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溝端紙工印刷 株式会社

-多能工化を進め、年齢に関わりなく活躍できる組織づくりを実践-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • 上限なしの継続雇用制度
  • 賃金・評価制度改定
  • 作業環境改善
  • 健康管理
溝端紙工印刷 株式会社のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1907(明治40)年
  • 本社所在地
    和歌山県伊都郡かつらぎ町
  • 業種
    印刷・同関連業
  • 事業所数
    15カ所

導入ポイント

  • 賃金・評価制度改定によって再雇用後も引き続き同じ待遇を実現、再雇用者には第二退 職金を給付
  • 高齢従業員と若手従業員が仕事を教えあう職場環境を整え、多能工化を進める
  • 現場から積極的に声を上げる組織風土の醸成に努め、社員の意見を取り入れた職場改 善を推進
  • 従業員の状況
    従業員数 396人 / 平均年齢 48.3歳 / 60 歳以上の割合 19.4%
  • 定年制度
    定年年齢 60歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 定年は60歳。その後希望者全員、年齢の上限なく再雇用。
2021年08月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

溝端紙工印刷株式会社は、1947(昭和22)年に設立した飲食用紙製品のデザイン・製造・販売を行う企業であり、1907(明治40)年に創業した印刷事業を前身としている。同社は全国に生産拠点7カ所、営業拠点8カ所を展開している。

従業員数(2021年4月現在)は396名で、雇用形態別には正社員335名、年齢別には60歳以上の従業員77名の構成となっており、従業員の平均年齢は48.3歳である。採用状況について、同社は職種別(工場技術職、製品企画、営業、デザイン、生産管理、品質管理、事務、経理等)に新卒採用と中途採用を行っており、毎年4~8名程度採用している。

(本社工場)

賃金・評価制度改定の背景

■経緯

同社の定年・継続雇用制度は「60歳定年、希望者全員年齢上限なしの再雇用」である。この定年・継続雇用制度は20年以上前に整備された。しかし、再雇用後の賃金水準を見直していたため、高齢従業員のモチベーションの低下を招いていた。この課題を是正するため、2016(平成28)年に賃金・評価制度の改定を行った。

■賃金・評価制度改定の課題と工夫

同社に労働組合はないため、今回の賃金・評価制度改定に際しては、四半期ごとに行う各事業拠点の巡回時に従業員へ説明して意見を聞いたり、社内報を通して制度改定の周知を進めた。その際に大きな課題はなくスムーズに賃金・評価制度改定が進められた。

人事管理制度の概要

改定後の正社員の人事管理を概観すると(図表)、社員格付け制度は役職制度のみで「部長(取締役)-次長-次長補-課長-課長補-係長」の6ランクから構成される。なお、同社は役職定年を実施していない。

賃金制度について、月例給は「基本給」であり、この他に、扶養手当、住居手当、時間外手当、2交代手当などの「諸手当」が加わるほか、役職者には役職手当も支給される。基本給は、本人の技能、経験、職務遂行能力等を考慮して決まる総合決定給である。全従業員に同じ賃金表が用いられ、学歴別職種別に初任給のランクが設定されている。

図表 人事管理制度の概要
(出所) 溝端紙工印刷株式会社のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

昇給は、人事評価結果をもとに賃金表のピッチを昇号する仕組みがとられているが、評価結果が悪い場合は下がるなど、メリハリのある決め方の昇給となっている。なお、定年前の昇給停止は行われず、定年まで昇給が行われる。

賞与の決め方は「基本給×賞与係数」で、賞与係数は人事評価結果をもとにした一定率(月数)が用いられている。具体的には、経営業績によって標準評価の係数が設定され、それをもとに人事評価結果により個別の係数が決められる。
人事評価については、能力、仕事への取り組み姿勢、成果による会社への貢献度の評価が年2回行われている。評価の流れは、直属の上司による1次評価、部門責任者による2次評価を経て、社長による最終決定が行われる。評価結果は昇給や賞与等に反映されている。

退職金について、同社は民間保険会社の退職金制度を利用し、定年退職時に退職金を支給している。
60歳の定年に到達した従業員は、希望者全員の年齢上限なしの継続雇用(再雇用制度)に切り替わる。再雇用は1年契約である。再雇用者の人事制度については、社員区分は嘱託となり、役職は再雇用後も引き続き同じ職務をフルタイム勤務で続ける限り継続している。ただし、本人から勤務時間を短くしたり、負担を軽くしてほしいなどの希望が出されたら役職を離れ、一般社員として担当業務に従事する。

賃金制度については、再雇用後も引き続き同じ業務をフルタイム勤務で続ける場合、賃金水準は見直されないほか、基本給、昇給、賞与は引き続き正社員と同じ方法で決められている。人事評価は、正社員と同じ仕組みが適用される。退職金については、再雇用者用の退職金(同社は「第二退職金」と呼称)を設け、再雇用者としての勤務年数に比例して算出した金額が再雇用終了時に支給される。勤務時間は、フルタイムの他に短時間・短日勤務を選択することができ、その場合の支給額は時間比例で算出される。

高齢従業員戦力化のための工夫

■年齢に関わりなく従業員が活躍できる組織づくり

高齢従業員の戦力化を図るために同社が実施している主な取り組みは「年齢に関わりなく従業員が活躍できる組織づくり」である。

(会社にとって貴重なベテランの技術)

印刷に関する設備・機械は日進月歩で進歩している一方、ベテラン従業員の経験、技術等も不可欠である。同社は、長年培ってきた経験や技術を持つ高齢従業員と新しい設備や機械を使いこなせる若手従業員が互いに仕事を教え合う職場環境を整え、年齢に関わりなく全ての従業員が活躍できるように多能工化を進めている。

(多様な機械をつかいこなすベテラン)

■作業環境の改善

同社が実施する作業環境の改善における主な取組みは、「従業員の意見を取り入れた職場改善」である。同社は現場から積極的に声を上げる組織風土の醸成に取り組んでおり、職場の作業環境の改善に関する意見が寄せられたら費用対効果を考え対応する体制を整備している。こうした体制により、2016(平成28)年に新工場を開設した際に、照明のLED化を進め、1階の材料を全自動で最上階の工場へ運ぶ自動ラック倉庫を導入した。自動ラック倉庫の導入により、高齢従業員だけではなく全従業員の身体的負担が軽減された。

(自動ラック倉庫)

健康管理・安全衛生・福利厚生

■健康管理

健康管理面の取組みは「トレーニングルームの設置」「会社負担の胆管がん検診の実施」である。従業員の健康増進を図るため、一部の工場にトレーニングルームを設置し、従業員が自由に利用できるようしており、高齢従業員も積極的に利用している。会社負担の胆管がん検診については、医療機関と連携して年1回の健康診断に加え、印刷に携わる従業員や希望者を対象に受診できるようにしている。

■安全衛生

安全衛生面の取組みは「従業員全員の安全衛生の意識の向上」である。安全衛生委員会で安全衛生について話し合うほか、消防訓練や救急手当講習を実施し、安全衛生に対する意識の向上を図っている。また、危険が伴う印刷の断裁作業については、両手でボタンを押さなければ稼働しない断裁機を導入したことで事故の減少に取り組んでいる。

■福利厚生

福利厚生面の取組みとして、お祝い金などによる子育て支援をはじめ、懇親の場として社長主催の食事会、クラブ活動、旅行、誕生会などを実施し、従業員間のコミュニケーションの向上をはかり、長く働ける職場環境の構築に取り組んでいる。また、地域貢献の観点から、長年にわたり最寄り駅周辺の清掃活動を取り組み、地域交流の機会を設けている(コロナ禍の間は休止)。

今後の課題

従業員の高齢化が進むなか、同社は高齢従業員が長く働き続けられる職場環境の整備を進めてきた。
「働き方改革」の観点や若年者の採用を促進するため、2020(令和2)年度より年間休日を15日増やした。これにより生産性の向上が今後の課題となる。高齢従業員の中には加齢により仕事のスピードが落ちる者もいるが、仕事ぶりが丁寧でミスが少ない。若手従業員の仕事のスピードは比較的速いが、ミスや仕上がりに問題がある者もいる。高齢従業員と若手従業員の良いところを活用することで生産性を高めていくことを今後の課題として同社はあげている。

(商品の一部)

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