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協伸静塗株式会社

-障がい者など多様な人材を高齢者がリード-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 上限なしの継続雇用
  • 多様な人材活用
  • 高齢者による技能伝授
  • 高齢者活用の危機管理
協伸静塗株式会社のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1979年
  • 本社所在地
    富山県高岡市
  • 業種
    金属製品塗装業
  • 事業所数
    国内1拠点

導入ポイント

  • 慢性的人手不足のなか、高齢者に対して一人ひとりの生活スタイルや体力に応じて配置や処遇を工夫
  • 高齢者活用により、若手への技能伝承を図り、企業競争力を強化
  • 従業員の状況
    従業員数 32名 / 平均年齢 41.5歳 / 60 歳以上の割合 15.6%
  • 定年制度
    定年年齢 60歳 / 役職定年 無 / 期待する役割 後継者育成 / 戦力化の工夫 負担の伴う運搬作業の改善
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 基準該当者を上限なしで継続雇用
2018年07月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

概要

協伸静塗(富山県高岡市)は1979年(昭和54年)設立、金属(主にアルミ。その他、鉄、ステンレス、亜鉛、マグネシウム等)製品の皮膜処理や塗装加工を行なう企業である。「私たち協伸静塗は、表面処理と塗装を通じ、『挑む・創る・変える』の改革精神で新たな価値を創造・提供し、豊かな社会づくりに貢献します」を基本理念としている。富山県内を中心に50社以上の取引先(大企業では建材、自動車、建機、FA、船舶、医療機器分野、地場企業ではアルミ建材)から受注するものは最低1個から数万個までの工業用金属部品である。近年は「多品種・小ロット」化の傾向があるが、材質や形状、重さや大きさも多種多様である。日々変動する受注量や加工要求に柔軟に対応できる技術力と熟練従業員の技能が協伸静塗の強みであり、大企業からの評価も高い。品質に関する国際基準であるISO 9001は2008年(平成20年)に取得、環境経営も推進しており、2011年(平成23年)にはISO 14001を取得する一方、RoHS指令対応の設備(ノンクロム皮膜処理システム)も整っている。協伸静塗で行なわれている一貫処理加工の工程は以下のようである。
【前処理工程-素地調整工程】
取引先から入荷した加工前の部品はシャワーライン(スプレー式洗浄・皮膜処理工程)とディッピングライン(浸漬式洗浄・皮膜処理工程)に選別投入される。部品はシャワーラインではハンガーに、ディッピングラインでは処理台車に積載され(ラッキング)、それぞれ脱脂・水洗、その後、ジルコンやクロメートにより皮膜処理され、再び水洗されてからエアブローによる水切りと乾燥が行なわれる。
【塗装工程-静電焼付塗装】
前処理の終わった部品はマスキング、プレコートを経て塗装工程に(ライン塗装と手吹き塗装)に運ばれる。塗装工程では塗料の調合と調色が行なわれる。ライン塗装ではハンガーで、手吹き塗装では専用の網の上に並べるかもしくはハンガーに掛けられ静電焼付塗装が行われる。
【検査工程】
検査工程では顧客の検査仕様に応じて検査し、梱包する。部品によっては仕上げ塗装も行う。
【配送工程】
最終検査が終わった部品は製品として出荷される。
金属部品を塗装する企業は全国に1500社近くあるという。そのなかにあって協伸静塗は薬剤・塗料・塗装機器メーカーと協力しながら顧客のニーズに合った薬剤や塗料を見出し(350種類の塗色を用意して数千種類の色調へ対応可)、表面処理から塗装剥離まで幅広い対応で高品質な塗装を提供している。大企業の信頼も厚く、オリジナル薬剤使用ライセンスの獲得、認定工場としての指定を受け、また、レール形状U字溝内面コーティング用スプレーガンの開発、耐摩耗性と摺動性能を同時に高める乾性潤滑焼付塗装を平滑で均質に塗布する技術特許取得など業界内での競争力は非常に高い。
通常は毎日約4万点の部品に塗装を施しているが、最近では東京オリンピック関連の建設・建築工事に起因した住宅関連部材の受注が多くなっており、業績は好調である。

塗装前製品ショット用バレル

従業員数と年齢構成、職種

協伸静塗の従業員は32名(男18名、女14名)、うち正社員は26名(男14名、女12名)、嘱託社員は2名(男)、パートは4名(男2名、女2名)である。会社組織はフラットであり、ほとんどの従業員(28名)は現場で働いている。平均年齢は41.5歳、年齢構成でみると50代2名(6.3パーセント)、60代4名(12.5パーセント)、70代1名(3.1パーセント)であり、定年退職後の嘱託社員はいずれも60代、パートは男性が60代と70代各1名、女性パートは40代と60代各1名である。
現場の仕事は前処理、塗装、検査、配送に分かれる。

採用状況

中小企業の協伸静塗は従来から採用活動には苦労がある。その仕事のほとんどが現場作業で重筋労働もあることから若者がなかなか入社してくれないという。数年前に新卒で大卒を受け入れたが定着度は低かった。
また、障がい者雇用にも熱心であり、29歳の女性正社員は塗装ラインで部品をハンガーに掛ける作業に従事している。また、近隣の特別支援学校生徒の企業実習(7名の生徒)や障がい者が入所する就労継続支援事業所(A型・B型)の施設外就労者も常時4施設から約15名程度受け入れている。

継続雇用制度改定の背景

協伸静塗では従来から定年後も同社で働くことを希望する者は全員をフルタイムの嘱託社員として65歳まで雇用していた。3年前に嘱託社員のなかで65歳に到達した者が出たが、本人はその後も続けて働く意欲があり、会社にとっても職務遂行能力に問題はないと判断したため制度を改正して年齢上限なしの継続雇用とした。ちなみにこの高齢者の仕事ぶりは他の者と変わらない。

継続雇用制度の内容

対象者

60歳定年に達する者は社長を含めた管理職と面談し、会社は高齢者に対して定年後に期待する役割や仕事について、また高齢者は家庭の事情や希望する勤務形態(フルタイム、パートタイム)、自身の体力的負担を考えて希望する職務の割り当てなど、それぞれの要望を出しながら話し合い、「人に合わせた」定年後の働き方を決める。定年到達時点で退職する者もいる。
現在60歳以上で働く者の勤務状況は以下のようである。
Aさん(63歳の嘱託社員、男性)
フルタイムで勤務、配送や不良品修正担当
Bさん(64歳の嘱託社員、男性)
フルタイムで勤務、前処理工程担当
Cさん(67歳のパート社員、男性)
週5日を9時から15時まで5時間勤務、ショットブラスト(治具剥離)担当
Dさん(68歳のパート社員、女性)
月曜~木曜は6時間(9時~ 16時)、金曜日は5時間勤務(9時~ 15時)、検査担当
Eさん(77歳のパート社員、男性)
週5日を7時から12時までの5時間勤務、薬剤剥離(製品の塗膜剥離)担当
最高齢のEさんは「家にいるより気晴らしになる」と早朝出勤し、仕事ぶりは他の者と遜色ない。

手吹き塗装

60歳以上の社員に求める役割・職務内容

協伸静塗では定年後の高齢者に対してもその能力に応じた貢献を求める。それまで培ってきた能力を現場で直接発揮してもらう、それまでの経験を若手に伝えて後継者育成に努めてもらう、体力的問題からそれまでの仕事が難しい場合は補助作業に移って能力発揮してもらうなど、高齢者個々人に応じた業務や勤務形態、就業条件を用意しながら会社に貢献してもらう。前述のように3か月に一度の契約更新時に会社の求めるものを高齢者に伝えている。
中小企業のため協伸静塗の教育訓練はОJTに依存する部分が多いが、ベテランや高齢者の指導力は次世代育成に大きく影響する。従業員一人ひとりのスキルマップもあるが、扱う製品が多品種少量かつ変種変量、加えて数年でモデルチェンジもある状況では求められる知識も頻繁に変化するためスキルマップもすぐ陳腐化する。何よりも「やって見せる」ことですぐ納得してもらえ、この点で高齢者の存在意義が果たすべき役割は大きい。

賃金・評価制度

定年後は時給制に移行する。賞与は支給しない。本人の意向により、フルタイムやパートタイム、早出勤務、週4日勤務といったさまざまな勤務形態となる。それまでフルタイムだった者が家族の要望や本人の体調を考え、パートタイムに移行することもある。高齢者の希望に応じて会社は柔軟に対応している。
継続雇用は3か月単位で契約更新しており、その都度会社と高齢者は処遇や勤務形態について話し合う。少人数の会社であるため社長は高齢者一人ひとりの仕事ぶりは把握しており、会社に対する高齢者の貢献を感謝しながら話し合う。高齢者がどれだけ会社の期待に応えているかを高齢者に伝え、日常の業務成果を見ながら負担の重い仕事から軽い仕事へなど職務が変更されることもある。3か月に一度会社から評価が下されることは緊張感にもつながるが、会社が高齢者に期待することを直接語り掛けることが出来るだけではなく、高齢者の思いをしっかり聞ける場でもある。

新制度の効果

会社にとって経験や知識が豊富な高齢者の存在は企業としての競争力維持に効果を発揮する。また、このような高齢者の存在は若手や中堅社員にも歓迎されている。毎回受け入れる部品の材質が違い、要求される処理方法や塗色が違う状況では経験の少ない者には困難が大きい。自分たちの仕事にトラブルが起こっても、ベテランがバックにいるという安心感は大きく、その点で高齢者は非常に頼りになる存在である。また、協伸静塗には表彰制度があり、業務上の優れたアイデアを出した社員には金一封が贈られるが、高齢者で表彰される者もおり、その意欲は高い。

制度を運用するうえでの工夫

協伸静塗の現場では1本のハンガーに最大130個部品を吊るし、ハンガーを何本も台車に載せて表面処理や塗装ラインに運搬する。塗装後も部品の吊るされたハンガーを台車に載せて検査工程に移動する。この際、台車の移動は人力で行なうが、台車の下枠が作業者の足元で障害となる。そこで台車の形状を工夫(台車の下回り枠の形状を口型からコの字型へ変更)して作業者がつまずかないように改良した。この改善は高齢者のみを対象としたものではなく、すべての作業者の安全のために行なわれ、好評であった。
高齢者雇用を進めるうえで重要なのは、常に起こり得る事態を想定しての対策であるという。高齢者もいつかは引退するが、会社の予想より早くその時期が来ることもある。後継者育成中の引退や、高齢者が担当していた仕事を十分引き継げる者が育成できないうちの引退も想定される。会社としてはもしそのようなことが起こった場合、そうなる前に早めに後継者育成に努めるか、後継者が作れなかった場合はその仕事を会社からなくすか外注する、などの対策を常に考え準備している。

今後の課題

協伸静塗としては当面現在の制度を維持する予定であり定年延長は検討していない。定年年齢の60歳を区切りとし、その後の働き方を会社と高齢者本人で話し合うのは両者にとって望ましい方式と考えている。

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