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株式会社わたなべ生鮮館

-賃金、評価制度等の改定により安心して働く事ができる環境を実現-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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株式会社わたなべ生鮮館のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1994(平成6)年
  • 本社所在地
    岡山県岡山市
  • 業種
    スーパーマーケット業
  • 事業所数
    11店舗

導入ポイント

  • 65歳までの定年延長等の雇用制度改定に合わせ、高齢従業員の不安材料となっていた諸制度(賃金・評価制度等)を整備
  • 65歳までの定年延長と併せて70歳以降の継続雇用制度も導入
  • 継続雇用者にも人事考課を実施し、結果を昇給や賞与に反映
  • 公的助成金を活用した高齢従業員の無期雇用転換を推進
  • マテハン機器による作業負荷の軽減
  • 従業員の状況
    従業員数 正社員127名 /契約社員14名/ パート178名 /アルバイト78名/合計397名(2025.03.31時点) / 平均年齢 45.9歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳(13.5%)、65歳~(27%)
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 定年後は、希望者全員70歳まで継続雇用、以降も基準該当者を75歳まで継続雇用
2025年02月01日 現在

同社における関連情報

沿革・理念

1994(平成6)年有限会社わたなべ生鮮館として創業。鮮魚店(株式会社渡辺鮮魚)を起源とし、当初は地元スーパーマーケットの鮮魚売り場にテナントとして出店。以来、精肉・青果・惣菜・その他商品の仕入・加工・販売を事業とする。2018(平成30)年からは株式会社マルイ設立の株式会社マムハートホールディングスの一員となる。現在は岡山県内に11店舗を展開している。

雇用制度改定の背景

Q.従業員の年齢構成は。

人口ピラミッドで言うと逆三角形。40歳より上がボリューム層で、中でも65歳以上が全体の1/4を占めます。

Q.雇用制度改定のきっかけはなんでしたか。

若い世代の採用が厳しい中、多くの店舗で経験豊かな高齢者を戦力とすることが必要になっていました。現社長の就任を機に、今までより長く働けるように、従業員がより安心して働きやすくするための仕組みを整理したことがきっかけです。定年は60歳から65歳へ延長し、希望者全員70歳までの継続雇用を可能としました。さらに70歳以降についても本人の希望や適性、評価、健康状態等を考慮して75歳までの継続雇用も制度化しました(図表参照)。併せて懸案となっていた賃金制度、評価制度も改定しました。

Q.賃金制度、評価制度の改定はどのようなものですか。

定年後のモチベーション低下の要因として基本給の減額があがっていました。その対策として、従来の全員横並びの評価制度を見直し、半年毎に個別評価を行う正社員に倣った制度を導入しました。その上で定年後の賃金水準の見直しを行いました。会社として人件費の削減が大きな課題ではありましたが、会社負担を増加させてでも、高齢者になっても安心して働ける環境をつくりたいというトップ以下の意志は強く、改定(60歳時賃金減額率の半減)に踏み切りました。これにより、高齢従業員からは一定程度老後の収入の不安を解消できたと声があり、また65歳以降であっても仕事の取り組みを評価され、給与の増加が見込めることで、仕事のやりがいに影響していると感じます。

Q.どのように改定を進めていきましたか。

総務部長を中心に人事課が労働組合との協議を重ね、中高年齢従業員への説明を慎重に実施したうえで改定しました。当時、労働組合と幾度も改定内容について協議しました。

Q.非正規従業員についても制度改定を行いましたか。

非正規従業員についても正社員と同様、定年を60歳から65歳に延長しました。

Q.他に安心して働くために導入した仕組みはありますか。

これまで有期雇用の従業員については原則として、毎年労働契約を更新していました。しかし、更新の可否に不安があるという従業員が多くいたため、JEEDの岡山支部に相談しました。相談の結果、「65歳超雇用推進助成金*」を活用しながら無期雇用転換を積極的に進めることが決まり、制度として無期転換申込権の発生前でも無期雇用(正規雇用)に転換することが可能になりました。対象となる高齢者を積極的に無期雇用に転換しており、現在100名程の無期雇用転換者が在籍しています。契約更新時の更新可否への不安が解消できたことは、対象者のモチベーションアップにつながっていると感じます。

Q.従業員の皆さんの受けとめ方はどうでしたか。

高齢従業員からは70歳を超えても安心して働くことのできる環境が整備されたものとして、好意的に迎えられ、満足度が向上したとの声が多いです。また、ボリューム層となる40 ~ 50歳代からも長く安心して働ける環境ができたことで会社への評価が高くなっていると聞いています。

人事管理制度の概要

■採用

パート、アルバイト従業員の採用への応募は学生から他社を定年退職した方まで年齢層は幅広く、中でも定年退職後の60歳代の方が多い。実際に働いている方も同様で、今まで培ってきた経験を活かし店舗の運営を支えている。店舗のパート、アルバイト従業員の採用は各店舗の店長が担当しており、人事課として随時採用についての相談を受けている。一方で将来を担う新卒採用も行っており、毎年一定人数を採用している。

■賃金制度・評価制度

従業員の職種は事務職、各部門のバイヤー、店舗従業員である。管理階層は本社の部長と課長、バイヤー、店舗の店長からなる。店舗には副店長、部門ごとにチーフがおり、店舗運営を行っている。定年後においても役職は継続される。

賃金制度の月例給は基本給及び役職手当等の諸手当からなり、基本給は本人給・職能給・職務給の3項目で構成されている。なお、60歳に達した際に役職・勤務形態の見直しを行い、新たな役職・勤務形態に応じた賃金に変更する。

評価制度については、基本行動評価、目的達成評価、数値実績達成評価があり、直属の上司による「一次評価」と店長及び部長による「二次評価」、常務による「最終評価」の手順で行われる。評価結果は昇給や賞与へ反映されるとともに、従業員には面談の際にフィードバックしている。継続雇用者にも正社員と同じ対応が行われている。

高齢従業員戦力化のための工夫

■ベテランから若手への技能継承

同社は各部門のベテラン従業員から若手従業員に技能や技術を承継するため、ペア就労によるOJTを実施している。人事異動の際、教える側のベテラン従業員と教わる側の若手従業員の組み合わせとなるように配属している。技能や技術を備えたベテラン従業員とのペア就労を行うことにより、若手従業員の確実なスキルアップにつながっている。また、ベテラン従業員が若手や新人従業員の精神的な支えになることで、職場でのコミュニケーションに好影響を与えている。OJTの進捗状況の管理はバイヤーが担当し、各店舗を訪問した際に確認を行っている。

OJTは若手従業員だけではなく、ベテラン従業員にも好影響を与えており、指導者的役割という立場の明確化により、後任を育てるというモチベーションアップにつながっている。

■作業負荷の軽減

店舗内での商品の品出しは、これまでバックヤードから棚までの運搬や陳列作業等、足腰の負担が大きい重労働であったが、カット台車や平台車等のマテハン機器(マテリアル・ハンドリングの略で商品を売場に出す時に使う運搬用具)の導入を進めたことにより、その負担が大きく軽減され、スピーディーな作業が可能となった。一度使い方を覚えれば作業が楽になると非常に好評である。

〈平台車を使用しての陳列の様子〉

■作業スケジュールの導入

2023(令和5)年から始めた新たな取り組みとして、店舗での作業スケジュールを各部門長が作成している。作業スケジュールは各部門の従業員ごとに担当する業務が記載されている。従業員は自分の作業内容を10分単位で把握することが可能となり、高齢従業員のみならず、全従業員の作業効率化につながっている。

健康管理・福利厚生

従来の定期健康診断は基本項目以外、自費での受診となっていたが、健康管理の強化対策として、1人あたり1万円の会社補助を創設し、より詳しい検査を受けられるようにした。オプション検査は健康診断受診者の80%が受診しており、病気の早期発見・早期治療に寄与している。また、再検査の案内を健康診断実施機関から対象従業員の自宅に送ることで再検査の勧奨を行っている。

今後の課題

これらの制度改定等に伴い、高齢従業員が安心して働きやすい環境になってきている。その一方で、惣菜メニューの提案等、従業員自らが自主的に実施できる取組等の意見を吸い上げる仕組み作りと若年層の積極的な採用を今後の課題としている。

図表 . 定年前後における人事処遇制度の比較

  定年前   定年後(継続雇用)
 雇用形態  正社員  契約社員
 上限年齢  65歳 70歳(希望者全員)
75歳(基準該当者)
 社員格付け制度  職能資格制度  職務等級制度
 役職定年  無し  定年前の役職を継続
 給与構成  基本給+役職手当+通勤手当  基本給(定年到達時賃金の80%保証)+役職手当+通勤手当
 昇給  人事考課により年1回  無し
 賞与  人事考課表に基づき支給  同左
 (出所)株式会社わたなべ生鮮館へのヒアリングをもとに筆者作成

出所:70歳雇用推進事例集2025
*出所元の掲載内容から一部、修正を行っております。

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