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株式会社京葉銀行

ー継続雇用の上限年齢を70歳とする新たな継続雇用制度を導入ー

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 70歳までの継続雇用
  • 多様な勤務形態
  • キャリア研修の充実
  • 報奨制度
株式会社京葉銀行のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1943年
  • 本社所在地
    千葉県千葉市
  • 業種
    銀行業
  • 事業所数
    122拠点(店舗)

導入ポイント

  • 65歳以降の役割を明示し、雇用上限年齢を70歳とする新たな継続雇用制度を導入
  • 65歳以降も時間当たりの賃金水準は同じ水準
  • 高齢社員のライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を整備
  • 従業員の状況
    従業員数 2,195名(正行員・スタッフ行員・シニアスタッフ行員) / 平均年齢 39.1歳 / 60 歳以上の割合 10.5%(単体)
  • 定年制度
    定年年齢 60歳 / 役職定年 55歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 基準該当者
2022年03月31日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社京葉銀行は1943年に設立した千葉県を経営基盤に銀行業務を展開する地方銀行で、本社のある千葉県内に118店舗、東京都内3店舗、インターネット支店1店舗、及びグループ会社3社を有している。
同行の従業員数(2022年3月31日 現在)は正行員1,965名で、60歳定年後は契約社員となり、65歳までのスタッフ行員は153名、継続雇用延長後70歳までのシニアスタッフは77名である。従業員の平均年齢(2022年3月31日現在)は39.1歳である。

採用状況について、同行は銀行業務の中核を担う総合職の新卒採用を毎年行っており、2022年度の採用実績は66名である

継続雇用制度改定の背景

2018年6月までの同行の定年・継続雇用制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用(スタッフ行員制度)」である。スタッフ行員制度は60歳の定年年齢に到達する同行の正行員を対象に希望者全員を継続雇用する再雇用制度である。なお、同行では雇用上限年齢の65歳に達した継続雇用終了者が引き続き働くことを希望した場合、個別対応で同行の関連会社に派遣登録して臨時的、短期的な業務に従事していた(「OBパート」と呼称)。

65歳到達後も継続して働きたいという高齢社員の要望が寄せられる一方、OBパートを活用する現場からは、継続的な業務や限定的でない業務に活用したいというニーズの増加、OBパートの対象となる基準が不明確といった問題を抱えていた。このような臨時的、限定的な雇用確保の手段から、65歳以降も引き続き同行の戦力として豊富な経験を有する高齢社員の能力を活かし、次代の育成を図ることを目的として、2018年7月に雇用上限年齢を70歳とするシニアスタッフ行員制度を導入した。図表1はその概要を整理したものである。同制度のポイントは、求める役割の明確化、雇用対象者基準の明確化、雇用条件の見直しの3点である。

図表1 継続雇用制度改定の概要

継続雇用制度の概要

■継続雇用制度改定前~スタッフ行員制度

継続雇用制度改定前の高齢社員の人事管理制度は「スタッフ行員制度」のみであり、図表2はその概要を整理したものである。同制度の対象者は定年退職者で、希望者全員がスタッフ行員として継続雇用される。社員区分は契約社員で、雇用上限年齢の65歳まで1年ごとの契約更新が行われる。

賃金制度について、基本給は現役正行員とは異なり、スタッフ行員用の基本給が整備されている。その決まり方は職務給で、職務レベルに応じて6段階の賃金ランクが設定され、定年時に担当していた職務によって賃金ランクに格付けられる。昇給はなく賞与は支給されない。

人事評価は現役正行員に行われている人事評価(業績評価と能力評価)のうち、能力評価のみが行われるが、その評価シートはスタッフ行員用が用いられ、評価結果は契約更新に利用されている。

仕事内容は長年、仕事を通して培った経験や能力を引き続き発揮してもらうため、原則定年前の仕事としている。なお、同行は役職定年(専任行員制度)を実施し、55歳に役職ポストを外れるため、継続雇用時は役職にはつかない。配置転換は現役正行員と異なり、転居を伴わないエリア内での異動が行われる仕組みになっている。

勤務時間について、原則フルタイム勤務(月150時間)であるが、高齢社員の希望によりミドルタイム勤務(月105時間、短時間・短日勤務)を選択することができ、その場合には時間比例で賃金水準が減額される。
退職金は定年退職時に支給され、継続雇用終了後の退職一時金等は支給していない。

■継続雇用制度改定後~シニアスタッフ行員制度

継続雇用制度改定後における高齢社員の人事管理には「シニアスタッフ行員制度」が追加され、図表2はその概要を整理したものである。
同制度の対象者は以下の基準をすべて満たした者である。

①  当行及び関連会社で勤務経験のある65歳から70歳(原則)の行員であること
② スタッフ行員として65歳の雇用契約期間満了まで勤務実績があること
③ 継続して勤務する希望があること
④ 担当業務の資格条件等を満たしていること
⑤ 前年の評定が一定以上の評価であること
⑥ 直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
⑦ 前年の出勤率が一定率以上であること

これら基準はスタッフ行員として通常の勤務をしていれば満たす基準であるため、シニアスタッフ行員制度の雇用条件を確認したうえで、シニアスタッフ行員を希望した者はこれまで全員継続雇用されている。また基準①では、OBパートとして働いている高齢社員やすでに同行を退職した70歳未満のOBも同制度の対象にしている。

社員区分は契約社員で雇用上限年齢は70歳までの1年ごとの契約更新が行われる。①基本給の支払形態が「月給制」から「時給制」に切り替わったこと、②労働時間が「原則フルタイム勤務」から「原則ミドルタイム勤務」に変更されたこと、以外に人事管理制度の見直しが行われていない。なお、労働時間については、ショートタイム勤務(月75時間、短時間・短日勤務)を選択することができる。

こうした制度のもと、同行はシニアスタッフ行員に、①経験豊富な行員として業務面で後輩の良き手本、②培った知識・経験・技能伝承の担い手、③金融市場における競争力を維持するための高度専門家 という3つの役割を期待している。

図表2 高齢社員の人事管理制度の変化
  継続雇用制度改定前 継続雇用制度改定後
名称 スタッフ行員制度 シニアスタッフ行員制度
継続雇用上限年齢 65歳 70歳
社員区分 契約社員 契約社員
対象者 定年退職者 継続雇用終了者 (65歳) 等
契約期間 1 年契約 変更なし
基本給 タイプ : 職務給 (6ランク)
支払形態 : 月給制
タイプ : 変更なし
支払形態 : 時給制
昇給 実施せず 変更なし
賞与 実施せず 変更なし
 人事評価  現役正行員と異なる (能力評価のみ) 変更なし
 仕事内容  原則、 定年前の仕事を継続 変更なし
 役職  役職はつかない 権限のある役職につく
 配置転換  転居を伴わない転勤あり 変更なし
 労働時間  原則、 フルタイム勤務 (月150時間)。
ミドルタイム勤務 (月105時間) の選択可。
変更なし
 福利厚生  現役正行員と概ね同じ  変更なし
 退職金  なし  変更なし

高齢社員戦力化のための工夫

■キャリア研修の拡充

50歳代前半を対象にキャリア研修を行っている。その内容は役職定年制(専任行員制度)やスタッフ行員制度等の説明が行われ、50代後半以降の働き方、キャリアを考えてもらう等である。シニアスタッフ行員制度導入に伴い、同制度の内容説明を加えて、定年後も最長10年間働き続ける環境が整備されたこと、そのための活躍できるスキルを磨く必要性の意識づけを同研修で行っている。

■報奨制度の適用拡大

報奨制度(「メリット配分」と呼称)の適用対象となる行員をスタッフ行員だけでなくシニアスタッフ行員にも拡大した。仕事の成果として現役正行員には賞与を支給しているが、スタッフ行員等にはそれが支給されていない。同施策はスタッフ行員等の仕事の成果に対する処遇としての役割を担う施策であり、金融商品の販売、新規法人の開拓実績などの成果に対して1回50万円を上限に年2回(年間100万円を上限)支給される。

■表彰制度の導入

表彰制度の導入について、同社が高齢社員に期待する役割の1つである技能伝承で顕著な功績を挙げたスタッフ行員、シニアスタッフ行員を対象に表彰する施策である。前述の報奨制度対象は、成果が顕在化する営業の業務に集中する問題があり、営業以外の業務に携わる高齢社員にも適用対象になるよう仕事への成果として処遇する施策である。表彰対象となる基準として、指導を担当した行員の成長度、行内講師を担当、実務マニュアル作成などが設けられている。

制度改定の効果と今後の課題

制度改定の効果について、同行は70歳まで働ける環境が整備されたことで高齢社員のモチベーションの向上につながっていると同行は考えており、現場からもスタッフ行員、シニアスタッフ行員が指導員として若手行員とペアを組ませて渉外業務等の技能継承が効果的に行われている等の意見が寄せられている。

今後の課題は、高齢社員のモチベーション問題である。取組の成果が上がっている一方で、人事評価によって仕事の成果が処遇(賃金)に反映されていない状況にある。こうした問題を是正していくために今後とも検討していくことを同行は考えている。
最後に定年引上げについて、同行は現時点では導入の予定はないものの、社会情勢の変化を注視しつつ情報収集を適宜進めている。

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