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日本環境マネジメント株式会社

-年齢に関わりなく活躍できる環境を目指し、処遇を変更せず70歳定年に-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 70歳以降も再雇用(基準あり)
  • 配置や勤務時間に配慮
  • 処遇継続
  • 技能伝承
日本環境マネジメント株式会社のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1974年
  • 本社所在地
    埼玉県さいたま市
  • 業種
    その他の事業サービス業
  • 事業所数
    約30カ所

導入ポイント

  • 定年年齢を70歳まで引上げても処遇を変更せず、引き続き定年前の世代と同様の活躍を期待
  • 高齢者採用も積極的に実施
  • 経験豊富な高齢従業員を指導役として若手従業員等を支援
  • 従業員の状況
    従業員数 1,512人 / 平均年齢 61.0歳 / 60 歳以上の割合 62.0%
  • 定年制度
    定年年齢 70歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 70歳以降、基準該当者を上限なく再雇用
2021年07月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

日本環境マネジメント株式会社は、1974(昭和49)年に設立された指定管理者事業、ビルメンテナンス事業、廃棄物管理事業、下水道管理事業などを展開するビルメンテナンス業の会社である。同社が立地する埼玉県をはじめ関東圏内を中心に全国に約30カ所に営業拠点を展開している。

従業員数(2021年4月現在)は1,512名で、雇用形態別の内訳は、正社員176名、有期契約社員1,336名、年齢別には60歳未満575名、60歳 以 上937名である。 従 業員の平均年齢は61歳である。

同社の雇用形態は正社員(総合職、一般職)と有期契約社員からなる。有期契約社員は、継続雇用者の社員区分の嘱託社員と現場の業務を担う専業職のパート社員で、パート社員はさらに勤務時間の長さによってフルタイム勤務のLパート社員(時給制)、週20時間のMパート社員(雇用保険対象、時給制)、週20時間未満のSパート社員(時給制)の3タイプにわかれる。

採用状況について、人材移動が活発な特性を持つ業界のため、中途採用を中心としているものの新卒採用も実施している。毎年の平均的な正社員の採用実績は、新卒3名程度、中途者5名程度である。同社は高齢従業員の採用も積極的に行っており、ハローワークにシニア向けの求人をしている。

雇用制度改定の背景

■経緯

2018(平成30)年11月までの同社の定年・継続雇用制度は「65歳定年、年齢上限なしの継続雇用(再雇用制度)」であった。継続雇用は65歳の定年年齢に到達する正社員を対象に、本人の希望と健康状態を確認して雇用する制度である。先に紹介したように人材移動の活発な業界特性であるがゆえに、長年の仕事経験を持つ高齢従業員は、60歳未満の従業員と同様に同社にとって貴重な戦力である。そこで、高齢従業員だけではなくすべての従業員が年齢に関わりなく働ける環境を整備することを目的として2018(平成30)年12月に70歳定年制を導入した。図表1は雇用制度改定の概要を整理したものである。

図表1 雇用制度改定の概要
(出所) 図表1日本環境マネジメント株式会社のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

■雇用制度改定の課題と工夫

今回の70歳定年制導入に際して課題となったのは、引き上げる新たな定年年齢の設定であった。同社の事業は、資格取得を必要とする業務が多いため、人事管理面で長年の仕事経験と資格を保有しているベテラン従業員が年齢に関わりなく戦力として活躍してもらうための働く環境づくりを進めていた。その一環として2015(平成27)年に65歳定年制を導入した。今回の70歳定年制導入に向けた社内での検討段階では定年制廃止、75歳定年制といった案も出ていたが、その一方で、自動車の運転が多いという業務特性の観点から加齢に伴う健康面の課題があることから、2018(平成30)年12月に70歳定年制となった。同社は労働組合がないので、70歳定年制導入に際して労働者代表に対して変更内容を説明して意見交換し、社内イントラネットを通して従業員へ周知を行った。

人事管理制度の概要

■雇用制度改定前

(1)正社員
正社員の人事管理について概観すると、まず社員格付け制度は、職能資格制度(「資格等級制度」と呼称)と役職制度からなり、職能資格制度は8ランクから構成される。役職制度の職制は「本部長(執行役員兼務)-部長-グループリーダー-チームリーダー」の4ランクで、6等級以上かつ部長以上が管理職である。

正社員の賃金制度については、月例給は「基本給」であり、この他に「役職手当」などの諸手当が加わる。基本給は等級別定額給で、職能資格制度の等級に対応した賃金表の金額が支給される。昇給は、人事評価結果に基づいた昇給表の金額が支給される。昇給表は50歳未満と50歳以上に分かれ、50歳以上の昇給額は50歳未満より低く設定されている。定年前の昇給停止は行われず、定年まで昇給が行われる。賞与の決め方は「基本給+役付手当」に「等級係数」と「賞与係数」を乗じる方式である。等級係数は、職能資格ごとに一定率が設定され、賞与係数は業績評価によって決められる。

嘱託社員の賃金は月給制であり、仕事の内容などによって額が決められる。パート社員の賃金は、原則として同じ仕事であれば同じ時給であり、リーダーには職場責任者手当を支給している。

人事評価については、同社は業績評価、役割・能力評価、人物評価(「フィロソフィー評価」と呼称)を実施している。評価は、昇給が年1回、賞与が年2回それぞれ行われ、昇給と賞与で各評価要素の配点に差を持たせ、昇給は人物評価の配点が高く、賞与は業績評価の配点が高くなるように設計されており、昇給と賞与にそれぞれ反映される。評価手続きについては、所属長による1次評価、部長による2次評価、その後、役員による最終評価が行われる。こうした人事評価は正社員を対象に行われ、有期契約社員に対しては実施していないものの、運用により日常の働きぶりを各職場の責任者が部長、本部長に報告している。

役職定年については設けていないものの、人事評価に基づいて役職者としての仕事の成果が出ていない場合、降職させている。こうした役職管理は日常的に行われており、役職者の高齢従業員は、仕事の成果を出し続けている限り、役職に就いている。

退職金については、同社は支給していないものの、企業年金として確定拠出年金制度を利用しており、その掛金を積み立てている。積み立ての対象者は、正社員までとなっている。

(2)継続雇用者
同社では、70歳定年制に切り替えてからは定年を迎えた従業員がいないため、継続雇用に切り替えた実績がない。そのため、以下は、継続雇用を希望する者が出た場合の同社の考え方である。

まず継続雇用制度は、年齢上限なしの継続雇用(再雇用制度)で、社員区分は嘱託社員である。継続雇用への切り替えに際しては、希望者に対し、人事評価結果を踏まえ、健康状態が良ければ希望者全員を継続雇用に切り替えることを考えている。継続雇用は1年ごとの契約となる。

社員格付け制度は、定年時の等級を継続する。現在、継続雇用者が正社員と同じ仕事で同じ働き方の場合、役職定年はないものの、今後、役職定年制を設けるかを検討している。

賃金制度については、正社員の制度が引き続き適用され、水準の見直しも行わないことを基本方針としており、具体的な待遇は個別対応で行う。継続雇用者の昇給については、正社員と異なる基準を設ける。なお、継続雇用者については、正社員のような人事評価制度はない。

勤務時間はフルタイムの他に短時間・短日勤務を選択することができ、その場合の賃金額は時間比例で算出する。上記の継続雇用制度以外にも、本人が継続雇用への切り替えの際に、あるいは継続雇用に切り替わった後で仕事内容の負担を軽減することを希望する場合、話し合いによりパート社員に切り替える。その場合の待遇はパート社員のそれが適用される。

■雇用制度改定後

70歳定年制導入に伴う人事管理制度の見直しは行われず、正社員化した60歳代後半の人事管理制度は65歳未満の正社員の人事管理制度がそのまま継続される。なお、企業年金の掛金の積立は65歳までとしている。
継続雇用制度について、定年引上げに伴う改定は行われず、それまでの制度が継続されている。

高齢従業員戦力化のための工夫

■高齢従業員の意欲向上のための取り組み

同社が実施している高齢従業員の意欲向上のための主な取り組みは「永年勤続者の表彰」である。長年の功績を称え、ねぎらうことを目的として、有期契約社員を含む全従業員を対象に勤続10年ごとに表彰を行っている。

■高齢従業員の活躍のための取り組み

高齢従業員の活躍のための主な取り組みは「外国人技能実習生や若手従業員への支援・指導役」である。同社が受け入れている外国人技能実習生の指導を高齢従業員が担当し、高齢従業員の技術や経験を技能実習生に伝え、知識や技術取得に貢献してもらっている。

また、チームで作業を行う現場では高齢従業員を現場責任者に任命して、高齢従業員がリーダーとしてチームをとりまとめるとともに、若手従業員のサポート役として支援している。

今後の課題

高齢者雇用に関する今後の課題は、高齢従業員が培ってきた経験、ノウハウ等の若手従業員への継承である。人手不足が続くなか、高齢従業員に貴重な戦力として活躍してもらうために、同社は働く環境の整備に取り組んでいる。また、将来の中核を担う若手従業員の育成も重要である。そのため、次世代の育成方法を確立することを今後の課題としてあげている。

図表2 高齢従業員 (正社員) の60歳以降の人事管理制度の変化
   70歳定年制導入前 (~ 2018年11月)  70歳定年制導入後 (2018年12月~)
 定年年齢  65歳 70歳
 仕事内容  ———  変更なし
 役職定年  設けていないが、 人事評価により仕事の成果を出していないと評価した場合は降職。  変更なし
 基本給(月例給)  変更なし  変更なし
 昇給  定年まで昇給あり  変更なし
 手当  変更なし  変更なし
 人事考課  変更なし  変更なし
 退職金  定年まで確定拠出年金の掛金を積み立て  65歳まで確定拠出年金の掛金を積み立て
 労働時間   原則、 フルタイム勤務(短時間 ・ 短日勤務も可)  変更なし
(注1)70歳定年制導入後の人事管理制度の変化は旧定年年齢 (65歳) のそれと比較した内容である。
(注2)同社は継続雇用制度 (再雇用制度) を導入し、 正社員時代と同じ処遇を継続することを基本方針としているが、 具体的には個別対応としているため継続雇用制度を作成していない。
(出所) 図表 2 日本環境マネジメント株式会社のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

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