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株式会社 GFM(ジーエフエム)

-警備業界で先駆け70歳定年と80歳までの継続雇用を制度化-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • 能力開発制度の改善
  • コンテスト入賞企業

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  • 70歳定年
  • 80歳までの継続雇用(基準あり)
  • 社内外のコミュニケーションの活性化
  • 介護支援制度
株式会社 GFM(ジーエフエム)のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1986(昭和61)年
  • 本社所在地
    愛知県名古屋市
  • 業種
    その他の事業サービス業
  • 事業所数
    15か所

導入ポイント

  • 改定の契機:高齢者の積極的な採用と活用
  • 警備業界で先駆け70歳定年と80歳までの継続雇用を制度化
  • 働きやすい風土を目指した社内外のコミュニケーションの活性化と介護支援制度の充実
  • 全員を対象とした人事評価制度を導入するも、毎年度見直して運用
  • 改定の効果:高齢社員の定着率と仕事へのモチベーションの向上
  • 従業員の状況
    従業員数 368人 (2023(令和5)年6月現在) / 平均年齢 62.0歳 / 60 歳以上の割合 70.4%(259人) 60~64歳65人 65~69歳82人 70歳以上112人
  • 定年制度
    定年年齢 70歳 / 役職定年 定年で役職を外れる
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 ・基準該当者 ・健康管理の観点からの見直し
2024年04月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

 株式会社GFMは、1986(昭和61)年に設立した警備保障業を展開する企業で、警備業務を中心に、パーキング・メーター等管理業務、放置車両確認事務などを行っている。

 従業員数(2023(令和5)年6月1日現在)は368名、従業員の平均年齢は62歳である。従業員構成の特徴について、年齢別には60歳以上が7割(70.4%/259人)を占め、雇用形態別には正社員95人、嘱託社員112人、パート社員161人である。嘱託社員は定年退職後に引き続き、同社で継続雇用された社員である。

 こうした従業員構成の特性は、警備保障業界において40歳以上の中高年齢層の中途採用が社員構成の中核を占める特性であること、その維持に高齢者の採用が不可欠だった側面を持つことによるものである。

 同社の組織は警備業務を所管する警備業務部とパーキング・メーター等管理業務、放置車両確認事務等を所管する管理業務部、そして両部門を統括する管理本部の3部門からなり、これら部門に従事する社員の主な雇用区分は、管理本部が正社員、警備業務部は正社員とパート社員、管理業務部はパート社員である(図表参照)。

 従業員の採用状況について、同社は中途採用を中心としており、その人数は毎年平均正社員5名程度、パート社員135人程度である。

 従業員の採用状況について、同社は中途採用を中心としており、その人数は毎年平均正社員5名程度、パート社員135人程度である。

図表. 部門と社員の主な雇用区分
部門 社員の主な雇用区分
管理本部 正社員
警備業務部 正社員、パート社員
管理業務部 パート社員
 (出所) 株式会社GFMへのヒアリング調査をもとに執筆者作成。
<警備業務>

雇用制度改定の背景

 同社が雇用制度を改定した背景に、先に紹介したように従事する社員は中高年齢層が多いという警備保障業界の特性に加え、東日本大震災が発生した2011(平成23)年に東京での業容拡大を進め、仕事を求めて東京に上京してきた東北地方の方々を積極的に採用したこと、そして主な契約先である公的機関が応札する企業の高齢者雇用推進状況を評価項目の1つとしていたことなどである。こうした背景のもと、同社は警備保障業界で先駆けて2013(平成25)年に定年年齢を65歳から70歳に引き上げるとともに、定年退職を対象に一定の条件のもとでの雇用上限年齢を設けない継続雇用制度(再雇用制度)を導入した。

 2016(平成28)年に健康管理の観点から継続雇用制度の雇用上限年齢を就業規則上で見直し、警備業務に従事する再雇用者は80歳まで、パーキング・メーター等管理業務、放置車両確認事務等の行政機関からの請負・委託事業に関する業務に従事する再雇用者は75歳まで(75歳以降は基準該当者を80歳まで)としている。

人事管理制度の概要

■制度改定に伴う人事管理制度の対応

 定年延長に伴う60歳代後半層の人事管理制度の対応については、特に行われず原則として定年前の制度が引き続き適用された。

■正社員

 正社員の人事管理制度の概要を確認する。社員格付け制度は役職制度のみで、「本部長-部長」の役職が設けられている。部長の下位の役職については正式な役職は設けていないものの、職場によって柔軟に設けられている。なお、同社には役職定年制が設けられていないが、役職者が定年後、継続雇用に切り替わる場合は役職を離れる。

 賃金制度について、基本給の決め方は初任給に昇給を積み上げていく方式がとられている。初任給の金額は個別に決めており、年1回、人事評価結果に基づいて昇給が行われる。

 人事評価は2018(平成30)年に導入され(経緯については後述)、成績評価、能力評価、情意評価からなる評価シートをもとに年2回行われる。 評価シートは部門別(警備業務部、管理業務部)に用意される。その手順は自己評価(評価シートへの記入)をもとに、上長(警備業務部は教育を担当する部署の者、管理業務部は事業所の業務経験豊富な者および上司)による1次評価、部門長(警備業務部は教育部の責任者、管理業務部は各事業所の副責任者以上の者)による2次評価、役員等が参加する経営会議による最終評価の流れで行われる。評価結果は昇給、昇進などに反映される。

■継続雇用制度

 継続雇用制度は70歳の定年到達者を対象にした同社が設けている基準(勤務成績、健康状態、出勤率など)に該当する者を対象とした再雇用制度である。雇用形態は1年契約、雇用区分は嘱託社員である。継続雇用者が担当する業務、勤務形態、賃金などの労働条件は原則として定年前と同じであるが、勤務形態は継続雇用者の働きやすさに配慮して、勤務日数を柔軟に選択できるようにしている。人事評価制度は正社員と同じ対応がとられ、継続雇用者を対象にした退職金制度は設けられていない。

高齢従業員戦力化のための工夫

 同社が実施する高齢従業員戦力化のための主な工夫は、多様な勤務形態の導入、人事評価制度の導入、および社内外のコミュニケーションの活性化の3つである。

■多様な勤務形態の導入

第1の多様な勤務形態の導入について、警備業務の特性上、時間単位の勤務時間の調整が難しい側面があるため、多様な勤務形態を基本的に日数単位で調整をしている。月の所定日数を、「16?20日」、「10?15日」「10日未満」の3つに分けて、社員それぞれの働き方に対応している。このほかに、勤務先についても柔軟に調整しており、配置転換を行う際に、新しい勤務先への適性を確保するために数日間の研修を行い、さらに規定の研修期間で習熟度が足りない場合は研修期間を延長して、習熟させている。

■人事評価制度の導入

 第2の人事評価制度の導入について、同社は定年後の再雇用者を含む全社員を対象とした評価制度を2018(平成30)年に導入し、毎年度見直しながら運用している。評価結果は1次評価者と2次評価者との面談を通して直接フィードバックされる。面談では業務に対する助言も行われ、社員は評価結果の確認と自分への期待値を知ることができるので、今後の就業に関するモチベーションの向上につながっている。

■社内外のコミュニケーションの活性化

 第3の社内外のコミュニケーションの活性化について、同社は世代間の垣根を設けず風通しのよい企業文化を目指したコミュニケーションづくりを進めている。 例えば、高齢社員と若手社員のペア就労を行い、経験の浅い若手社員に高齢社員の視点やノウハウを伝える一方、高齢社員に負担がかかる体力を要する業務は若手社員が担当するなどを行い、互いに不得手な部分を補い合うことができるようにしている。こうしたコミュニケーション促進を同社は女性や障害者も含めて展開して、働きやすい風土を構築している。

<パーキング・メーター等管理業務>

健康管理・安全衛生・福利厚生

 健康管理・安全衛生・福利厚生における同社の主な取り組みは、健康診断受診と産業医のサポート、ボランティア休暇、そしてカムバック制度の3つである。

■健康受診と産業医のサポート

 第1の健康診断受診と産業医のサポートについて、同社は年1回実施している健康診断の受診を会社の指定する受診機関での健康診断のほかに人間ドックによる受診も可能とし、社員に選択させている(ただし、人間ドックの追加費用は社員負担)。

 産業医のサポートについては、健康問題の取り組みの一環として、メンタルヘルス面も含めた健康相談を産業医に随時できる体制が整備されている。

■ボランティア休暇

 第2のボランティア休暇について、居住する町内会のボランティア活動などに参加を要する高齢社員がいることから、社員の地域貢献活動の支援を目的としてボランティア休暇制度を導入している。

■カムバック制度

 第3のカムバック制度について、高齢社員が仕事を続けたくても介護問題や自身の疾病などの事由で退職するケースがみられる。一度、退職すると同じ条件で再就職することは難しく、企業にとっても培ってきた経験・知識・技能を持つ貴重な戦力である高齢社員を失うことになる。そこで、同社は一定の条件を満たして同社を退職した者を対象に、同社で再度働くことができるカムバック制度を導入した。

制度改定の効果と今後の課題

■雇用制度改定の効果

 雇用制度の改定によって、80歳までの就業可能な仕組みが制度化され、高齢社員の定着率と仕事へのモチベーションの向上につながっていると同社は考えている。

■今後の課題

 今後の高齢者雇用の課題として、高齢社員の就労環境の拡充を挙げている。人手不足が問題となっている警備保障業界においては、ロボットを活用した警備業務の取り組みが注目されている。同社も警備ロボットに関心を持っているものの、人による警備業務が重要であり、そのなかでも高齢者が持っている経験やスキルを活かして活躍できる場があると考えている。積極的にPRして人材確保に取り組んでいるものの、加齢に伴う健康問題(本人の疾患や家族の介護など)に直面することが多く前述のカムバック制度やボランティア休暇制度を導入するなど、高齢者のニーズに対応した仕組みを取り入れている。今後も高齢社員の声、時代や状況の変化に合わせて引き続き就労環境の拡充に取り組んでいきたいと考えている。

<放置車両確認事務>

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