本文へ
背景色
文字サイズ

事例検索 CASE SEARCH

株式会社堀場製作所

—多様な働き方を提供し、年齢にかかわらず「おもしろおかしく」実現へ—

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫

下階層のタブがない場合、項目は表示されません

  • 70歳までの継続雇用
  • 兼業可能
  • 多様な勤務形態
  • 社是「おもしろおかしく」
株式会社堀場製作所のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1945年
  • 本社所在地
    京都府京都市
  • 業種
    その他の製造業(計測機器製造)
  • 事業所数
    16か所

導入ポイント

  • 高齢者が望むさまざまな働き方を用意、週3~5日勤務や兼業が可能
  • 余人をもって代えがたい人財を高齢期に活用しながら後継者育成
  • 従業員の状況
    従業員数 1,702名
  • 定年制度
    定年年齢 60歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 基準該当者 70歳まで雇用
2019年12月31日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社堀場製作所は資本金120億円、連結売上高2,002億円の企業である。従業員(単体)は約1,700名(海外グループ全体で約8,000名)、平均年齢は40歳である。(2019年12月末現在)

創業者である堀場雅夫は京都大学在学中の1945年に「堀場無線研究所」を設立、これは現在の学生ベンチャーの先駆けである。研究所では核物理実験用の高速演算機に欠かせないコンデンサを自作していたがこの事業がとん挫、そこでコンデンサ生産に欠かせないpH(ペーハー)メータを販売したところ性能の良さから評判となり、1953年に株式会社堀場製作所に改組し、以後、分析・計測機器メーカーとしての道を歩んできた。現在では各種分析・計測機器の開発・製造・販売を担うトップメーカーとして、自動車や環境、医用、半導体、科学業界向けにユニークな製品を供給している。

人事管理制度

同社の社是は「おもしろおかしく」である。創業者堀場雅夫の思想であり、人生のもっとも活動的な時期を費やす仕事にプライドとチャレンジマインドを持ち、エキサイティングに取り組むことで、人生の満足度を高めて欲しいという願いが込められている。
「おもしろおかしく」は同社社員一人ひとりの行動指針でもある。ユニークな製品の開発、環境変化に対応した制度の構築、起業家精神を持って個性的なアイデアや改革の実現に努力する者こそが成功する。グループ社員一人ひとりが自立して成長し、その能力や多様性を最大限に発揮できる環境を提供するの
が会社の務めである。「おもしろおかしく」は同社の人事管理制度の根底にあり、高齢者雇用施策や制度もこの社是を反映して構築されている。同社では社員が「おもしろおかしく」を通して自己実現するため、以下の「5つのおもい」を強く持ち、実践することを求めている。

・誰も思いつかないことをやりたい。
・技を究めたい。
・自分の仕事や会社を誰かに伝えたい。
・人や地球の役に立ちたい。
・世界を舞台に仕事をしたい。

同社の社員は以下の職群に分類される。各職群内の資格は各資格に定められている資格要件をクリアしていること、また本人の自己申請と所属長の推薦により、全体評価者会議内によって格付され昇格していく。処遇についてはライフサイクル給(年齢給)と職能資格給で決まる給与体系である。
●総合職(S職)
新入社員から入社して5年目までの者
●エキスパート職(E職)
 27歳以上の社員で全体の7割、E1 ~ E3までの3階層
●マイスター職(M職)
 技術系専門職、全体の2割程度、M1と上位M2の2階層
●プロフェッショナル(P職)
 海外派遣要員や管理職候補者の1割程度、P1と上位P2の2階層

組織の階層は本部、センター、部、チームの4階層であり、役職としては本部長、センター長、部長、チームリーダーがある。同社の毎年の採用者は新卒の場合、堀場製作所単体で60 ~ 70名、国内グループ企業を含めると120名程度である。一方で中途採用も開発設計職や技術職、海外展開要員や営業要員が主な対象である。

継続雇用延長の背景

研究開発力を強さの源泉とし、海外展開も積極的な同社では、高齢となった研究者や技術者、営業担当者、海外勤務経験者の今まで以上の活用が求められている。

同社の主要顧客である自動車業界では「百年に一度」と言われる技術革新のなか、多方面の研究テーマがあり、それにともなう部品や製品の開発に迫られている。測定機器のニーズが増加するとともにその要求内容も高度化しており、これは同社にとっても対応していかねばならない課題である。また、自動車業界の海外展開とともに現地拠点での研究開発も進展している。同社製品の海外生産や海外販売も今まで以上に求められ、海外体制の強化、海外業務に携わる要員の増員と育成も欠かせない。ちなみに海外勤務者は現在約100名、経験者は全体の2割にのぼる。営業要員についても官公庁向けに太いパイプを持つベテランの後継を育成するためには時間がかかる。

技術系社員、海外経験者、営業要員はそれぞれ短期に育成できない上、これらの人財は他社からの引き抜かれる可能性が高いため、会社の危機感は強い。会社として社員がやりたい仕事、挑戦したい仕事を提供できなければ、人財の活用は難しくなるだけではなく、他社への転職に目を向かわせてしまう。同社では高齢者が求めるセカンドキャリアとの両立も念頭に、それまでの経験が活かせる仕事、社是である「おもしろおかしく」働いて自己実現できる仕事を任せ、社員の要望と現実のミスマッチを生じさせないように努めている。

継続雇用延長の内容

同社では60歳定年後は70歳までの継続雇用制度を用意している。定年後の意向調査を含め、55歳時点で1日コースのライフプランセミナーを本社で実施し、定年後の生計や仕事について周知している。60歳定年後は65歳までは1年更新の嘱託再雇用、65歳以降は一定以上の評価で働く意向のある者のみを対象に70歳まで半年更新の再雇用となる。会社は社員に対して「おもしろおかしく」を通した自己実現を促しており、多様なメニューはその実現をサポートしている。ちなみに上司と部下の年齢逆転は定年年齢前から多くの職場で見られており、定年退職者が役職を離れてそれまでの部下の下で働くことに抵抗はないという。

技術系専門職であるマイスター職(M職)で定年を迎える者の処遇はそのまま継続する。一方、エキスパート職(E職)は最上位のE3の者でも嘱託再雇用後はE2での処遇となる。定年後の高齢者は全体としてマイスターとエキスパートのふたつにまとめられる。
多くの者は65歳までは再雇用を希望する。再雇用者の役割は後継者育成であり、定年前と同じ職場で働く。65歳以降の再雇用は後継者育成がまだ完了していない場合、営業や技術・サービスなどで余人をもって代えがたい場合等に適用されるが、その場合は70歳を超えての雇用も検討されている。

嘱託再雇用では勤務日を少なくしたタイプも用意しており、週5日から3日までの範囲で勤務できる。勤務日数や役割に応じた賃金となる。週当たり勤務日数は嘱託再雇用の更新時に変更できる。ボランティア活動など仕事以外の時間を充実させたい者が短日数勤務を希望するほか、兼業する者もいる。兼業は会社の同業種以外であれば許され、実際に大学講師、農業、飲食店経営を行う者がいる。60歳定年後にグループ会社への転籍もある。グループ会社は経営管理要員を必要としており、堀場製作所の出身者が子会社トップとして転籍することもある。

継続雇用者の賞与はフルタイム(5日)勤務者のみ支給している。将来的には他の形態の勤務者にも支給することで意欲向上につなげたいと会社では考えている。

高齢社員戦力化のための工夫

同社の継続雇用制度は会社の社是を基本指針とし、多様な高齢者のスタイルに応えられるようにさまざまなメニューを用意している。今後は継続雇用者の給与や賞与を改善し、彼らの満足度を高めていく方針である。

今後の課題と展望

嘱託再雇用の高齢者の主な任務は後継者育成であるが、現状では部門によって進捗に差があるという。定年前にほぼ育成が完了している部署もあれば、嘱託再雇用者自身が継続してその業務についている部門もある。 

一方、同社がこれまで供給してきた製品は多品種少量品や一品ものの受注製品など多岐にわたる。高齢者もいずれは会社を離れるため後継者育成は急務である。同社では高齢者の経歴や技能をデータ化して後継者育成に役立つ仕組みや70歳を超えての継続雇用を可能にする新たな嘱託再雇用制度について検討中である。

図表 継続雇用制度改定による人事管理制度の変化
  継続雇用制度 改定前
(~2011年9月) 
継続雇用制度 改定後
(2011年10月~) 
 上限年齢  65歳  70歳
 対象者  希望者全員  基準該当者
 契約期間  1年更新  1年更新
 役職  60歳定年後役職から外れる  変更なし
 仕事内容  原則60歳までの業務を継続している  変更なし
 基本給  7割勤務者 (週4日勤務) が一番多いが、その場合賃金は定年前の7割程度  変更なし
 昇給  ベースアップ適用有り  変更なし
 手当  通勤手当等  変更なし
 賞与  1、 2割ほどいるフルタイム勤務者に賞与あり  変更なし
 人事評価  無し  変更なし
 退職金  無し (60歳定年退職時に支給有り)  変更なし
 労働時間  週3~5日勤務等、 多様な勤務  変更なし

 

事例内容についてお役に立てましたか?

役に立った

関連情報
RECOMMENDED CASE