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太陽生命保険株式会社

-大手生保では初の65歳定年制、70歳までの継続雇用制度導入-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善

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  • トップ主導
  • シニアマーケット重視への対応
  • 高齢社員のモチベーション向上
太陽生命保険株式会社 のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1948年(1893年)
  • 本社所在地
    東京都中央区
  • 業種
    保険業
  • 事業所数

導入ポイント

  • 2017年4月、内勤職員の定年を65歳に引き上げ、最長70歳まで働ける制度を導入。
  • 2016年6月より、「健康寿命の延伸」に向けて、「太陽の元気プロジェクト」を展開中。
  • 営業職員は、2005年より70歳定年、定年後も最長80歳まで働ける制度を導入済。
  • 従業員の状況
    従業員数 10,785名(内勤職員:2,312名、営業職員:8,473名) / 平均年齢 (未入力) / 60 歳以上の割合 (未入力)
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 無 / 期待する役割 同じ / 定年後の賃金体系 同じ
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 基準該当者を70歳まで継続雇用
2021年03月31日 現在

同社における関連情報

企業概要

太陽生命保険は、T&Dホールディングス① の中核生命保険会社で、女性・中高齢層を中心とした家庭向けの商品・サービスを得意としている。「ひまわり認知症予防保険」や新型コロナウイルスによる入院を保障する「感染症プラス入院一時金保険」、職員が顧客宅を訪問して保険金等の支払手続きをサポートする「かけつけ隊サービス」、シニアの顧客宅を年1回訪問する「シニア訪問サービス」など、シニアマーケットでのトップブランドの構築に向けて、特色ある商品・サービスを提供している。
また、「健康寿命の延伸」という社会的な課題にこたえるため、2016年6月より、「従業員」「お客様」「社会」のすべてを元気にする取組み「太陽の元気プロジェクト」を展開中である。

  1. 太陽生命、大同生命、T&D ファイナンシャル生命などを傘下に置く金融持株会社。

同社では、2005年に、営業職員を対象に、定年を70歳とし、その後も一定基準を満たし会社が認めた場合、最長80歳まで働ける制度を設けている。さらに、2017年4月には、内勤職員についても、60歳から65歳に定年を引き上げ、その後も継続雇用嘱託職員として最長70歳まで就労できる制度を導入した。
同社は、2016年以降、営業職員とは別に、内勤職員として、新卒総合職を中心に毎年50名程度を採用している。総合職は毎年安定した採用を行っているが、一般職は、集金業務の廃止、ペーパーレス化の進展など業務効率化により、一時、採用を抑制していた。その後、2016年から「かけつけ隊サービス」、「シニア訪問サービス」を開始したことに伴い、その担い手である一般職の採用を再開している。

定年・継続雇用年齢引上げの背景

田中勝英当時社長(現会長)の指示により、内勤職員の定年引上げの検討を2016年4月より開始した。
引上げ前は、内勤職員の定年は60歳とし、最長65歳までの継続雇用制度は導入していたが、役職定年である57歳到達時、60歳定年到達時に、2段階で賃金が減少する。このため、モチベーションの低下等が課題となっていた。
田中会長は、健康寿命が延伸し、「元気な高齢者」が増える中、健康産業である同社の社員が、まずは長く元気に意欲的に働ける環境を整える必要があると認識していた。政府においても、一億総活躍国民会議等にて高年齢者雇用の問題が議論される中、世の中に先んじて動くべきであると判断したものである。
検討にあたっては、人事部担当役員の直轄組織として、若手社員5名からなるプロジェクトチームを設置した。メンバーは人事部門のほか、企画部門、営業部門から招集した。
定年を引き上げた場合、通常は、人件費の問題が生じる。同社の場合は、今後5年間程度は、60歳定年を迎える従業員が少なく、また業務の効率化とともに「かけつけ隊サービス」など一般職にも新たな活躍の場も設けていた。そのため、一時的な人件費の増加はあっても、これは「将来への投資」であり、定年を引き上げても問題はないと判断したのである。
検討の中では、役職定年の廃止により、若手社員の管理職のポストが減少するのではという懸念もあった。しかし、同社では従前から、成果に基づき、昇進・昇格、降職・降格させるなどメリハリのある人事運用を行っており、今後これをさらに徹底することで理解を得た。労働組合には2016年8月に制度改定を提案したが、社員に不利益となる事項はなく、雇用の確保、生涯収入も大幅に増加する内容であり、円滑に協議が進み、2017年2月に合意した。

「太陽の元気プロジェクト」ロゴマーク
「太陽の元気プロジェクト」ロゴマーク

定年制度の内容

定年制度

2017年4月、それまで60歳だった定年を65歳に引き上げた。
定年引上げ後は、役職定年を廃止し、57歳以降も、それ以前と同じように評価し、評価結果に基づいて、昇進・昇格、降職・降格制度の適用対象とした。職務内容や役職も変わらず、賃金制度も同じである。転勤や時間外労働も対象となる。
同社の賃金は、①資格給、②成果給、③職位手当からなり、役職に登用されていない場合は①+②のみとなる。
資格給の根拠となる資格は10段階に分かれている。昇給額は、人事評価によって上下し、総合職1~4級で標準以上の評価であれば昇給額は10,000円の増額となる。
成果給は、人事考課の結果に基づき、毎年度、洗替方式により、支給額が決定される。
職位手当は、職位ごとの定額制であり、上位職ほど金額が大きくなる。
定年引上げに併せ、総合職の初任給の引上げも行った。初任給は205,000円だったが、成果給部分を増額し、226,000円とした。さらに、2020年4月の人事制度改定に伴い、250,000円に引き上げた。
定年引上げ前に57歳に達した約60名の特別職員に対しては、引上げ後に57歳に達する者との処遇差が生じることから、丁寧に説明した。
退職一時金の支給時期は65歳とした。支給金額は、定年引上げ前と同水準とし、移行措置として、60歳から64歳の間に退職した者に対しても65歳で退職する場合と同額の退職金を支給することも決定した。
退職年金の支給開始年齢も引き上げて、65歳からとした。60歳以降は年金ポイントを付与せず、定年引上げ前と同水準の金額を支給する。①10年確定年金、②10年保証期間付終身の2種類あるが、新卒入社で定年退職を迎えた場合は、ほぼすべての従業員に終身年金が支給される。

継続雇用制度の内容

最長で70歳まで働ける継続雇用制度

定年引上げと同時に、定年後、最長70歳まで働ける継続雇用制度も導入した。勤務体系、処遇は改定前と同様であるが、採用時および1年ごとの契約更新に際しては、一定の基準を設定した。具体的には、「健康状態が良好で、標準以上の評価を2年間継続する」などであり、通常の勤務・評価であれば就労を認める内容とした。
職務内容は、定年時に総合職の場合、特に限定しない。定年時に一般職の場合は、一般事務を補佐する。勤務地は、原則、自宅から通える事業所とするが、所属の要員状況によっては別の事業所に配属することもある。
時間外労働は、原則として行わない。
年収は、総合職で年間約300万円、一般職で約240万円程度となる。

今後の課題

改定内容は、すべての従業員に恩恵が及ぶ内容であり、全従業員の会社へのロイヤリティは高まった。特に、改定前であれば役職定年や継続雇用される予定の年代の社員については、モチベーションが非常に高くなった。
しかしながら、今後のことを考えると、50代以降の社員の能力開発、同社の強みを生かしたシニアマーケットの開拓、さらには、生産性向上のための環境整備なども必要と考えている。
具体的には、今後は、定年引上げにより65歳まで現役で活躍できる環境となるため、50代以降の人員配置をより戦略的に行い、社員の多様なキャリア開発・形成を行うことが求められる。
また、同社の重要な顧客であるシニア層向けの商品・サービスの提供や、代理店チャネル等の新チャネルの構築など、シニア社員の経験を活かせる職場を構築する必要がある。
さらに、シニア層を含む社員全体の生産性の向上のための仕組みも求められる。定年引上げを踏まえ、現在の資格制度をより細分化し、きめ細やかな能力開発を実施する、メリハリある人事評価による処遇を徹底する、シニア社員を部下に持つ管理職の意識を変える、などの課題にも対応し、競争意識を持ち、高い意欲で活躍できる環境を整え続けることとしている。

図表1 定年引上げ前・定年引上げ後の比較(イメージ) 定年引上げ前・定年引上げ後の比較(イメージ)
同社提供資料より作成

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