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社会福祉法人 愛心会

-ライフスタイルに合わせて定年年齢を選べる制度を導入-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • 上限年齢なしの継続雇用(基準あり)〈運用〉
  • 66歳定年(選択定年制)
  • 職場環境改善研修の充実
社会福祉法人 愛心会のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    2005(平成17)年
  • 本社所在地
    愛媛県宇和島市
  • 業種
    社会保険・社会福祉・介護事業
  • 事業所数
    1ヵ所

導入ポイント

  • 66歳より早い定年年齢を選択しても、希望すれば短時間正職員として再雇用
  • 全職員対象のスキルアップ研修の「振り返り」で職員をフォロー
  • リフレッシュして活き活きと活躍できるよう有給休暇を取得しやすい職場に
  • 従業員の状況
    従業員数 47人 / 平均年齢 48.6歳 / 60 歳以上の割合 34.0%(17人)
  • 定年制度
    定年年齢 66歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 60歳から66歳まで定年を選択可能 継続雇用70歳・基準該当者 ・ 70歳以降は基準該当者を上 限年齢なく再雇用〈運用〉
2023年02月01日 現在

同社における関連情報

法人概要

社会福祉法人愛心会は、2005(平成17)年に設立した特別養護老人ホーム・短期入所施設を運営する法人である。職員数は50人、職員の平均年齢は48.6歳である。職員構成の特徴について、年齢別には60歳以上が17人(34.0%)と多く、40歳代の中堅層が少ない。雇用形態別には正職員39人、短時間正職員、パートタイマー11人である。同法人では、法定の週40時間を基準に職員を常勤と非常勤に区分しているため、週40時間未満の短時間正職員は非常勤としている。

採用状況については、2021(令和3)年度は正規職員3人とパートタイマー1人となっている。同法人では、現在の事業規模(入居者50人程度)と職員規模(50人)を継続することにしており、職員の採用については、職員が退職した時に新たな職員を採用する方式としている。

「野ウサギが子育てに来る」
~庭と建物が一体となった職場~
美しい四季折々の花々。つがいの小鳥が来れ
ば、野ウサギも遊びに来る。そんな自然豊かさ
溢れる庭園と、著名な設計士によって作られた
建物が一体となった施設。

雇用制度改定の背景

■経緯

改定前の愛心会の雇用制度は、「図表 雇用制度改定の概要」のとおり、60歳定年、希望者全員65歳までの継続雇用制度で、それ以降は、基準該当者は70歳まで継続雇用となっていた。また、さらに運用で、70歳以降も基準該当者は上限年齢なく再雇用するというものだった。同法人には創業当時から勤務する職員が多く、貴重な戦力として不可欠な存在となっているものの、定年年齢に近くなりつつあった。そこで、今後も長く安心して働くことができる柔軟な環境を拡充するため、2019(令和元)年6月に66歳定年制に改定した。

〈自然の中で利用者の心は和む〉

■制度改定に向けた課題とその対応

今回の制度改定への取組みは、本機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)からの提案であった。同法人は当初、定年制の廃止を考えていたが、定年に近い職員との意見交換で「定年があることにより働く目標を持つことができ、モチベーションを維持できる」との意見が寄せられた。プランナーとの相談により定年年齢を66歳とするとともに、60歳定年を念頭に置いたライフプランを設計している定年年齢に近い50歳代の職員に配慮して定年年齢を60歳から66歳の間に自分で決める選択定年制とした。なお、59歳到達時に定年年齢を選択し、66歳以前の年齢(60歳から65歳)を選択した職員の中で退職後も働くことを希望する者全員に対して、同法人はいったん退職手続きをしたうえで、1年契約の再雇用を行っている。

雇用形態は短時間正職員、雇用上限は新定年年齢と同じ66歳としている。短時間正職員の賃金制度と評価制度は正職員と同じ制度を引き続き適用するが、基本給と扶養手当の支給額は時間比例で見直している。定年延長に伴い旧制度のもとで継続雇用に切り替わった60歳代前半層の高齢職員の対応については、正職員への転換を行わず旧制度における継続雇用者のままとした。

〈職員が協力して施設を飾りつける〉

人事管理制度の概要

■定年延長に伴う人事管理制度の対応

定年延長に伴う60歳代前半層の人事管理制度の対応については、単に定年年齢を引き上げた以外は、原則として定年前の制度を引き続き適用するものの、退職金の掛金の積立と支給時期をこれまでの60歳から新定年年齢の66歳に見直した

■正職員

正職員の人事管理制度の概要については、役職定年制度は実施せず、役職者は新定年年齢まで役職を継続している。賃金制度については、基本給は社員格付け制度の職能資格制度と連動した「職能給(等級別号俸制)」と「業績給(等級別評価給)」からなる。職能給、業績給とも職種別にそれぞれ賃金表を設け、年1回人事評価(能力評価)結果に基づいて職能給の昇給を行っている。定年延長後も新定年年齢まで昇給を行っている。業績給は年1回、人事評価(業績評価)によって支給金額が決まる洗い替え方式をとっている。賞与は「基本給×月数×係数」により算出している。月数は経営業績によって、係数は人事評価結果によってそれぞれ決めている。

人事評価については、能力評価と業績評価の2種類を行い、能力評価は年1回、業績評価は年2回行っている。評価は、施設長が事務長と協議して決めている。なお、施設長は毎月行われる各ユニット(施設内の職場)の会議や各種委員会に出席したり、日常の業務などによる職員とコミュニケーションを通して、職員の働きぶりをみている

■継続雇用制度

同法人は70歳までの再雇用制度を導入しており、66歳の定年到達者と選択定年した再雇用の短時間正職員を対象に一定の基準を設けて1年契約の再雇用に切り替えている。継続雇用時の職員格付けは定年退職時の等級を維持する。役職者は定年時に役職を外れ、一般職員として定年時の職種の業務を担当する。

賃金制度と評価制度は、正職員と同じ制度を引き続き適用し、賃金水準の見直しは行わない。退職金については、継続雇用者を対象にした新たな退職金は支給しない

高齢職員戦力化のための工夫

■高齢職員に期待する役割

高齢職員に期待する役割については、愛心会は戦力として正職員と同じ役割と業務を遂行することを期待していることに加えて、指導役の役割を課している。

■全職員を対象とした研修の実施

同法人が実施する職員のスキルアップ研修は、年齢にかかわらず対象者全員を受講させている。職員はシフト勤務であることから、対象者全員が受講できるよう同じ研修を2回実施している。そのため、必要に応じて2回受講する職員もいる。
研修の理解度を把握するため、研修受講者には研修を受けての感想、今後の活用、目標などを記入する「振り返り」を提出することを課している。この振り返りに日ごろの心配事や意見を記入する職員もいるので、職員個人の抱える問題や職場づくりのフォローにつながり、職員とのコミュニケーションツールにもなっている。

■手書きによる介護記録の一元化

PCなどのデジタル技術を使った業務の効率化が進められている中、同法人は手書きによる介護記録の一元化を進めている。介護の状況を即座に漏らさず記録することが大切であり、紙だからこそそれが可能であると同法人は考えているからである。介護支援を行いながら、その場で介護記録シートを記入することが高齢職員にとってはやりやすいということが手書きにしている理由である。記入する際には、どの担当が記入したかが一目でわかるように、ボールペンの色を分けている。

健康管理・安全衛生・福利厚生

■職場環境の改善

愛心会では、現場で働く職員の肉体的負担を軽減させるための施設づくりを進めている。たとえば、施設全体をバリアフリーに設計し、建物の床面はクッション床を採用して、職員の足や腰への負担軽減を図った。そのことは、職員の負担軽減だけではなく入居者の転倒による骨折などの危険性の軽減にもなっている。

さらに、全ユニット(職場)に1台ずつ「リフト浴」を導入して、個浴支援に携わる職員の人数を少なくして、職員の肉体的精神的負担と入居者の心理的負担を減らしている。

■有給休暇を取得しやすい職場づくり

同法人では月に9日ある公休に加え、毎月有給休暇を1?2日取得することを推奨している。これは同法人の設立以来、取り組んできた有給休暇を取得しやすい職場づくりが定着してきたことである。そのために職員間のカバー体制も確立した。職員がプライベートを大切にすることでリフレッシュし、活き活きと仕事に取り組めるようにするため、今後とも有給休暇を取得しやすい職場づくりを続けたいと考えている。

今後の課題

今後の高齢者雇用の課題として、愛心会は働き方に対する高齢職員の意識面のサポートを挙げている。介護事業は利用者と接しながら介護サービスを提供するため、仕事や働き方に対する誠実な姿勢が求められる。こうした意識は年齢にかかわりなく必要なことである。高齢職員の戦力化というと、加齢に伴う体力面のサポートが課題として注目されるが、意識面のサポートも同じように重要な課題であると同法人は考えている。

図表 雇用制度改定の概要
(出所)社会福祉法人愛心会へのヒアリング調査をもとに執筆者作成。

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