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有限会社八千代運輸倉庫

-賃金制度見直しやドライバーの職種転換により高齢社員を戦力化-

  • 70歳以上まで働ける企業
  • 人事管理制度の改善
  • 賃金評価制度の改善
  • 戦力化の工夫
  • コンテスト入賞企業

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  • トップ主導
  • 高齢社員の役職への登用
  • 職域拡大・職場創出
  • 安全・健康管理
有限会社八千代運輸倉庫 のロゴマーク

企業プロフィール

  • 創業
    1980年
  • 本社所在地
    広島県安芸高田市
  • 業種
    道路貨物運送業
  • 事業所数
    5か所

導入ポイント

  • 65歳定年、70歳までの継続雇用延長とともに、賃金を見直し、昇給や役職登用も可能とした。
  • 社員の高齢化に対応するため、遠距離運送中心から近距離運送への業態の切替えなどを実施。
  • 従業員の状況
    従業員数 104名 / 平均年齢 42歳 / 60 歳以上の割合 24.0%
  • 定年制度
    定年年齢 65歳 / 役職定年 無 / 戦力化の工夫 新職場、職務の確保
  • 70歳以上継続雇用制
    制度の有無 有 / 内容 基準該当者を70歳まで継続雇用
2017年04月01日 現在

同社における関連情報

企業概要

八千代運輸倉庫では、運送業、倉庫業、自動車整備業、燃料販売業と物流に関わる事業を多角的に展開している。広島県安芸高田市にある本社のほか、4つの事業拠点を持つ。
2017年7月21日現在の従業員数は104名。年齢階層別にみると、20代以下は7名(5.4 %)、30代は13名(12.5 %)、40代は30名(28.8%)、50代は29名(27.9%)、60代は23名(22.1%)、70歳以上は2名(1.9%)で、60歳以上の社員が約4分の1を占めている。
職種別にみると、ドライバーの人数が最も多く56名となっている。

定年・継続雇用年齢引上げの背景

同社では、2012年4月、従来60歳だった定年を65歳に引き上げるとともに、定年後は基準に該当する者を70歳まで嘱託として継続雇用する制度を就業規則に盛り込んだ。さらに、制度化はしなかったが、70歳以降も健康状態が良好で、事故が少ないことを条件に継続雇用することとした。
同社が職場改善等の取組みを進めた背景には、慢性的な人手不足がある。同社が立地する地域は過疎化が進んでおり、数少ない若者も都市部に就職するため、若者の採用は困難であった。
また、「生涯現役社会」が社会的に要請される中で、当時の代表取締役(現会長)は企業としてこれに応えていきたいとの思いもあった。
同社では、それまで、就業規則上は、定年を60歳とし、その後は基準に該当する者を嘱託として65歳まで継続雇用することを定めていたが、実際には希望者全員を継続雇用していた。また、66歳以降も就労を希望する者が多いことから、引き続き雇用していた。
制度改定前から、高齢社員が長く働ける状態だったが、2012年に就業規則を改定して定年引上げ及び継続雇用延長を行ったのは、企業として「自ら培ったスキルと経験を活かし、いつまでも働き続けられる企業をめざす」というメッセージを社員に伝えたいと考えたからである。

社屋外観

定年・継続雇用制度の内容

賃金・評価制度

定年引上げに伴い、賃金制度も見直した(図表1)。60歳以降、賃金は減額せず、役職も維持される。さらに、人事評価の結果に応じて昇給・役職への登用も行えるようにした。
65歳で定年を迎え、継続雇用となった後は、賃金は時給制となるが、これについても見直しを行った。従来は一律850円で努力しても上がることはなかったが、制度改定後は、定年到達時の賃金水準が維持されるようにし、要件を満たせば昇給もできるようにした。さらに、能力さえあれば、定年前の役職を継続できるようにしたほか、他社を定年退職後、同社に嘱託として採用された社員であっても、高いスキルや専門的な知識・技術があれば、役職に登用できる仕組みも整えた。
この制度に沿って、65歳以降に入社した社員を安全課の課長に登用した例もある。
昇級を決める際に必要な人事評価は、継続雇用者に対しても行われ、評価シートも64歳以下の現役社員と同じものを用いる。昇給率も現役社員と同じである。

柔軟な勤務形態の導入

継続雇用時の勤務形態については、見直し前はフルタイム勤務のみであったが、制度改定後は、①1日の勤務時間を6時間、1か月の勤務日数は所定日数とする「短時間勤務」、②1日の勤務時間は所定労働時間(8時間)、1か月の勤務日数を15日とする「短日勤務」を導入して、高齢社員の希望に合わせた勤務形態を選べるようにした。介護や社員本人の疾病など特段の理由がある場合は、①②以外でも個別に対応することにしている。
例えば、61歳の高齢ドライバーが脳梗塞を発症した際は、倉庫管理業務に職種転換した上で、勤務日数や時間を回復の程度に合わせて柔軟に設定することで、職場復帰を支援した。現在は、運行管理者補助者として勤務している。

高齢社員を活用するための工夫

同社ではドライバーの高齢化に対応するため、10年以上前から、近距離運送を中心とした業態へのシフトを進めてきた。
かつては、中部・関東までの遠距離運送が中心だったが、高齢ドライバーにとっては身体的な負担が大きく、事故のリスクも増加するため、課題となっていた。現在、業務の大半が県内の近距離便となっており、高齢ドライバーの負担も軽減されている。

新職場・職務の確保

同社では、体力的に運転業務が困難になった高齢ドライバーが引き続き活躍できるよう新たな職場・職務の確保にも取り組んでいる。
2005年からは、ガソリンスタンドの経営を開始し、高齢社員を配置している。業務内容は、給油、洗車、自動車整備などで、運転業務に比べて、身体的な負荷が低く、体力が低下した高齢社員でも働くことが可能である。自動車整備は、ドライバーとしての豊富な知識、技術、技能を活かすこともできる。ガソリンスタンドで働くためには危険物取扱者資格が必要となるが、同社では資格取得に向けた支援も行っている。

図表1 旧制度、新制度との比較(賃金水準、昇級・昇格等) 図表1 旧制度、新制度との比較(賃金水準、昇級・昇格等)
同社提供資料より作成

同社では、これ以外にも高齢ドライバーの職種転換先として、倉庫管理業務や運行管理業務を用意している。正社員1人分の仕事を高齢社員2人で担当させるという方針のもと、業務に当たらせている。

永年勤続表彰制度

「いつまでも働き続けられる企業をめざす」という同社の姿勢を社員に示す一環として、2016年5月に「永年勤続表彰制度」を制定した。これは、勤続5年ごとに社員を表彰するというものである。毎年1回5月に実施する「全体安全会議」の場で表彰式を実施し、対象者に表彰状と記念品を授与する。正社員だけではなく、アルバイトや嘱託も対象となる。2017年度は、勤続35年の社員1名を含む21名を表彰した。

職場環境の改善

風通しのよい職場環境の整備

経営者と社員間、社員同士の意思疎通を図るため、部署ごとの5 ~ 6人の班を編制して、定期的に意見交換を行う場を設けている。
各班の代表者が集まる「各班代表者会議」で、班ごとに寄せられた意見を集約して、安全衛生委員会、安全対策会議、経営会議などを通じて、経営者に伝えている。経営側から現場に伝えたい情報もこのルートを活用している。会議では、部門ごとの利益や、経営上の指標を社員に開示し、経営に対する意識付けも行っている。
これらの会議に出席する場合は、1回あたり1,000円の出席手当を支給する。議事録は、全社員に回覧し情報を共有している。
このような現場からの意見の集約が職場環境の改善につながった例もある。例えば、本社事務所にある階段は、らせん状になっている上、各段の幅が狭く、高齢社員が踏み外す危険があったため、各段の幅が広い直線的な階段に交換した。また、事務所の和式トイレは、膝の悪い高齢社員にとって使いづらいものであったので、洋式に変更した。

健康管理・安全衛生

高齢ドライバーが安全に車輌を運転するためには、日々の健康管理だけではなく、運転に集中できるための環境整備も必要である。
このため、同社では、前述の安全課長を中心に運行管理システムの高度化を進めた。具体的には、デジタルタコグラフ、ドライブレコーダーを車輌に搭載し、運転記録に異常がみられた場合、ドライバーに状況を確認している。

今後の課題

高齢社員が働きやすくなるための取組みを今後、いかに継続していくかが課題である。そのためには、高齢社員自身にどうすれば働きやすくなるか考えてもらうことと、さらに意見を吸い上げやすくすることが必要だと考えている。

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