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エフコープ生活協同組合

-65歳定年制導入の半年後、さらに70歳に定年を引上げ-

  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • 安心して働ける環境の整備
  • 高齢社員のモチベーション向上
  • 高齢者戦力化の研修
  • 柔軟な勤務時間制度
エフコープ生活協同組合 のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1983年
  • 本社所在地
    福岡県糟屋郡
  • 業種
    協同組合
  • 事業所数
    43か所

導入ポイント

  • 65歳に定年を引き上げた後、半年後、さらに70歳まで定年を引上げ
  • 定年引上げに併せて、50歳以上のフルタイムスタッフ全員のキャリア研修を実施
  • 従業員の状況
    従業員数 2,872名 / 平均年齢 47.6歳 / 60 歳以上の割合 21%
  • 定年制度
    定年年齢 70歳 / 役職定年 有 / 期待する役割 一般職は同じ、元管理職はサポート / 定年後の賃金体系 職務に見合う賃金 / 戦力化の工夫 生涯エキスパート研修の実施
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 無 / 内容 該当せず
2021年04月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

エフコープ生活協同組合は、福岡県を事業エリアとする九州最大の生活協同組合である。1983年に福岡県内の5つの地域生協が合併して設立された。約50万人の組合員を対象に、食料品・日用品などの配達、地域に密着した店舗展開、介護サービス、夕食宅配、共済、葬祭事業を展開している。事業所数は43か所で、内訳をみると、宅配支所が16、店舗が15、介護サービス事業所が12となっている。

職員数は2021年4月1日現在、2,872名 (出向者除く)となっており、うち、定時スタッフ、アルバイターを除いたフルタイムスタッフ・福祉事業専門スタッフの数は1,263名 となっている。各事業所への職員の配置割合は、宅配支所に7割、店舗に2割、本部や介護サービス事業所などに1割となっている。年齢構成をみると、設立時に採用した現在55歳前後の職員数が多くなっている。毎年、中途採用者も含めて100名前後を採用している。

人事制度改革の背景

同生協が、人事制度改革に取り組んだ背景として、経営難を理由に2002年に正規職員の希望退職を募集し、100名以上が職場を去るという過去があった。
その後、経営難は解消に向かったものの、人手不足が深刻化し、フルタイムの非正規職を導入することになった。当初は、正規・非正規間の棲み分けはなされていたものの、次第に職域の境界が曖昧となってきたのである。
2007年に、正規・非正規職員間の処遇格差を解消するため、雇用形態間の処遇を同一とし、差を設ける場合は、その根拠を明らかにする「同一労働同一賃金」を推進する方針を打ち出した。
2008年には、正規職員とフルタイム非正規職員を「フルタイムスタッフ」として一本化した。翌2009年には、パートタイムの非正規職員である「定時スタッフ」と「フルタイムスタッフ」との間で、評価制度や昇格・昇進要件を統一した。
2016年4月にはこれまで別立てだった「福祉事業専門スタッフ」の賃金制度、評価制度もフルタイムスタッフ、定時スタッフと同一のものとした。
さらに同年10月には定年を65歳に引き上げた。従来、同生協の定年は60歳で、その後は1年契約のシニアスタッフとして65歳まで継続雇用していた。
しかし、職員からは、「契約更新することなく安心して働き続けたい」という声も強く、これらの課題の解決に向け、定年引上げに踏み切った。
定年引上げに必要な原資については、60歳以降、仕事の内容が変わり、仕事に見合った職務給のみで構成しているため、労働とコストの均衡をはかることが可能となった。

図表1 エフコープ生活協同組合における賃金制度の変遷 エフコープ生活協同組合における賃金制度の変遷
同社提供資料より作成

定年制度の内容

同生協では、65歳定年制導入から半年後の2017年4月には、「65歳以降も働きたい」という職員の声に応えるとともに、急速に進む人手不足に対応するため、定年をさらに引き上げ、70歳とした。
同生協では、定年引上げ前と定年引上げ後でも役職定年は変わっていない。役職定年の対象となる管理職は、管掌、本部長、部長、センター長、SM店長、支所長である。57歳到達後の3月31日を境に仕事の内容、役職が変わる。
70歳定年については、就労環境の改善につながることから、労働組合も導入については前向きであった。
なお、同生協では定年後の継続雇用は実施していない。

賃金制度・評価制度

人事制度改革にあたっての考え方

同生協では、「日本の雇用モデル」の一例として、以下①から⑩を提案するとともに、人事制度改革にあたっても同モデルに基づき、実践していくとしている。
①70歳まで働き続けられ、雇い続けられる雇用システムとする、②雇用形態にかかわらず、同一の評価基準を用いる、③59歳までは賃金は職務給と職能給で構成する、④60歳以降の賃金は、職務給のみで構成する、⑤時間外労働を削減し、年次有給休暇の取得率を向上させる、⑥働き方の柔軟性を拡充する、⑦昇進・昇格・昇給については、制度、運用ともに実力主義で公平に行う、⑧能力開発・スキルアップを支援する、⑨福利厚生を含め、同一処遇とし、違いを設ける場合は、その理由を明らかにする、⑩同一労働同一賃金の実施と併せ、生産性を上げ、処遇の向上を追求する。

賃金制度

上記③、④で掲げたように、同生協の基本給は、59歳までは担当する職務の大きさに応じた職務給と、職員が発揮した能力の高さに応じた職能給で構成されているが、60歳以降は、コストとのバランスが重要性を増すため、職務給のみとなる。
これは、60歳以降は、短時間勤務など柔軟な働き方の必要性が増すと考えられる一方で、60歳以降、多くのスタッフは管理職などから外れ、事業の推進、またはマネジメントをサポートする役割に変化していくことから、賃金が低くなるケースが増えてくる。

評価制度

同生協の人事評価は、59歳までは、「仕事の大きさ」と「職員が発揮した能力の高さ」の2本立てで行う。仕事の大きさは、職務評価により決定し、職務給に反映する。一方、発揮した能力の高さは「業績・態度考課」で決定し、職能給に反映する。
「業績・態度考課」は、年2回実施する。アルバイトを除く、全職員が対象となる。上司との面談により、到達目標を設定し、年度の上半期と下半期の2回評価を行い、その合計点によって5段階で格付けする。
評価結果は、前述のとおり、翌年度の職能給に反映するが、60歳以上の職員の場合、職務給のみとなるため、「業績・態度考課」の結果に応じて、0.96~1.10の評価係数を乗じることで、職務給に反映させる。(図表2)
職務給、職能給とも同じ等級であれば、定時スタッフの月例賃金の時間単価はフルタイムスタッフの時間単価以上となる。ただし、賞与と退職金を加えて年収で比較した場合は、フルタイムスタッフのほうが高くなるが、これは人事異動の範囲が異なることを根拠としている。
人事異動の範囲は、雇用形態、職能資格等級、年齢区分によって異なる。例えば、職能資格等級が一定以上のフルタイムスタッフの場合、福岡県内全域が異動の対象となり、職務内容も限定されない。一方、同じフルタイムスタッフでも、60歳以降は、職務内容は限定されないものの、異動範囲は自宅から直線15㎞以内となっている。
同生協では、退職金は、60歳統一基準日で精算しており、勤続ポイントと職能ポイントの累計の合計ポイントによって支払われる。退職金の支給対象はフルタイムスタッフのみである。

高齢者の活用に向けた工夫

生涯現役エキスパート研修の実施

70歳定年の導入に伴い、これからの就労人生を意欲的に活躍し、職場環境の変化に適応していくため、2017年4月より、50歳以上のフルタイムスタッフ対象に「生涯現役エキスパート研修」を開催している。これからのライフビジョンやキャリアプランを考え、現状認識、自己の強み、弱みを発見し、エフコープで活躍するためのキャリア目標の設定、また仕事や人生に対してチャレンジするための意欲を高めることを目的にしている。

雇用形態間の移行制度

職員の健康状態や生活状況の多様化に対応し、フルタイムスタッフおよび福祉事業専門スタッフについては全員が、短時間勤務(週15時間以上35時間未満)を選択できる。また、スタッフは、必要な期間、定時スタッフに移行し、いつでも元の雇用形態に戻ることができる。

定年引上げの効果と今後の課題

同生協では、定年引上げの効果として、60歳以降の退職者が減少するなど、これまでのところ、概ね狙いどおりとみているが、数年後には60歳を迎える職員数の増加が見込まれることから、全職員に、定年引上げ後の取組みやスタッフの働き方について理解を深めていきたいと考えている。

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