レンゴー株式会社
ー「生涯現役」を掲げ、処遇を変更せず役職定年もない65歳定年にー
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- 65歳定年制
- 処遇に変更なし
- 役職定年なし
- レンゴーはつらつ健康宣言

企業プロフィール
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創業1909年
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本社所在地大阪府大阪市
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業種紙・紙加工品製造業
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事業所数37か所(単体)
導入ポイント
- 「生涯現役」を労使共通のスローガンとして機運を盛り上げ
- 60歳以降も59歳までの処遇を維持、役職定年も設けず、現役世代と同様の活躍を期待
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従業員の状況従業員数 4,474名 (うち正社員4,047名) / 平均年齢 39.8歳(正社員) / 60 歳以上の割合 約4%
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定年制度定年年齢 65歳 / 役職定年 なし
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 * 2020年4月より、最長70歳まで再雇用
同社における関連情報
企業概要
■段ボール業界のリーディングカンパニー
レンゴー株式会社は、1909年に創業し日本で初めて段ボールを事業化した。「段ボール」と名付けたのも同社の創業者である。段ボールは包む製品・商品によって大きさや形、印刷が異なり、すべてオーダーメイドでリサイクル率98%と環境に優しい。段ボールは100年以上も主力事業であり、同社は業界のリーディングカンパニーである。
段ボール以外のパッケージも手掛け、海苔がパリッと巻けるオニギリのフィルム包装やビールの6缶パックを開発・普及したのも同社である。段ボール自体も進化しており、通販向けに中身の大きさを計測してジャストサイズで自動梱包する包装システムを開発、また開封しやすくそのまま陳列して販促効果がある段ボールは店舗での品出し・陳列作業の効率化につながる。同社は、あらゆる包装ニーズに応える世界一のゼネラル・パッケージング・インダストリー、「GPIレンゴー」を目指している。
■従業員数
同 社 の 従 業 員 数 は4,474名(2019年9月末現在)、うち正社員は4,047名、 他427名で、全体の約5割が製造現場の現業職、60歳以上は約4%である。採用状況は毎年100名程度の新卒者を採用し、2019年4月は107名を定期採用した。
65歳定年の背景
■人材確保・強化のため
同社は、1982年に60歳定年、2001年に再雇用制度を導入した。2013年には原則希望者全員が65歳まで働き続けられる制度とし、約8割の社員が再雇用されていた。しかし、賃金低下等による再雇用者のモチベーションダウン(交替勤務や休日出勤を嫌がる等)、その姿を見ている後輩世代への影響といった問題意識を労使双方が持っていた。
一方で少子高齢化を背景に労働力人口が減少する中、近年、各企業の求人意欲が旺盛になり、同社は採用に苦戦したり、若年層を中心に依願退職が増えたりと、人材の確保が課題として浮上してきた。
同社は、女性の活躍をはじめ、近年、「多様な人材が個々の能力を最大限に発揮できる企業体」を目指し、積極的に取り組んできた。この動きをさらに加速して会社の生産性向上とイノベーションの担い手である人材の確保・強化を図るため、高齢者のさらなる活躍が必要と判断した。
■労使共通のスローガン「生涯現役」
同社は、人材の多様化と高齢者活用を推進するため、「生涯現役」を労使共通のスローガンとして、2017年3月より「60歳以降の雇用のあり方」に関する労使協議に着手した。
65歳定年の内容
■処遇は変わらず役職定年なしの改定案を労働組合に提示
2018年3月、会社は、社員のモチベーション維持を最優先に、60歳以降も給与・賞与の処遇は59歳までと変わらず、一律的な役職定年も設けない制度改定案を労働組合に提示した。具体的には次の通りである。
① 2019年4月、定年を60歳から65歳に延長する。
② 定年延長に伴い各人の現在の基本給を下げることはしない。
③ 60歳以降の賃金改定は59歳までの計算式と同じ。発揮能力に応じて64歳まで昇給可能。
④ 60歳以降の賞与は59歳までの計算方法と同じ。
⑤ 一律的な役職定年は導入しない。
⑥ 退職金は60歳までは退職金ポイントを従来通り付与して固定。60歳以降は利息のみ付与。
65歳定年を導入する場合、60歳以降の処遇改善の原資を捻出するため、59歳までの賃金カーブを緩やかにしたり、退職金水準を下げることも珍しくないが、同社は賃金抑制等を行わず、60歳以降も昇給可能とした。当然、人件費は相応のアップとなるものの、「人への投資」を重視する会社の姿勢の表れであり、企業のパワーアップに資すると考えた結果である。
期待を上回る改定案を会社から提示されて労働組合に異論はなく、全社員を対象にした労使による説明会を経て、2018年6月、2019年4月より65歳に定年延長することに労使が基本的に合意した。
■役職制度の見直し
同社は一律的な役職定年を導入しなかったが、2019年4月、管理職の役職制度を見直している。
管理職の中に「部長待遇」や「担当課長」等と呼ばれて部下を持たない待遇職が少なくなく、社外から「ライン長が分かりにくい」と言われることがあった。今回、ライン長を明確にするため、ライン長ではない待遇職は「担当○○」と呼称を統一した。役職手当・役職賞与も従来はライン長と待遇職が同額であったが、ライン長の方を高くした。世代交代の停滞を避けるためには、役職は65歳まで自動継続するのではなく、必要に応じて役職の世代交代を進めていく方針である。
また、旧制度による再雇用者の不公平感を緩和するため、2019年3月末までに60歳定年を迎えた再雇用者についても処遇改善を行った。
高齢社員戦力化の工夫
65歳定年に関して、労働組合から制度面での反対意見はなかったものの、「今の仕事を65歳まで続けられるか体力面が不安」「交替勤務を続ける自信がない」という組合員の声が寄せられた。そのため、全社的に「生涯現役」を目指す機運を高める施策を講じた。
■労使共催研修を実施
2018年秋、65歳定年のスタート世代となる57 ~ 59歳の組合員を対象に労使共催研修を実施した。研修参加者は同世代で互いに刺激を受けるとともに、始業時のラジオ体操を正しくしっかりと行うための専門指導員による「ラジオ体操講習」や、社外講師の「健康づくり講演会」が好評であった。
また、「65歳定年」や「生涯現役」をテーマとする、家族も応募できるポスターコンクールを労使共催で実施し、優秀作品をポスターに印刷して全国の事業所に掲示した。
■健康経営をスタート
同社は、65歳定年に併せて「生涯現役」を意識しながら、社員と家族の健康のさらなる保持・増進を図るため、会社、労働組合、健康保険組合がそれぞれ行ってきた取り組みを整理し、2019年1月に「レンゴーはつらつ健康宣言」を策定・公表し、健康経営を本格的にスタートさせた。
同宣言は心身両面の健康づくりと安全・安心な職場づくりに取り組むことをうたい、当面は前項の労使共催研修で好評であったラジオ体操講習や健康づくり講演会の全国展開に取り組んでいる。
今後の課題
段ボール業界は受注産業であり、長時間労働体質が根強いことから、同社は「働き方改革」の最重要課題を「長時間労働の是正」と考えている。それは同時に女性や若年層の、そして体力面に不安のある高齢者の活躍推進にもつながり、企業の持続的成長にとって不可欠である。
長時間労働は業界共通の課題であり、その解決には業界をあげた取り組みが必要となる。「働き方改革」に先駆ける2014年秋、段ボール業界団体は「全要素生産性の向上」を掲げて「長時間労働の是正」のため労使による取り組みをスタートし、現在も鋭意継続中である。
継続雇用制度 2019年3月までの60歳定年到達者 |
定年制度 2019年4月以降 |
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継続雇用 上限年齢 | 原則65歳まで → 2020年4月より 希望する場合、最長70歳まで |
65歳定年 (65歳以降は協議中) |
社員区分 | 準社員 (一般社員)、 嘱託社員 (管理職) | 正社員 |
契約期間 | 1年更新 | — |
役職 | 役職は外す | 役職定年なし |
仕事内容 | 原則59歳以下と同じ | 59歳以下と同じ |
基本給 | 18万円 (一般社員) | 59歳以下と同じ |
昇給 | なし | 59歳以下と同じ (昇給幅はやや圧縮) |
手当 | 交替勤務手当 ・ マイスター手当等 | 59歳以下と同じ |
賞与 | 考課に応じて0~50万円 (一般社員) | 59歳以下と同じ |
人事評価 | 賞与算定のため年2回実施 | 59歳以下と同じ |
退職金 | なし (60歳定年時に支給済) |
60歳までは従来通り累積、 60歳で固定 60歳以降は利息のみ付与 |
労働時間 | 原則59歳以下と同じ (パート勤務制度あり) |
59歳以下と同じ |
配置転換 | 原則なし | 59歳以下と同様、 可能性あり |
福利厚生 | 単身赴任以外の社宅は退去 | 59歳以下と同じ |