代が働きたい時間に働け、お互いに勤務しやすいこの仕組みにより、高齢従業員は、子育て世代が抜ける時間を数時間埋めるなど負担の軽い働き方ができる。

■余裕を持った人員配置

各職場の人員配置は余裕を持たせており、高齢従業員が体調不良などで欠勤を余儀なくされても業務に支障が出ないようにしている。また、事務の従業員も介護の経験や資格を持っているため、突発的な事態が起こっても現場に応援に向かえる体制となっている。

■高齢従業員を講師にした研修の実施

フロイデが行なっている社内研修では、若手従業員に対する技能伝承の一環として高齢従業員が自身の経験談を語って聞かせることもある。例えば、70歳の元看護師の経験談は若手従業員に大いに参考になっている。

■資格取得の奨励

フロイデでは高齢従業員も含め、前述の介護福祉士などの資格取得を奨励している。「試験を受けても落ちたら恥ずかしい」と躊躇する高齢従業員もいるが、会社では資格取得を促している。

健康管理・安全衛生・福利厚生

■IT機器導入による負担軽減

高齢従業員が担当する業務として、施設利用者の血圧・体温・酸素飽和度等の測定と記録がある。従来は書庫から利用者のファイルを取り出し、それぞれの測定器具の入ったカバンを取り出し、それを持って利用者のもとに行き、測定後はファイルに手書きし、カバンとファイルを元の場所に戻し、次の作業に移っていた。手書きと機材運びの負担軽減を目的にタブレットによる測定と自動入力に切り替えた。負担軽減に加えて記入ミスの恐れがなくなり、作業時間も短縮化、次の仕事に迅速に移れるようになった。導入に際しては高齢従業員でも抵抗なく使えるよう、自分で操作する部分を少なくしている。

また、利用者に日々飲んでもらう薬を準備する際、これまでは2人で担当してダブルチェックを行なっていたが、現在は利用者個々にQRコードを登録しており、作業は1人で担当でき、時間短縮も実現した。

■機械化による負担軽減

従業員に最も身体的負担がかかる業務は入浴介助である。そこでリフト浴装置を導入、機械が利用者を支えるので高齢従業員の負担は軽くなるだけではなく、利用者も安全に入浴できるようになった。

また、これまでは従業員が用具を抱えて巡回していたが、現在は容易に動かせる台車に用具を装備して巡回しており、やはり体力負担が軽減されている。

■夜勤の軽減

フロイデでは正社員の負担軽減のため、勤務シフトを組む際にはなるべく夜勤を入れないようにしている。ただし夜勤手当に相当する額を毎月支給しており、状況に応じて夜勤に入ってもらう。

■休憩室の充実

これまでフロイデでは、職場の休憩室として打ち合わせスペースを使っていた。仕事をしている従業員と休憩している従業員が一緒のため、必ずしも落ち着ける雰囲気ではなかった。現在はパーティションで区切った空間が設けられており、仮眠用のベッドも置かれている。リフレッシュできる環境となった。

今後の課題

フロイデは、これからの高齢者雇用の可能性を肯定的に捉えている。近年、フロイデ利用者の年齢は以前より10歳程度上昇しているが、これは働ける年齢が同様に上昇しているとも考えられ、また、利用者との年齢バランスを考えれば高齢従業員が担当者として相応しいと会社は考えている。

一方、高齢従業員にとっては、会社で働くことで社会との接点が持て、生きがいにつながっている。働く時間が短くなると社会との関わりが少なくなってしまうので、勤務時間を短くしたくないと考える高齢従業員もいると言う。

人手不足に悩まされていたこともあり、フロイデは高齢従業員の持つ価値の高さを認識している。そのメリットを享受している現在、「人生経験も豊富で真面目で仕事に責任感も強い方が多い60歳以上の方を積極的に採用する」というのが現在のフロイデの方針である。若年従業員や外国人スタッフ育成に欠かせぬ人材として高齢従業員の存在は大きい。

フロイデは、高齢従業員の役割を、若手従業員や外国人スタッフを「指導」し、彼らの「相談」に乗れる「教育者」ととらえ、継続的に研修機会を提供し、働きたい時に意欲的に仕事に取り組んでもらえる環境で、その強みを発揮してもらおうと考えている。

事例内容についてお役に立てましたか?

役に立った

関連情報
RECOMMENDED CASE