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株式会社有村屋

—定年制を廃止し、生涯現役を実現—

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 定年制廃止
  • 同等な処遇
  • ノー残業
  • ポリシー「社員は家族」
株式会社有村屋のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1912年
  • 本社所在地
    鹿児島県鹿児島市
  • 業種
    食料品製造業
  • 事業所数
    6拠点(直営店)

導入ポイント

  • 定年制を廃止し、生涯現役を実現
  • 「社員は家族」のポリシーのもと、年齢に関わらず同等に処遇
  • 60歳以降は体力面に配慮して残業をさせない
  • 従業員の状況
    従業員数 62名  / 平均年齢 50.7歳 / 60 歳以上の割合 40.3%
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し / 役職定年 なし
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 該当せず / 内容 定年制を廃止に伴い、継続雇用の上限年齢も廃止
2019年08月29日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社有村屋は1912(大正元)年に設立した、鹿児島を経営基盤に蒲鉾の製造と販売を行う食品加工業である。本社のある鹿児島を中心に直営の販売店を6店舗、インドネシアに製造拠点を1拠点、そして関連会社1社を展開している。

同社の従業員数(2019年9月19日現在)は62名で、そのうち本事業に係わる60歳以上の従業員は25名、従業員の平均年齢は50.7歳である。
採用状況について、同社は高校卒の新卒採用を行っており、2019年4月の採用実績は1名である。このほかに中途採用を行っている。

定年制廃止の背景

2008年2月までの同社の定年・継続雇用制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用(勤務延長制度)」であった。
ただ、社長は「社員は家族」というポリシーを持ち、働きたい気持ちがある限りその意思を尊重し、年齢によって待遇を変えたり、働ける年齢に上限を設ける必要はないと考えていた。そのため、規程上65歳が上限ではあったものの、本人の希望があればそれ以降も継続して雇用していた。

少子高齢化のもと人手不足が続くなか、長年勤務で積み上げてきたスキルや経験を持つ高齢社員は貴重な戦力である。上記のような考えを制度として明確にし、安心して働くこ月に定年制を廃止した。図表1はその概要を整理したものである。これに併せて継続雇用制度を廃止した。

( 有村屋郡元本店)
図表1 定年制廃止の概要

人事管理制度の概要

■定年制廃止前

まず正社員の賃金制度について、基本給は初任給に昇給を積み上げる方式で、昇給は年2回行われる。昇給幅については人事評価結果を反映するほか、経営状況を加味して全社員一律に調整する場合もある。賞与は年2回支給され、その決め方は職位別の基準額に人事評価結果による加算額が加えた金額が支給される方式である。

人事評価は能力評価と業績評価がそれぞれ年2回行われる。評価結果は能力評価が昇給、昇進・昇格に、業績評価は賞与に反映される。人事評価の手続は社長が社員全員の評価を行う流れである。
ほとんどの社員は本社勤務のため、配置転換は行われない。退職金は退職時(継続雇用をした場合は継続雇用終了時)に支給される。

継続雇用後の人事管理制度を見ると、賃金制度について、基本給の減額はなく、昇給や賞与支給も現役正社員と同様に実施している。ただ、高齢になるとどうしてもパフォーマンスが落ちるため、昇給幅や賞与額は減少する傾向にある。こうした傾向があることや、前述の経営状況による調整を行っていることもあり、賃金原資が過剰に増加することはない。

仕事内容について、原則として定年前から変更はなく、勤務時間もフルタイムのままであるが、残業はなくなる。短日・短時間勤務を本人が希望した場合は、社員区分をパートタイム社員に転換することで対応している。この場合賃金は時給制になるが、時間給単位では転換前から変更は生じない。パートタイム社員は、比較的勤務の融通が利く包装業務を担当してもらっているが、繁忙時には加工の手伝いもするなどフレキシブルに対応している。

■定年制廃止後

上記2で述べた社長の考えのとおり、定年年齢が廃止されたこと以外に人事管理制度の見直しは行わず、年齢に関わりなく同等の待遇で働くことが可能である。

高齢社員戦力化のための工夫

高齢社員の戦力化に向けた同社の工夫を健康面と安全衛生面の2つの面から確認する。まず健康面では残業させないようにしている点である。例えば、食品加工業務は立ち作業であるため、高齢社員には肉体的負担が大きい。その負担を軽減するため、残業をさせないようにしている。

次に安全衛生面では、工場内の床の洗浄に気をつけている点である。食品(さつま揚げ)加工工程で大量の油が使われるため、高齢社員は転倒によるケガのリスクが大きくなる。そのため、床の洗浄に特に注意を払っているほか、滑りにくい靴を支給する等して転倒防止に努めている。

意識しているのは、社長が自ら見て回ることである。毎日製造現場に入り、洗浄がきっちり行われているかどうかや、走行等の危険行為がないかどうかを確認している。

図表2 継続雇用制度改定の比較

定年制廃止の効果と今後の課題

定年制廃止の効果について、同社はこれまで実質的な定年制廃止で運用してきたが、正社員として生涯現役を続けられる環境が整備されたことで高齢社員のモチベーションの維持・向上につながっていると考えている。

今後の課題としては、採用難が続いているため、社員の高齢化が進行し退職者が増えた場合、人手不足に拍車がかかる懸念があるとしている。

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