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株式会社オリエンタルコンサルタンツ

-高度人材確保と戦力化のため、役職に応じ、複数の定年を設定-

  • 人事管理制度の改善

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  • 熟練技術者の確保・活用
  • 役職で異なる定年年齢
株式会社オリエンタルコンサルタンツ のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1957年
  • 本社所在地
    東京都渋谷区
  • 業種
    技術サービス業
  • 事業所数
    57か所

導入ポイント

  • 優秀な技術者を確保し、戦力となってもらうため、役職に応じ、複数の定年を設定。
  • 部長・次長、技師長・主監は65歳、チームリーダーは63歳、一般職は60歳。
  • 優秀な技術者を確保するため、新卒、キャリアに加え、シニアの採用も強化。
  • 従業員の状況
    従業員数 957名 / 平均年齢 42.2歳 / 60 歳以上の割合 11.4%
  • 定年制度
    定年年齢 60歳
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 無 / 内容 該当せず
2017年09月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

オリエンタルコンサルタンツは、建設コンサルタント会社として創業以来、社会インフラに関わる技術・サービスを提供してきた。事業領域は、道路や鉄道から、都市計画、交通、環境、観光、防災、保全など多岐にわたる。
20代後半及び40代の社員が多いが、60歳以上の社員も約117名と多い。
優秀な技術者を確保するため、新卒、キャリアに加え、シニアの採用にも力を入れている。2016年度は新卒約70名のほか、ほぼ同数の中途採用も行った。60歳以上のシニアであっても優秀であれば採用する。

定年引上げの背景

同社が定年引上げに向けた検討を開始したのは、2014年8月頃である。背景には、建設コンサルタント業界において人材獲得競争が激化する中、人材の活用・増員が不可欠であり、特に優秀な高齢社員にモチベーションを持って能力を最大限発揮し、できるだけ長く働いてもらいたいとの思惑があった。
この業界では、長年の経験が求められる場面が少なくない。たとえば、トンネルや橋梁の設計時に、最適な工法を選択する際にもこの経験がモノを言う。優秀なベテラン社員の中には、コンサルタントとして顧客からの信頼が厚く、同社の社名よりも、「○○さんが参加してくれるのであれば」と個人の名前で、仕事を獲得する者もいるという。
同社では、工学博士をはじめ、技術者に与えられる技術士など多くの有資格者が在籍している。
コンサルティングには、高度な知識・技術が求められるだけに、同社においては、定年引上げ以前から、優秀な人材については、継続して雇用しており、65歳を超えてからも継続雇用することがあった。しかしながら、定年後に役職から外れることによってモチベーションが低下する者もあり、これが課題となっていた。
これに対し、経営層は、優秀な人材には60歳以降も責任ある立場で、意欲的に働いてもらおうと考えた。従来からベテラン社員による若手社員への技術伝承は行われていたが、定年を引き上げることで社員として責任を持ってより確実に技術伝承を進めたいとの思いがあった。
こうして、優秀な人材には、より長く本格的な戦力となってもらおうというコンセプトのもと、定年の引上げに踏み切った。
制度の検討にあたっては、経営層と統括本部の担当者数名からなるチームを結成し、必要に応じて、社会保険労務士など外部の専門家などにもアドバイスを求めた。
制度改定に必要な原資については、定年引上げによるベテラン社員の貢献が人件費の増額分をカバーできると判断したため、大きな問題とはならなかった。

定年・継続雇用制度の内容

定年制度

同社の定年制度の特徴は、退職時の役職に応じて、65歳、63歳、60歳と3通りの定年年齢を設定している点である(図表1)。
65歳定年の対象となるのは、マネジメント部門における部長・次長、専門部門における技師長・主監である。
63歳定年の対象となるのは、チームのリーダーに指名される管理職社員である。
これら以外の一般社員は、60歳定年が適用され、それぞれ定年退職日は、65歳、63歳、60歳の誕生日の属する月の末日である。
同社では、発揮した業績、成果に対し、会社への貢献をもとに公正に評価することとしている。役職によって定年年齢が異なることについても、長年の会社への貢献度と発揮した業績、成果に応じた処遇の一環として、自然な流れで受け止められており、不満の声などは聞かれないとのことである。
65歳定年制、63歳定年制の対象となった社員は、それぞれ定年まで、本人の意欲を確認の上、それまでの役職を継続することを基本としている。仕事の内容も59歳以前と同じであり、評価方法も変わらない。
賃金水準については、従来から、60歳を境として大きく低下するような仕組みではなかったが、新制度においては、役職も変わらないことから、それまでとほぼ同水準である。
退職金は一時金と確定給付年金のいずれかを選択する仕組みとなっている。定年が何歳であっても、退職金の積立ては60歳までである。

図表1 役職と定年の関係について 図表1 役職と定年の関係について
同社提供資料より作成

継続雇用制度

定年引上げ前においては、60歳で定年を迎えた社員については、希望者全員を継続雇用する制度があった。さらに、優秀な人材については、制度化されてはいなかったものの、その後も継続雇用する慣行があった。
同社では、役職ごとに定年を引き上げた後も、就業規則上の雇用上限年齢は65歳のままとしている。本人に意欲と能力があれば、その後も継続雇用するが、制度化はしていない。
定年後は、管理職であった社員も役職から外れ、技術の伝承を含む後進の育成やプロポーザル方式の入札に提出する提案書のチェックなどを担当する。フルタイム勤務が原則だが、家族の介護などやむを得ない事情があれば勤務日数・時間などの配慮も行う。
継続雇用社員についても人事評価の対象となる。評価は所属部署の上長が行う。定年到達時の年収をベースに、評価結果に基づいて所定の率を乗じ、基本給と賞与を決定する。実際には、能力があれば、継続雇用となったからといって、賃金が大きく下がるようなことはないという。

人事評価制度

同社の評価制度は、能力考課と成果評価の二本立てとなっている。
能力考課は、期首に1年間の能力向上を踏まえた成長目標を設定し、期末に能力の発揮度合をS点(Skill)、M点(Management)、A点(Attitude)から評価する仕組みとなっている。
評価方法はいわゆる360度評価で、被評価者の上司、同僚、部下など複数名が行う。
同社の月例賃金は、基本給と各種手当からなる。基本給は360度評価で得られた能力評価点を基にして給与に換算して設定する。
一方、成果評価は、期首に1年間の成長目標を設定し、4半期ごとに、目標の達成度合いを上司と振返りを行う仕組みとなっている。成長目標の達成の度合いは、能力考課における360度評価時の参考資料として用いる。また、支店別の成果評価は、賞与にも反映する。

社員全体に対する人材育成制度

同社では、①社員は自律した個であるために常に自己研鑽することを約束し、②会社・仲間は社員の成長を支援、育成することを約束する-という「2つの約束」を両輪に人材育成を行うこととしている(図表2)。
このうち、①「社員の約束」では、自律した個として、プロフェッショナル人材として成長すること、主体性とチームワークを大切にした行動を取ることを社員に対して求めている。一方、②「会社・仲間への約束」では、社員の成長を支援するための環境を整備するとともに、社員の業績を公正に評価し、処遇することでさらなる個の成長へとつなげることとしている。
"具体的な人材育成の実施方法は、①Plan(経営理念や中長期の経営ビジョンに基づき、各社員が1年間の能力向上、成果の目標を設定するとともに、自らの将来像等とそれを実現するための各年代でのキャリアパスも設定)、②Do(設定した目標に基づき、日常業務を実施するとともに、自己研鑽に努める)、③Check(結果を能力考課、成果評価で評
価)、④Action(上司と部下が面談し、1年間の成長度合いを共有)という流れになっている(図表3)。"

図表2 同社における人材育成の全体系図 図表2 同社における人材育成の全体系図
同社ホームページより抜粋
図表3 PDCA サイクルによる人材育成の展開 図表3 PDCA サイクルによる人材育成の展開
同社ホームページより抜粋

今後の課題

同社では、現時点では、定年に到達する社員数はまだ多くはない。
だが、いずれ定年到達者の数が増えれば、定年後のモチベーション低下が課題となることが考えられる。
さらに定年後も社員が自己研鑽を続けられるよう対応を検討する必要がある。

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