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株式会社光真製作所

—高い技術を持つ高齢社員が作業改善や技能伝承に活躍—

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 70歳までの継続雇用
  • 技術指導ルーム
  • 作業負担軽減
  • 新対話制度
株式会社光真製作所のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1978年
  • 本社所在地
    滋賀県草津市
  • 業種
    電気機械器具製造業
  • 事業所数
    1か所

導入ポイント

  • 技術を持つ高齢社員に長く務めてもらうため、継続雇用年齢を70歳まで引上げ
  • 技術指導専用の「テクニカルトレーニングルーム」を設置
  • 作業負担を軽減し、高齢者でも働きやすい職場を実現
  • 従業員の状況
    従業員数 80名 / 平均年齢 50歳 / 60 歳以上の割合 30%
  • 定年制度
    定年年齢 60歳 / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有
2024年01月30日 現在

同社における関連情報

企業概要

光真製作所は配線と板金仕上げ加工の会社として1978年創業した。その後技術力を高め、現在は大手電機メーカーや計量器メーカーを取引先として駅の自動発券機や自動改札機、包装機やATM等の重要機能部分であるメカモジュールの組立てを行っている企業である。従業員は約80名、3割近くが60歳以上の高齢社員である。フィリピンにもスービック工場を持ち、日本人2名以外は全員フィリピン人の現地化された工場である。当該工場では自動券売機のカセット部分を製造、現地日系企業から調達した部品で組み立て、完成品として日本に輸出している。

営業や管理の担当者はごく少数で、ほとんどの社員は現場で組立て作業にあたり、パートタイマーが全社員の約半数を占める。いわゆる「多品種少ロット」で製造しているため、工程の自動化は困難。その分、後述のような作業負担軽減や技術伝承の取組に力を入れている。

近年の採用状況

新卒は近年採用できていない。近隣の中学校からの職場実習の依頼を受け付けているが、そちらも減少傾向である。

同社の現場では経験を必要とする高度な作業がある一方、未経験でも数ヶ月で覚えられる仕事もあり、経験や技能レベルに応じた業務がある。肉体的負担を減らす取組も進んでいるため、会社としては高齢者に長く勤めてもらえる環境と考えている。実際、地域では高齢者雇用に熱心な企業と認知されており、2015年に厚生労働省及び高齢・障害・求職者雇用支援機構(当機構)主催の「高年齢者雇用開発コンテスト」で表彰を受けた影響もあってか、近年は60歳以上の者が採用に応募してくることが多い。最高で75歳の者が応募してきた例もあった。

継続雇用延長の背景

同社の定年は60歳、その後は希望者全員70歳まで再雇用される。従来は60歳定年、65歳まで希望者全員再雇用であったが、2012年に再雇用上限年齢を引き上げた。若い世代の確保が難しくなる中、少しでも高齢者に長く働いてもらうための工夫に努め、同社の競争力の源泉である技術の伝承を円滑に進めたいと考えたためである。

継続雇用制度の内容

正社員に対しては、定年を迎える3年前から定年後の継続雇用について話し合う「新対話制度」を導入している。毎年1回面談を行い、本人の継続雇用の意思を確認、雇用方法や賃金、勤務、年金について説明している。早めの対応で定年後の状況を把握して不安を解消してもらうことで、定年後も意欲を持って働いてもらおうというものである。

定年後は役職を離れるほか、給与は時給制に移行、時間給1,200円となる。定年時の給与額は社員によってまちまちで減額幅も一律ではないが、7割程度は確保されている。

現場での仕事では、大型製品を一日がかりで組み立てるような業務からは外れ、組立の段取り計画や準備を担当する。なお、フルタイム勤務であり、繁忙の場合は残業もある。定年前に主任を務めていた高齢社員が「管理
者としての各種書類作成や他部署との連絡・調整といった煩雑な仕事から解放され、作業に専念できる」と述べる等、高齢社員側には好意的に受け入れられている。

人事管理制度

年4回査定を行っており、その結果を昇給と賞与支給額に反映している。評価項目は年齢に関係なく40項目である。賞与は業績により中期・期末の2回としている。

パートタイマーの査定は10項目の簡易版で実施し、査定自体も年度末の1回のみ。また、賞与支給も年度末のみとなるが、定年時に一時金を支給している。パートで採用される高齢者は生活費の補填として働きたいと考える高齢者が多く平均5年程度の勤務であるが、会社ではより長く働き続けてくれるように環境整備に努めている。

高齢社員戦力化のための工夫

■「テクニカルトレーニングルーム」の設置

同社の高齢者は技能伝承の担い手でもある。高齢社員の持つノウハウを若手に効果的に伝えてもらうべく、生産ラインから離れた場所に「テクニカルトレーニングルーム」(通称「TTR」)という専用スペースを設けている。TTRには練習用の器具や部品、失敗作などの教材もあり、若手社員が生産ラインの慌ただしさから離れ、時間をかけてじっくりと高齢者から指導を受けられる環境である。専属の高齢者は置かないが、普段は生産ラインで働いている高齢者が若手を連れて、この場所でじっくりと教え込む。高齢者にとっても自分の技や経験を伝えることができ、仕事のやりがいとなっている。

同社には80歳を超えてパート社員として働く高齢者がいる。大手電機メーカーを定年退職後、同社に再雇用されたが、期間満了後も働き続けたいとハローワークに通い、同社に職を得た。週5日勤務して精密機器である製品の検査を担当、自身も最新の技術動向に追いつこうと日々勉強している。

(テクニカルトレーニングルーム)

■働きやすい職場環境作り

同社では紙ベースの作業指示書はすべて電子化し、機器で文字を拡大して読めるようにしている。また、多品種を生産している同社では、在庫している部品点数が非常に多い。部品収納ケースには品番・品名表示とともに部品写真を張りつけ、部品選択ミスを防止している。作業中の体力負担の軽減にも積極的に取り組んでいる。まず、大型製品の組立をするラインでは、専用の作業台を配置している。この作業台は高さの調節ができ、設置した部品を回転させることができる。これにより、しゃがんだり回り込んだりといった動きが不要になった。

(製品運搬用の棚。同社高齢社員が製作)

また、出荷の際に営業車へ製品を運搬し、台車から積み替えたりといった作業が負担になっていたため、工夫を凝らした。キャスター付きの製品運搬用の棚を製作し、製品を入れた棚をそのまま車に積んで運ぶことで、前述のような作業を省略することができた。この棚は同社の高齢社員が試行錯誤して自ら製作したもので、この件に限ず、高齢社員が様々なツールを開発して職場環境改善に貢献している。そうした開発のために使える作業部屋も用意されている。

他にも、営業車に自動積み下ろし機を搭載することで、重い製品を運ぶ担当者の体力負担軽減を実現した。
今後の取組として、高齢者だけで作業するラインを設置する構想もある。ロボットとの協働も組み入れ、取引先からの注文に応じて従来型ラインと高齢者専用ラインを使い分けるというものである。注文品の納期や数量、コストを勘案して顧客がラインを選択できることを売りにしたいとしている。

(様々な加工設備が設置され、試行錯誤できる作業部屋)

今後の課題と展望

現在、同社では65歳定年制導入を検討しており、数年以内に実現の予定である。実現に際してはすでに再雇用している61歳から65歳までの継続雇用者との整合性が必要であり、検討がなされている。

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