本文へ
背景色
文字サイズ

事例検索 CASE SEARCH

医療法人社団 五色会

高齢者の豊かな経験を活かし心に寄り添う医療・介護・福祉サービスを実現

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • 能力開発制度の改善
  • コンテスト入賞企業

下階層のタブがない場合、項目は表示されません

  • 65歳定年制
  • 70歳までの継続雇用
  • 処遇に変化なし
  • 職員からの改善提案
医療法人社団 五色会のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1978(昭和53)年
  • 本社所在地
    香川県坂出市
  • 業種
    医療業
  • 事業所数
    13拠点

導入ポイント

  • 定年年齢、雇用上限年齢を5歳引き上げ65歳定年、70歳までの継続雇用制度に
  • 定年・継続雇用制度改定に伴う人事管理制度の変更は行わず、モチベーションを維持
  • 改善提案制度を通して職場環境の改善と理事長と職員との意思疎通を円滑に
  • 従業員の状況
    従業員数 554人 / 平均年齢 60~64歳:8.6%, 65歳~69歳:2.9%, 70歳以上:1.1% / 60 歳以上の割合 12.6%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 定年は65歳。制度として70歳まで再雇用。運用により一定条件のもと上限年齢なく再雇用。現在の最高年齢者は82歳
2024年01月31日 現在

同社における関連情報

企業概要

五色会は1978年に創業した医療法人で、同法人が立地する香川県坂出市内に病院・診療施設5か所、社会福祉施設4か所、高齢者施設4か所(うち1か所は株式会社)を運営している。

同法人の従業員数は554名で、雇用形態別には正社員504名、非正社員(パートタイマー)50名である。60歳以上の高齢職員は57名で、全従業員に占める60歳以上の割合は12.6%である。
採用状況について、同法人は新卒採用の他に中途採用を積極的に実施している。なお、病院業務は専門性が高いため、医師、看護師、技師、事務等の職種別の採用が行われている。

定年・継続雇用制度改定の背景

2014年10月までの同法人の定年・継続雇用制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用(再雇用制度)」であった。再雇用制度は60歳の定年年齢に到達する同法人の正社員を対象に希望者全員(経過措置利用)を継続雇用する制度である。

採用難による人手確保とベテラン職員のノウハウの継承を目的として2014年11月に定年・継続雇用制度が見直され、定年年齢と継続雇用の上限年齢がそれぞれ5歳引き上げられた。図表1はその改定概要を整理したものである。

図表1 高齢社員の人事管理制度改定の概要

定年・継続雇用制度の概要(改定前)

■正社員の定年制度と人事管理制度

正社員の定年制度と人事管理制度の概要を整理した図表2をみると、改定前の定年制度は60歳定年である。
人事管理制度について賃金制度の基本給は職種別賃金で、医師、看護師、技士、事務の4職種ごとに賃金表が設けられている。看護師を例にすると、基本給の決め方は初任給に昇給を積み上げる方式がとられ、昇給は年1回、人事評価(基本給査定)結果による査定昇給(昇給基準給×査定係数)が支給される。賞与は「基本給×賞与係数」による金額が年2回支給され、賞与係数は標準月数に賞与査定が加味されて決まる。

人事評価は看護師、技士、事務の3職種を対象に昇給に反映させる基本給査定と賞与に反映させる賞与査定が行われ(両査定とも5段階評価)、その手続は「所属長による1次評価ー担当部長による2次評価ー理事長による最終評価」としている。

社員の活用について、仕事内容は専門スキルが求められる業務(医師、看護師、技士、事務)であるため、職種変更は行われない。また、役職定年は実施していない。勤務時間はフルタイム勤務であるが、後述の短時間正職員制度を利用して短時間、短日勤務を選択することができる。退職金は定年退職時に支給される。

継続雇用制度(再雇用制度)

継続雇用制度の概要については正社員の人事管理制度との対比でみていくことにする(図表2)。
まず同制度の対象者は同法人の定年年齢(60歳)に達して退職する者で、希望者全員(経過措置利用)を継続雇用としている。社員区分は嘱託社員となり、雇用上限年齢の65歳まで1年ごとの契約更新が行われる。賃金制度について、基本給は定年時の賃金水準が維持されるが、昇給は行われない。賞与、手当、福利厚生は正社員と同じ仕組みが適用された。

仕事内容は定年時の仕事を引き続き担当し、また、役職定年はないため役職者はそのまま役職を継続するが、人事評価で役職に求められる職責が果たせなくなった場合は外れる。

勤務時間はフルタイム勤務であるが、正社員と同じように短時間正職員制度を利用して短時間、短日勤務を選択することができる。定年退職時に支給する退職金の他に継続雇用終了後の退職一時金等の支給等は行われていない。

図表2 60歳以上の人事管理制度の変化

定年・継続雇用制度の概要(改定後)

定年・継続雇用制度改定後の高齢社員の人事管理について概要を整理した図表2をみると、正社員、継続雇用制度の両方とも、正社員の定年年齢が60歳から65歳に、継続雇用制度の雇用上限年齢が65歳から一定の基準を設けて70歳まで引き上げられただけで、賃金制度や役職定年などの人事管理制度の見直しは行われていない。本人の意欲や能力等に応じて働ける環境が整備されたことにより、職員のモチベーションの維持・向上に役立っている。

高齢社員戦力化のための工夫

高齢社員の戦力化に向けた取り組みについて、①制度面の工夫、②業務面の工夫、③意識・風土面の工夫、④能力開発の工夫、⑤健康対策の5つの視点からみていく。

■制度面の工夫~健康管理の拡充

制度面の主な工夫は「短時間正職員制度の導入」である。同法人はこれまで職員(正職員、嘱託職員)の希望による柔軟な働き方(短時間、短日、利用期間)を個別対応で行っていた。同制度の導入は、こうした個別対応を制度化したものである。同制度の実施手続は、本人の申請をもとに所属長と理事長が検討して決定する流れである。ただし、同制度の対象者はパート社員を除く全社員で、希望者全員を原則として認めている。働き方は本人の希望に沿って柔軟に対応している。賃金(基本給と賞与)は時間比率で減額される。同制度利用後のフルタイム勤務への復帰は可能にしている。

■業務面の工夫

業務面の主な工夫は「機械設備の導入」と「業務改善」である。第1の「機械設備の導入」について、同法人は高齢職員の腰痛対策として機械入浴槽を導入した。その結果、高齢職員の負担を軽減させることだけではなく、介護度の高い患者の入浴介助の負担軽減にもつながった。

第2の「業務改善」について、高齢職員が現役で働き続ける環境を整備するため、高齢職員の意見を反映させた業務改善に取り組む一方、高齢職員の体力、能力に応じた業務を担当させるようにしている。その一例として、体力がいる外出レクリエーションの引率の軽減、定型作業への担当替え、リハビリやレクリエーションで高齢職員のアイデアや知識を活かしたプログラムの開発への担当などである。また、写真や図を活用した作業手順の掲示、口頭による伝達ミスをなくすため紙面による仕事の指示など作業手順の改善も同法人は進めている。

■意識・風土面の工夫

意識・風土面の主な工夫は「改善提案制度の導入」と「職場コミュニケーションの推進」である。
第1の「改善提案制度の導入」について、同法人は仕事の方法、職場環境に関する問題点や改善案を職員が提案する「全職員参加のミーティング」を年4回している。この施策は同法人の院長も兼務する現理事長が理事長職に就任して実施された。なお、この施策の他に同法人は、月2回管理職が参加する「院長ミーティング」を実施し、管理職からも法人運営に関する問題点や改善案を提出させ、法人運営の向上に全社員の意識づけを進めている。

第2の「職場コミュニケーションの推進」について、同法人は職員間のコミュニケーションを円滑にするため、法人全体の忘年会やバーベキューを実施しているほか、職場単位の職場交流会に金銭補助(年2回、合計4,000円)を実施している。

■能力開発の工夫

能力開発の主な工夫は「顧問制度による後継者育成」「トレーナー制度の導入」「若手職員とのペア就労」である。
第1の「顧問制度による後継者育成」について同法人は高齢社員の技術を現役社員に継承するため顧問制度を導入した。顧問となった高齢社員は後任の教育、育成に努めている。

第2の「トレーナー制度の導入」について、新規に採用した60歳以上の高齢者の定着を促進するためにトレーナー制度を同法人は導入し、高齢職員の教育担当者を決めて、採用後、日誌による指導を1 ヶ月間、毎日実施している。

第3の「若手職員とのペア就労」について、同法人は高齢職員の体力的、精神的負担の軽減と仕事を通じた知識・技能の継承を目的に若手職員とのペア就労を所属長の指示の下で実施している。例えば、寝たきり患者の褥瘡(床擦れ)防止のために行う背抜き業務は体力的な負担が伴う作業であると同時に経験が必要な業務である。高齢職員にとって体力的に厳しい一方、若手職員は経験が浅いため作業の的確さが不十分な場合がみられる。そこでペアを組んで就労させることで高齢職員は体力的な負担が軽減される一方、若手職員は高齢職員からの指導により経験を積むことが可能になった。

■健康対策

健康対策の主な取組みは「永年勤続表彰の適用範囲の拡大」である。これまで永年勤続表彰は勤続10年から5年ごとに表彰し、対象者には副賞として海外旅行券の支給と特別休暇の付与を行っていた。これまで65歳以上の高齢職員は適用外であったが、2011年から65歳以上も適用を拡大した。その結果、健康管理に対する意識が向上した。

今後の展望

高齢者雇用の今後の展望について同法人は病院・施設利用者の心にしっかり寄り添いながら、今後も機械設備を積極的に導入するなど、高齢職員が安心して元気に働ける職場環境の整備を一層進めていきたいと考えている。

事例内容についてお役に立てましたか?

役に立った

関連情報
RECOMMENDED CASE