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株式会社 尾賀亀(おがかめ)

-継続雇用年齢を延長し、慣れ親しんだ環境で働ける場を提供-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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株式会社 尾賀亀(おがかめ)のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1856(安政3)年 1953(昭和28)年(設立)
  • 本社所在地
    滋賀県近江八幡市
  • 業種
    ガソリンスタンド運営、食品卸売業
  • 事業所数

導入ポイント

  • 80歳までの継続雇用年齢延長と併せて深夜勤務の高齢社員の身体的負担の軽減と防犯対策の拡充に関わる規則を現場の実態に即しながら整備
  • 80歳までの継続雇用制度の規程化
  • 就業意識向上研修を活用した就労意欲の向上
  • 健康経営の推進
  • 高齢者の積極的採用(アルバイト)
  • 従業員の状況
    従業員数 205人 / 平均年齢 42.9歳 / 60 歳以上の割合 60~64歳 (9.5%)、 65歳~ (10.5%)
  • 定年制度
    定年年齢 60歳 / 役職定年 55歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 80歳まで継続雇用
2025年02月01日 現在

同社における関連情報

沿革・理念

1856(安政3)年の創業以来、エネルギーと食品という2つの事業で人々の暮らしを支え続けてきた。当社は「毎日のあたりまえ」を届ける使命と「その先の豊かさ」をつくる未来像への志を強く感じている。繋いだご縁と感謝のこころを大切に、挑戦を楽しみ、社会に大きな価値を提供し続けられる企業をめざしている。

雇用制度改定の背景

Q.継続雇用年齢を引き上げたきっかけは何でしたか。

当社のガソリンスタンドの多くは24時間営業で、夜間業務は主に高齢社員が担っています。業務の中には危険物取扱者の資格が必要なものもあるため、この資格を持っている高齢社員は当社にとって不可欠です。そのため、65歳の継続雇用が終了しても、継続して働いてもらいました。しかし、65歳以降の規程を整備していなかったので、現場の実態として高齢社員が深夜に働いていること、身体的負担が大きく健康面も不安視されることがありました。これは良くないと思い、会社としてしっかりとした規程を整備することを決めて、2021(令和3)年3月に継続雇用の上限年齢を65歳から80歳に引き上げました。

Q.改定で苦労したことは何でしたか。

改定作業での大きな苦労はありませんでしたが、高齢社員の身体的負担が一番心配でした。深夜業務で高齢社員一人の配置となると、強盗等の防犯上のこともあるので、「危険を感じたらすぐ逃げてください」とか「夜間のカラーボールを設置する」というようなことを実態に即しながら徐々に防犯マニュアルとして整備し、社員が納得し安心してもらえるような形に持っていきました。

Q.並行して改定した他の制度は。

今回の改定で継続雇用者の人事評価制度を見直しました。それまでは正社員と同じ制度(業績評価)を継続雇用者にも適用していましたが、高齢社員に求める役割に合っていませんでした。そこで、店舗への貢献度を評価する行動評価に変えたことで、高齢社員からは良好な反応がみられました。

人事管理制度の概要

今回の雇用制度の改定にあわせて、同社は継続雇用者の人事評価制度の見直しを行った。

■正社員

正社員の人事管理制度を確認する。まず雇用制度について定年年齢は60歳で、このほかに55歳の役職定年制を設けている。社員格付け制度は職能等級制度が用いられ、基本給は職能給で職能等級に対応した賃金表が設けられている。昇給は年1回、人事評価によって行われる。賞与は「基本給×賞与係数」によって決まり、賞与係数は経営業績と人事評価によって決められる。人事評価は行動評価と業績評価が行われ、業績評価について例えば、TCS(トータルカーサービス)事業部では獲得項目によるポイント制がとられている。人事評価の流れは、「上長による1次評価-部門長による2次評価」であ

■継続雇用制度

継続雇用制度は60歳の定年に到達した社員を対象にした再雇用制度である。契約期間は1年である。雇用形態は70歳までが契約社員(以後、キャリア社員)、70歳超はアルバイトとなり、キャリア社員は定年前の業務を引き続き担当することが多い。

賃金制度について、基本給は時間給がとられ、その水準は70歳までのキャリア社員は、定年前の役職、能力、資格によって、70歳超のアルバイトは担当する業務内容によって決まる。

勤務時間は本人の健康状態などに応じて勤務が続けられるように、労働時間は70歳までのキャリア社員が週40時間以内、70歳超のアルバイトは75歳までが週24時間以内、75歳超~ 80歳は週18時間以内としている(図表参照)。

高齢従業員戦力化のための工夫

■技能承継の実施

自動車整備業務は知識だけではなく、経験やノウハウも不可欠である。そこで、同社は自動車の整備・検査に関する豊富な経験を持つ高齢社員にOJT指導係として若手の育成を任せているほか、サービス力向上のための社内研修の講師として高齢社員の持つ経験やノウハウを社員に伝えてもらうようにしている。

〈熟練者による整備・検査の様子〉

■高齢者の積極的採用(アルバイト)

同社はガソリンスタンド業務、特に深夜業務を担う高齢者のアルバイト採用を積極的に進め、日勤は経験者の採用を、深夜勤務は未経験でも危険物取扱資格の保持者であれば採用を行っている。

■就労意欲向上の取組

モチベーションの維持・向上や定年後の働き方に向けて、中高年層のベテラン社員を対象に就業意識向上研修*を実施した。また、管理職研修では、会社の将来を担うリーダーとしての自覚を促して、就労意欲を高めている。

〈就業意識向上研修〉

健康管理・安全衛生・福利厚生

■健康経営の推進

同社は社員と家族の“心身の健康”を重要な経営資源のひとつとして捉え、社員の健康維持・増進に対する積極的な支援を行っている。具体的には、禁煙ダービー、睡眠セミナー、ウォーキングイベントへの参加などの活動で、社内外でこれらを実施している。こうした活動により、社員自身も生活習慣を見直したり、運動を始めたりするきっかけにつなげているとともに、2020(令和2)年に経済産業省の「健康経営優良法人」の認定や全国健康保険協会滋賀支部が推奨する「健康アクション宣言」につながっている。

このほかにも、人間ドックや予防接種のほか、社内外のスポーツ活動に対する補助制度を同社は実施している。

■社内コミュニケーションの促進

同社は社員間、社長と社員の親睦を深めるための取組を積極的に進めている。例えば、コロナ禍以前は、社長と社員の親睦を深める食事会(通称「社長メシ」)を月1回開催し、高齢社員も参加していた。

コロナ収束後の2022(令和4)年から毎月エンゲージメントサーベイを社員に実施しているほか、同社の決算状況の説明会を実施し、社員全体に経営状況を理解してもらい、一体感を高め、説明会終了後は懇親会を開催し、高齢社員を含め社員との親睦を深めている。

■安全衛生対策

同社の主力事業であるTCS(トータルカーサービス)事業で展開しているガソリンスタンドの多くは24時間営業のため、深夜勤務時の安全対策に特に力を入れている。例えば、社員に危険がおよぶことがないよう、一人で接客しないなどのルールを設けたり、労働時間についても制限を設け、深夜の長時間勤務がないように安全対策が行われている。

今後の課題

今後の課題として、同社が日頃から取り組んでいる「全社員が長く働き続けることができる職場づくり」を今後とも進めていくことを挙げている。また、高齢社員には「安心して安全に働くことができる職場の環境づくり」を継続していくこととしている。

図表.継続雇用制度(再雇用制度)改定に伴う人事処遇制度の比較

  改定前 改定後
上限年齢
65歳
80歳
70歳まで 70歳超
雇用形態 契約(キャリア)社員 同左 アルバイト
基本給 【決 め 方】 定年前の役職、能力、資格をもとに個別に決定
【支払形態】時間給
同左 【決 め 方】業務内容によって決定
【支払形態】時間給
労働時間 フルタイム勤務 同左 ・70歳超~ 75歳:週24時間以内
・75歳超~ 80歳:週18時間以内
 (出所)株式会社尾賀亀へのヒアリングをもとに筆者作成。

出所:70歳雇用推進事例集2025

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