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株式会社清水製作所

-定年制廃止により生涯現役を推進-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • 定年廃止
  • 多様な勤務形態
  • 世代間連携の強化
  • 作業環境改善
株式会社清水製作所のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1973(昭和48)年
  • 本社所在地
    山梨県北杜(ほくと)市
  • 業種
    プラスチック異形押出し製造業
  • 事業所数
    2

導入ポイント

  • 65歳定年、上限なしの再雇用から定年制廃止へ
  • 高齢従業員と若手従業員のペア就労による技術・技能伝承
  • 有給休暇の取得申請手続きを柔軟にし、有給休暇を取得しやすい環境に
  • 従業員の状況
    従業員数 40 / 60 歳以上の割合 27.5%
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 該当せず / 内容 定年なし。現在の最高年齢者は77歳
2021年04月16日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社清水製作所は1973(昭和48)年に創業した土木・建築資材の製造企業であり、プラスチックのリサイクル原料を100パーセント利用した自社製品の開発・製造に積極的に取り組んでいる。同社が立地している山梨県内に2カ所の事業拠点を展開している。

従業員数(2021年4月現在)は40名で、雇用形態別には正社員32名、年齢別には60歳以上の従業員11名の構成となっており、従業員の平均年齢は48歳である。非正規雇用労働者はパート社員として採用した従業員の他に、正社員だった従業員が家庭の都合や体調などを勘案して「短日・短時間労働」を希望してパート社員に転換した者もいる。パート社員への転換者の賃金は正社員時の水準を時間比例で決めており、社会保険等は継続している。

採用状況について、同社は中途採用中心で、UターンやIターンで採用した従業員も多い。毎年2名程度の採用を行っている。

雇用制度改定の背景

■経緯

2013(平成25)年2月までの同社の定年・継続雇用制度は「65歳定年、上限年齢なしの再雇用」であった。これは2001(平成13)年から実施していたが、従業員構成の高齢化が進み、全従業員の40パーセント以上が60歳以上になることが予想されたことから、高いスキル・技術や就業姿勢を持つベテラン従業員が希望する限り長く働ける環境を整備するために2013(平成25)年3月に定年制を廃止した。図表1は雇用制度改定の概要を整理したものである。

図表1 雇用制度改定の概要 雇用制度改定の概要
図表2 高齢従業員 (65歳以降) の人事管理制度の変化
(注) 定年制廃止後の人事管理制度の変化は旧定年年齢 (65歳) のそれと比較した内容である。
(出所) 図表1、 2とも、 株式会社清水製作所のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

■雇用制度改定の課題と工夫

同社に労働組合はないが、今回の定年制廃止に際しては従業員と意見交換を通じて制度改定を進めた。その際に大きな問題はなくスムーズに定年制廃止が進められた。

人事管理制度の概要

■雇用制度改定前

正社員の人事管理を概観すると、社員格付け制度は役職制度のみで「部長-課長-係長-リーダー」の4ランクから構成される。なお、同社は役職定年を実施していないが、本人の申し出により役職を降りて一般社員としてライン業務に従事する対応がとられている。後任の役職者の管理業務が難しくなるため(元上司への気兼ね等)、雇用形態をパート社員に切り替え、担当業務も変わることを条件に認めるようにしている。

賃金制度について、月例給は「基本給」であり、この他に役職者には「役職手当」や通勤手当等の「諸手当」が加わる。基本給は、本人の技能、経験、職務遂行能力等を考慮して決まる総合決定給である。初任給は地域の相場をもとに決めており、中途採用者の場合、本人の経歴等をもとに個別に決めている。昇給は、初任給に昇給を積み上げる決定方式で、基本給に人事評価結果による昇給係数を乗じた金額が支給される。なお、若手従業員の昇給額については管理職の昇給額とのバランスを考慮して、基本給に一定額を加えたものに昇給係数を乗じて算出している。なお、定年前の昇給停止は行われず、定年まで昇給が行われる。
賞与の決め方は「基本給×賞与係数」で、賞与係数は人事評価結果をもとにした一定率が用いられている。

人事評価について、制度は整備されていないが、現場監督者の意見をもとに社長が全従業員の評価を決めている。評価結果は昇給や賞与等に反映させている。
退職金については、中小企業退職金共済制度を利用し、定年退職時に同社から一定額を加算して支給している。
65歳の定年に到達した従業員は、運用による上限年齢なしの継続雇用(再雇用制度)に切り替わる。希望者は原則として再雇用に切り替えている。再雇用は1年契約である。

再雇用者の人事制度については、役職は外れ、後進の指導を中心にしながら定年時の担当業務に従事する。賃金制度については、年金受取額をもとに定年退職時の水準を確保できる水準に見直している。昇給ならびに賞与は引き続き正社員と同じ方法で決められている。人事評価は正社員と同じ仕組みが適用される。退職金の積み立ても継続する。勤務時間はフルタイムの他に短時間・短日勤務を選択することができ、その場合の賃金額は時間比例で算出する。

■雇用制度改定後

定年制廃止に伴う人事管理制度の見直しは行われない。退職金についても引き続き退職するまで積み立てが行われる。

高齢従業員戦力化のための工夫

■高齢従業員と若手従業員のペア就労による技術・技能伝承

高齢従業員戦力化を図るための同社の技能伝承面での主な取組みは「高齢従業員と若手従業員のペア就労による技術・技能伝承」である。

同社は異型押出成形という特殊技術を持ち、この技術が同社の競争力の源泉となっている。この特殊技術を持つ会社は少ないことから、経験者が入社することはほとんどない。同社の製造機械はそれぞれ用途や仕様が異なるため、作業の基本となる手順書はあるものの、作業のマニュアル化が難しく、細かい調整は高齢従業員の経験と勘に頼っている状況にある。同社は人材育成に力を入れているが、一人前になるには各機械の操作・工程を一通り経験することが不可欠であり、各機械の特性や作業のコツなどのスキルや経験を持つベテラン従業員の技術・技能を継承する必要がある。

同社は新人が入社するとベテラン従業員が指導役となり、主にOJTによるマンツーマン方式で基本的な製造技術のノウハウを新人に継承させている。

(様々な機械が稼働している工場)

■作業環境の改善の取組み

同社が実施する作業環境の改善における主な取組みは、「LED照明の導入」「転倒防止対策」「作業器具の改善」である。
第1のLED照明の導入については、高齢化による視力の低下を補うため、工場および事務所の照明をLED照明に切り替え、通路の照明の数を増やすとともに、工場での作業時に手元を照らすLED照明を設置した。LED照明導入によって作業場内の移動の安全性が高まるとともに作業効率が向上した。

第2の転倒防止対策については、同社の製品が大きいため、作業中の転倒を防止するために床を適度な摩擦係数を持つコンクリート仕様に変更した。

(LED照明化・足元の配線は頭上に移設)

第3の作業器具の改善について、取り扱う製品は数量がまとまると重量物となるため、従業員の意見を聞きながら作業器具の改善を進めている。その改善成果の1つに運搬器具がある。製品移動時には運搬器具としてカーゴ(車輪つきの荷受け台車)を使用している。カーゴは基本的に男性従業員が移動させることになっているが、カーゴのキャスター部分を直径の大きいものに改善した。これにより女性の高齢従業員でも移動できるようになっている。この他にも腰に負担がかからないよう、椅子を設置して座った状態で作業できるようにするなど、高齢従業員の体力面に配慮している。

(キャスターの大きいカーゴ)

健康管理・安全衛生・福利厚生

■健康管理

健康管理面の取組みは「人間ドックの基本健診分、インフルエンザ予防接種の無償化」である。人間ドックは45歳以上の従業員を、インフルエンザの予防接種は全従業員を対象に実施し、費用の全額を会社が負担している。いずれも受診日や場所などを各々の都合に合わせて受診できるようにしている。

この他にも長年の慣れで、高齢従業員が重量物を運んだりすることがあるので、会社としては無理させないようにするため、肉体的な負荷がかかったら翌日に休むことなどにも配慮したり、シフトの決め方も本人の都合等を優先できるよう自由度を高め、有給休暇も半日単位で取得できるようにしている。

■安全衛生

安全衛生面の取組みは「従業員全員の安全衛生の意識の向上」である。日常の業務で発生した「ヒヤリ・ハット」については、同社はその都度声かけなどを行い、問題を全従業員で共有したうえで改善を図っている。別の会社を定年退職して同社に入社した高齢従業員が、前職の溶接の技能を活かして、積み上げた製品が倒れないよう仕切りを自作するなどの例もあり、従業員一人ひとりが安全衛生に対する意識を高め、積極的に安全衛生に努めるようにしている。

■福利厚生

福利厚生面の取組みとして、同社は年に1~2回親睦会を開催して、従業員間のコミュニケーションを深めるようにしている(コロナ禍の間は休止)。

今後の課題

従業員の高齢化が進むなか、同社は高齢従業員が長く働き続けられる職場環境の整備を進めてきた。今後も高齢従業員の労働負荷を軽減するため、本人の申し出があった場合は配置転換するなど柔軟に対応していくものの、高齢従業員の身体面の能力低下が認められた時の業務内容の転換や配置などの体制の整備を今後の課題としてあげている。

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