株式会社東邦銀行
ーライフスタイルに合わせて最長70歳まで就労可能な継続雇用制度を整備ー
- 70歳以上まで働ける企業
- 人事管理制度の改善
- 賃金評価制度の改善
- 戦力化の工夫
- 70歳までの継続雇用
- 65 歳まで役職継続
- 多様な勤務形態
- 定年前のサポート体制

企業プロフィール
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創業1941年
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本社所在地福島県福島市
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業種銀行業
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事業所数118店舗
導入ポイント
- ライフスタイルに合わせて最長満70歳まで働くことができる継続雇用制度を整備
- 高齢社員のニーズに合わせて多様な就業形態を導入
- 早期の段階から継続雇用制度の理解を進めるためのサポート体制を強化
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従業員の状況従業員数 2,983名 / 平均年齢 40.9歳 / 60 歳以上の割合 7.3%(単体)
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定年制度定年年齢 60歳 / 役職定年 なし
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70歳以上継続雇用制制度の有無 有 / 内容 基準該当者
同社における関連情報
企業概要
株式会社東邦銀行は1941年に県内3銀行の合併により設立した福島県を経営基盤に銀行業務を展開する地方銀行である。本社のある福島県内を中心に118店舗を、グループ会社8社を有している。
同行の従業員数は正社員(行員)2,127名、非正社員856名である。60歳以上の従業員(以下「高齢社員」)は60代前半層(行員、業務主任嘱託)が139名、60代後半層(シニアサポーター)は35名である。従業員の平均年齢は40.9歳である。
採用状況について、同行は銀行業務の中核を担う総合職と勤務地限定のエリア総合職の新卒採用を行っており、2019年の採用実績は60名である
継続雇用制度改定の背景
同行が今回実施した継続雇用制度改定前(2013年3月まで)の定年・継続雇用制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用(シニアパート制度)」である。シニアパート制度は60歳の定年年齢に到達する同行の行員を対象に一定の要件を満たした者を継続雇用する再雇用制度である。
2013年4月施行の改正高年齢者雇用安定法を受けて、高齢社員がこれまで培った知識や経験を発揮する雇用環境の整備を目的として、2013年4月に業務主任嘱託制度を、2014年7月に行員再雇用制度およびシニアサポーター制度を導入した。図表1はこれら一連の改定概要を整理したものである。

継続雇用制度の概要(改定前)
■シニアパート制度
継続雇用制度改定前の高齢社員の人事管理制度は「シニアパート制度」であり、図表2はその概要を整理したものである。同制度の対象者は定年退職者で、一定の要件を満たした者がシニアパートとして継続雇用される。社員区分はパートタイム社員、契約期間は1年で65歳まで更新を行うことができる。
賃金制度について、基本給は現役行員とは異なり、シニアパート用の基本給(同一金額、時給制)が適用される。昇給はなく賞与は支給されない。また、人事評価は実施されない。仕事内容は長年、仕事を通して培った経験や能力を引き続き発揮してもらうため、原則定年前の仕事とするが定年時に役職を外れるため、継続雇用時は役職がつかない。配置転換は現役正行員と異なり行われない。
勤務時間は短時間勤務を基本とし、具体的な勤務日数と勤務時間は当事者と協議の上、決められる。退職金は定年退職時に支給され、継続雇用終了後の退職一時金等は支給されない。

継続雇用制度の概要(改定後)
一連の継続雇用制度改定後における高齢社員の人事管理は「行員再雇用制度」「業務主任嘱託制度」「シニアサポーター制度」で、
図表2はその概要を整理したものである。
■行員再雇用制度
満60歳以降行員が勤務する場合は、原則後述の業務主任嘱託となるが、本制度は、業務上必要な場合において、これまでのキャリア・適性、本人の意向等を確認し、営業店・本部等のポスト職ならびにそれに準ずる職務に従事している専門的スタッフを対象とする継続雇用制度である。
社員区分は契約行員、契約期間が1年で、最長満65歳まで契約更新を行うことができる。賃金制度について、基本給は継続雇用者用の資格等級別定額給で、定年時の資格等級に対応した継続雇用者用の賃金表が適用される。昇給は行われ、その決め方は現役行員と同じ人事考課が年1回行われる。賞与は年2回支給され、その決め方は現役行員(満55歳以降)と同じ支給方式(基本給×賞与係数〔標準係数+考課係数〕)が適用される。考課係数は人事考課に基づいて決められる。人事考課は現役行員と同じ仕組み(成果考課とプロセス考課)が適用される。なお、人事考課の手続は、現役行員と同じ直属の上司による1次考課、部支店長による2次考課、人事部による最終考課の流れで行われる。
仕事内容は定年時の仕事が継続され、役職についても継続雇用後も継続する。勤務時間は現役行員と同じフルタイム勤務で、必要に応じて時間外、休日労働が行われる。定年退職時に支給される退職金の他に契約終了時に勤続年数に応じた一時金が支給される。
■シニアサポーター制度
シニアサポーター制度は、65歳までの継続雇用を終了した者を対象にした最長満70歳まで継続雇用が行われる制度である。希望者の中から、本人の健康状態(業務に支障はないこと)ならびに銀行・本人の合意等を前提として勤務可能としている。社員区分はパートタイム、契約期間は1年で、70歳まで契約更新を行うことができる。
賃金制度について、基本給は65歳までの継続雇用とは異なり、シニアサポーター用の基本給(同一金額、時給制)が適用される。昇給はなく賞与は支給されない。また人事考課も行われない。
仕事内容は65歳までの継続雇用で担当していた仕事としている。なお、役職には引き続きつかない。勤務時間は短時間勤務を基本とし、具体的な条件は当事者と協議の上、決められる。同制度の契約終了に伴う退職一時金等は支給されない。
高齢社員戦力化のための工夫
高齢社員の戦力化に向けた同行の主な取り組みは、①定年前のサポート体制の強化、②従業員意識調査の実施、③健康管理、の3つである。
■定年前のサポート体制の強化
一連の継続雇用制度の拡充に平行して同行は早期の段階から同制度の十分な理解と準備のサポート体制を強化した。具体的には、まず30歳時、40歳時、50歳時の各節目の年齢に生活設計・自己の具体的方向性の決定等を目的とした「ライフプランセミナー」、54歳時にモチベーションアップや部下指導等を目的とした「キャリアデザイン講座」が行われる。それを踏まえて、56歳~ 59歳時には部店長による個人面談で「進路申告カード」が作成され、その後、人事面談時の希望確認が行われる。定年6 ヶ月前に「定年後継続雇用希望」、3 ヶ月前の「採用許可申請書」の提出を経て継続雇用に切り替わる。
■従業員意識調査の実施
職場環境の改善を目的とした従業員意識調査を同行は2015年から外部の法律事務所に委託して実施している。対象者は高齢社員を含む全行員で経営・事業への評価、働く場としての満足度等の設問が用意される。この調査から得られた行員の声を各施策の改善等に反映している。
■健康管理
健康管理について、同行は現役行員に毎年実施している健康診断を高齢社員にも同様に実施しているほか、現役行員に5年ごとに実施している人間ドックを任意で高齢社員に実施している。
制度改定の効果と今後の展望
制度改定の効果について、同行は①高齢社員の豊富な知識と経験を活かして、銀行業務の重要な部分を担当することで戦力化が図ることができるとともに高齢社員のモチベーションが向上したこと、②指導者として中堅行員の育成を進めることができたことを挙げている。
最後に定年引上げについては、ベテラン行員の活躍機会拡大に向けて、社会情勢の変化を注視しつつ情報収集を適宜進めている。