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トラスコ中山株式会社

-定年引上げと収入増の両面で社員の待遇の向上を図る-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善

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  • トップ主導
  • 安心して働ける環境の整備
トラスコ中山株式会社 のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1959年
  • 本社所在地
    東京都港区
  • 業種
    機械工具卸売業
  • 事業所数
    98か所

導入ポイント

  • 2015年4月に定年を65歳に引き上げるとともに、契約社員(雇用延長)の上限年齢を70歳、パートタイマーの上限年齢を75歳とした。
  • 併せて、全社員の平均年収を3年で11%増やした。
  • 社員が安心して働ける環境を整えることが制度改定の目的。
  • 従業員の状況
    従業員数 2,568名 / 平均年齢 38.9歳 / 60 歳以上の割合 約6%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 有 / 期待する役割 一般職は同じ、元管理職はサポート / 定年後の賃金体系 逓減
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 希望者全員を70歳まで基準該当者は75歳(パートタイマー)まで継続雇用
2017年12月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

「がんばれ!! 日本のモノづくり」を企業メッセージとするトラスコ中山は、機械工具などのプロツール(工場用副資材)の専門商社である。社名の「トラスコ(TRUSCO)」は、「TRUST(信頼)」と「COMPANY(企業)」を合わせた造語である。
プロツール総合カタログ「トラスコ オレンジブック」や商品検索サイト「トラスコオレンジブック.Com」などを通じた多様化するチャネルへのプロツール販売と、「必要なときに」「必要なものを」「必要なだけ」供給する独自の物流体制で、高業績が続いている。2017年12月期は売上高・経常利益ともに、過去最高を更新した。東京本社、大阪本社のほか支店75か所、物流センター16か所、ストックセンター5か所の拠点がある。
業界の常識や古い慣習にとらわれない経営方針を取っており、社員のモチベーション向上のため、2015年から3年間で全社員の年収を11%引き上げた。
2017年の新卒採用実績は83名、2016年は98名であった。

定年・継続雇用年齢引上げの背景

トラスコ中山では、2012年4月、定年を60歳から63歳に引き上げた。同時に、役職定年も58歳から60歳に引き上げている。
世間一般では、人材難から定年を引き上げる企業も多くみられるが、同社の場合、あくまで、社員が安心して働ける環境を構築することにより、モチベーション向上につなげることが一義であった。
引上げのきっかけは、社員名簿である。同社は、社員同士のつながりを大事にしており、社員間のコミュニケーションツールとして顔写真入りの社員名簿を毎年作成している。社員名簿を見ていた社長が、60歳を迎えた社員の中に、まだ子供が学校に通っている社員がいることに気づいた。年金の受給開始年齢が引き上げられる中、社員が収入面で安心して働けるようにすべきだと考えたのである。
定年引上げ以前も、定年後も一定の基準を満たした者を65歳まで契約社員として継続雇用していたが、賃金は正社員の時の約60%となっていた。
さらに2015年4月には、公的年金の受給開始年齢の引上げへの対応として、63歳だった定年を65歳に引き上げた。さらに契約社員(雇用延長)の上限年齢を70歳に変更した。
同社では、この時期、前述の年収引上げも実施している。
いずれの改定も社員が安心して働ける環境整備とモチベーション向上という観点から検討され、同社の経営会議で即決された。一連の改定により、人件費の増額は、社員のモチベーションを向上させることで、これを上回る業績が期待できると判断したのである。
同社では、全社員にとって明らかに利益となる制度であれば、実施後、問題が生じたときも、全員の知恵で、乗り越えていくことができると考えている。したがって、取り組むべき課題があれば、先送りするのではなく、まずは取り組んでみるという方針を取っている。こうした社風も制度改定を後押しした。

同社の社員名簿
同社の社員名簿

定年制度の内容

前述のとおり、再度の定年引上げの検討を開始して、わずか3か月後の2015年4月、定年が63歳から65歳に引き上げられた。同時に、役職定年も60歳から62歳に引き上げられた。また、定年後再雇用となっていた社員のうち、2015年4月時点で63~64歳だった社員については、正社員へ戻した。
一般社員の場合、かつての定年である60歳や63歳を過ぎても、65歳までは、仕事の内容や勤務形態は変わらない。
一方、役職者の場合は、役職定年後、一社員として後輩を指導したり、現場をサポートする役割を担う。
制度上、58歳以上の社員についても、全国転勤のある正社員(キャリア)であれば、転勤はありうる。なお、希望して、故郷に戻る社員も一定数いる。

継続雇用制度の内容

定年の引上げと同時に、契約社員(雇用延長)の上限年齢も引き上げられた。
従来の制度では、63歳で定年を迎えたのち、65歳までフルタイムの契約社員として再雇用されていた。また、その後、希望する者についてはパートタイマーとして70歳を上限に雇用していた。
新制度下では、契約社員として70歳まで、さらに、一定の基準を満たす者については、パートタイマーとして最長で75歳まで雇用されることとなった。(図表2)
一定の基準とは、具体的には、①定年到達後、引き続き勤務する意思があること、②健康面で問題がないこと、③直近2回の人事考課で「C+」以下でないか(C+以下は全体の1.6%)、又は、本人の働きぶりを知る同僚、部下からの評価結果も加味する360度評価制度「オープンジャッジシステム(OJS)」の点数が5点満点中2.5点未満でないこと(全社平均3.3点)であるが、現在までのところは、実態としては希望者全員を雇用しているという。
65 ~ 70歳の契約社員については、責任の範囲は変わるが、正社員と同じフルタイム勤務であり、仕事の内容も原則として定年前と同じ職場で同じ仕事をする。年収については、定年前の概ね6割程度となる。
70歳まではフルタイムとして、75歳まではパートタイマーとして働くことができるが、社員全員が、70歳、75歳まで働くことを希望するわけではない。定年後数年間だけ働くような社員もいる。そうした社員に、自分で決めた年齢がゴールであり、そのゴールまでしっかり仕事をしようという気持ちを持ってもらえるよう、同社では、70歳を迎えた雇用延長満了者にお祝い金を支給している。ただし、雇用延長満了を迎える前に退職する場合は、退職時の年齢に応じて最大100万円を進呈する。

図表2 高齢者の雇用制度の変遷(イメージ) 高齢者の雇用制度の変遷(イメージ)
同社提供資料より作成。

年収の引上げ

同社の賃金は、年収ベースでみると、①年数を重ねるに従って毎年少しずつ上昇する「基本給」、②評価結果に応じて変動する「評価給」、③各種手当(役職手当、扶養手当、住宅補助手当など)、④賞与、⑤ファイナンシャルボンド(退職金の年次払分)で構成される。
これらのうち、②の評価給は、半年ごとに行なわれる人事考課の結果に応じて変動する。変動幅は資格等級の区分が大きいほど高くなる。
同社の資格等級のうち、S2(係長心得)以上の場合、変動幅は40~160 %、J2~S3( 一般社員~主任) の場合は50~150%、J4~J3(一般社員)の場合は60~140%である。(図表3)
新制度では、この評価給を2015年から3年かけて底上げした。1年ごとの引上げ幅は10%である。たとえば、部長職(M1)の社員が標準評価(B評価)を得た場合、制度改定前は、28万円の評価給が支給されていたが、2015年4月からは30万8,000円、2016年4月からは33万9,000円、2017年4月からは37万3,000円が支給される。
併せて、役職者に支給する役職手当も毎年2万円引き上げた。
これらの改定により、社員の平均年収の11%引上げを実現した。

今後の課題

現状では精神的にも体力的にも健全な社員が多いが、今後75歳までパートタイマーとして勤務することを考えると、高齢社員の健康管理が課題である。

図表3 評価給変動率 評価給変動率
同社提供資料より作成

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