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株式会社王宮(道頓堀ホテル)

- 65歳定年制実施に併せて、継続雇用の上限年齢を70歳に-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 65歳定年制
  • 70歳までの継続雇用
  • 家族主義的経営
  • 現場とのコミュニケーション
株式会社王宮(道頓堀ホテル)のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1970年
  • 本社所在地
    大阪府大阪市
  • 業種
    宿泊業
  • 事業所数
    3拠点

導入ポイント

  • 65歳定年制実施に併せて、継続雇用の上限年齢を70歳に引上げ
  • 「家族主義的経営」の考えのもと、現場との日常的なコミュニケーションを通して経営 者が社員の意見を集約
  • 従業員の状況
    従業員数 約110名 / 平均年齢 32.9歳 / 60 歳以上の割合 約6%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 無 / 期待する役割 経験を生かした指導業務 / 定年後の賃金体系 60歳超用の賃金表を適用(図表1) / 戦力化の工夫 経営者による現場との日常的なコミュニケーションの実施
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 希望者全員を70歳まで継続雇用
2018年08月02日 現在

同社における関連情報

企業概要

株式会社王宮は、1970(昭和45)年に創業した宿泊業で、屋号「道頓堀ホテル」としてホテル事業を展開している。事業拠点は本社のある大阪に3拠点である。同社の経営者は創業者の2代目(長男と次男)で、兄弟が協力し合いながら同社を経営している。
同社の従業員数(2017年5月末現在)は約110名で、雇用形態別には正社員76名、パート社員約30名である。平均年齢は32.9歳で、年齢別構成は60歳以上が7名で、そのうち70歳以上は3名である。
過去3年間の採用状況(新規学卒) は2018年5名、2017年18名、2016年16名である。同社は採用人数を基本3~5名としているが、採用人数の多かった2016年と2017年は事業拠点を拡大したことによるものである。

65歳定年制実施の背景

2016年7月までの同社の定年制度は「60歳定年、65歳までの継続雇用(再雇用制度)」であった。年金受給開始年齢が引き上げられていることを背景に社員が安心して働いてもらうこと、60歳と65歳における健康面に違いがなく、引き続き同社の戦力としてこれまでの経験を活かして働いてもらうことを目指して2016年8月に65歳定年制を実施し、併せて継続雇用の上限年齢を70歳に引き上げた。

玄関風景

65歳定年制実施について

対象者

対象者は65歳定年制実施以降に60歳に到達する正社員であり、それまで嘱託社員として再雇用されていた高齢社員はいないため実質的に対象外となっている。

60歳以上の社員に求める役割・職務内容

高齢社員に求める役割について、同社はこれまでの経験と高いスキルを活かして60歳以降も戦力として活躍してもらうことをあげている。例えば、フロント業務はこれまで培ってきた経験を若手・中堅社員に指導してもらうことを高齢社員に求めている。厨房業務は立ち作業で拘束時間が長いので肉体的負担が大きいので、第一線の負担を減らしつつ、その分を指導業務にまわしてもらうことを求めている。
同社は役職定年制を実施していないため、役職者は60歳以降も引き続き役職者としての責務を努めてもらうことにしている。なお、同社の基本的な職制は、「主任-課長-部長」の3ランクである。

65歳定年制実施の効果

65歳定年制実施によって、社員の間に60歳以降も安定した雇用が確保され、安心感がみられている。

65歳定年制実施後の雇用

65歳定年制実施による60歳以上の正社員の実績はいない。現在50代の社員が9名で、そのなかで来年60歳到達する社員(現在59歳)が1名いるので、来年65歳定年制実施後の適用者がみられる。

人事管理制度

60歳以上の社員の人事管理(60歳定年実施前)

図表1は60歳以上の高齢社員の人事管理制度を65歳定年制実施前と実施後の変化を整理したものである。同社の65歳定年制実施前の人事管理制度は継続雇用制度(再雇用制度)であり、高齢社員の身分は再雇用者(嘱託社員)であった。
継続雇用の上限は65歳までで1年ごとの契約更新が行われていた。
賃金制度について、基本給は定年直前の役職別に設定された賃金表(定額給)が、賞与は全員同じ金額がそれぞれ支給された。なお、昇給は人事評価が行われないことにより実施されなかった。
定年直前の仕事を継続雇用後も継続して担当し、59歳以下の正社員と同じフルタイム勤務(曜日のシフト勤務)でその仕事に従事していた継続雇用終了時の一時金等の退職功労金は支給されなかった。

60歳以上の社員の人事管理(65 歳定年制実施後)

65歳定年制実施後については、継続雇用時の人事管理制度の変化を確認する。
まず再雇用制度の下で嘱託社員であった高齢社員の身分は正社員となり、賃金などの処遇制度、評価制度は59歳以下の正社員と同じ扱いになるものの、昇給については、継続雇用時と同じように行わない。なお、同社はまだ65歳定年制適用者がいないため、これら処遇制度、評価制度はあくまでも予定としている。実際に適用者が出た段階でこれら制度を確認することを同社は考えている。福利厚生については59歳以下の正社員と同じ扱いになる。
仕事内容は60歳以降もそれまでの仕事を引き続き担当し、役職者は60歳以降も役職を継続する。配置転換は59歳以下の正社員と同じように業務上の必要性に応じて行われる。

59歳以下の正社員の人事管理

59歳以下の正社員の人事管理制度について、まず賃金制度を確認すると、基本給の構成要素は本給と職務手当からなる。本給は初任給に定期昇給を積み上げる方式で、一般社員、管理職とも同じである。職務手当は職種別(フロント、厨房、宴会、経理・総務)に設定される定額に本給と同じ定期昇給を積み上げる方式である。昇給について全社員同一額の支給原資が用意され、本給と職務手当に半分ずつ配分される。なお、職務手当は昇給の支給上限が設定されており、上限額に達すると昇給は行われない。
人事評価はチーム評価と個人評価の2つが行われている。チーム評価は職種単位の業績評価で、その結果は賞与に反映される。個人評価は人物評価で、その結果は昇進に反映される。こうした人事評価は社長と専務の2人で行われる。なお、一般に人事評価結果は基本給に反映されているが、同社はそれを行っていない。これは第1に業務の特性上、能力や業績による個人評価は適さないこと、第2に大家族主義のマネジメント方針を掲げている経営者(社長、専務)の考えがその背景にあることを同社は指摘している。
勤務形態は、フロントでは日勤、夜勤、曜日のシフト勤務が、フロント以外の職種では曜日のシフト勤務がそれぞれとられている。
配置転換は事業拠点間で実施している。なお、3拠点に拡大する前は1拠点だけだったので配置転換は実質的に行われなかった。
退職金はこれまで支給していなかったが、2017年から中小企業退職金共済制度に加入して退職金の支給を開始した。

制度を運用するうえでの工夫

経営者による現場との日常的なコミュニケーションの実施

65歳定年実施に関連する取り組みを同社は実施していない。その理由は同社の「家族主義的経営」の考えのもと、経営者は現場と日常的にコミュニケーションを積極的に実施していることである。今回の65歳定年制実施も現場とのコミュニケーションのなかで社員の意見に耳を傾けていたことがきっかけであった。

今後の課題

今後の課題として、60歳以降の処遇制度の検証である。上記で紹介した65歳定年制実施後の処遇制度は現時点では予定の段階で確定していない。来年に60歳到達者がみられ、65歳定年制が適用されるので、現時点で予定している処遇制度が65歳定年制の適用者にとって最適なものであるかを検証して、必要に応じて改善していくことを同社は考えている。

図表1 60歳~65歳の社員の人事管理制度の変化 60歳~65歳の社員の人事管理制度の変化
(出社)株式会社王宮のヒアリング調査をもとに執筆者作成。

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