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日本毛織株式会社(通称社名ニッケ)

- 定年延長にあわせ成長重視の人事制度に改定-

  • 人事管理制度の改善

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  • 65歳定年制
  • 人材確保
  • 発揮能力重視
  • 退職金見直し
日本毛織株式会社(通称社名ニッケ)のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1896年
  • 本社所在地
    大阪府大阪市
  • 業種
    繊維製品製造業
  • 事業所数
    13カ所

導入ポイント

  • 人材確保のため、他社に先駆けて、65歳定年を導入
  • 定年延長に併せ、人事制度を見直し、発揮能力の重視を徹底。退職金制度の見直しも実施
  • 従業員の状況
    従業員数 単体:510名、連結:4,899名 / 平均年齢 43.7歳 / 60 歳以上の割合 6.9%
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し / 役職定年 無 / 期待する役割 現役として、既に有している力をフルに発揮 / 定年後の賃金体系 役職によって異なる(図表1を参照)
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 無 / 内容 該当せず
2018年04月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

日本毛織株式会社は、1896年(明治29年)創業の歴史ある毛織物メーカーである。創業当初より国内随一の毛織物生産量を誇り、現在も国内トップクラスである。1980年代以降、工場跡地を活用した不動産事業などが伸びる中で事業変革を進め、2007年に「ニッケグループ中長期ビジョン(NN120ビジョン)」を策定し、翌2008年より「ニッケ(NIKKE)」を通称社名とした。2016年に「ニッケグループ中長期ビジョン(RN130ビジョン)」を策定し、「衣料繊維事業」のほか、産業機械及び産業資材の開発製造販売をする「産業機材事業」、街づくり、暮らしづくりをテーマに不動産開発を行う「人とみらい開発事業」、生活者に近い商品及びサービスを提供する「生活流通事業」を進めることなどを打ち出している。
ニッケ単体での社員数は510名(2017年11月30日現在)。うち正社員は400名余り、残りは、製造現場で働くパルシニア社員(いわゆる有期雇用から無期雇用となった社員。高齢社員ではない)である。年齢構成をみると、50代前半が100名を超え、40代後半90名弱、40代前半70名弱と、40代から50代前半が多い。60歳以上社員は35名程度と7%程度である。職種をみると、技術職約150名、技能職(主にパルシニア社員)約100名、営業約150名のほか、グループ関係を含む管理部門が100名程度である。
定期採用は、ニッケ単体で行っており、10名程度採用する年が多い。うち3割程度が技術系である。ほぼ定期採用と同数の中途採用をしている。

定年延長の背景

同社は、2009年4月より、定年年齢を引き上げ、65歳とした。また、それに先立つ2008年4月より1年間を移行期間とし、60歳と64歳の選択定年制とした。この背景には、当時、「NN120ビジョン」を策定したことがある。創業120年(2016年)に向け、繊維・非繊維で事業を分けるという考えから、複数の事業全てを「本業」と位置付けるという考えに改めたのである。新たな考えで事業を推進していくために、社員の現状把握を行ったところ、組織については、利益を重視するなど強みがある一方で、チャレンジ精神に欠けることが把握された。また、個人については、業務遂行力が高く、誠実で綿密という強みがある一方で、情報への感受性、創造的な思考力などが弱いことが把握された。新たな考えで事業を推進していくためには、チャレンジ精神が必要という思いから、人事部では、「NN120ビジョン」に先駆け、2008年に「人財ビジョン」を作成した。社員に「チャレンジする人財であること」、「高い認識力を持つ人財であること」、「規律ある人財であること」、「倫理観に富み、誠実な人財であること」を求めたのである。
同社は、1987年に、能力主義賃金を一部導入したほか、1999年には職群別等級制度を導入するなど、能力主義的な要素を少しずつ強めていた。しかしながら、まだ年功的な要素が強く、昇格には緩い面もあった。チャレンジングな人材になってもらうためには、これを何とかする必要があった。
一方で、当時の年齢構成をみると、オイルショック後に採用を抑制したために、40代後半から50代前半が非常に少なく、そのままでは業務が回らなくなるという危惧もあった。
これに対し、人事部では、65歳に定年を延長してチャレンジするための土台をしっかりさせる一方で、成長しなければ昇格しないという成長重視の人事制度に改めることを提案した。いずれ定年を延長するのであれば、他社に先んじて行い、社員重視の姿勢を打ち出したいとの思いもあった。併せて、懸案であった退職給付債務を何とかしたいとの思いもあった。
こうして、2009年から65歳定年を導入するとともに、翌2010年から、昇格試験に合格しなければ昇格しない、同一グレード内の上下とかかわりなく昇格決定をする「チャレンジグレード制度」を導入した。同社には、上から、M1、M2の管理職群及びG1からG8(組合員クラス)まで10段階のグレードがあるが、「チャレンジグレード制度」を導入したことによって、グレード内の順位にかかわらず、面接、レポート・論文が昇格基準を上回っている者を昇格させることとし、合格しなければ昇格させないこととしたのである。人事評価が厳しくなる面もあるが、年功序列的な要素をなくすことは若手社員から歓迎された。労働組合もこの考えを理解し、2007年春闘で、人事制度・定年制・退職金の改定に係る基本的な考え方について合意した。
具体的な検討は、人事部長(人財戦略室長)、人財戦略室員、労務担当のほか、労働組合の組合長、書記長、5支部長(東京、一宮、岐阜、本社、加古川・印南)も労使検討会議に参加するなど、現場を巻き込んだかたちで進められた。大きな制度改革であったことから、人事部門が、海外を含む全事業所を訪問して説明を行った。社員に具体的な説明を行ったのは、制度導入の8 ヶ月前であった。

65歳定年制実施の背景

2017年5月までの同社の定年制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用(再雇用制度)」であった。65歳以降も引き続き働くことを希望する場合、パート・アルバイトの雇用契約に切り替わった。
現場の人員確保(定年退職者の離職抑制、50代の中途採用者対応)と早期導入による他社との差別化を背景に、年金受給開始年齢が引き上げるなかで社員が安心して、引き続き戦力としてこれまでの経験を活かして働いてもらうことを目指して創業130周年の一環として2017年6月に65歳定年制を実施し、併せて継続雇用の嘱託社員として雇用契約の上限年齢を70歳まで引き上げ、これまでの65歳以降のパート・アルバイトの雇用契約を廃止した。(中途採用者はアルバイト)
これに対し、人事部では、65歳に定年を延長してチャレンジするための土台をしっかりさせる一方で、成長しなければ昇格しないという成長重視の人事制度に改めることを提案した。いずれ定年を延長するのであれば、他社に先んじて行い、社員重視の姿勢を打ち出したいとの思いもあった。併せて、懸案であった退職給付債務を何とかしたいとの思いもあった。
こうして、2009年から65歳定年を導入するとともに、翌2010年から、昇格試験に合格しなければ昇格しない、同一グレード内の上下とかかわりなく昇格決定をする「チャレンジグレード制度」を導入した。同社には、上から、M1、M2の管理職群及びG1からG8(組合員クラス)まで10段階のグレードがあるが、「チャレンジグレード制度」を導入したことによって、グレード内の順位にかかわらず、面接、レポート・論文が昇格基準を上回っている者を昇格させることとし、合格しなければ昇格させないこととしたのである。人事評価が厳しくなる面もあるが、年功序列的な要素をなくすことは若手社員から歓迎された。労働組合もこの考えを理解し、2007年春闘で、人事制度・定年制・退職金の改定に係る基本的な考え方について合意した。
具体的な検討は、人事部長(人財戦略室長)、人財戦略室員、労務担当のほか、労働組合の組合長、書記長、5支部長(東京、一宮、岐阜、本社、加古川・印南)も労使検討会議に参加するなど、現場を巻き込んだかたちで進められた。大きな制度改革であったことから、人事部門が、海外を含む全事業所を訪問して説明を行った。社員に具体的な説明を行ったのは、制度導入の8ヶ月前であった。

定年制の内容

定年延長前の60歳以上社員の人事管理制度の内容は、図表1のとおりである。
正社員及びパルシニア社員が対象で、再雇用時と異なり、一律に役職をはずすことはなく、実態として大多数がそれまでと同じ職場で同じ職務を続ける。職群・等級はそれまでと変わらないが、賃金水準は、60歳到達時に見直す。ライン長を継続する場合は59歳時の基本給の100%、マイスター職(高度技能保持者)の場合は85%となる。標準的な社員の場合は主席と呼ばれる専門職などとなり、75%程度となる。
60歳以降は、既に持っている力を発揮してもらうという考えから、昇級・昇群考課の対象外だが、59歳以前と同様に評価を行い、2%を上限として昇給もある。基本給以外に手当もそれまでと同じ基準で支給され、賞与も59歳までと同じ基準で支給される。働き方は、フルタイムのみで、配置転換の対象となる。
なお、59歳以前の賃金水準等は変えなかった。また、5年間のシミュレーションをしたところ、賃金原資の増加は約1%だったという。
同社には、65歳を超える継続雇用制度はなく、今のところ、導入する予定もない。65歳を超える社員も少数働いているが、職場にとって特に必要な社員である。個別に対応しており、必要な時や働ける時だけ、働いてもらっている。

59歳以前の人事管理制度

先に述べたように、同社は、M1、M2及びG1からG8まで10グレードあり、それぞれの中をいくつかの等級に区分する職群等級制度を採っている。大きく、管理職(M1、M2)、上級職(G1~G3)、中級職(G4~G6)、初級職(G7~G8)に分かれるが、うちM1、M2(課長以上の管理職)については、1999年より、役割等級制度としており、年俸制である。
評価は、上半期、下半期の2回行い、業績の評価については賞与に、発揮能力の評価については昇給・昇級・昇群効果に反映させる。

定年延長の効果と課題

同社は、定年延長と評価の厳格化を同時に行ったことにより、社員に安心してチャレンジできる環境を与えるとともに、ベテラン社員がいなくなることによって業務が回らなくなるという危険を回避し、成長を続けることができた。社員のモチベーションも上がり、狙いどおりの効果を上げることができた
しかし、10年が経過し、社員の年齢構成も変化した。40代後半から50代がボリュームゾーンとなり、管理職への昇格年齢も高くなってきた。中高年社員から大いに評価された65歳定年も、今や社員にとって「当たり前」となっていることもあり、同社では、見直しが必要ではないかとみているようである。

これから定年延長する企業へのアドバイス

同社は、人材不足、今後に向けた人材育成という課題がある中で、人事制度、定年延長、退職金制度の見直しをセットで行った。会社によって年齢構成も課題も異なるので、自社のその時の状況に合ったものとすることが必要であるとのことであった。

図表1 定年延長前後の60歳以上社員の人事管理制度の変化
※同社においては、65歳超える継続雇用は制度化されていない。
(出所)日本毛織株式会社のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

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