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株式会社テンポスバスターズ

-60歳以上が3分の1。戦力化に向け、評価と研修を実施-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫

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  • 年齢不問の採用
  • 高齢社員も厳格に評価
  • 高齢者戦力化の研修
株式会社テンポスバスターズ のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1997年
  • 本社所在地
    東京都大田区
  • 業種
    その他の卸売業
  • 事業所数

導入ポイント

  • 年齢を問わない中途採用を実施。
  • 60歳以上の社員(パート社員含む)が3分の1を占める中、戦力化に向けた研修を実施。
  • フルタイム、パートともそれぞれ、59歳以前と変わらない賃金・評価制度を実施。
  • 従業員の状況
    従業員数 552名 / 平均年齢 48.9歳 / 60 歳以上の割合 29.0%
  • 定年制度
    定年年齢 定め無し / 役職定年 該当せず / 戦力化の工夫 高齢者(こうれいしゃ)研修の実施
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 該当せず / 内容 該当せず
2019年04月30日 現在

同社における関連情報

企業概要

テンポスバスターズは、厨房機器のリサイクル販売からスタートした会社である。厨房機器販売のほか、店舗用不動産の紹介、内装工事や、飲食店の開業支援や経営支援なども手がけており、年間の支援件数は2万件にのぼる。全国で59店舗を展開している。
創業以来、意欲と能力のある人材であれば、年齢、性別、職歴、経験などにとらわれず、積極的に中途採用をしてきた。また、新規役職者を社内で募集する「役職者立候補制度」や、社長を社内外から公募し、半年間「社長の椅子争奪バトル」を行うなど、ユニークな事業経営を行っている。
2017年11月に、持ち株会社「株式会社テンポスホールディングス」が設立されたことに伴い、テンポスバスターズは、その中核子会社となった。
同社では、必ずしも高齢者を積極的に採用してきたわけではない。だが、意欲と能力を重視し、年齢にとらわれない採用を続けた結果、2019年4月現在、60歳以上社員(パート社員含む)の割合は全社員の約29.0%と3分の1を占めるようになった。
同社の賃金制度には、年功的な要素はなく、能力、役割や成果で支給額が決まる。
エイジフリーを実践していることが評価され、2005年に、厚生労働省及び(独)高齢・障害者雇用支援機構が行う高年齢者雇用開発コンテストにおいて部門別賞(能力開発部門)を受賞している。

店内の様子(川口C館)

高齢者活用の経緯

同社では、創業後に急速に事業が拡大し、人手が不足する中で、年齢や性別、経歴にとらわれない採用を実施してきた。特に高齢者にターゲットを絞って積極的に採用してきたわけではないが、意欲と能力のある人材を採り続けた結果、60歳以上の社員は自然に増えてきたという。
2004年には60歳以上に限定したパート社員の採用制度「パラダイスシステム」を導入した。60歳以上の高齢者に働く場を提供するため、柔軟な働き方で働いてもらおうというもので、最初は補助的な業務にあたってもらい、徐々に、店舗販売、中古厨房機器の洗浄・修理、管理部門などの業務にあたってもらった。
同社では、創業から数年経過時点で、実質的に定年がない状態となっていたが、2005年には定年自体を廃止している。
パラダイスシステム自体は、年齢を限定したシステムであったこともあり、数年で廃止されたが、同社では、その後も年齢にとらわれない中途採用を積極的に進め、パート社員のほか、フルタイムの月給制社員としても高齢者を活用している。
2019年4月30日現在、60歳以上の社員数は160名で、うち約7.5割はパート社員だが、60歳を超えたフルタイムの月給制社員も徐々に増えてきている。また、2019年4月現在、最高齢者は81歳のパート社員で、店舗販売を担当している。

人事労務管理制度

雇用形態

同社には、月給制が適用される社員と時給制が適用されるパート社員の2種類がある。
月給制社員の場合、フルタイム勤務が原則だが、パート社員は、短日数・短時間勤務も可能である。
月給制社員には総合職と地域限定のエリア社員とがある。エリア社員の場合、同一エリア内での異動はあるものの、転居を伴う異動はない。事情に応じて、総合職とエリア社員相互の転換ができる仕組みとなっている。なお、パート社員は、原則店舗限定の勤務となる(図表1)。
パート社員の場合、採用後2か月間は、有期雇用社員として働く。この期間の働きぶりをみて、問題がなければ期間の定めのない雇用契約に移行する。

図表1 テンポスバスターズにおける雇用区分 図表1 テンポスバスターズにおける雇用区分
同社提供資料より作成

月給制社員の賃金制度

月給制社員の賃金は、①基本給、②成果給、③人事考課給、④店舗給などからなる。
同社において、賃金は、能力、役割や成果によって決まるものとされており、年齢や経験年数など年功的な要素はない。基本給は原則として定額であり、これに四半期ごとに実施される評価結果に基づいて、成果給、人事考課給、店舗給が加算される仕組みとなっている。
成果給は、それぞれの社員が稼いだ粗利をもとに評価する。人事考課給は、会社が求める知識を身につけ、会社が求める行動をとっているかどうかによって評価する。
なお、2017年11月からは、評価にあたって、毎期、洗い替えをするのでなく、それまでの実績も加味するよう改めた。これは、「(変動幅が大きいと)生活設計の目処が立たない」との声が、30 ~ 40代の社員の中からあったためである。
店舗給は、全59店舗におけるランキングの区分に応じて、定められた定額を加算する。
賞与については、会社の利益に応じて全体の賞与原資を決定したうえで、店舗の成績に応じて、これを各店舗に配分する。各店舗では、それぞれの社員が稼いだ粗利などを勘案しつつ、一人ひとりの賞与額を決定する。
"同社では、正社員、パート社員に限らず、全社員の賞与額を公開している。賞与額について、他の社員と比較して不公平感を持つものが出ないよう、各店長は、賞与支給時には、一人ひとりの社員と面談し、店舗の業績や本人の働きぶ
りなどをもとに、なぜこの賞与額になるのかを丁寧に説明している。"
このように、年齢を問わず、働きぶりがしっかり評価され、賃金・賞与に反映される制度となっている。

パート社員の賃金制度

パート社員の時給は、AからIまでの9ランクに分かれている。
より時給の高いランクに移るためには、年2回開催される「時給改定試験」に合格する必要がある。同社では、社員に対し、年1回以上、この「自給改定試験」を受験することを義務づけている。試験は、ランクごとに定められた知識・能力要件の中から、15問程度を問うものであるが、試験の結果が基準を満たさなかった場合は、下のランクに降格される。
上から2番目のHランク以上に昇格すれば、「販売のプロフェッショナル」として認められ、店長になることも可能となる。パート社員の雇用形態のまま、店長の職に就いている者も2名いる。パート社員のまま店長となっている社員の賃金(時給制)を、正社員の店長(月給制)と比べると、転勤や会議への出席などについて制約があることから、賞与額には差はあるものの、月々の賃金の時間当たり単価は同水準である。
賞与については、パート社員に対しても、正社員同様、7月、12月の年2回支給している。正社員と同じように、店舗ごとにパート社員の賞与原資を設定した上で、これをもとに店長が、一人ひとりのパート社員の賞与額を決定する仕組みとなっている。

役職者立候補制度など

同社では、役職に空きが出た時や、新たな部署や店舗を立ち上げる時は、「役職者立候補制度」により、新規役職者を社内で募集している。
同社は、幹部候補者の登竜門として、店長として人を使う立場の心構えや覚悟について学ぶ「テンポス道場」を実施しているが、これを修了していれば、年齢、性別や職位、さらに、正社員、パート社員の別に関係なく立候補することができる。
"このほか、同社では、先方が受け入れてくれるならその職場に移ることができる「フリーエージェント制」や、他店の社員を引き抜くことができる「ドラフト制」など、年齢に関係なく、社員の自主性を重視した人事制度を運用し
ている。"

退職時期の決め方

同社では、退職時期は社員が自ら決めるものと考えている。だが、本人からの申し出があっても、「まだやれるだろう」と慰留する場合が多い。

高齢者の戦力化に向けた研修の実施

高齢社員に戦力として働いてもらうために、評価に加えて、研修にも力を入れている。
同社では、2009年から「幸齢者(こうれいしゃ)研修」の名称で、60歳以上の社員を対象に、2泊3日で合宿形式による研修を実施している。
同研修では毎回テーマを決め、グループ討議などを行っており、2016年には「老害と言わせない」をテーマに、高齢社員が働く上で、最低限必要な水準について受講者全員で話し合った。また研修は毎回エリアを変えて実施しており、研修者は店舗を訪問し、店長と棚の陳列方法や接客などについて情報交換を行い、より良い店舗づくりに活かしている。
社員のモチベーションアップや業務の効率化に高い効果がみられたことから、現在は対象者を60歳未満の者にも拡大し、別の名称で実施している。

今後の課題

テンポスバスターズでは、持株会社化に伴い、今後、グループ企業各社にも同社と同じ人事制度を導入していく方針である。
同社では、「定年がないこと」が文化として定着しているものの、買収でグループ傘下に入った企業は必ずしもそうではない。高齢社員をうまく活用できていない会社もあると思われることから、今後、粘り強く制度を浸透させる必要があるとみている。
同社が定年を廃止できたのは、年齢にかかわらず、成果を求め、人事評価の結果を賃金に反映させていることと一体となっており、高齢社員にとっては厳しい面もある。そうした点も含めて、浸透を図っていく必要がある。

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