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広島市信用組合

-65歳定年制と希望者全員70歳までの継続雇用制度を導入-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 賃金評価制度の改善

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  • トップ主導
  • 安心して働ける環境の整備
  • 技術・技能の伝承
広島市信用組合 のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1952年
  • 本社所在地
    広島県広島市
  • 業種
    協同組織金融業
  • 事業所数
    34か所

導入ポイント

  • 2017年4月に、定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、処遇も改善。
  • 定年後、70歳まで継続雇用する制度も導入。
  • 従業員の状況
    従業員数 431名 / 平均年齢 36歳 / 60 歳以上の割合 7.4%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 期待する役割 後進の育成・指導 / 定年後の賃金体系 無
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 希望者全員を70歳まで継続雇用
2017年06月01日 現在

同社における関連情報

組織概要

広島市を中心に34店舗を展開する信用組合。「堅実・健全経営に徹し、“一番頼りになるコミュニティ・バンク”」を目指しており、「市信用(シシンヨー)」の愛称で呼ばれる。
国際情勢や金融市場の影響を受けやすい投資信託や生命保険などの金融商品を一切扱わず、預金、融資、為替など金融機関本来の業務を着実に行うことで、右肩上がりの業績を続けている。
職員の年齢階層別の内訳をみると、20代職員が4割を占めるなど若い職員が多く、60歳以上の職員の割合は7.4%である。
新卒者を毎年40名程度採用しており(大卒者20名程度、短大・高卒者20名程度)、中途採用は、ほとんど行っていない。

定年引上げの背景

同組合では、2017年4月から、定年年齢を65歳に引き上げた。その背景には、同組合の好調な業績がある。堅実な経営を続けた結果、14期連続で増収となり、2016年度の経常収益は過去最高であった。財務体質も健全で、2017年3月末の不良債権比率は2.74%と極めて低い水準であった1 。
このような中、同組合が取り組んだのが職員の待遇の改善であった(図表1)。安心して働ける環境を整備することで、職員のモチベーションをさらに上げたいと考えたのである。同組合では、まず、給与の見直しに着手した。優秀な人材を確保するため、2012年度から、毎年、初任給を引き上げた。この結果、四大卒の初任給は、2012年度から2017年度にかけて、27,000円増の210,000円となった。
併せて、2013年以降、食事手当、資格手当など各種手当から基本給への振替を行った。
2013年3月には役職定年制を廃止した。それまで、部長は58歳、副部長は57歳で主任調査役、課長・支店長は56歳で調査役、次長・副長・代理は55歳で副調査役、係長は55歳で主任となり、役職から離れることとなっていたが、これを廃止したのである。
また、女性職員の管理職への積極的な登用や17時40分の定時退社の励行・徹底など、働き方全体の見直しにも取り組んだ。
その上で2017年度に行ったのが、65歳への定年引上げである(図表2)。それまでは、60歳定年後、希望者全員が62歳まで、労使協定で定めた基準を満たす職員については65歳まで、嘱託として継続雇用することとされていた。実際には、ほぼ希望者全員が65歳まで継続雇用されていたが、仕事内容、役職なども変わり、それに伴って、賃金が59歳時点の40%程度にまで下がっていたことから、モチベーション低下が課題となっていた。
定年引上げの議論は、少し前からあったが、実際に検討を開始したのは2017年1月である。「次は、定年引上げに取り組もう」と理事長が決断したことがきっかけとなった。
検討を進める中で、人件費のシミュレーションを行ったところ、定年引上げにより、人件費が年間約1,800万円増えることが明らかとなった。かなりの金額ではあるが、内部留保を活用し、必要な原資を確保できることが確認できた。
検討過程では、定年を段階的に引き上げる案も浮上したが、「制度はシンプルなほうがよい」と理事長が判断したことから、段階を踏まずに、一気に65歳定年制を導入した。

図表1 広島市信用組合における人事制度見直し 図表1 広島市信用組合における人事制度見直し
同組合提供資料より作成
図表2 新制度導入前・導入後の比較(イメージ) 図表2 新制度導入前・導入後の比較(イメージ)

定年・継続雇用制度の内容

定年制度

同組合では2017年4月1日から定年を65歳に引き上げた。原則、60歳以降も59歳時点に担当していた役職、業務を継続する。
60歳以降は、資格手当が減額される。このため、全体的には59歳時点よりも賃金は2割程度低下するが、制度上、65歳までは昇給・昇格もありうる。
退職金も65歳の定年年齢に達してから支払われることとなった。
定年引上げに伴って、60歳以降の職員も、人事評価制度の適用対象となった。59歳以前の職員同様、期首に、①業績、②情意(勤務態度)、③能力に関する目標を設定し、年末に上長と面談して、各目標の達成状況を点数化し、昇級・昇格時に反映させることとした。

継続雇用制度

定年の引上げに併せて、継続雇用の上限年齢も延長し、希望者全員70歳まで継続雇用する制度を導入した。
同組合の定年は満65歳に達した日(誕生日の前日)である。
65歳で定年となった後は、嘱託の身分となり、定年前と同じ部署で現役職員をサポートする。
継続雇用時の賃金は「嘱託給」一本となる。現段階では、賃金水準は、65歳到達時の賃金を踏まえ、個別に決定している。仕事の内容にもよるが、例えば、支店長だった場合、65歳到達時の60 ~ 80%程度、一般職だった場合は60 ~ 65%程度となっている。
なお、原則、役職は外れるが、余人をもって代え難い人材の場合、定年前と同じ賃金水準を維持したまま、役職にとどまることもありうるという。実際に、現在、65歳の職員1名が、嘱託の身分で、部長職に就いている。
嘱託に対しても人事評価を実施しているが、評価項目は現役職員とは異なる。
現在、嘱託の最高齢は67歳の職員である。
定年前と同じ部門で「事務企画」担当者として、営業事務全般の管理や、支店職員からの問い合わせへの助言のほか、後進の指導育成などを行っている。

同組合のイメージキャラクター大野豊さんのポスター
(2017 年度)

定年引上げの効果

同組合では、「60歳以降の5年間の年収が大幅に増えることで、職員全員が安心して働けるようになったことは大きい。人材の獲得や、定着率向上にもつながるのではないか」とみている。

今後の課題

同組合では、若い職員の割合が高い。今後、ベテラン職員をいかに活用して、後進を育成するかが課題と考えている。その一つの方策として、支店に高齢社員を配置して、後進の指導・育成にあたらせることも検討している。

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