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株式会社 テクノスチールダイシン

-競争力維持・強化に欠かせないベテラン社員を70歳定年で確保-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • 70歳定年制
  • 70歳以上継続雇用
  • 資格保持者の確保
  • 高齢者による技能伝承
株式会社 テクノスチールダイシンのロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    2001年
  • 本社所在地
    栃木県宇都宮市
  • 業種
    鋼構造物工事業
  • 事業所数
    5か所

導入ポイント

  • 資格保有の高齢者を長く雇用して後継者育成に起用し企業競争力強化
  • 70歳までの定年延長に加え、定年後は年齢制限なしに継続雇用
  • 従業員の状況
    従業員数 166名 / 平均年齢 36歳 / 60 歳以上の割合 7.2%
  • 定年制度
    定年年齢 70歳 / 役職定年 無 / 期待する役割 技能水準維持、後継者育成 / 戦力化の工夫 外部コンサルによる工場診断の実施
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 基準該当者を上限なしで継続雇用
2024年02月05日 現在

同社における関連情報

企業概要

概要

株式会社テクノスチールダイシン(栃木県宇都宮市)は2001年(平成13年)に鉄骨施行図・現寸業として創業、同年12月に「大進工業」として鉄工業を開業した。2004年(平成16年)には有限会社テクノスチールダイシンへ社名変更、そして2007年(平成19年)には株式会社へ移行し、鋼構造物工事業と建設業許可を取得、「誇り」、「信頼」、「発展」を社是に現在に至っている。資本金は3000万円、売上高は約30億円、従業員数105人である。本社・宇都宮工場以外にも下野工場、平出工場、寄居工場と計4か所の工場を持ち、うち宇都宮工場と下野工場は鉄骨製作工場性能評価において国土交通大臣認定のHグレードを取得している。建築鉄骨工事を中心に建築耐震補強工事、橋梁耐震補強工事、架台工事、製缶・プラント工事を行なう鉄構事業部、外構工事やエクステリア工事の建材事業部、重防食塗装や溶融亜鉛メッキ等の表面処理事業部を柱として栃木県を中心に関東圏や南東北圏で事業を展開している。
ビルや工場の多くは鉄骨溶接構造で作られ、鋼材を溶接して加工する鉄骨を組み立てて出来上がる。国土交通省は鉄骨を加工する事業所を5段階のグレード(S、H、M、R、J)で認定しており、これが業界内の格付けとなる。一番下のJグレードの工場では3階以下の建築物(延べ床面積500㎡以内、高さ13m以下かつ軒高10m以下)の鉄骨しか加工出来ないが、最上級のSグレードでは全ての建築鉄骨溶接構造を加工できるため、その鉄骨は高層ビルで構造物となる。ちなみにSグレード認定企業は全国で大手ゼネコンなど20社程度にとどまる。テクノスチールダイシンはこのSグレードに次ぐHグレード認定工場をふたつ(本社工場と下野工場)持つ。Hグレード認定企業は全国230社、栃木県内では5社にとどまる。このグレードで格付けられた企業は大手ゼネコンからの信頼も厚く、高層建築物や難易度の高い建築物の鉄骨加工を受注できる。テクノスチールダイシンの最近の受注例では新国立競技場の屋根の鉄骨がある。
テクノスチールダイシンの2017年度の売上高は約30億円であり、この5年近くで倍増している(2013年度は約15億円)。近年の景気回復でオフィスビルや工場、商業施設などの建設が急増し、それにともなって建築用鉄骨製品の需要が急増していることが背景にある。テクノスチールダイシンの中長期計画である「アクション2030」では「鐵を通じて社会へ貢献」をモットーに社員の安定した雇用環境整備と地域に誇れる会社構築の未来発展を目指して策定され、その過程の目標を示した「ターゲット2020」では「5S徹底と環境つくり」、「基本の見直し」、「知識の向上、稼働率の向上」、「安定した受注量と関係強化」の各項目につき、2020年時点での到達目標を定めている。将来的には「国際展開を可能とするグローバル人材の育成」も視野とした企業像を描いている。

従業員数と年齢構成、職種

テクノスチールダイシンの従業員は105人、平均年齢は40歳である。年齢別でみると20代から40代が約6割となる。60歳以上の高齢者は15名で会社の各事業所にそれぞれおり、平出工場の3名はいずれも70歳以上である。この10月には大手ゼネコンの工程管理経験者で69歳の者を採用、工程管理と施工管理を担当してもらうこととなった。若手社員が育つまで、50代や60代の高齢層による技能伝承が必要となっている。最高齢者は77歳、品質管理部門で製品検査を担当している。
会社の部門は総務、設計、工務(進捗管理)、品質管理、製造、営業からなる。このなかで所属者の多いのは製造部門である。

人事管理制度

テクノスチールダイシンの賃金体系は年齢給である基本給と資格手当からなる。60歳までは定期昇給がある。
管理階層は主任・係長・課長・部長となっている。役職定年は設けていない。管理職には管理職手当が支給される。なお最近まで退職金制度はなかったが、これは設立後まだ20年に満たない会社であり、定年退職者がいなかったためである。2015年(平成27年)に制度を設けた。現在、65歳時点で退職金を支給する制度も検討中である。
2016年(平成28年)からスキルマップを使った目標管理に基づく評価制度を導入し、昇給と賞与は人事考課で決定される。目標管理における自己評価を上司が面談を通して評価する。
テクノスチールダイシンの教育訓練はOJTが中心であるが、現在、階層別教育の体系を検討中である。
テクノスチールダイシンでは従業員の定着にも努めており、有給休暇(時間有給制を検討中)や資格手当など処遇面の充実が図られている。また、社長との個人面談(全員が対象、年2回、1回20分程度)などコミュニケーション充実、定期的な食事会・飲み会の開催、メモリアルデー(従業員誕生日にケーキ贈呈や休暇付与)、会社がスポンサーになっているサッカーチームやバスケットチームなどの試合観戦、地域イベント参加など福利厚生も充実させている。

採用状況

テクノスチールダイシンでは新卒採用はなく、すべて中途採用である。新卒採用は難しいという。業容拡大もあり、今年度は20名を中途採用した。

定年延長の背景

テクノスチールダイシンの定年延長は企業としての競争力維持・強化に高齢者の力が欠かせないためである。経営トップの危機感は強く、トップダウンで70歳への定年延長が実現している。
テクノスチールダイシンは「100年企業」を目指している。そのための施策として以下の4つを掲げている。

  • 分け隔てのない高齢者の積極的な雇用の推進
  • 資格保有者の増員
  • 従業員の定着率向上
  • 中長期の経営計画策定(海外展開・上場等)

高度な溶接技術を持つ従業員が揃っていることがテクノスチールダイシンの強みであることから、現在の溶接技術者には長く会社に在籍してもらえるよう工夫しながら、次世代の溶接技術者の育成に力を入れている。
高度なグレード維持のためには常に必要資格者、しかもさまざまな資格の保持者を確保しておく必要がある。資格には鉄骨製作管理技術者、建築施工管理技士、建築鉄骨製品検査技術者、溶接WES資格、溶接NDI資格、AW溶接資格など各種あり、しかもその多くは3年もしくは5年で免許更新する必要がある。常に技能水準維持と後継者育成が求められ、教師・伝承者としての高齢者の役割は大きい。
入社してきた若者には溶接の国家資格取得を目標とさせ、日常の現場作業では経験豊かな中堅や高齢者がOJTで指導している。熟練者が「やって見せる」効果は非常に大きい。また、本人が自分で練習しやすいように溶接に必要な用具を会社が揃えてやり、資格取得の経費は全額補助している。その成果として栃木県内の溶接大会に優勝し、全国大会に進む若手社員が生まれた。
次世代育成には高度な技を持つ高齢者が教師として果たす役割は大きい。実際、高齢者から指導を受けて技能が向上した若年者の高齢者に対する信頼は厚く、職場で高齢者は尊敬されている。会社は「高齢者がたとえ体が動かなくなっても口が動くのであれば若者への指導のために会社にいてもらいたい。その時は若い人が力仕事をすれば良い」とする。

70歳定年制度の内容

制度の内容

テクノスチールダイシンでは2015年(平成27年)に定年年齢を70歳に引き上げた。その後は本人が希望し、会社が必要と認めた場合は期間を定めて再雇用することとしている。またその際の上限年齢は定めていない。会社は「70歳は通過点」と考えている。

工場の自動化設備
(重量物を機械で反転させロボットが溶接)

60歳以上の社員に求める役割・職務内容

高齢者の役割は以下の3点であると会社は考えている。

  • 技術のノウハウを若手に継承する
  • 経営者と若い従業員のパイプとしての役割
  • 工場内のご意見番として経営者側へ情報発信

また、高齢者も自ら会社や社長に要望してくる。彼らは職場では若いものの教育担当であり、生活指導面では親代わりであるが、安全や健康に関する職場の要望を伝える「ご意見番」でもある。冬寒くなる現場に使い捨てカイロの支給を提案し、頑張っている若手従業員への処遇改善など実際の提案も多く、会社も彼らの存在を尊重し、常日頃から意見を吸い上げ、改善につなげている。

賃金・評価制度

60歳まで定期昇給する基本給はその後、低下することなく70歳までほぼ同水準である。70歳以降の継続雇用時もフルタイム勤務であれば同水準、パートタイム勤務であれば出勤日数によって金額が決定される。
60歳以降の評価制度はそれ以前と変わらず、目標管理における自己評価を上司が面談を通して評価する。60歳以降70歳の定年まではフルタイム勤務が原則であり、現在はパートタイム的な働き方をする正社員はいない。将来、多様な働き方を求める正社員が現れれば、各人に配慮した働き方も用意する予定である。

制度を運用するうえでの工夫

年配者の知識や経験を若手に伝授するために、高齢者に長く働いてもらうための施策として会社は外部コンサルタントを起用して工場診断を実施した。労働災害を未然に防ぐ安全対策では整理整頓の進んだ安全通路の確保が必要であることから5Sを推進すべく研修会や他社見学会を実施し、テクノスチールダイシンだけではなく取引先企業も含めた安全衛生への取り組み強化につながった。協力会社11社との安全協力会は月一度開催されている。同時に高齢者の働きやすい職場とするために作業台や棚の高さの見直し、自動化機械導入など肉体的負担の軽減が図られた。
この工場診断の結果、高齢者の健康管理や精神衛生の取り組みの重要性も喚起され、産業医の職場巡視やメンタルヘルス管理、健康診断後のフォローアップ、特定診断実施につなげている。

今後の課題

70歳定年延長により、豊富な経験と高度な技術を持つ高齢者を引き続き雇用することで技能伝承体制が強化されただけではなく、若手社員の日々の教育など、さまざまな面で会社を助ける存在となっている。高齢者自身も長く働けることで意欲が向上している他、ベテラン高齢者の中途採用にも資するところがある。
将来の高齢者雇用に関して、近い将来に他社が定年延長することが予想され、その後自社へ入社してくれる年齢層が高くなることが懸案事項である。

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