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株式会社山豊

-広島魁の精神で高齢者雇用を推進し伝統の味を継承-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 戦力化の工夫

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株式会社山豊のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1959(昭和34)年
  • 本社所在地
    広島県広島市
  • 業種
    漬物の製造・販売
  • 事業所数

導入ポイント

  • 「山豊の味」の担い手である従業員に長く働いてもらう環境の整備
  • 定年年齢の引き上げ(60歳から65歳)
  • 「大家族主義経営」の組織風土づくり
  • 働きやすい職場づくりを目的とした作業環境の改善
  • きめ細かい健康管理
  • 従業員の状況
    従業員数 111人 / 平均年齢 53.4歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 (7.2%) 、65歳~ (26.1%)
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 希望者全員70歳まで継続雇用。70歳以降は一定条件のもと年齢上限なく運用で継続雇用。
2025年02月01日 現在

同社における関連情報

沿革・理念

1959(昭和34)年に山本商店を創業。1962(昭和37)年に山本食品有限会社を設立。県名産の広島菜を使用した漬物の製造、販売を行っている。企業理念として「広島魁」「謙虚な心を持つこと」を掲げている。

雇用制度改定の背景

Q.漬け物づくりで大切なことはなんでしょうか。

当社の主力商品でもある広島菜漬「安藝菜」がおいしくできるポイントは2つあり、一つは水。当社がある長楽寺付近はいい地下水が出ます。もう一つは従業員。当社の方針として、できるだけ人の手を加えられるものは加えるようにしています。不思議ですが、同じ材料、同じレシピで作っても人が変わると味が変わります。当社は「おふくろの味」のような変わらない家庭的な味を目指しており、先代の社長(現会長)は味が変わらぬよう、なんとか長く従業員さんに勤めていただきたいというのが基本にあり、私も同じです。

Q.なるべく長く勤めてもらいたいことが制度改定のきっかけだったのですね。

高齢者になると視力や筋力等、身体的な不自由がみんな出てくると思います。私としても体が一番大切だと思いますので「働ける時間に働ける日数来てください。できるだけ長く勤めてください。」という想いを従業員さんに伝えています。そのためには色々な工夫をして働きやすい職場環境づくりを進めていく必要があり、先代の社長が雇用制度を含めた職場改善に着手したのがきっかけです。1980(昭和55)年に60歳定年を制定し、直近では2016(平成28)年に希望者全員70歳までの継続雇用制度を導入しました。

Q.以前から高齢者雇用に力を入れていたと思いますが、2022(令和4)年に定年年齢を65歳に引き上げた理由はなんでしょう。

世の中の流れもありますが、従業員さんの働き方、考え方を優先する中で制度を検討していたこともあり、会社としても長く働いてもらうために必要だと思ったからです。また、次の定年退職者が出るまで一定の期間がありましたので、このタイミングで制度改定することでトラブルが少ないと考えました。

Q.改定にあたって従業員からの反応は。

定年後は、自分の時間を持ちたいということから、60歳のままがいいという声が多かったです。そこで、「65歳への引き上げとワークライフバランスを一緒に進めますので、今までどおり勤務してください。」と説明して折り合いがつきました。

Q.制度改定による効果は。

お互いが助け合う風土、社風になったことです。子育て中の方には年配の方が「何かあるなら早く帰りなさい」とか逆に介護がある年配の方には若い方が声をかけるようにお互い助け合う。他にはベテランの方は自分たちの仕事に誇りを持っているから、若い方に色々教えないといけないと考え、若い方はベテランの方を頼りにする。それぞれの立場で存在感を持ちながらやっています。それが社風になってきたのはありがたいです。

Q.最後に70歳まで働ける制度を導入したことによる所感は。

現在70歳以上の方は20名程いますが、その姿はいつかほかの従業員さんがなる姿ですので、会社が高齢従業員に対してどう対応しているのか、どういう働き方をしているのかを見ています。そういう関係性は大切だと思います。

人事管理制度の概要

■正社員

正社員の人事管理制度を確認する。まず雇用制度について、定年年齢は65歳(図表1参照)。役職定年制は設けておらず、定年を迎えて離れる。基本給は年齢給と職務給からなり、職務給は役職に対応した賃金表(等級別号俸給)が設けられている。今回の改定に伴う年齢給の対応は60歳前半層部分の賃金表が設けられ、職務給については60歳以降も既存の賃金表が引き続き適用された。昇給は年1回、人事評価によって(等級内の号俸)行われる。賞与は「基本給×賞与係数(月数)」によって決まり、賞与係数は経営業績と人事評価によって決める仕組みとなっている。人事評価は情意評価、能力評価、業績評価による総合評価が行われる。人事評価の流れは、「上長(課長)による1次評価-部長による2次評価-社長による最終評価」である。なお、近年は主力商品の材料の不作、新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、人事評価は行わず経営業績により賞与係数が決められている。

退職金については65歳まで掛金の積み立てが引き続き行われ、定年時に支給する対応が行われた(図表2参照)。

■継続雇用制度

継続雇用制度は希望者全員を対象とし、70歳までの規程による再雇用制度と70歳に到達した、再雇用者を引き続き継続雇用する運用による再雇用制度である。再雇用制度の契約期間は1年で雇用形態は契約社員である。業務は定年前の業務を引き続き担当する。

賃金については定年前から仕事量や職責が変わらない場合は、定年時の基本給及び年齢給を基に決定する。規程による昇給は行っていない。賞与は支給していない。また、人事評価は行っていない。

勤務時間はフルタイムを基本としているが、本人の希望に応じて短時間勤務などの柔軟な勤務時間を設けている。

高齢従業員戦力化のための工夫

■「大家族主義経営」の組織風土

同社は「大家族主義経営」の組織風土のもと、従業員一人ひとりに目を配り、働きやすい環境整備の風土を育んでいる。これは創業時から続くDNAであり、高齢従業員だけではなく従業員の各年齢層が共に働きやすい環境づくりに取り組んでいる。同社は、社会問題となっている長時間労働の是正や有給休暇を取得しやすい環境づくりに早くから取り組んでいる。

■働きやすい職場づくり

同社は働きやすい職場づくりのため、様々な取り組みを行っている。例として、工場内の作業台をすべて同じ高さに調整している。これにより、常に同じ高さで作業をすることができ、腰や首への負担を軽減している。また、社内にあるトイレを高齢者にとって負担となる和式トイレから洋式トイレに改修した。その他にも工場内照明のLED化等、高齢従業員にとって働きやすい職場環境が整備された。

〈作業台の高さを調整している様子〉

健康管理・安全衛生・福利厚生

■きめ細かい健康管理

従業員の健康管理にも積極的に取り組んでいる。同社は「株式会社 山豊 健康経営宣言」をホームページ上にアップしている。

3つの目的、3つの取り組み施策からなり、具体的な取り組みとして、希望者全員にインフルエンザ予防接種の実施、全従業員への健康診断やストレスチェックを実施、ラジオ体操の毎日実施などがある。インフルエンザ予防接種については産業医が来社し、会社内で実施している。

〈株式会社 山豊 健康経営宣言〉

また、健康診断で再検査が判定された従業員には再検査を受けるよう案内している。こうした案内を素直に受け取ってもらえるよう普段からフラットな関係を心掛け、コミュニケーションを大切にしている。こうした同社の取り組みが評価され、2023(令和5)年から2年連続で「健康経営優良法人」の認定を受けている。

今後の課題

同社は、今後の課題として従業員の健康管理対策を挙げている。同社にとって従業員は同社が大切にしている「山豊の味」を商品に具現化する担い手である。その担い手である従業員の中心はベテランの高齢従業員であり、加齢に伴う病気・疾患などのリスクが大きくなる。従業員が長く働けるよう、働きやすい職場づくりを続けるとともに、さらなる健康管理対策にも力を入れていくことを考えている。

図表1.雇用制度改定の概要
(出所)株式会社山豊へのヒアリングをもとに筆者作成。

図表2.定年制度改定に伴う人事処遇制度の比較

  改定前 改定後
定年年齢 60歳 65歳
基本給 ・年齢給、職務給 ・変更なし
昇給 ・年1回実施 ・変更なし
賞与 ・年2回支給
・「基本給×月数」により算出
・変更なし
人事評価 ・情意評価、能力評価、業績評価 ・変更なし
労働時間 ・フルタイム勤務 ・変更なし
退職金 ・掛金積み立てと支給時期:60歳 ・掛金積み立てと支給時期:65歳
 (出所)株式会社山豊へのヒアリングをもとに筆者作成。

出所:70歳雇用推進事例集2025

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