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小浜信用金庫

—高齢者の力を70歳まで活用し、地場金融機関の強みを追及—

  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 70歳までの継続雇用
  • ノウハウ伝授
  • 適材適所の配置
  • 女性活躍
小浜信用金庫のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1925年
  • 本社所在地
    福井県小浜市
  • 業種
    協同組織金融業
  • 事業所数
    7か所

導入ポイント

  • 定年前に長年従事した業務にそのまま配属、若手や中堅にノウハウを伝授 
  • 女性活躍推進に向けた働き方改革を高齢者雇用推進に応用
  • 従業員の状況
    従業員数 104名 / 平均年齢 42.9歳 / 60 歳以上の割合 13.5%
  • 定年制度
    定年年齢 61歳 / 役職定年 あり 50歳代(役職により異なる)
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 無
2025年01月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

小浜信用金庫は福井県小浜市を地盤とする金融機関である。本店を含めて7支店を持ち、職員数は104名である。

経営理念
『はましん』は、若狭に生まれ、この街とともに歩んできました。
私たちは、地域のための金融機関として、その使命を自覚し、一番身近な相談相手となって、お客さまの課題に全力で向き合い、豊かな未来へ地域とともに歩んでいきます。

人事管理制度

同金庫の職員の年齢構成は以下のようになっている。
18歳~ 30歳:26名
31歳~ 40歳:19名
41歳~ 50歳:23名
51歳~ 60歳:22名
61歳~ 65歳:12名
65歳以上  :2名
(2025年1月1日現在)
平均年齢は42歳であるが、50歳以上がここ数年で多くなっており、次第に高齢化が進んでいる。職種別に見ると、正職員85名、嘱託職員(再雇用者)10名、契約職員1名、準職員(短時間勤務のパート)8名となっている。正職員・嘱託職員は月給制、契約職員は年棒制、準職員は時給制である。

近年はUターン学生の減少から新卒採用も難しい状況が続いており、徐々に65歳以上の転職者(嘱託職員から準職員へ)も増えてきている。定年を迎えてもほぼ全員が再雇用となっている。
職制は、一般職、主任・係長、代理、副次課長、次課長、支店長、部長となっている。100名程度の規模であるため昇格もわりと早い傾向にある。支店長や次課長は40歳代が多い。

役職者の比率は高く、3分の1程度である。役職定年は支店長57歳、部長60歳である。多くの管理職は役職を外れた後はラインからは外れるが、一般職に戻るのでなく、経験を活かし役席として勤務する立場が多い。主に融資、内部管理事務などを担当する専門職に近い立場である。

同金庫では教育研修制度として新人研修と自己啓発による検定試験、養成講座などがある。また、全国信用金庫協会(全信協)や北陸地区信用金庫協会の研修プログラム(業務効率化や事業継承をテーマにした業務研修等)に参加、職員を派遣している。再雇用者向けの業務研修やライフプラン研修はない。退職金は定年61歳で支給する。

定年延長と継続雇用延長の背景

同金庫は2005年以降、定年60歳、希望者全員65歳まで再雇用であったが、2018年4月から希望者全員70歳に制度改定し、加えて金庫が特に必要と判断した場合は70歳超の延長も可能としている。また、2024年以降、定年61歳に延長しており、その背景には職員数の多くない同金庫の現状から優秀なベテラン職員に高齢期も長く勤務してもらい若手や中堅を指導して欲しいこと、厳しい採用環境にあって、即戦力である高齢職員の長期的活用が必要とされたためである。

定年延長と継続雇用延長の内容

同金庫では定年退職者に対して定年の数年前から再雇用の意向を年2回の面接時にヒアリングを実施し、1年前には再雇用の意思確認を実施して再雇用者の把握を行っている。同金庫としては高齢者にはこれまでの経験を活かせる部署で働いて欲しいと考えている。営業経験が長ければ本部に在籍してもできる仕事は限られてしまう。そこで店舗の戦力として配置する。逆に本部経験が長い場合は本部の専門的業務を担当してもらうのが望ましい。定年後に経験のない仕事に移るのは負担も大きいと思われ、同金庫では各職員の能力を把握して定年後の勤務先を提示し、高齢者本人もそれを受け入れて勤務している。

定年後の再雇用者は1年更新の嘱託職員となる。勤務形態は短時間勤務も希望できるが、その場合は「準職員」になる。準職員には短時間勤務の選択肢もあるが、現在、再雇用者は全員フルタイム勤務である。再雇用者は前線での営業推進より、企業格付のための査定、決算書の分析、資料作成など営業の裏方として力を発揮してもらう。また、再雇用者には部下育成も求めている。女性の再雇用者も増加傾向にあり、本部事務・推進、預金の検印やチェック作業等を行っている。接客も丁寧で評価が高い。

定年後の賃金カーブは能力に応じたものとしている。定年までの貢献度で差がつくシステムである。役職経験者の再雇用では賃金は定年前と比べ2割ほどの減額、役職者以外でも2割減程度である。再雇用者にも賞与は年2回ある。また、再雇用者が受け取る手当については、正職員と同じであり、再雇用後も職務に応じて役職手当は継続する。再雇用者も正職員同様に年2回、人事評価を行っており、考課結果は賞与にのみに反映する。
再雇用者の賃金面でのモチベーション低下はないと感じている。責任ある立場から離れ、むしろ気持ちが楽になっている者が多いようだという。

再雇用の契約更新は、年2回「自己申告書」を提出してもらい、人事担当者はそれを確認のうえ本人と人事担当者の面接により希望を聞く。
55歳以上の職員は、「自己申告書」に再雇用継続か退職希望かを継続的に記す。また、自身のメンタル状況や家族の状況などを記載する欄がある

なお、65歳を超えた継続雇用職員が他社から見込まれ、同業ではない他社に入社したケースもある。現役時代から営業で顔が広い職員だったため、相手企業が本人の採用を希望したという。
継続雇用終了時は慰労一時金が支給される。

高齢社員戦力化のための工夫

同金庫では、継続雇用の高齢者を対象に「労働環境に係る相談窓口」を設置している。また、月1回の産業医による健康相談を開設している。高齢者の能力開発について特別なことはしていないが、高齢者は今までのスキルや能力を活かして仕事をしている。
本部でも営業店でも高齢職員は年下の管理職と仕事をする。若い管理職にはやりにくい面もあると思われるが、高齢者の知恵を引き出しながら高い業績を上げてもらうために、管理職と高齢者双方に対して面談を通して要望を聞き、アドバイスを行っている。

今後の課題と展望

希望者全員の継続雇用について、同金庫では十分対応可能と考えている。100名程度の組織で全員の能力をほぼ把握できているため、適材適所で配置できるからである。再雇用者の経験は貴重であり、今後も長く勤務して欲しいと考えている。

一方、福井県は2世帯3世帯で暮らす家庭が多く、家計は若い者に任せて高齢者は引退するという考えもあるという。定年年齢の引き上げは、高齢期の人生設計や働く意欲に大きく影響し、65歳以降の勤務を希望する者がどれだけ存在するのか予想できない面もある。

現在は再雇用者で短時間勤務は少ないが、今後、再雇用者にパート志向が増えれば、業務内容等も工夫したいと同金庫では考えている。その際の参考になるのは、同金庫が女性職員向けに取り組んできた各種施策である。福井県は共働きが日本一多いことから、同金庫では女性職員を主要な対象として子育て支援や活躍推進、働き方の見直しに取り組んできた。仕事と子育ての両立可能な環境整備を進めた結果、女性職員のモチベーションアップ、男性職員の育児や学校行事への参加増加につながり、職場全体の活性化が進んだ。このことから同金庫は平成27年4月に全国で3番目、福井県初の「プラチナくるみん企業」に認定された。女性であれば子供の病気、高齢者であれば介護・通院など、ともに急な事情で職場を離れざるを得ないことがある。同金庫では表彰対象となった取り組みのノウハウを高齢者の短時間勤務などにも活かせると考えている。

図表1 継続雇用制度改定による人事制度の変化

 
 
定年制度 継続雇用制度 改定前 継続雇用制度 改定後
(~2018年3月)  (2018年4月~)
年齢   61歳 65歳(上限)   70歳(上限)ただし、会社が特に必要と判断した者は延長も可能
 対象者 正職員  嘱託職員(希望者全員)   (嘱託職員・準職員)
 契約期間 無期雇用   1年更新  変更なし
役職   50歳代で役職定年
(役職により異なる)
 次席
(役職定年後の役席、管理職相当)
 変更なし
 仕事内容  信用金庫業務 原則60歳までの業務を継続している   変更なし
 基本給  俸給表等による  俸給表等による
(59歳時の8割程度) 
 変更なし
 昇給  有り  有り  変更なし
手当   各種有り  家族手当のみが付与されないが、その他は正職員と同じ  変更なし
賞与   有り(年2回)  有り(年2回)  変更なし
 人事評価  有り  有り(賞与のみ反映)  変更なし
退職金   定年時61歳一括支給  無し(退職時の慰労金有り)  変更なし
 労働時間 フルタイム勤務   原則フルタイム勤務  変更なし
配置転換   有り  原則無し  変更なし
 

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