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株式会社松尾青果

希望者全員を年齢の上限なく継続雇用

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 65歳定年制
  • 上限なしの継続雇用
  • 経営理念に基づく人事管理
  • 契約農家へ代行支援
株式会社松尾青果のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1978年
  • 本社所在地
    長崎県南島原市
  • 業種
    飲食料品卸売業
  • 事業所数
    5か所(関連会社)

導入ポイント

  • 希望者全員を年齢の上限なく継続雇用
  • 経験豊富な高齢社員を活用(派遣)し、地域の契約農家の人手不足解消に貢献
  • 年齢や性別、国籍に関係なく誰でも安心して働ける会社
  • 従業員の状況
    従業員数 55名 / 平均年齢 50.5歳 / 60 歳以上の割合 38.2%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有
2019年07月08日 現在

同社における関連情報

企業概要

■事業内容等

株式会社松尾青果は、1978年に松尾商店として創業し、2009年に事業拡大に伴い株式会社として設立された。
事業内容は、農産物(馬鈴薯(じゃがいも)、レタス、玉ねぎ等の一般野菜)の仕入れ・集荷及び販売である。自社栽培のほか、1995年に設立した農業生産法人「有限会社ぽてとの里」(南島原市)や、2000年代に設立した県外の関連会社(北海道、鹿児島)からも仕入れ、全国で収穫した旬の青果を全国の各市場へ年間を通じて安定的に流通ができるようになっている(全国リレー集出荷システム)。

南島原地域の高齢化、後継者不足、働き手不足により、農地を管理できない農家が多いことを鑑み、地域農家の人手不足解消のため、農業生産法人を設立した。当該法人から地域の人手の足りない契約農家に対し、経験豊富な高齢社員を派遣して収穫の支援等(代行支援)もいっており、季節に影響を受ける農業の調整弁としての役割も担っている。

同社は、年齢や性別、国籍に関係なく誰でも働きやすい環境づくりに積極的に取り組んだ点や、本社、関連会社など各地での雇用、契約農家の人手不足解消に貢献した点が評価され、平成27年度に「高齢者雇用開発コンテスト」の機構理事長表彰の特別賞を受賞した。また、平成30年度に福岡県の「九州・山口70歳現役社会づくり高齢者雇用事例集」に掲載、さらに、長崎県が優良企業として認証する制度「Nぴか認証」の三つ星を取得している。

図表1 株式会社松尾青果 経営理念と基本方針 (抜粋)

■従業員構成、近年の採用状況

従業員数は55名、年齢別では、60歳~64歳は6名、65歳~ 69歳は9名、70歳以上は6名となっている。なお、最高齢は76歳。そのほか、ベトナム・カンボジアからの外国人技能実習生10名が働いている。

地元メディアを中心にマスコミ取材が来社することも多く、企業の知名度アップに繋がっている。その効果もあって毎年高卒採用や中途採用の応募が数件来るため、人手不足感はない。高齢者の採用もしており、近年では、退官した40歳代の自衛隊OBを正社員として採用した。体力仕事をこなせるので非常に助かっている。

定年延長または継続雇用の背景・内容

定年年齢は65歳である。定年以降は、「希望者全員を年齢の上限なく継続雇用する」ことを2015年3月に就業規則に明記した。

改訂前は「会社が必要と認めたものについては勤務延長することがある」とされていたが、実際は、慣行により希望者全員を継続雇用していたことから、明確に制度として定めたものである。

人事評価・賃金体系の概要

人事評価の制度はなく、社長が個々の働きぶりを見て、賃金への反映について判断している。
社長の経営理念(図表1参照)を具体化し実現するための基本方針を策定しており、将来の人事評価制度に繋げていくこととしている。

賃金制度の内容は、正社員は、定年前と待遇は変わらず日給月給制であり、パート社員は日給制である。昇給の制度はないが、社長が個々の働きぶりを見て判断している。

手当は、指導者及び管理者に対し管理手当を賞与に反映して支給している。管理職を降りれば不支給となる。
賞与は、正社員は評価によって額が変わることがあるが、パート社員の場合は一律支給である(時給1,000円×勤務時間×勤務日数:約20万円前後)。

図表2 継続雇用制度による人事管理制度について

高齢社員戦力化のための工夫

■制度面の工夫

高齢者が働きやすい職場づくりとして、20年前からサマータイム制を採用している。炎天下を避けて現場作業を涼しい時間帯でいってもらうため、原則8時~ 17時までの勤務時間を夏季のみ5時~ 11時に変更し、社員のやる気向上及び作業効率の向上を図っている。また冬季は、寒さの厳しい午前中は室内作業とし、午後はなるべく明るいうちに帰宅させるようにしている。

社員が休みたい日時を自由に記入できる「出勤表」ならぬ「欠勤表」を作っており、柔軟な勤務制度となっている。欠勤表には風邪や腰痛、腹痛、入院などの病状の記号をつけるようになっているため、調子が悪い時などはすぐに休むことができる。会社としても、社員の勤務状況と健康状態を同時に把握することができ、各作業場所の人員配置の調整にこの表を活用している。

■業務面の工夫(前述)

同社の周辺地域では、人手不足により農地を管理しきれない農家が多い。そうした状況を解消するべく、関連会社である農業生産法人「有限会社ぽてとの里」から、契約農家に対し経験豊富な高齢社員を派遣して収穫の支援等(代行支援)をいっている。

■安全衛生・健康管理面の工夫

具体的な年齢は定めていないが、高齢社員には負担の少ない選果作業やレタスの収穫等の作業を担当してもらうようにしている。ま
た、できるだけ高齢者の個々にあった仕事内容及び時間帯等を柔軟的に指示し、ハードワークにならないよう留意している。

また、毎日現場ごとに社員が作成する作業日報を確認することで、作業の効率化及び安全性の向上を図っている。おかげで、これまで大きな事故は発生していない。

■職場環境改善

過去に導入したカメラ式コンピュータ自動選果機(1998年導入、2000年増設 )により、農産物の選別のスピードと正確さがアップした。ロスやミスも減り、現在も高齢者の身体的負担の軽減と作業効率の改善に役立っている。

■能力開発面の取組

毎年8月、管理者及び中高齢者を含む一般社員向けに、長崎県内の大学の教授による、2日間の意識向上研修を実施している。内容としては、有識者の講演をはじめグループディスカッション等もいっている。

普段の業務においては、高齢社員が若者のほか外国人技能実習生に対しても仕事を丁寧に指導しており、自ずと教える技術の向上と技能継承に繋がっている。食事の面倒を見るなど、外国人技能実習生の公私に渡って世話を焼く者もおり、このことが高齢社員のモチベーションの維持・向上にも一役買っている。

今後の課題と展望

課題は今のところ特にないが、新たな事業展開の構想を展望として持っている。
社長の言葉『当社の社員は、皆私の宝物である』に表れているように、経営者と社員の間に信頼関係が築かれており、年齢や性別、国籍に関係なく誰でも安心して働き続けられる組織を一層目指している。

同社の基本方針の一つに、「地方の農村の活性化支援」がある。今後も高齢化が進む日本の地方農村を支援し、地域農業再生支援という社会貢献活動を通じて、事業を推進していく考えである。

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